深夜の公園は何となく不気味だ。
日中は子ども達が元気に遊んでいるであろう、ブランコやジャングルジム。
誰も居ない静まり返った夜にそれら見ると、どこか薄気味悪く感じる。
現在ベンチに腰掛ける少女、日野留渦も自分が居る公園にそんな感想を抱いていた。
幼少時からお化けや幽霊に遭遇したお陰で、滅多に恐怖感を抱かなくなった。
なのに今更こんなことを思うのは、やはりこの殺し合いに対して動揺しているからなのか。
(それだけじゃないよね…)
吹き飛んだ頭。
大量の血を噴出し倒れる胴体。
絶望の表情で転がる知らない老人と、知っている少年。
兄の友だちで、留渦とも交流のあった少年。
その少年は漫画や映画でしか見た事のない首無しの死体となった。
(委員長さん……)
留渦はこれまで多くの幽霊や妖怪と遭遇してきた。
時には命に関わる程の危険な相手と対峙したことだってある。
けれどいつだって最後は、兄の耳雄が力ずくで解決してきた。
しかし、生身の人間による殺人を、人がただの肉袋に変わる瞬間を見たのはこれが初だ。
今や死は驚くほど身近なモノと化している。
「っ…」
全身が震える。
自身が、そしてに家族が殺されるかもしれないという恐怖。
耳雄は自分を探すために無茶をして、命の危機に晒されているのではないか。
サイトーさんは怯えて隠れている所を、殺し合いに乗った危険人物に発見されてるのではないか。
脳裏に浮かぶ最悪の光景を何とか振り払おうとするが、そう簡単には消えてくれない。
「行かないと…」
デイバッグを手に立ち上がる留渦。
一刻も早く兄たちに会いたい。
今も頭に浮かび続けるイメージなんて、起こる訳がないと確かめなければ、不安でどうにかなりそうだった。
焦る気持ちのままに駆け出そうとした時、背後に人の気配を感じた。
心臓が飛び上がりそうになり、呼吸が緊張で荒くなる。
恐る恐る振り返り目にしたのは坊主頭の男。
どこか間の抜けた顔でゆっくり近付き、留渦の手前で止まった。
警戒する留渦だが、男はじっと立っているだけで動こうとしない。
「あの…」
留渦が声を掛けると、男はニッコリと笑う。
それは邪気の無い幼い子どものようだった。
「大丈夫だゾ」
「えっ…?」
「不安なのは分かるゾ。でも心配しなくていい」
安心させるようにゆっくりと頷く男。
それを見て留渦は、相手は殺し合いには乗っていないんだと思い、警戒を緩める。
そして男の笑顔に釣られ、安堵の笑みが自然と浮かび―――上がらず引き攣った。
男はデイバッグから大き目のナイフを取りだし、それを留渦に向けている。
「ちゃんと一撃で済ませるから大丈夫だゾ~」
「こ、来ないで……!」
「後で俺とポッチャマが生き返らせるから安心だゾ」
踵を返し逃げようとするが、首根っこを掴まれ地面に押し倒される。
馬乗りになり、ナイフを持つ手を首に当てる男。
留渦は必死に逃げ出そうとするが、中学生の小柄な体では体格の良い男には敵わない。
「おし、じゃあブチ込んでやるぜ!」
涙が浮かぶ目をギュっと閉じる留渦。
死にたくない。
兄と、飼い犬と、両親や友人達と一緒に居たい。
怖い。
怖いよ。
助けてお兄ちゃん―――
「オラァッ!!」
「ぶぼぉっ!?」
声が二つ聞こえた。
馬乗りになっている男のものと、知らない声。
それと同時に、男の拘束が解かれた。
なにが起きたか分からず、目を開ける。
「おにい、ちゃん?」
「あぁ?悪ィが別人だ」
ぶっきらぼうな返答。
それを口にしたのは、自分を殺そうとしたのは別の、坊主頭の青年。
目つきは鋭く、頬には刃物でできたであろう古傷。
ガッシリとした長身で、拳を握り締めている。
「結構力入れたんだがな。意外とタフじゃねぇか」
青年の睨む先に居るのは、頬を押さえ立ち上がる男。
そこで留渦はようやく気付く。
自分はこの青年に助けられたのだと。
「い、いきなり酷いゾ…」
「こんなガキをマジになって襲うペド野郎には言われたくねぇよ」
「襲ったんじゃなく、ちょっと眠ってもらうだけだゾ!ポッチャマが言うんだから間違いないゾ~」
