昔、母親に「危険なところに近づくな」と耳にたこが出来るくらい言われたことがある。
しかし、そんな親の言うことを無視し、私はよく危険なところへ遊びに行った。
結果としては、いろいろヒドい目に遭ったのだが。
其の一、そこらへんにたむろしていた不良にボコボコにされた。
其のニ、足場が全くないところに足を踏み入れ、落ちる。
其の三、幽霊らしきものに出会ってしまう。
其の四、怖い。
其の五、帰ると親に怒られる。
こんな目に遭っても彼女はこりずに危険なところへ遊びに行き続けた。
普通の人ならば「学習能力が無い馬鹿」と言われるのだろう―――実際親がそう言ってるのだが。
だが、彼女には学習能力が欠如してるわけではない。
じゃあ、なぜそんなところへ行くのか。
答えは至ってシンプル
「だって不良にボコボコにされると気持ち良いし、それになにより怖いところに行くと興奮するの!」
彼女はマゾヒストである。
其の一、不良にボコボコにされると性的興奮を感じる。
其のニ、落ちた衝撃に性的興奮を感じる。
其の三、怖さに性的興奮を感じる
其の四、放置プレイだと思い性的興奮を感じる。なぜそう感じるかは不明
其の五、叱られる、罵られることに性的興奮を感じる。
繰り返すが彼女は重度のマゾヒストである。
□□□
時刻は夜、あたりは真っ暗であまり見えない状態。
そんな真っ暗闇の中で、草薙司は一人―――興奮していた。
「あうう……どこかで監視されてるんだよね……」
マゾヒストの中には、状況を考えただけで快感を得られる人もいる。
彼女もそれに該当し、誰かに監視されてるという状況を考えて興奮していた。
「あ、いやダメダメ! これは
殺し合いなんだから興奮しちゃダメ……はぅ……」
しかし、押さえ込もうにも勝手に想像してしまい、結局興奮してしまう草薙司であった。
「あ……えーと、ここは展望台だったかな……」
現在草薙司がいる場所はG-1の展望台の入り口前である。
草薙はまず、どこかへ隠れられる場所が欲しかった。
近くにあるコンビニに行こうとしたのだが、そこには別の人間がいたため入らず。
家は……女の勘が「いくな」と指示したためパス。
行くだけ行ってみたが部屋の中に、赤い光が宙を漂っていたので逃げた。
もう隠れられる場所といってら、すでに展望台しか残されていなかったわけだ。
(ちなみに森は誰に会うか分からないので除外、公園は論外だった)
「えーっと、ドアドア……あった」
意を決してドアを開けてみる。
中といえば螺旋階段があるだけで、他にはあるのといえばコンクリートの壁くらいだった。
てっきり受付とかそういうものがあるものだと信じていたので、司は少々ビックリしていた。
「ここ、もしかして一般の人立ち入り禁止かな……階段いかないし」
実際にここは一般の人は立ち入り禁止の建物だった。
しかしどのような名目で、用途でこの建物を使っていたことを知るに人間は一人もいない。
あくまでも、ここの名前は展望台である。
「うわぁ……これ足踏み外したら終わりじゃない。でも落ちたら……はぅ」
この階段には落下防止の柵とかそういう類のものがなかった。
なので、彼女が言った通り落ちたら一巻の終わりである。
といっても高さがそこまでなければ死にはしないが。
ここから落ちたら痛み、というか快感はどうなるのかを司が考えたのは言うまでもない。
□□□
そして屋上、展望スペース。
そこには一人、性別は分からないが人がいた。
「誰……?」
「この殺し合いは楽しまなくては損だと思わないかい?」
「へ?」
唐突の問い。
沈黙、しばらく時がたったあとようやくその問いの答えることができた。
「いや、殺し合いは楽しむものじゃないと思うけど……」
「なぜ?」
「だって普通の人は殺し合いなんて楽しめな……
言い切るまえにその人物が振り向いた。
……い?」
「いいや、この非日常的体験は楽しむためにある。それしか存在しない!」
振り向いた人物の顔は真っ暗だったせいかよく見えない。
だが、一箇所だけははっきりと見えていた。
恐らく目の部分、右目のほう―――そこは真っ赤に塗りつぶされて光っていた。
赤っぽいのではなく、真っ赤。
その一箇所だけが鮮明に。
そんなものを見てしまって、私は
