復讐に協力することって良いことですかね?

C-2に位置する墓場。
その墓にある墓石の上で座る人間は、墓に備えられてあったリンゴを掴み、一口、口にした。
そのリンゴはどうやら腐ってたらしく、人間は渋い顔を……することなく平気で食べる。
人間はどうやら腐った食べ物が好物らしく、何個も食べても腹を下さないという奇妙な体質の持ち主だった。

「かーっ! 旨いねえ! さすが腐ったリンゴだ!」

ケヒヒ、と笑いながら腐ったリンゴをどんどん、食べ進めていく。
ついには芯だけになってしまった。
そしてそのリンゴの芯を元々備えられてた場所に戻す。

「さぁて、あっしも動きますか、っと」

被っていた帽子を深深と被りなおし、墓石から降りて、歩き出そうとする。
すると、前方に女性の姿。
こちらに警戒心をむき出しに、訝しげな顔をしながら、話しかけてきた。

「誰……? アナタ……?」

話しかけられた人間は、顔をしかめながら、頭を抱える。

「あちゃー! まだ、人に会うつもりはなかったのによー!」
「いや、あなたは誰……? 殺し合いに乗ってるの?」
「どうすっかなー。あっしはまだ殺したくないんだけどなぁー。殺すかぁー」
「……!!」

話しかけてきた女性は、その言葉を聞いて、すぐに身構える。
すると、その言葉を言った人間はその身構えた女性を見て大笑いをした。
恐らく、今の女性には、頭の上にハテナマークが出ていることだろう。

「ケヒヒヒヒ! そんなに身構えなくてもいいって! あっしは殺し合いはしないからよ!」
「そ、そう……」

女性はいまだに警戒心を解かないが、身構えるのをやめる。
そしてその人間も、大笑いするのをやめて、真剣な顔になる。

「話を戻すわ。あなたは誰? 殺し合いには乗っているの?」
「前者は人間ということだけ。後者はさっきも言った通り、乗ってはいない。ケヒッ、アンタはどうよ?」
「性別は?」
「見て分かるだろ?」
「男性?」

人間は、ズコッ、とこけるフリをする。
そのあと、帽子を深深と被りなおして、溜息をついた。

「どこをどう見て、そうなるのか説明してほしいんだけど……」
「どこからどう見ても、男性」
「失礼すぎるよ! あっしはお前さんよりは胸はあるぞ!」
「失礼なのはアナタもよ。胸もないのによくそんなことが言えるわね」

どうやら、この一言が心に刺さったのか自称女性は深くうなだれて、その場に蹲る。
また、帽子を深深と被りなおす。

「あっしは女性なのにぃ……れっきとした女性なのにぃ……」
「そんなに言うなら証拠は?」

そう女性が言うと、深くうなだれた自称女性が待ってましたと言わんばかりに、立ち上がる。

「キタキタ! あるよ、簡単に見せられるものがね!」

そう言うと、自称女性は立ち上がり、何の躊躇いもなく、ジーパンを下ろす。
そこには、男特有のソレ――――というのが全く見当たらない、女性の体だった。
女性は恥ずかしがる様子もなく、また帽子を深深と被りなおす。

「言っただろ? あっしは女性だって」
「……認めざるをえないわね」

そして、自称―――ではなく、女性は下げたジーパンを上げる。

「さて、言い忘れてたけどあっしの名前は飛騨真巳だ。ヨロシクな 稲芽御咲さんよ」
「……!!」

その場を気まずい沈黙が支配する。
当の沈黙を作り出した張本人は、しまったという顔で口を抑え、その後頭を抱えた。


□□□


「さて、なんで私の名前を知っているか教えてもらおうかしら?」
「そりゃぁ……名簿に書いてあるだろ?」
「顔は載ってないわ」
「あっしはアンタに会ったことがあるんですよ」
「私は知らないわ。ストーカー?」
「んなわけ無かろうが! あっしは百合でもレズでもない!」

語気は荒いが、怒っている様子は微塵も感じられない、あくまでも冷静な態度。
一方の女性も冷静な態度だが、少しイライラしていた。

「なんで私の名前を知っているの?」
「雑誌で見かけたんでさぁ。もしくはニュースとか、新聞とかで見た」
「載ってない、出てない、出たことも無い!」
「おーっとっとっと、そんな怒りなさんな。少し落ち着こうぜ」

問い詰められている飛騨は、けろりとした表情で、その場に座り込んだ。
胡坐をかき、手を差し出す―――どうやらそこの地面に座れ、ということらしい。
稲芽は最初は座ることを拒否したが、飛騨が動く気がないと見ると、渋々地面に正座で座った。