「薬でもキメてんのかテメェは」
意味不明な事をほざく男を、青年はキチ○イを見る目で睨む。
殺し合いの空気に耐え切れず発狂したのか、それとも元々こんななのか。
男の境遇は分からないが、放置しておくのは危険な存在だ。
「仕方ないゾ。あんまり痛くはしないようにしたかったんだが…」
ボソボソと呟きながら、デイバッグ新たな支給品を手に取る男。
バッグから出した両手に握られているもの。
それは二挺の銃だった。
「ブチ込んでやるぜェェェェェェェェェ!!」
絶叫と共に引き金を引く男。
青年は男の手に銃のグリップが握られているのを目にした時点で、既に行動していた。
留渦の手を引き、遮蔽物へと走り出す。
驚く留渦の声を無視し、青年は公衆トイレの後ろに彼女諸共ダイブ。
間一髪、二人そろって蜂の巣になるのを防いだ。
「クソが!無茶苦茶しやがる!」
銃弾が壁を削る中、どうするか考える。
あのイカれたトリガッハピーに対抗するには銃が必要。
一抹の期待を込めて自分のデイバッグを開く青年。
出てきたのは妙な形のマスク、どこかの制服を着た少女二人の写真、赤いヒヨコのような生き物のぬいぐるみ。
銃どころかマトモな武器自体入っていない。
クソすぎる状況に舌打ちしたくなる。
「あの、これ」
横から留渦が話しかけてきた。
今考え中だと返そうとするが、差し出された物を見て言葉を引っ込める。
ベレッタM92F。
アメリカ軍を始め世界中で幅広く使われている自動拳銃。
現在自分が最も欲している、イカれ男へ対抗するための武器。
「私のバッグに入ってたんですけど、使ったことないから…」
そう言う日本人の少女を、青年は見やる。
確かに、見るからに争い事とは無縁そうな少女だ。
銃を使った以前に、殴り合いすらしたことが無いようにまで思える。
だが青年にとっては別。
銃を受け取ると慣れた手付きで残弾をチェックし、満足げに頷く。
「おい!ペド野郎!」
未だ銃を乱射する男へ向け、声を張り上げる。
青年の呼びかけに反応したのか、一瞬銃撃が止まった。
「これでも食らっとけ!」
男へ向けて何かが投合された。
突然の反撃に驚いた男は、反射的に投げつけられたモノへ向け、両手の銃を撃つ。
それは無数の銃弾を受け綿を散らす。
そこで男は投合されたものが何なのか気付く。
それは男が愛してやまない友の仲間。
ボロ雑巾のような有様になってしまったそれの名は、
「アチャモ…」
呆然と呟く男。
と、両腕に焼けるような痛みが走る。
男が隙を見せたのを見逃さず、青年が飛び出し銃で撃ったのだ。
痛みに銃を手放しそうになるが、なんとか耐える。
そして青年が追い討ちを掛ける前に、銃弾をばら撒く。
狙いもつけない滅茶苦茶な攻撃だったが、青年を怯ませる事はできた。
その隙に男は全速力で公園を後にした。
◇
「逃げやがったか」
男が去った方を睨み、舌打ちをする青年。
次いでボロボロになった公衆トイレに意識を向ける。
「おい、もう出てきていいぞ」
青年の言葉を受け、緊張した面持ちで留渦が出てくる。
キョロキョロと辺りを見回し、男の姿がどこにもないのを確認し、ほぅっと息を吐いた。
「あの…ありがとうございました」
「別に礼なんざいい。コイツを譲って貰ったしな」
片手の銃を青年はヒラヒラと見せる。
「それよりここを離れるぞ。あの野郎が散々撃ったせいで、音を聞いた奴らが集まってくるかもしれねぇ」
「は、はい」
足早に去ろうとする青年。
その後ろを少し慌てて留渦が追う。
雑な言葉遣いで、お世辞にも良い態度とは言えない。
けれど悪い人ではない。
どこか耳雄に似た頼もしさを感じる。
前を行く背中を見ながら、留渦はそんな事を思っていた。
「ああ、そういやガキ」
「…ガキじゃありません。日野留渦です」
「そりゃ悪かったな。俺はジェイク・ミューラーだ、留渦」
危機を乗り切った青年と少女は行動を共にする。
かつて、己に流れる呪われた血で、世界をバイオテロから救った青年。
彼はこの地で何を成すのだろうか。