「………………………………きゅう」
気絶してしまった。
□□□
「……なぜ気絶した?」
「だって怖かったんですもん」
「どこが?」
「その顔ですよぅ……」
「この顔か? いつの間にかこうなっていた。まぁ慣れろ」
「いえ、無理です慣れません」
慣れろとはかなり無理な相談である。
と、聞かなければならないことを思い出したのでそれをぶつける。
「なんで、私の上に立っているんですか?」
「ん? 悪かったな。台代わりに使っていた。今降り……」
私の上で立っていた人物が降りようとしたとき―――
「いえ、降りなくていいです。むしろこのままでいてください」
反射的に私はそう答えていた。
「? 分かった」
怪訝な顔をしつつも、もう一度立ち直す。
「できればもうちょっと強く踏んでくれると良いかな~……って」
「こうか?」
「あうう! もっと強くお願いしますぅ!」
「……こうか?」
「ちょ、丁度いいです! これをキープしてくださいぃ!」
「疲れるんだが」
さっきまでの雰囲気はどこへやら。
「というか、何で私を台にしてるんですか? キープできてませんよ」
「こっから見てるんだよ。台あったほうが見やすいしな。 悪い」
「真っ暗なのに見えるんですか? ああ、凄く気持ちいいれすぅ……」
「ああ、見える。 ところでMか貴様?」
「へぇ、それは凄いですね。 はい、そうですよ。ところで罵ってくれませんか?」
「……この雌ブタが」
「もっと私の心を抉るようなものを」
「気持ち悪いんだよ。なんで生きてるんだ? 早く死ね。何もできない能無し。ゴミクズ」
「はぅぅ……もうひょっといじめてくれませんかぁ?」
「これで我慢しろ。名乗ってなかったな、豊田弘一だ。お前は?」
と言いつつ靴の踵の部分をグリグリと背中に押し付ける。
「あひぃぃぃ……くひゃなぎ司れすぅ……」
「そうか、草薙か。よろしくな」
「よろひくおねがいしまぁぁす……」
「ちなみに、デイバッグは一応確認しておいたが……なぜ、赤ロウソクと鞭なんだ?」
「!!」
赤ロウソクと鞭という言葉に反応する草薙。
「そ、そのロウソクの蝋を私にたらしてください! 服は脱ぎますから!」
「いや、なぜ「あと、鞭で私を打ってください!」……お前はMだったな」
その態度にやや呆れつつも、豊田は草薙から降りてデイバッグからロウソクと鞭を取り出す
当の草薙は上半身の服を脱ぎ、下着の状態になっていた。
付属としてついていたマッチを取り出し、ロウソクに火をつける。
「そ、その蝋を! 私の体に!」
もうすでにスタンバイはできてるらしい。
徐々にロウソクの向きを倒していき――――蝋が草薙の体に垂れた。
「あっつうううううういぃぃぃ!!!」
蝋が体に触れた瞬間に、大きな嬌声を上げ体がビクンと跳ね上がる。
その反応に少し驚く豊田。
「そんな反応するのか。わけが分からん」
「え? だって気持ち良いじゃないですか。変わります?」
「遠慮する」
その後、その行為はロウソクの蝋が無くなるまで続いていた。
「そういえば、殺し合いは楽しむものとか言ってましたけど、あれは私を怖がらせるため……というかここに来た人を怖がらせる嘘だったんですよね?」
「いや、何を勘違いしてるんだ? 心からの本心だが?」
「え……」
□□□
【G-1/展望台/一日目・夜】
【草薙 司】
[状態]健康、興奮状態
[装備]なし
[道具]支給品一式、鞭、
[思考・行動]
基本:生き残る
1:気持ちいいよぉぉぉぉぉ!!!
2:嘘じゃない……?
【豊田 弘一】
[状態]健康、
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品×1
[思考・行動]
基本:楽しみつつ生き残る
1:この女性の要望をかなえる
2:さて、どうするか……
3:それで……次は鞭か?
【参加者情報】
草薙司
生粋のマゾヒストであり、高校二年生。
危ないところへ行き、危ない目にあうのが趣味。
友達の前では過剰な反応はしないように心がけている。
豊田弘一
正体不明だがわりとノリはいい男性。
素顔が見えず、右目の部分だけ赤く光っている。本人曰く「いつの間にかなっていた」
殺し合いは楽しむものだと思っている。
最終更新:2012年09月10日 17:36