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永遠を生む透明な瞬間(とき)

51:永遠を生む透明な瞬間(とき)

私は帰って来た。あの殺し合いから。
でも、もうレックスはいない。
家に帰っても、私を出迎えてくれるあの黒い狼は、もういないんだ。

レックスは失踪扱いになった。
一応警察の人は捜索してくれているけど、どこを捜したって見付かる筈無いよ。
レックスの死体は異世界のあの会場に放られたままなんだから。
友人や仕事先の人が色々心配してくれるけど、正直、そっとしておいて欲しい。

仕事は続けている。
普通の犬や狼、妖犬、魔犬、神犬、妖狼、魔狼、神狼、色々な犬科動物と行為をした。
確かに気持ち良かったけど、満たされる事は無かった。




ある日、私は身体に異変を感じた。
妙に気持ち悪かったり、熱っぽかったりする。
風邪かと思ったけど、ある可能性が私の脳裏に浮かぶ。
その可能性を信じた私は、産婦人科へ向かった。

「……稲垣さん」
「はい」

産婦人科の先生が、言った。

「おめでとうございます、妊娠されていますよ」
「……えっ、本当ですか」

いつ頃に妊娠したのか聞いた。
その時期を聞いた私は驚く。
私が殺し合いの最中で、レックスと交わったあの日――――。

私は、レックスの子供を身籠ったのだ。

愛した人、いや、狼との、愛の結晶を。

二人で語った夢が、叶った。



――――悲しい。

――――とても喜ばしい、嬉しい事なのに。


「稲垣さん……?」


――――どうして。

――――どうしてレックスはいないの。


涙が止まらない。
先生や看護師さんはきっと嬉し涙だと思っただろう。
確かに嬉しかった、でも、それ以上に、私は悲しかった。

一番喜んでくれるはずだった、レックスは、もういないんだから。


――――レックス。

――――貴方と私の子供が出来たよ。

――――レックス。

――――喜んで、くれているかな。

――――レックス――――。



――――貴方にもう一度、会いたい――――。













「…ねぇ、お母さん」
「ん?」
「僕のお父さんってどんな人だったの?」
「…知りたい?」
「うん…僕と同じ、狼だったって事ぐらいしか知らないし」
「…貴方のお父さんは…ちょっとエッチだったけど、優しくて、強くて、お母さんを大切に、愛してくれた。
……私には勿体ないぐらいの、良い男―――いや、狼だったんだよ」
「そうなんだ…もっと聞かせて!」
「うふふ…そうね…」






【俺得バトルロワイアル6th  THE END】






050:幾つもの苦しみの先に―――― 目次順 THE END

050:幾つもの苦しみの先に―――― 稲垣葉月 THE END

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最終更新:2012年02月25日 20:19
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