【ジェイク・ミューラー@バイオハザードシリーズ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ベレッタM92F(13/15)@バイオハザードシリーズ
[道具]:共通支給品一式、9mmパラベラム弾装填マガジン×6、人間便器マスク@真夏の夜の淫夢、クルスとセツナの盗撮写真@NEEDLESS
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
0:留渦を連れて公園付近から離れる。
[備考]
※参戦時期はバイオハザード6終了後
※まだ名簿を確認していません
【日野留渦@でろでろ】
[状態]:精神疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いはしない。お兄ちゃんたちに会いたい
0:公園から離れる
1:お兄ちゃんたちを探す
[備考]
※参戦時期は原作終了後
支給品紹介
【ベレッタM92F@バイオハザードシリーズ】
日野留渦に支給。
イタリアのピエトロ・ベレッタ社が開発した自動拳銃。
世界中の軍隊で幅広く使用されており、S.T.A.R.S.やB.S.A.A.にも正式支給されている。
『0』、『1』、『5』に登場。
【人間便器マスク@真夏の夜の淫夢】
ジェイク・ミューラーに支給。
口の部分が開いている。
KBTITがまひろに装着させ、そこへおじさんが小便をした。
尿意を催したおじさんの為に即席の便器を用意するKBTITは人間の鑑。
【クルスとセツナの盗撮写真@NEEDLESS】
ジェイク・ミューラーに支給。
学園編に登場した聖ローズ学園の生徒、凛が盗撮した二人のパンチラ写真。
【アチャモのぬいぐるみ@現実】
ジェイク・ミューラーに支給。
某ポケ○ンに登場するアレのぬいぐるみ。
「ごめんだゾ、ポッチャマ……」
公園から少し離れた先の住宅地。
そこで男は涙を流していた。
「絶対にアチャモの仇は取ってやるゾ」
男の手には先程乱射していた銃ではなく、青い生き物のぬいぐるみがあった。
ぬいぐるみに話しかける男の方針、それは殺し合いに優勝すること。
そして願いを叶えられる権利を使い、殺し合いを無かったことにするというものだった。
男にはぬいぐるみ――ポッチャマがそうアドバイスしてくれたのを確かに聞いた。
最後には皆生き返るのだから、自分達が優勝しても問題は無い。
だから殺すのではなく、少しの間眠ってもらうのと同じだ、と。
誰が聞いても男の正気を疑う話だが、当の本人は本気でポッチャマがそう言ったと信じている。
さっきは逃げてしまったが、今度は上手くやってみせる。
「と、その前に腕の治療しないとな」
ここからだと小学校が近い。
そこの保健室なら包帯や消毒液があるだろう。
ポッチャマを大事に抱きかかえ歩く男、MURの目には確かな狂気が宿っていた。
【MUR@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(中)、頬に痣、両腕に銃創(出血中)
[装備]:ポッチャマのぬいぐるみ@現実
[道具]:共通支給品一式、キャリコM100-P×2(57%、65%)@バイオハザードシリーズ、予備マガジン×6、クリスのマチェット@バイオハザードシリーズ
[思考]
基本:ポッチャマと一緒に優勝するゾ~
1:小学校へ行き腕の治療をする
2:皆殺し
[備考]
支給品紹介
【クリスのマチェット@バイオハザードシリーズ】
MURに支給。
バイオハザード5においてクリスの初期装備。
【キャリコM100-P@バイオハザードシリーズ】
MURに支給。
サブマシンガンのキャリコM100を改造し、セミオート式のハンドガンにしたもの。
『CODE:Veronica』に登場。
【ポッチャマのぬいぐるみ@現実】
MURに支給。
その名の通りポッチャマのぬいぐるみ。
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最終更新:2016年05月03日 05:18