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やる夫がバトルロワイアルで最悪のスタートを切ってしまったようです

月の光だけが照らす森の中。そこが小太りの少年、入速出やる夫のスタート地点だった。
普段はお調子者で、底抜けの明るい性格であるやる夫。だが今はその明るさなど皆無に近く、突如自分の身に降りかかった惨劇にただ怯え続けていた。

(わけが分からねーお。何でやる夫がこんなことに巻き込まれなきゃならないんだお…)

もしも二次元の世界に行けたら、と他愛ない妄想は何度もしてきた。
大好きなアニメやライトノベルの主人公のようになれたらと思うこともあった。
自分を主人公にした、スリル溢れる冒険活劇を、ありえないとは思いつつも夢見てきた。
だが、こんな血に塗れた悪趣味なゲームに参加したいと思ったことは一度も無い。

(やる夫は一体どうすればいいんだお……)

あの薄気味悪い男の言いなりになって、殺し合いに乗るか?
そんなのできる訳が無い。ここにはやらない夫、翠星石、雪華綺晶、水銀燈、伊藤誠も連れて来られている。
大切な人たちを手に掛け、自分だけ生き残るなど真っ平御免だ。
伊藤誠とは険悪な関係であり正直全く会いたくは無いが、だからといって殺そうなどとは考えていない。
ならば殺し合いには断固として反対する道を選ぶのか?

(でももし逆らったらあの男の人みたいに…)

最初の場所で、首輪の爆発により死んだ青年。
下手に逆らったりすれば自分もあの青年と同じ末路を辿ることになる。
何とかして首輪を外したいが、やる夫にそんな技術は無い。
だがもし仮にそんな技術を持っていたとしても、そう簡単に外せるような構造ではないだろう。

死にたくない。けれど殺し合いもしたくない。
う~と小さく唸りながら頭を悩ますやる夫だが、全く解決策が思いつかないので思考を放棄した。

「ええいこうなりゃ難しい事は後回しだお!まずはやらない夫達を探すお」

やる夫一人じゃどうにもできないなら、考え続けても時間の無駄ではいか。
だったらここは、知り合いの捜索を優先しようとやる夫は決断した。
それに連れて来られた4人は皆やる夫よりも頭が良いのだ。やる夫一人では無理でも、皆となら何か良い案が出るかもしれない。
きっとどうにかなると、恐怖を打ち消すように自分に言い聞かせる。
方針を決めると、やる夫はまずは森から出るために移動を開始した。

「危ない奴は出てこないでくれお~」

おっかなびっくり歩くやる夫の手には懐中電灯と拳銃が握られている。
ズッシリとした重さと金属の冷たさが銃が本物である事を、手から伝わってくる。
危険人物と出会わないことを祈りながら歩を進めるやる夫。

だがその歩みは背後から聞こえてくる足音によって止められた。
足音は徐々にこちらに近付き、背後の人物がこちらに走って来ていることが理解できた。
全身を恐怖と緊張で震わせながら、やる夫は銃の引き金に指を掛けたまま後ろを振り返った。

「ヒィッ!だっ、誰だお!?そこで止まる「やる夫ー!無事だったですか~!」っえ?」

駆け寄って来る者が自分の友人だと認識するのと、極度の緊張状態で振り返った反動により誤って引き金を引いたのはほぼ同時だった。

森に銃声が木霊した。




オッドアイでアンティーク人形のようなドレスを着た少女――翠星石は理不尽なゲームに対し、ただ泣き続けていた。

意味不明の殺し合い、初めてその目で見る人が殺される瞬間、気が付けば真っ暗な森に一人ぼっち。
僅か数分の間に起こったこれらの出来事は、翠星石に計り知れない恐怖を与えていた。

「うぅ……」

あのチャラけたロン毛男の笑み。思い出すだけで怖気が走る不気味さだ。
首から上が吹き飛んだ青年。むせ返る血の臭いと飛び散った肉片のグロテスクさに吐き気がする。
誰も居ない森に一人で立っている。怖くて震えが止まらない。一人にしないで。

涙を流しその場に蹲った時、小さな物音が聞こえた。
ヒッと小さく悲鳴を漏らし、大木の裏に隠れながら音のした方を覗き込む。
ハッキリとは見えないが、人影のようなものが動いてるのが確認できた。
じっとしながら聞き耳を立てると、翠星石のよく知る人物の声が聞こえた。

(この声……ひょっとしてやる夫ですか!?)

