51:永遠を生む透明な瞬間(とき)
私は帰って来た。あの
殺し合いから。
でも、もうレックスはいない。
家に帰っても、私を出迎えてくれるあの黒い狼は、もういないんだ。
レックスは失踪扱いになった。
一応警察の人は捜索してくれているけど、どこを捜したって見付かる筈無いよ。
レックスの死体は異世界のあの会場に放られたままなんだから。
友人や仕事先の人が色々心配してくれるけど、正直、そっとしておいて欲しい。
仕事は続けている。
普通の犬や狼、妖犬、魔犬、神犬、妖狼、魔狼、神狼、色々な犬科動物と行為をした。
確かに気持ち良かったけど、満たされる事は無かった。
◆
ある日、私は身体に異変を感じた。
妙に気持ち悪かったり、熱っぽかったりする。
風邪かと思ったけど、ある可能性が私の脳裏に浮かぶ。
その可能性を信じた私は、産婦人科へ向かった。
「……稲垣さん」
「はい」
産婦人科の先生が、言った。
「おめでとうございます、妊娠されていますよ」
「……えっ、本当ですか」
いつ頃に妊娠したのか聞いた。
その時期を聞いた私は驚く。
私が殺し合いの最中で、レックスと交わったあの日――――。
私は、レックスの子供を身籠ったのだ。
愛した人、いや、狼との、愛の結晶を。
二人で語った夢が、叶った。
――――悲しい。
――――とても喜ばしい、嬉しい事なのに。
「稲垣さん……?」
――――どうして。
――――どうしてレックスはいないの。
涙が止まらない。
先生や看護師さんはきっと嬉し涙だと思っただろう。
確かに嬉しかった、でも、それ以上に、私は悲しかった。
一番喜んでくれるはずだった、レックスは、もういないんだから。
――――レックス。
――――貴方と私の子供が出来たよ。
――――レックス。
――――喜んで、くれているかな。
――――レックス――――。
――――貴方にもう一度、会いたい――――。
◆
「…ねぇ、お母さん」
「ん?」
「僕のお父さんってどんな人だったの?」
「…知りたい?」
「うん…僕と同じ、狼だったって事ぐらいしか知らないし」
「…貴方のお父さんは…ちょっとエッチだったけど、優しくて、強くて、お母さんを大切に、愛してくれた。
……私には勿体ないぐらいの、良い男―――いや、狼だったんだよ」
「そうなんだ…もっと聞かせて!」
「うふふ…そうね…」
【俺得バトルロワイアル6th THE END】
最終更新:2012年02月25日 20:19