コンベンションセンターホテル。
かつて日本解放戦線によるホテルジャックが起こった場所。
本来は河口湖にあるはずの施設が、猿渡銀兵衛春臣の
スタート地点だった。
「外に放り出されなかったのは幸いかな」
真っ暗闇の中見知らぬ土地を、いつ危険な輩が襲ってくるか分からないのに歩き回る。
それは余りに危険で無謀な行動だ。
屋内ならば少なくとも外に居るよりは落ち着いてものを考えられる。
それにこの広い施設なら危険な参加者に襲われても、隠れる場所が多くありそうだ。
殺し合いというからには当然、人を殺すのに躊躇しない者も47人の中に混じっているのだろう。
「殺し合い、か……」
バトルロワイアル。
悪い冗談か何かだと思いたいが、銀兵衛の冷静な部分はそれを否定してしまう。
絶望の表情を貼り付けたまま頭部が吹っ飛んだ死体は、作り物や特殊メイクなどではないと。
悲鳴を上げた人々は仕掛け人などではなく、本物の恐怖を植え付けられた哀れな生贄たちなのだと。
目を瞑り夢なら覚めてくれと願っても、それが叶うことなどない。
この状況は紛れもない現実なのだから。
自分も見せしめの二人のように呆気なく死んでしまうかもしれない。
或いは歪んだ思考の持ち主によって、もっと無残な死を迎える可能性だってある。
何とか冷静に努めようとするが、湧き上がる恐怖が消える気配はなかった。
「秋人……」
思わず大好きな親友の名が口から出る。
この地には彼とその妹の秋子、生徒会メンバーのアナスタシアもいる。
彼らはどうしているのだろうか。
自分と同じくどこかの施設に飛ばされたのか、それとも外に放置されたのか。
それとも他の参加者に襲われ、既にもう――
「っ!駄目だ駄目だ、そんな事考えるな……!」
つい悪い想像をしてしまった。
そんな筈はないと銀兵衛は自分に言い聞かせる。
(…早く皆を探そう)
不安と恐怖を抑え付け歩き出す銀兵衛。
非常灯のみが照らす廊下を慎重に進む。
人気の無い深夜の建物に一人でいるというのは、殺し合いとはまた別の恐怖感が生まれてくる。
秋人たちの前では強がっていたが、銀兵衛は幽霊や怪談の類は人一倍苦手な少女だ。
「ふ、ふんっ。馬鹿馬鹿しい…」
誤魔化すように独り言を呟く。
気のせいか先程よりも震えが酷くなった体を動かし歩き出す。
「大丈夫か?」
「ひゃんっ!?」
と、背後から唐突に話しかけられた。
素っ頓狂な声を上げながら、銀兵衛は驚きで転倒してしまう。
彼女が痛みとパニックで涙目になりながら振り向くと、一人の男が無表情で立っていた。
◇
「すまない。驚かせてしまったようだな」
「い、いえ。大丈夫ですから」
無数のテーブルが並べられているホール。
パーティー会場として使われていた、だだっ広い空間にで銀兵衛と男は話をしている。
突然現れた男に対し軽くパニックになってていた銀兵衛だが、相手が冷静であったため一先ず警戒を解いた。
「僕は猿渡銀兵衛春臣と言います」
「チェイスだ」
「チェイス、さん?あの、渾名か何かですか?」
「本名だ。名簿にも載っている」
どこからどう見ても日本人なのだがキッパリ本名だと言われた。
冗談のつもりなのだろうかと銀兵衛は考えたが、チェイスは無表情のまま。
念の為名簿を見ると確かにチェイスと記されている。
初対面の相手に失礼なのだが、紫尽くしの服装も合わせて変わった人だと銀兵衛は思った。
それからお互いの知り合いも殺し合いに連れて来られていること。
それぞれの名前と特徴を伝え合った。
「泊進ノ介さんに詩島剛さんですか」
「ああ。…聞き覚えは無いのか?」
「えっ?いえ初めて聞きましたけど…。有名な人たちなんですか?」
「……いや、知らないのならいい。おかしな事を言ってすまなかった」
心なしか難しい顔をしたチェイスに対し、銀兵衛は何か気に障ることを言ってしまったのかと内心焦った。
しかしチェイスはそれ以上何かを言いはしなかった。
「お前の学友三人の捜索、俺も手伝おう」
「いいんですか?」
「ああ。ここに居る間はお前とその仲間を守る事を約束する」
「チェイスさん…。ありがとうございます」
ちょっと変わってて無愛想だけど悪い人ではない。
そんな印象をチェイスに抱きながら銀兵衛は感謝の言葉を伝えた。
そうだ、ここには危ない人間だけでなく、彼のように殺し合いに反対する人だってちゃんと存在するのだ。
ずっと心に圧し掛かっていた不安が少し和らいだのを銀兵衛は感じた。
「行くぞ。俺から離れるな」
「はい、分かりま――っ!?」
荷物を纏め部屋を出ようとした時、それは聞こえた。
ズシン、ズシンという物音。
巨大な“なにか”が足音を立てて、こちらに近付いてくる。
