D-6の最東端。
後数歩でエリア外というそこに二人の青年……否、二人の男女が並んで立っていた。
「この地図を見る限りここがエリア境界線みたいだ、白鐘」
「ええ、COMPに書かれていることが本当ならこの先に進めば僕達の頭は爆弾によって爆発する……」
「それを調べるってのはいいんだけど、大丈夫なのか?」
「この提案を先にしたのはアツロウ君ですよ」
そりゃそうだけど、と白い帽子の上から頭を掻いている青年は木原篤郎、もう一人の一見すれば小柄な男子に見える少女が白鐘直人という。
この二人がCOMPのルールを読んで真っ先に考えたのが、この情報はどこまでが真実なのか、という点である。
見る限り自分たちを
殺し合いへと煽りたてるルールは頭部に仕掛けられた爆弾というただ一つ。
しかし頭の中に異物を埋め込むなどという手術をされた覚えはない、直人は自身が知らぬ間に誘拐されるという体験をしたことがあるものの、流石に外科手術を気付かれないように行うことは不可能だろう。
そして爆弾を仕掛けたという事が嘘であるならば当面の危機はなくなる、30人もの人間を連れ去った方法が分からない以上安心はできないが、殺し合いを行う必要性はなくなる。
そう話し合い、二人は今エリア端で最後の確認をしていた。
「大丈夫ですよ、爆弾が本当であろうと嘘であろうと、すぐに何らかのアクションが起こる可能性は低いはずです」
「何で言い切れるんだ?」
「僕達の見ているこの光景が答えです、エリアの境界線とやらはこの端末には書かれているけれど現実には描かれていない、あやふやなものだ」
「……そうか、もしエリア端で誰かと戦ったら弾みで外に出てしまう可能性は高い」
アツロウの言葉に頷き、一歩エリア端へと歩を進める。
「この殺し合い……バトルロワイアルを企んでいる者が何を目的としているかはわかりませんが、『参加者同士で殺し合う』事を望むのであれば極力自分たち、主催の介入は避けたいはず」
「警告無しで爆破、なんてことはありえないってことだな。よくそこまで頭が回るなぁ、探偵ってのは伊達じゃないってことか」
「いえ、先ほども言いましたが爆弾のことを考えだしたのはアツロウ君の言葉のおかげですよ」
東京の大部分が閉鎖された『悪魔』による事件。
TVの中の世界に住みつくシャドウを利用した殺人事件。
この二人はそれぞれ巻き込まれた事件において、その優れた頭脳によって仲間たちのサポートしてきた、状況の把握は誰よりも――元々GANTZを知っていた者を除いて――早い。
「それじゃあ、行きますよ」
「お、おう」
気を入れなおして足を進める。
すぐに死ぬことはないはずだと理解していても、万が一の可能性を考えるととてつもない恐怖を感じてしまう。
直人も表面上は平然としているが緊張を隠しきれてはいない。
一歩、また一歩と二人は死線へと近づいていく。
その足が丁度十歩目を踏み出そうとした瞬間。
――ピンポロパンポン
「「っ!?」」
突然流れ出した音楽に二人は一瞬動きを硬直させる。
――ピンポロ
その硬直も一瞬のみ、直人はすぐさま後ろに飛び退りエリア内へと戻る。
が、その視界にその場に立ち尽くしたままのアツロウを見つけ驚愕の色に顔を染める。
――パンポン
「アツロウ君!?」
「まだだ、まだ……」
直人が叫ぶがアツロウは周囲に視線を巡らせながら下がろうとしない。
やむを得ず白鐘は再び地を蹴りアツロウの下へと向かう。
――ピンポロ
――ロ
「ここか!?」
「くっ!」
――パン
アツロウが何かに気づくと同時に直人が襟首を掴み力づくで引き戻そうとする。
急に背後からかけられた力に尻餅をついてしまい……
――ポ
鳴り響いていた音が止まる。
しばらくの間周囲や自分の体に視線を向け、何も変化がないと判断し二人同時に大きく息を吐く。
「はぁ……あまり焦らせないでください、何をしていたんですか」
「わ、悪い、あの音がどっから流れてるかを確かめないとって思ってさ」
呆れた視線を向けていた直人の表情が感心したものに変わる。
自分は安全を最優先として最低限のところまでしか調べようとしなかったが、アツロウは自分の一歩先まで踏み込んだ。
あのわずかな差で死んでいた可能性を考えると褒められた行動ではないにせよ、貴重な情報を得た事は賞賛に値するだろう。
「それならそうと最初に言ってくれればよかったものを……それで、音源はわかったんですか?」
「ああ、白鐘がもう一度来てくれたから気づいたんだけど、俺たちの頭の中だ」
直人がアツロウを引き戻そうと再びエリア外に出た瞬間、わずかに音楽がずれて聞こえたのだ。
これでこの殺し合いの参加者の頭部に何かが埋め込まれていることは確定した、それはこの場から逃げ出すことができないということであるが……二人の顔に絶望の色は見えなかった。
「頭部に仕掛けられているということは何らかの遠隔装置……人体の中で動作するということは、電波により動作する機械的な物である可能性が高いですね」
「ならそいつの電波をどうにか妨害しちゃえば、ここを突破できる!」
この二人は爆弾がブラフである可能性になど賭けてはいなかった。
無論そうであるならば一番よかったのだが、そんな低い確立にすべての希望を委ねる人間ではない。
すぐに次に行うべき行動を考え、必要な道具を探そうと動き出す。
「電気関係の材料……デパートに行けばいくらか調達できそうだな」