「さて、あっしがアンタの名前を知っているということを知りたければ、まずはアンタが殺したい人間を先に言え」
「どういうことよ?」
「交換条件と言えば分かるかな? あっしだけ教えたらフェアじゃないからね」

胡坐をかき、頬杖をつきながら飛騨は意地悪そうに、ニヤリと笑った。

「分かったわよ。私が殺したい人間と殺したい理由を教えてあげる」

溜息をつきながら仕方ない、というような表情で、稲芽は話し始めた。
その話を飛騨は真剣な顔をして聞きながら、デイバッグにあった鉛筆とメモ帳を取り出して、話の要点を書いていった。


□□□


殺したい人間は、多良見進。高校二年生で男子、どこかで見たような顔をしているわ。
理由は私の大切な彼氏を殺したから、よりにもよって私の目の前でね。

その日私はその大切な彼氏、名前は――――って言うんだけれど。まぁ、その彼氏とデートをしていたわ。
私とその彼氏は、まず商店街に行ったわ。服を買いにね。
その後、遊園地に行って楽しんだわ。
そして、最後に行った彼氏の家―――その部屋の中に多良見進は居た。座ってた。

「あ、どうも。楽しんでました? 僕、多良見進って言います。いやーデートは楽しかったでしょうね~」

多良見進はそんな言葉をかけてきたわ。私がなにか喋ろうとしたとき―――
いつの間にか彼氏が地面にうつ伏せに倒れていたわ。しかも、血だまりの中にいた。
見ると下半身と上半身が切り離されていて、そこから血が溢れていた。
私は恐怖で動けなかった。

「これもアナタの身のためですから、ありがたく思ってね~。じゃ」

そう言うと多良見進は私の目の前から姿を消したわ。
それで、私はその出来事にショックを起こしたのか、そのまま気絶したらしいわ。
そして目を覚ますと、彼氏の部屋だった。
横を見たら、そこには昨日存在したはずの彼氏の死体がなかったわ。血だまりごとね。


□□□


「なるほど、長ったらしくてつまらない話を要約すると

 ①:その彼氏を多良見進という人間に殺された。
 ②:その彼氏を殺されたから多良見進という人間を殺したい。
 ③:彼氏を殺された翌日、起きると彼氏の死体が血だまりごと消え失せていた。

 こんなもんか。いやー、途中から聞き流したわ。これ真面目に聞く必要ねぇな。要点だけ聞けば済む話だし」

溜息をつきながら、メモ帳と鉛筆をデイバッグにしまい、立ち上がった。
当のそんな話をした本人は、その言葉に少しあっけに取られていたのだが。

「いやー、読んでる人もそう思ってるでしょうね。読みづらいって」
「……いいから、私も話をしたからアナタも話をしなさいよ」
「おー、そうでしたねぃ。あっしはアンタのことを調べていた。これでいいかな?」
「……」

全くよくないと稲芽は心の中で思った。
なぜ私を調べていたのか、調べられるようなことはした覚えがないのだが。
恐らく、もう一度問いただしたところで、この女性は答える気は全くないだろう。

「おし! あっしも協力いたしましょう!」
「え?」
「いや、協力すると言ってるんですよ!」

あまりの超展開ぶりに、思考がついいていけなかった。
協力? いきなり? え?

「え? 協力してくれるの?」
「もちろん協力するよ! その多良見って奴にも会いたいしね!」

どうやら、多良見進という人殺しに興味を示したらしい。
非常にありがたかったので、その申し出をうけることにした。

「あ、そう。よろしく」
「よろしくな!」

そう言うと、飛騨は稲芽に向かって手を突き出してきた。

一つだけ分かった。
この女の口調はころころ変わるし、掴みどころが無いということが。

【C-2/墓場/一日目・夜】

【飛騨 真巳】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品×1
[思考・行動]
基本:生き残る
1:まずは稲芽に協力。
2:多良見進というのに会ってみたい。
3:多良見に会ったら……?

【稲芽 御咲】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品×1
[思考・行動]
基本:多良見進を殺す
1:多良見進を探す。
2:飛騨を連れて行く。

【参加者特徴】

飛騨真巳
帽子を深深と被りなおすのが癖。
詳しい情報は不明の高校3年生女子。

稲芽御咲
不幸な高校3年生。女子である。
彼女が言うには、彼氏を多良見進に殺されたと言う。
警戒心だけは人一倍あるが、すぐに言いくるめられる。




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最終更新:2012年09月10日 17:30
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