「これは……?」
「下がっていろ銀兵衛」
困惑する銀兵衛を庇うようにし、チェイスが音の方向を睨む。
その腰には奇妙な形のベルトが巻かれていた。
更に片手には玩具のような小さいバイクを握り締めている。
それを見て銀兵衛は訝しげな視線を向けるが、間近に迫った音にビクリと肩を震わせた。
二人が緊張した面持ちで、壁の向こう側に居る“なにか”の出方を窺う。
次の瞬間、「それ」は現れた。
「――――――!!!」
壁を粉砕し、獣のような雄叫びを上げる怪物。
2メートルを越える巨体で、胴体と四肢に銀の装甲が着けられている。
肌は青白く、所々抉れて肉が見えている状態だ。
「ひっ……」
不気味な呻き声を出す異形の姿に銀兵衛から小さく悲鳴が漏れる。
少女の怯えなど知ったことかとばかりに、怪物は左拳を握り締める。
同時に右腕に装着した巨大なアームをカチカチと鳴らす。
「ロイミュードではないようだな」
銀兵衛を下がらせチェイスが一歩前に出る。
ベルトのパネルを上げ、開いたスペースにバイクを装填。
今度はパネルを下げる。
『SIGNAL BIKE』
「変身」
『RIDER!CHASER!』
ベルトから電子音声が響きチェイスの体が紫の光に包まれる。
暗闇を裂くような光が収まると、そこには銀と紫の装甲に全身を包んだ戦士の姿があった。
背後で息を呑む銀兵衛を無視し、片手にハンドルグリップのような銃「ブレイクガンナー」を持ちチェイスは駆け出す。
「ハァッ!」
走り出した勢いのまま、強化された腕力で拳を振るう。
拳は怪物の腹部を捉える。
が、僅かに呻き声を出しただけで効いた様子は無い。
続けてブレイクガンナーによる打撃を繰り出すが、やはり怯みはしない。
怪物が巨体に見合わぬ速さで左腕を振り下ろす。
チェイスは横に飛ぶことで剛腕を回避。
「――――!!」
怪物がアームを振り回す。
無骨な金属によるその一撃が強力なのは一目瞭然だ。
食らってなるものかとチェイスは回避に集中する。
紙一重でアームを躱し、時にはブレイクガンナーで受け流す。
その時感じた怪物の腕力に仮面の中で顔を顰める。
「くっ…」
距離を取るように背後へと飛ぶ。
戦っている場所が広いホールなのが幸いした。
『GUN』
ブレイクガンナーを遠距離用の形態に変え銃口を向ける。
引き金を引くとエネルギー弾が発射され着弾した。
装甲に当たり火花を散らす。
怪物にとっても未知の攻撃だったのか、動きを止めている。
しかしそれも束の間の事、一声吼えると弾が当たるのも意に介さず、チェイスへ向け突っ込む。
ブレイクガンナーを連射するが怪物は止まらない。
テーブルを吹き飛ばしながら、目障りな相手を押し潰さんとタックルが迫る。
岩石のような肩がぶつかる寸前、チェイスは怪物の背後へ回るように大きく跳躍。
怪物の真上に来た瞬間、剥き出しの顔面へ向けてトリガーを引く。
「――――!!??」
これは流石に堪えたのか怪物から初めて苦痛のような響きの声が出る。
敵両腕で顔を押さえ膝を突いている隙に、チェイスは次の行動に移っていた。
再度ベルトのパネルを上げ、上部に付いているスイッチを押す。
そしてパネルを下げる。
『ヒッサツ!FULL SLOTTLE!』
『CHASER!』
右足にエネルギーが溜まっていく。
怪物を倒すための力を纏い、繰り出されるのは必殺の飛び蹴り。
紫色の光を纏った右足が怪物へと迫る。
己へ近付く脅威に反応したのだろうか、怪物は咄嗟に右腕を突き出す。
僅かに拮抗するが、アームは砕かれ怪物の胸部へ右足が突き刺さる。
「―――――!!!」
衝撃で外まで吹き飛ばされる怪物。
運の悪い事に今戦っていた場所は超高層ビルの最上階。
怨嗟の篭った叫びと共に、地上へと落ちていった。
◇
怪物の落下を見届けるとチェイスは変身を解く。
振り返ると恐る恐るといった様子で、銀兵衛がテーブルの後ろから身を出す。
その顔は強張っていた。
「怪我は無いか?」
「は、はい。大丈夫、です……」
「そうか」
顔には出していないが内心安堵するチェイス。
「あ、あの…。あなたはいったい…」
「?仮面ライダーを知らな……いや、話は後だ。今の音を聞いて危険な連中が集まる可能性は高い。
まずはここを離れるぞ」
そう言って歩き出すチェイスの後ろを、納得のいかない思いをしながら銀兵衛が続く。
(あぁもう訳が分かんないよ……)
突然拉致されての殺し合いというだけでも困惑しているというのに。
それに加えて、怪物と特撮ヒーローのような姿へ変身する男。
それなりに変わった環境で日常を過ごすとはいえ、銀兵衛は血生臭いゴタゴタとは無縁の一般人。
