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疫病神

聳え立つ一本の大木に、その少年は凭れ掛かっていた。
遠目からでも分かるだろう最大の特徴は、まずその逆立ったウニのようなツンツン頭だろう。
精悍な顔立ちに白い学生服を着た今時の学生、しかしその姿には明らかな異常がある。
精々高校生くらいだろう外見の中で、その両目だけが爛々と――邪悪の光を纏っているのだ。
形容するならそれは絶望。
ありとあらゆる絶望に晒されでもしない限り、何をどうやったらこの歳でこんな瞳になるのか。
だが、彼の人生は他人の想像を遥かに超えて『不幸』すぎた。
神様に嫌われているとしか思えないような、そんな人生を過ごす内――彼は変わった。
『疫病神』の渾名に相応しい存在として、不幸を振り撒く悪人となってしまった。
ようやく掴み取れるかと思った希望は結局彼自身の手でぶち壊し、自らの鏡写しのような超能力者との最終決戦さえ、直前で彼の不幸が微笑み、こうして殺し合いに参加させられている。


「はは」


彼は乾いた笑いをあげる。
いつから自分の人生は本格的に狂い始めたのか。どうしてこんなことになってしまうのか。
誕生日の日に両親を一度に失ったときからか、それともあのシスター少女をこの手で壊した時からか。
はたまた、生まれてすぐに産声をあげた瞬間から、自分の人生は終わっていたのか。
だとすれば、たまったものではないと思う。
こんな人生なら、幾ら何でも生まれてこない方がよっぽど良かったというものである。

「あのビリビリ中学生に魔術師も居やがんのかよ。面倒くせえなあ」

本来の歴史を生きる彼ならば、こんな台詞を吐くことはまずなかっただろう。
仲間の存在を心強いと安堵するか、もしくはその身を案じて彼らの救出に尽力するか。
どちらにしろ彼らとの合流を目指した筈だ。
どう間違ったとしても、こんな風に――世界の全てを不幸に突き落とそうとするような笑顔を見せたりなんかしない。
いや、この彼にとってはそれで正しいのだ。
希望に裏切られ絶望のどん底に突き落とされ、その過程で取り返しがつかないほどに歪み果て。
自分を取り戻せるかもしれなかった決戦さえ、満足にさせて貰えなかった不幸な少年には、他人のために正義感を燃やすなんて真似できる理由もない。


「ま、いいだろ。ぶっ殺すのも楽そうだし、大した敵じゃねえや。かはは」

片方は自分に深い恨みを抱いている筈だし、もう片方も良い印象は持たれていないだろう。
そもそも彼ら自身も殺し合いに乗ってくるだろうから、いずれ戦う羽目にはなる。
どの道戦う相手ならば、殺すだけ。それ以外の選択肢などどこにも存在しない。

「さぁて、そいじゃあ一丁、やってみますかバトルロワイアル」

邪悪を押し固めたような笑顔を浮かべて、彼はまだ見ぬ参加者を目指して歩き始める。
彼の名前は上条当麻という。
右手にどんな異能力だって打ち消す不可思議の力を宿す、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の少年。
彼が殺すのは幻想――人々が抱く希望を完膚なきまでに打ち砕き、不幸のどん底に突き落とす。
神の奇跡さえ打ち消す異能殺しの右手は、例外なく彼の幸運を食い殺し、不幸のみを与え続けた。
彼が通り掛かれば偶然発生していた能力者同士のいざこざによってビルが崩れ、家族で楽しいパーティーをしていれば暴走運転のトラックが突っ込んでくる。
世界に嫌われた少年、『疫病神』と呼ばれた少年。
誰のヒーローにもならずに、ただ底無しの絶望のみを振り撒き歩く、最悪の少年がここに君臨した。

(そして――てめえとも決着をつけなきゃな、最強)

彼には、唯一強い信念を持って打ち倒さねばならないと思える宿敵がいる。
白い髪に紅い瞳の怪物、学園都市の頂点に君臨する最強の超能力者(バケモノ)。
まるで『上条当麻』を鏡に写したような存在。
上条当麻に最も近い存在でありながら、だからこそ最も忌み嫌って止まない存在。
奴を撃破しない限りは――――上条当麻の戦いは、いつまでも終わることがないのだ。
アンチヒーローは往く。
より多くの人々の嘆きと絶望を生み出すために、バトルロワイアルを馳せる。



【一日目/深夜/H-4・森】


【上条当麻@上条(悪)「この右手で、殺してやるだけさ」】
[状態]健康
[装備]桐生萌郁の銃@Steins;Gate
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・行動]
0:生き残る。
1:そのために絶望を生み出して、不幸を撒き散らす
※一方通行との決戦前からの参加です

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最終更新:2012年08月19日 16:06
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