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恐れを知らない戦士のように

ここに送られてきてどのくらいが経ったのだろうか。
半壊した建物の中、瓦礫の上に、俺笛吹和義はゲーム開始から一歩も動かずに立ち尽くしていた。
足元にあるデイパックに目もくれず、虚無の眼差しで何もない前方を見つめる。

転送される直前、一面が真っ白い空間で知らされた理不尽。

黒い、まるでネズミのオモチャのような容姿をした悪魔が、俺にこう告げた。

――貴方はジョーカーに選抜されました。
――死にたくなければ三日間、一般人(ノーマル)の皆さんを欺き生き延びて下さい。

思い出すだけで吐き気が込み上げてくる。
こんなに苦しいのは、兄を失ってしまったあの日以来だ。
あの時は、どうしようもなく塞ぎこんでいた俺に手を差し伸べてくれた人が、藤崎祐助という男が居たから。
だから、あの男と共に。あの男のように誰かを助けたいと思える今の俺に這い上がることが出来た。
困っている誰かを救うことで、必要とされる俺を手に入れることが出来た。
しかし今の俺は。これからの俺は、今までのように誰かを救うことが出来るのだろうか。誰かに必要とされる俺のままで居られるのだろうか。

最初に集められたあの空間の中に見付けた、友人らの姿。
彼らを助ける為に、俺は俺を殺さなければならない。
あの日あの男に助けられた、この命を――。

堕ちて、救われ、また堕ちた。

「あの」

絶望の堂々巡りに囚われる中、俺の意識を現実に引き戻したのはえらく小柄な少女だった。
黒いセーラー服に赤いスカーフ、黒のツインテールにパッツンの前髪。触り心地の良さそうな肌に大きめの胸。
こんな非日常に巻き込まれていなければ、ただ少女が醸し出す“萌”に浸れたというのに。

「あの、私…小森ひなた……って、い、…言います。あなたにお願いがあって、声をかけました…」

か細い声を震わせ、小森さんは俺に洋剣を差し出す。
気弱そうなたれ目が大粒の涙を流しながら、俺の双眼を真っ直ぐと射抜いた。

「私のこと、殺して下さい」

□     ■     □

結論から言えば、小森さんの不穏な申し出を、俺は即座に断った。
数秒前までは自決をも視野に入れる程に弱っていた俺だが、涙を溢れさせながらも死を選ぼうとする彼女があまりにも哀れで仕方がなかったから。
あまりにも救われない彼女への、ただの同情だった。
…俺の姿もあんなに無様だったのだろうか。

考えに耽っていると、“俺と同じ役割を与えられた”小森が口を開いた。

「……死にたいです」

隣で膝を抱き抱え、泣き腫らされた瞳でこちらを見る。
聞けば、ここには彼女のクラスメートや四条瑞季という意中の相手も連れて来られていて、彼らの生死を懸念しての言動らしい。
俺は横目に彼女と視線を合わせると、偶然支給品の中に紛れ込んでいた音声合成ソフトの入ったパソコンとにらめっこを始める。

『死にたくないが、自分が死ななきゃ助からない仲間が居るんじゃないのか?本当に心から死にたいのか?』
「……」

これは…小森さんだけへの言葉ではない。

『違う。…本当は、本当は生きたい。死にたくない』

これも。

『大事な人たちのことを守りたい。その為なら、確かに死ねる』

これも。

『でもそれ以上に、その大切な仲間とこれからも共に過ごしたい。違うか?…俺はそうだ』

全部俺と、恐らく彼女の本心である。
無機質な声だけれど、俺の嘘偽りの無い気持ちのこもった言葉たち。
同じ場所に立たされた者同士だから分かる、伝わる想い。

「…そっか、あなたも…」

全てを悟った小森さんの嗚咽が横から聞こえてくる。

「うっ、ひっく……ぅぅ…死にたくな…、わだじ、わたじも、本当は、死にたくない…!
生きたい…!四条ぐんど、まだ一緒に居だい……っ!
でも!でも、…だっで、わだしが生ぎてだら、四条くんが…!ねえ、どうすればいいの!?わたし…私、どうすれば…!!」

俺の指は一瞬キーボードの上を彷徨って、けれど力強く、彼女の問いに答えを与えた。


『生きよう』

ほんの僅かな可能性を信じて、共に戦おうという答えを。

【深夜/B-3、半壊した韮沢ジオセクション内】
【笛吹和義@SKET DANCE 】
[状態]健康
[装備]スイッチのパソコン@SKET DANCE
[道具]基本支給品、アイテム×1~3
[思考] スタンス:ジョーカー
1:生きる。
2:殺しはしたくない。
3:ボッスン、ヒメコ、椿を助けたい。

【小森ひなた@オリジナル
[状態]健康
[装備]無し
[道具]基本支給品、アイテム×0~1、洋剣@ONE PIECE
[思考] スタンス:ジョーカー
1:生きたい。
2:四条くんを助けたい。

004:奇跡なんて、あるわけない 時系列順 006:なにかもちがってますか
GAME START 笛吹和義
GAME START 小森ひなた

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最終更新:2012年09月21日 19:58
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