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剣撃拳舞

月明かりに照らされた砂浜を二人の少女が走り抜ける。
二人とも疲労困憊という表情ながらその足を止めようとはしない、何かに追われるかのようにひたすら走り続けている。

どれだけ走っていたのか、砂浜が終わり林に入ったところでどちらともなく足を止めて手近な木へともたれかかる。

「も、もう、追って、こない……よね……」
「そ……そんなの、知る、わけ……ないし……!」

たった今走って来た方向を見ながら誰ともなく問いかけたのが里中千恵。
ブラウスの上に明るい緑のジャージを着ていて、それが目を引きつける。
それに律儀に答えたのはすぐ横で息を切らしている池田華菜。
こちらはごく普通の風越学園の制服を着ていておかしいところはないが、その髪型がネコミミを思わせて妙に愛嬌がある。

「っていうか……何なのあいつ、ありえないって……」
殺し合いなんて、書いてはあるけどさ……本気で刀振り回すとか……」

COMPのルール説明を恨めしそうに見つめながら、池田は先ほどの光景を思い出して身を震わす。
二人が出会ったのはこの場所に飛ばされてすぐのことだ、砂浜でCOMPを見て二人して首を捻っていた時、襲撃を受けた。
セミロングの黒髪の男、黒い刀を持ち躊躇なく自分たちに斬りかかってきた。
突然のことに身を竦ませてしまう池田の手を千恵が引っ張る形で何とか逃げ延びたが、本当に殺し合いを行おうとする者がいるということに衝撃を受ける。

「……って、待ってよ、あいつ放っておいたら雪子たちが危ないじゃん!」
「そんなこと言っても、他の人のことまで構ってられないし……にゅあ!? キャプテン守らないと!」

それぞれ大切に想っている人の顔を思い浮かべ、たった今逃げてきた方向へ視線を向けて――すぐに顔を引っ込める。
自分たちを襲った男がゆったりとした足取りで真っ直ぐこちらへと向かってきていた、今更隠れたところで無駄なのだが、それでも木の陰に入って身を隠そうとする。

「ど、どうしてこっち来るの!?」
「砂浜だから、足跡ついてたんじゃ……」
「し、しまった、その手があったか……!」

頭を抱えながら千恵はもう一度男の姿を確認しようと顔を出す。

(あれ?)

男のいる位置は先ほどと変わっていない、何故か立ち止まって刀を腰だめに構えている。
当然そんなところで刀を振ったところで自分たちには届くはずがない、他に人がいるのだろうかを視線を移すが誰も見つからない。
一体何を、ともう一度男に視線を戻し、

気づく。

「伏せて!」
「わっ!?」

池田を引き倒し千恵もその場に倒れこむ。
その直後、周囲の木々が黒い刀に切り倒され二人の周りに倒れてきた。

「な、なに!?」
「刀が伸びた、それに、こんな長い刀普通の人じゃ扱えるわけ……もしかしてあいつ、シャドウなの!?」

状況が分からない池田を置いておき、千恵はデイパックから支給品であるヌンチャクを取り出して男を睨みつける。

「華菜ちゃん、あいつは私が何とかするから逃げて」
「な、何言ってるんだよ!? 今の見たろ!? 一人で勝てるわけないし!」
「だいじょーぶ、私、こういう化け物みたいな相手と戦うのは慣れてるから!」

軽くステップを踏みながらそう告げ、千恵は男へと向かって駆け出していく。
池田はどうするべきか千恵と男をしばらく見つめ――

「わ、私は止めたからな!」

林の奥へと走り出していった。




男、和泉は表情を変えぬまま焦りを感じていた。
超高校生級の運動神経を持つ彼ならば、女子高生の二人程度スーツが無くともあっさりと斬り殺せたはずなのだ。
だというのにジャージの少女、今まさに彼に向ってきている少女の存在がその予想を覆した。
吸血鬼の集団さえも薙ぎ払った和泉によるガンツソードの一撃を回避する、スーツ無しで速度が落ちているとはいえ並の人間では真似できない事だ。

「何者だ、お前」
「それはこっちのセリフ!」

声と共に放たれたヌンチャクによる攻撃を軽く下がり回避。
そのまま刃の長さを戻したガンツソードを振るうが、千恵は手首のスナップのみでヌンチャクを操りそれを弾き返す。

「よし、できるじゃん私!」

千恵は重度のカンフーマニアである。
カンフーアクションの映画を何度も見て、我流で特訓をするなど相当なハマりっぷりだ。
花村達と共にマヨナカテレビの事件に関わった時もその足技で何匹ものシャドウを倒してきた。
武器を人に向けて使ったことはなかったが、実際に効果的に使えていることに自画自賛する。

その様子を見ながら和泉は数歩後ろへと下がる。
予想以上に戦いなれている相手、迂闊に攻めれば足元を救われかねない。
身体能力ならば星人や吸血鬼達の方が比べ物にならないほど上だ、だがその差を埋める物を相手は持っている。

それは「恐怖」と「恐怖に負けない心」。
恐怖の無い吸血鬼や星人達は和泉の攻撃に意識を向けず倒れていった。
恐怖に駆られるだけの者も和泉の手から逃れることはできなった。
だが、千恵はそのどちらでもない、和泉の攻撃に恐怖を抱き、その恐怖を戦うための力へと変えている。
その光景に和泉は一人の男を思い出す。

(まだ立ち塞がるか、玄野……)

突然和泉は瞳を伏せる。
武器を持っての戦いの最中に行う行為ではない、隙だらけの状態になったはずの和泉へと千恵は何故か攻め込めない。

(まずっ……この人、本気だ……!)

ほんの数瞬の後、閉じた瞳が再び開く。
その瞬間千恵は持っていたヌンチャクを捨てて全力で和泉の頭部へとハイキックを繰り出した。

「やあっ!」

今まで数えきれないほどの強敵を倒してきた、千恵が最も頼りにする自らの足による攻撃。
その蹴りは狙い違わず和泉の頭部へと迫る。

「ふっ」

一息。
それだけの時間があれば、和泉にとっては十分すぎた。


高速で迫っていた蹴りの動きが突然乱れる。
和泉の腕が千恵に掴まれ、息遣いが聞こえるほどの距離で睨まれる。
そのまま和泉の首に千恵の手がかけられ、

「ごめん……雪子……」

和泉は静かに、ガンツソードを千恵の体から引き抜いた。


【里中千恵@ペルソナ4 死亡】

【F-2/林/一日目 深夜】
【和泉紫音@GANTZ】
【状態】健康
【装備】ガンツソード@GANTZ
【所持品】支給品一式
【思考】
1:強力な支給品を集め、最後の一人となる。

【池田華菜@咲-saki-】
【状態】健康、疲労(中)
【装備】なし
【所持品】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
1:和泉(名前は知らない)から逃げる。
2:福路美穂子を守る。


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里中千恵
池田華菜
和泉紫音

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最終更新:2009年12月13日 19:36
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