泣き顔から一変、パァっと明るい笑顔になる翠星石。
一人ぼっちで、不安と恐怖に押し潰されそうになっていた所に知った声が聞こえたのだ、喜ぶのは当然だろう。
お調子者で情けないやつだが、とても優しい大好きな幼馴染。
そんな彼が直ぐ傍に居ると知り、居ても立ってもいられなくなり駆け出した。

木々の間を駆け抜けていくと、見慣れた後ろ姿が目に入った。
まだこちらには気付いていない様子のやる夫に声を掛ける。

「やる夫ー!無事だったですか~!」

そのまま笑顔で駆け寄ろうとした翠星石が見たのは、呆気に取られた顔でこちらを見るやる夫。
そして次の瞬間、鈍い銃声が彼女の耳に響いた。

「…………え?」

何が起こったのか分からず、その場で硬まる。
おそるおそる横を見ると、隣の木の幹に穴が開いていた。
どうやら銃弾は運良く翠星石を外れ、隣にあった木へ命中したようだ。
だがそれも今の翠星石にとっては幸運でも何でもない。
青ざめたやる夫の顔と、その手に握られている金属の塊を見比べ、段々と何が起きたのか理解が追い付いてきた。

「やる、夫……?やる夫は、す、すいせい、せきを……」
「ち、ちが…」

口に出すたびに顔がどんどん青ざめていく。
あんなに会えて嬉しかった筈のやる夫が、今はとても恐ろしく見える。

「い、イヤァァァァァァァァ!!」

悲鳴を上げ、顔をクシャクシャに歪ませながら翠星石は森の奥へと逃げ去った。

「あっ、ま、待つお!翠星石!」

呆然としていたやる夫も我に返り、慌てて翠星石の後を追う。

悪を打ち砕くヒーローでもなく、ニードレスやギアスユーザーのような異能の持ち主でもない。
特別な運命や血筋も存在しない、どこにでもいる平凡な高校生の少年。
そんなやる夫はこのバトルロワイヤルにおいて、大切な人を殺しかけてしまうという最悪のスタートを切ってしまった。

【翠星石@やる夫スレ】
[状態]:精神疲労(大)、錯乱中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、不明支給品1~3
[思考]
基本:死にたくない
1:やる夫から逃げる。
[備考]
※本ロワでの設定
  • 人間の女子高生
  • 水銀燈&雪華綺晶→姉と妹。大切な家族
  • やる夫→幼馴染。密かに想っている
  • やらない夫→やる夫を通じて中学生時代に友達となった
  • 伊藤誠→一度乱暴されかけたため、嫌悪と恐怖を抱いている

【入速出やる夫@やる夫スレ】
[状態]:精神疲労(中)
[装備]:TNOKの拳銃(5/6)@真夏の夜の淫夢
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いはしない
1:翠星石を追いかける
2:やらない夫たちを探す
3:伊藤誠には会いたくない
[備考]
※本ロワでの設定
  • 人間の男子高校生。外見は太った少年。
  • 水銀燈、翠星石、雪華綺晶→幼少時から親交のある姉妹。翠星石とは同じクラス
  • やらない夫→中学時代にできた親友。不良に絡まれていた所を助けてくれた
  • 伊藤誠→翠星石に手を出そうとしたのをやる夫とやらない夫、他の姉妹達に阻止される。以来険悪な関係


【TNOKの拳銃@真夏の夜の淫夢】
入速出やる夫に支給。
淫夢本編一章に登場したヤクザ、TNOKが所持するリボルバー拳銃。
事務所に隠していたのをDBに奪われ、一転攻勢の上尻を撃たれて殺された。
下北沢暴力団員殺害事件という悲劇を忘れてはならない(戒め)。

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最終更新:2016年02月09日 22:50
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