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First broadcasting

四人の命が永久に喪われた。
ある者は弱き少女に強さを与え。
ある者は殺し合いの末に討ち死にし。
ある者は希望が受け継がれたことを確認して満足し。
そしてまたある者は、誰も憎むことなく鮮血の中で人生を終えた。
残された命は後10。
様々な想いが交錯しても尚、バトルロワイアル―――"争奪戦"は無情に進んでいく。
ひとつの区切りを経て、或いはこれを真のスタートとして。




『―――――やあ、参加者の諸君。ご機嫌は如何かな?』




◇ ◇



――――実に四時間振り、と言ったところだね。
もう自己紹介の必要はないだろうが、一応もう一度名乗っておくよ。
私は此度の『争奪戦』の進行役にして時間研究局の総取締役、白宮雨雲だ。
詐欺のような形で巻き込んでしまったことに、怒っている人もいるだろう。
私に個人的な殺意を寄せている人間だって、きっと一人や二人じゃないと推察する。
済まない。出来ればもう少しスマートなやり方をしたかったんだけどね、まさか好き好んで命のやり取りをしてやろうなんて奇特な輩がそうそういるとも思えない。
連続殺人鬼ばかり集めでもすればいいのかもしれないが、――残念だけどそれじゃあ意味がない。


………少し、喋り過ぎてしまったね。
ではそろそろ、お待ちかねの放送を始めようかな。
この放送で君達に私が提供できる情報は、『死者の名前』と『侵入禁止区域』のことのみだ。
少ないようだが、知らなければ致命的な情報だよ。特に後者は、ね。

そしてもう一つ前置きしておく。
まさかまだこの争奪戦がドッキリ企画だとか、そんなことを思っている人はいないと思うが。
もしまだそんな儚い望みを懐いている人が居たなら、よく聞いておけ。
"この放送では一切虚偽の情報は流れない"。故に、全て現実だ。
そこのところを肝に銘じて、これから始める放送を――第一回放送を、聞くといい。


では、始めるよ。
まずはこの四時間の内に命を落としてしまった『脱落者』から。

古賀雅。
古咲礼二。
狐神桐雄。
八神美保。

以上の面々が、残念ながら争奪戦の敗北者となってしまった。
いやはや―――私個人としても、こんなに早く脱落するとは思っていなかった名前があるくらいだ。
面白い展開を見せている。
私の予測していた以上に、素晴らしい。
是非ともこのまま頑張ってくれ。期待しているよ、君達には。

次は侵入禁止区域だが、これは手短に済ませるよ。
A-1、C-3の2つのエリアを、禁止区域とする。
既に分かっているとは思うが、このエリアが正式に禁止区域になってから侵入すれば、テンカウントの猶予の後に君達の首輪がドカン――――だ。
能力者の諸君でもその爆発には耐えられないぞ。そういう風に出来ているから。


これの特性を利用して強敵を殺した参加者も中にはいる。いやはや、見事な手腕と言う他ないね。


では、言うことも終わったし、これにて第一回放送を終わろうと思う。
君達に言っておくことは、もうないかな。
是非存分に戦って、足掻いて、陥れて―――自分の過去を、清算してくれ。
私達はその願いを後押しすることしか出来ないが、その手段を提供するくらいは出来るからね。


それじゃあ、また会おう。
次に私の声を聞く時まで、これを聞いている君が生き延びていることを祈るよ。
――――じゃあね。


◆ ◆


闇に覆われた個室で、振る舞いだけは優雅に紅茶を啜る男、白宮雨雲。
その表情は清々しささえ感じられるもので、自分の計画が滞りなく進んでいることに安堵しているようだ。
あれほど騒がしかった部下たちの声はしない。
電灯さえ点けずに、暗闇の中で彼は一人思いを馳せる。

「ああ、待っていてくれ」

手元の、参加者の現在位置が表示されたPDAを見て、彼は心の底からの慈愛の微笑みを見せた。
もっともそれを見ている者は誰もいなかった――彼だけの空間だ。
只でさえ部下から異様と評される雨雲がこんな姿を部下に見られたなら、いよいよ反乱が起きる。
そんなことになったとしても制圧して見せるだけの化学力を雨雲は保有しているが、そもそも今の彼の頭の中にそんな些事の入り込む余地など無いようだった。

しばし無事にバトルロワイアルが進行すればもたらされるだろう『結果』に酔っていた雨雲だが、やがてPDAを舐めるように見ていき、ゲームの進行状況を見て独り言を漏らす。
神様にでもなったかのように、彼は哀れな駒達の行く末を眺める。


「樋之上壊はやはり優勝候補筆頭か、相方も殺し合いを楽しんでくれているようだ」


樋之上壊と松下健吾、『サーカスの殺人鬼』の二人は、それぞれ一人ずつのキルスコアを収めている。
対主催の大きな戦力となっただろう狐神桐雄を撃破し、更にその力を強めた。
葵崎蜜柑との相性は予想していた通り最悪だが、未だ未知数の樋之上に期待するとしよう。


「見上壮一は自らの罪を乗り越え、神無月恭一は恋人を守るために殺し合いを破壊せんとする」


あまりに重い罪の十字架に潰されかけていた偽物のヒーローと、たった一人の愛する者さえ、それが絶対の運命だったとはいえ守ることのできなかった少年。
この二人は既に歩き出し、今は別れているがもうその思想が揺らぐことはないだろう。
見上は松下を破れるかが運命の分かれ目だろうが、神無月はこれから対主催のリーダーとなれるだけの資質を備えている。厄介な反乱分子となってしまった。


「葵崎蜜柑は一人を殺め、無意識ながらも柏原修一は弔い合戦を行う」


運命に翻弄され続けた一人の母親を殺害した詐欺師・葵崎蜜柑。
その性質上、殺し合いにおいてならばバトルロワイアルの優勝候補だ。
樋之上壊の攻撃さえ通らない『嘘』は初見ではまず避けられない、とんでもない力である。
対してそれに真っ向から挑まんとする柏原修一も、黙って殺されるような弱者でないことは明白。
殺し屋の経験とパターンが、どれほど彼女の嘘に通用するかが胆だろう。


「夜桜方程は強さを得て、椋梨水花は彼の生徒として共に行く」


弱かった、本来ならば一番最初に死ぬような役回りの青年は、今は亡き警官の理想を受け継いで戦うことを決めて、手始めにたった一人の生徒を守る。
その生徒もまた、幼くして過酷な運命を背負わされて尚、生きようと必死だ。
バトルロワイアルが、彼らを成長させたと言っても何も間違えてはいないだろう。


「白宮つぐみは弱さを捨て、蒼神天良は自らの目的のために乱入して、彼女を守ろうとする」


一度の惨死を経て壊れかけていた心を発起させて、弱かった少女は立ち上がった。
最初の死者となった古賀雅の存在が彼女に強さをもたらしたことは、もう言うまでもないだろう。
正規の参加者ではない蒼神天良の目的も雨雲は把握している。だが、彼を処分するつもりはない。
ひとえに、彼では樋之上壊を超えられないという確信があるからだ。
それだけ分かっていれば、所詮彼は敵ではない。
まあ、万が一もあるかもしれないが―――処分するつもりは、ない。


「まぁいいさ。今のところは、予定通りだ。
全てが私の手の内で踊っている――――争奪戦は、揺るがない」


次の放送は、きっとすぐだ。
白宮雨雲は誰もいない部屋で一人笑う。

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最終更新:2012年06月30日 22:06
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