現実味の無い光景の連続で頭が痛くなりそうだ。
(……)
前を歩くチェイスの背を見る。
彼の正体が何者なのかは分からない。
情報交換の時の反応といい、語っていない事は多いと思う。
けれど彼は銀兵衛を守ってくれた。
足手まといとなりそうな自分を見捨てず戦ってくれた。
「チェイスさん」
「?」
「ありがとうございました」
深々と頭を下げる。
「チェイスさんがいなかったら、僕は死んでいました。だから、ありがとうございます」
「気にするな。俺はお前を守ると約束した」
背をむけたままそっけなく言うチェイス。
けどその姿に不思議と冷たさは感じなかった。
柔らかい笑みを浮かべるが、すぐ不安げに曇りだす。
(秋人…秋子ちゃん…那須原さん……)
大切な友人たちの名を内心で呟く。
あんな怪物まで存在するこの地で彼らは無事でいるだろうか。
早く会って無事を確かめたい。
そして会長とありさが待つ元の日常に皆で戻りたい。
銀兵衛が友の身を案じる傍ら、チェイスも思考に耽っていた。
(仮面ライダーを知らない、か……)
融合型ロイミュードの病院襲撃を切っ掛けに知れ渡った仮面ライダーの正体。
警察の正式発表もあり、仮面ライダーが泊進ノ介だということは全国民にとって周知の事実である。
だというのに銀兵衛は仮面ライダーの存在自体知らないようだった。
そんな事がありえるのか。
だがそれ以上に不可解な事がある。
それは、
(何故俺は生きている?)
あの時。
自分は蛮野の攻撃から剛を庇い致命傷を負った。
そして最後の力を振り絞り、蛮野を道連れに自爆した。
コアも消滅し完全に死んだはず。
それが今は傷一つなく二本の足で立っている。
(名簿を信じるならば、俺だけでなくブレンも復活しているのか……)
その最後を目撃したロイミュード。
チェイスがこうして蘇っているなら、ブレンの方もほぼ間違いないだろう。
余りにも不可解な事が多すぎる状況。
頭を抱えながらも少女とロイミュードは、ホテルを出る為にエレベーターに乗り込んだ。
【チェイス@仮面ライダードライブ】
[状態]:疲労(中)
[装備]:マッハドライバー炎+シグナルチェイサー@仮面ライダードライブ、ブレイクガンナー@仮面ライダードライブ
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0~1(ドライブ出典のものではない)
[思考]
基本:仮面ライダーとして戦う
1:銀兵衛と彼女の友を守る
2:進ノ介と剛を探す
3:ハートたちに会ったら……?
4:あるのならばライドチェイサーとシンゴウアックスを探す
[備考]
※参戦時期は本編45話死亡後。
【猿渡銀兵衛春臣@お兄ちゃんだけど、愛さえあれば関係ないよねっ】
[状態]:精神疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0~3
[思考]
基本:秋人たちを探す
1:チェイスさんと行動
2:秋人たちが心配
[備考]
※参戦時期は原作8巻以降。
怪物は死んでいなかった。
元々の桁外れなタフさに加え、主催者よりもたらされた装甲。
これによりダメージこそ受けたものの未だ生きている。
暫し大の字になり休息を取っていたが、十分だと判断したのか立ち上がる。
目の前には何時の間にか換えのアタッチメントが落ちてあった。
それを拾い右腕に装着し歩き出す。
この怪物は47人の参加者の中で最も異質な存在だろう。
怪物は自分が殺し合いをしている自覚など全く無い。
ただ一つの任務を遂行する為に動いている。
その任務とはある男の捕獲。
殺し合いに連れて来られる以前と同じもの。
例え舞台が違い、主催者に新たな装備を与えられても、その基本行動は何一つ変わらない。
怪物の名はウスタナク。
目的はジェイク・ミューラーの捕獲。
【ウスタナク@バイオハザードシリーズ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)
[装備]:アタッチメント(ドリル)、テスタメントの装甲服@NEEDLESS
[道具]:なし
[思考]
基本:ジェイク・ミューラーの捕獲
1:ターゲットの捕獲。それ以外は全て殲滅
[備考]
※参戦時期はジェイク編チャプター2終了後。
※アタッチメントは破壊されると主催者側で新たなものを用意します。
全て破壊された場合どうなるかは現在不明です。
※アタッチメント(通常アーム)破壊。
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最終更新:2016年06月21日 03:32