「アツロウ君は機械関係は強いんですか?」
「まあ、普通よりはってレベルだけど……でも電波を妨害するぐらいだったらなんとかできる」
と言いながら、アツロウは自身でも不安そうな表情を見せる。
何せ失敗は許されない、もしも電波の妨害に失敗したらその瞬間ドカン、だ。
アツロウは別段電気や機械工学の専門家ではい、ネットに齧り付いてる時に知った知識が頼りというとても危うい橋である。
直人も察したのだろう、その表情にわずかに影がさす。
「できれば専門家の協力が欲しいですね……」
「そうだよな……」
「そういうことなら、協力させてくれないか」
横手からかけられた声に二人はすぐさま身構える。
一拍置き、細い路地の影から一人の男が現れる。
濃紺のコート、奇抜な髪型、刺青なのだろうか? 顔に入れられた黄色いマーク。
そのどれをとっても二人には理解できないセンスだ、アツロウはかろうじてコスプレという単語が浮かぶが、それにしたって顔のマークはシールとかではなく完全に皮膚に焼き付いている、行き過ぎだ。
二人の絶句をどう解釈したか、男はデイパックを離れた場所へと放り投げ両手を上げる。
「俺は不動遊星、ネオ童実野シティで修理屋をやっている、アンタ達が話していた機械を作る協力はできるはずだ」
敵意がないことを示しながら自己紹介をする遊星だったが、戸惑った視線を返されてしまう。
それも仕方のないことだ、直人とアツロウが住む世界にネオ童実野シティなどという街は存在しない。
それでも直人はどこか自分の知らない外国の名前なのかと思考を巡らせるが、アツロウは完全に自分の仲間でもあるコスプレイヤー:ミドリと姿を重ねて「電波な人」と認識を固めようとしている。
しかし一番焦りを感じているのは当の遊星である、二人が命がけで爆弾に関する実験をしているのを黙って見ていたことを非難される覚悟はしていたが、自己紹介をしただけでこんな反応をされるとは想定していなかった。
そもそも貧困層であるサテライト出身でありながらホイールオブフォーチュンに優勝したという実績を持つ彼は、自分が思っているよりも知名度が高い部類に入っている。
名乗るまでもなく正体を知られていてもいいぐらいの存在なのだ。
「あー……っと、まあ色々置いておくとして、遊星さんは機械関連に精通してるのか?」
「あ、ああ、さっきも言った通り修理屋をやっている、パーツと時間さえあればDホイールも作れる程度の技術は持っている」
「でぃーほいーる……?」
聞き慣れない単語に直人は眉をひそめるがアツロウはすでに聞き流す体勢に入ってしまっている。
レイヤーに迂闊に専門用語などを聞いてしまえば延々と語り始めかねない、知らない単語にいちいち突っ込むのは貴重な時間を浪費してしまうだけだ。
それにこれだけ凝ったコスプレ衣装を作れるというのは手先の器用さなどは抜群だということを意味する、機械に強いというのもキャラになりきってるからというわけではないかもしれない。
「そういうことなら手伝ってもらっていいかもな、白鐘はどう思う?」
「……いまいち意味がわからない言葉が多いですけど、丸腰の状態で僕たちの前に現れたという行動は信用に値すると思います」
「よし、決定だな、俺は木原篤郎、こっちは白鐘直斗、よろしくな!」
「ああ、よろしく頼む」
ようやく顔を綻ばせ、差し出された手に答える。
(しかし、頭の中に異物を埋め込まれている……いったいどうやって?)
三人でデパートへ向けて歩きながら、直人は一人思考を巡らせ続ける。
先程の実験で自分たちに何かが仕掛けられていることは判明した、しかしその手術跡のような物は見つからない。
最初の部屋へと連れ去られた時といい、自分の理解の範疇を超えている技術を持っているのは確実だ。
(電波を撹乱し、とりあえず逃走することができたとしても……それだけでは解決しない)
どうやって捕らえられたかわからない、それはつまり、どこまで逃げれば安全なのかもわからないということだ。
この殺し合いを企んだ者を見つけなければ一生怯え続けることになるだろう。
(だけど、手がかりがなさすぎる)
今の状態では殺し合いの目的さえも掴めない、すべては深い霧の中だ。
(先輩……力を貸してください)
その霧の中、直人が思い浮かべるのは一人の男性。
誰よりも大切に想う人に祈りを捧げ、彼女は霧に隠れた真実を模索する。
【D-6/街/一日目 深夜】
【白鐘直斗@ペルソナ4】
【状態】健康
【装備】なし
【所持品】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
1:殺し合いの首謀者を探し出す。
2:デパートで電波を撹乱する機械を作る。
【木原篤郎@デビルサバイバー】
【状態】健康
【装備】なし
【所持品】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
1:デパートで電波を撹乱する機械を作る。
【不動遊星@遊戯王5D's】
【状態】健康
【装備】なし
【所持品】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
1:デパートで電波を撹乱する機械を作る。
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最終更新:2009年12月14日 23:19