4話 仄暗い水の底へ
港には船は一艘も停泊していない。
「船で逃げられる筈無いよなぁ」
獅子獣人の男、武田周治は溜息をつく。
もっともあった所で地図の外に出れば首輪が作動するだけだが。
岸壁から海を見下ろしてみる。
どれだけの深さがあるのだろうか、落ちれば近くに上がれそうな場所は無い。
助けてくれる人もいないだろう。
「おっかね……」
いつ襲われるか分からないのだしどこかにさっさと隠れようと、周治がその場を去ろうとした時。
ダァン！！
銃声。
周治は自分の身体に衝撃が走るのを感じた。
喉の奥から熱い、鉄錆の味のする液体がこみ上げてくる。
そのまま、周治の身体は海へと落下した。
どんどん周治は海の底へ沈んでいくが、もう彼には関係の無い事だった。
その時には彼の意識はもう消えていたのだから。
「こんな時にぼさっとつっ立っているのはいかんよ……」
スナイドル銃を携え、獅子獣人の残したデイパックに近付くのは、
銀髪犬耳尻尾の女性、マリア・ベーラヤ。
デイパックを漁り、中からRGD-33柄付手榴弾3個を手に入れた。
「手榴弾か……当たりだねぇ。よっしゃよっしゃ」
良好な戦利品に気を良くしたマリアは次の獲物を捜し始める。
【武田周治 死亡】
【残り48人】
【E-1/港岸壁/早朝】
【マリア・ベーラヤ】
［状態］健康
［装備］スナイドル銃（0/1）
［持物］基本支給品一式、.577スナイドル弾（10）、RGD-33柄付手榴弾（3）
［思考］
基本：優勝狙い。
《人物紹介》
【武田周治】 読み：たけだ・しゅうじ
獅子獣人の同人誌作家。27歳。
主にケモホモ系の同人誌で人気がある。ペンネームは「TAKE-J」。
ある年の夏の同人誌即売会で年齢を偽って同人誌を買いトイレで使用していた中学生の狐少年を襲ってしまった。
【マリア・ベーラヤ】
フルネームはマリア・アルノーリドヴナ・ベーラヤ。ロシア風国家から日本風国家に観光に来た。
ハーフ犬獣人で銀髪犬耳尻尾。食べ歩いたり同人誌を買い漁ったりしている。
最終更新：2013年02月26日 21:39
