5話 人は自分が考える程不幸では無いが幸せでも無い
座礁した遊覧船があった。
中には船員や客の姿は無い、救助されたのかどうかは知る術は無く、
今この船の中にいる者達にとってそれはかほども重要では無い。
「どうしてこんな事になったんだろうか」
「そりゃ私も聞きたいですよ……」
金髪赤竜人の女性、竜錬アイと、紫髪の看護師姿の女性、南遊里が食堂で会話する。
二人は元からの知り合い同士では無い、つい数分前に初対面したばかりだが、打ち解けていた。
「これからどうします? 竜錬さん」
「友達の狐閉って奴がいんだけど、そいつ機械に滅法強いからさ、この首輪何とかしてくれるかも。
この爆弾首輪さえ何とかすりゃ、あとは島から出る方法なり何なり探せばオーケーっしょ」
「でも……首輪外せたとしても、こんな大掛かりな事する人達がそんな簡単に逃がしてくれるとも思えないですけど」
「そりゃあね……そうだけど、だからって殺し合う気になんかなれないでしょうよ」
「まあ……」
「ともかく、この首輪をどうにかしない事にはねぇ……レイナ以外にも、機械に詳しい奴いたら良いんだけど」
首にはめられた首輪をつつくアイ。
開催式の時にマネキンで威力は見せられている。
マネキンの首は吹き飛んだ、ああいう風になってしまうのは何としても避けたい。
「……陸に上がろうか、この船傾いてるし沈むかもしれないし」
「そうですね」
現在二人がいる遊覧船は座礁し、傾斜していた。
このままいくと横転したり転覆したりして沈没する可能性もある。
その時船に残っていたらまず助からないだろう、早々に足場のしっかりした陸地に上がるべきとアイは判断した。
座っていた椅子から立ち上がり二人は荷物を持って食堂を後にした。
出口を探し、そして二人は外へ通じるタラップを発見する。
船自体が傾いていたため一番下の段が地面より若干浮いていたが、降りる分には問題は無さそうだった。
「ここから行けそうだね、良し行こう」
「あ、待って下さい竜錬さん」
「どうしたの?」
「誰か来ます……」
「え?」
南が指差した方にアイが視線を向ける。
薄暗い通路の奥から、青い猫獣人の少年が現れた。
黒いブレザーを着用しているので中学生か高校生と思われた。
アイは少年に声を掛ける事にした。
「えーと、あなたも
殺し合いに巻き込まれた、んだよね?」
「……そうです」
「私達は殺し合う気は無いよ、安心して。
私は竜錬アイでこっちのナースさんが南遊里さん」
「石清水成道……です」
石清水成道と名乗った青猫少年は、右手に持った物を二人におもむろに向けた。
それは、旧式の機関拳銃、モーゼルM712シュネルフォイヤー。
セレクターはフルオートになっていた。
「なっ」
「うあ……!」
アイも遊里も少年が殺し合いに乗っている可能性を考慮していなかったのは残念としか言い様が無い。
ダダダダダダダダッ!!
掃射された銃弾は二人を容赦無く穿つ。
アイは堪らずその場に倒れ込んだ。
「うっ、ぐ、ああぁぁあ!!」
血に染まった腹部を押さえながら遊里は半狂乱になりタラップの階段を駆け下りようとした。
だが、途中で足を踏み外しそのまま転げ落ちてしまう。
激しく身体を階段の段差に打ち付けながらやがて地面に落ちる。
「ひい、いいぃいい!」
しかし、脳内でアドレナリンか何かが過剰分泌でもされているのか、然程身体の痛みを感じていない遊里は、
ふらつきながらも全速力で森の方へと消えて行ってしまった。
それを、タラップ搭乗口から成道が見送る。
「逃げられたか……まあいいや」
成道は床に崩れ落ちたアイの方に視線を向ける。
「うっ……ぐぅ……熱い……腹が……」
アイはまだ息はあった。
口から血を吐き、銃弾を受けた腹部を押さえ苦しんでいる。
「南さん、逃げてしまいましたよ。あなたを置いて」
「そう……まあ、ついさっき会ったばかりだったし仕方無いね……。
……あなたは殺し合いに乗ってるんだね……」
「俺はまだ死にたくないので」
「……人殺すのなんて初めてでしょ? 何とも……思わないの」
「……実際やってみると、案外平気ですよ」
まるでジェットコースターの感想のようだと、アイは思った。
成道はシュネルフォイヤーのセレクターをセミオートに切り替え、銃口をアイの頭部に向ける。
ああ、死ぬのか、とアイは思った。
こんなにも呆気なく人は死んでしまうのだと。
自分は竜人だが。
(へえ……実際こうなると、案外落ち着いちゃうもんなのかな)
ダァン!!
床の上に赤い液体とピンク色の肉片が飛び散った。
成道はアイの持っていた特殊警棒を拾うと、タラップを下り始めた。
【竜錬アイ 死亡】
【残り47人】
【E-6/森/早朝】
【南遊里】
[状態]腹部に被弾(出血多し、止血が必要、銃弾は貫通)、半狂乱
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???
[思考]
基本:殺し合いはしない、生き残りたい。
1:とにかく逃げる。
2:首輪を外せそうな人を捜す。狐閉レイナさんを特に。
[備考]
※狐閉レイナの情報を得ました。
※石清水成道を危険人物と認識しました。
【E-6/座礁船タラップ/早朝】
【石清水成道】
[状態]健康
[装備]モーゼルM712シュネルフォイヤー(7/20)
[持物]基本支給品一式、モーゼルM712シュネルフォイヤー予備弾倉(5)、特殊警棒
[思考]
基本:死にたくはないので、殺し合いに乗る。
[備考]
※南遊里の名前と容姿を記憶しました。
《人物紹介》
【竜錬アイ】 読み:たつね・あい
商社に務めるOL。26歳。金髪ロングを持つ赤白竜人。スレンダーな身体付き。
明るくざっくばらんな性格で酒豪。カラオケ好きでしょちゅう一人で行ったりする。
【南遊里】 読み:みなみ・ゆうり
看護師。紫髪の美人。胸は大きい。23歳。基本的に温厚だがパニックを起こしやすい。
但しパニックは割とすぐ収まる。
【石清水成道】 読み:いわしみず・なりみち
高校一年の少年。青い毛皮の猫獣人。16歳。成績優秀で大人しいが、どこか感情が欠落している。
小学校の頃父親から虐待を受けていた。現在は両親は離婚、母親と二人暮らし。
最終更新:2013年02月13日 20:46