14話「月下幽鬼」
F-3に存在する、5階建ての総合病院の屋上に佇む、
病院という場所によく似合う白衣姿の男がいた。
男――宮田司郎は、ある用事があって自分が住む村にある「蛇ノ首」という場所に、
深夜に車を走らせ出掛けた。そして、その場所で用事を済ませた直後、
地震と共に大音量のサイレンが鳴り響き、意識を失った。
そして、再び意識を取り戻した時、そこは周囲に見知らぬ人物ばかりがいる、
どこかオペラホールのような豪華な内装の円形ホールにいた。
そして、黒い服を着た狼の頭部を持つ、空想の世界の「獣人」のような女性が、
「最後の一人になるまで殺し合え」と、この殺し合い――バトルロワイアルの開幕を宣言した。
「支給品の入ったデイパックに、首には爆薬の仕込まれた絶対に外せない首輪。
どうやらあの狼女は本気で殺し合いをさせる気らしいな。
全く……厄介な事になったな」
首にはめられた冷たい首輪の感触を再確認し、やれやれといった表情を浮かべる宮田。
デイパックを開け、中身を確認する。
「これは……刀か? アタリだな」
それは柄や鍔に装飾の施された大振りの刀だった。
鞘から抜いて引き出してみると、鋭い刃が月明かりを反射し光る。
重量があったが、扱えないレベルでは無い。
次に名簿を開いて見てみるが、知っている名前は、村の外れに住む老人の猟師「志村晃」のみ。
他は皆宮田は知らない名前ばかりだ。
「志村晃」なる人物も、宮田にとって特に親しい人間では無い。
むしろ、警戒対象になっている人物である。
(牧野さんや、八尾さん、神代家の人がいるかもしれないと思ったが、どうやら誰もいない。
なら……殺し合いに乗るのも、悪く無い。それに……俺はもう、一人殺している)
満月が輝く夜空を見上げ、宮田はルールに則り、殺し合う決意を固める。
この殺し合いが始まる前、既に彼は、衝動的とは言え人を殺している。
殺人が許容されるこの状況で、それを拒む理由も、彼には無かった。
「それにしてもここは、何の建物の屋上なんだ?
……この小さな機械で、方角や時間、現在位置が分かるのか」
説明書通りに操作すると、現在位置は「F-3病院」と表示される。
地図を見れば、確かにF-3に「病院」とランドマークされている。
(奇縁だな。医者である俺のゲーム開始地点が、病院とは)
心の中で呟きながら、フッと皮肉の籠った笑みを浮かべる宮田。
「とりあえず、まずはこの病院でも調べてみるか。
そう焦って他の参加者を探す事も無いだろう」
白衣を翻し、ベルトに鞘に入れた刀を挿し込み、宮田は屋内へ続く扉へ歩き出した。
「
セイファートだったな。良いだろう、お前の言う通り、殺し合いをしてやるよ」
【一日目/深夜/F-3病院屋上】
【宮田司郎@SIREN】
[状態]:健康
[装備]:アインの刀@FEDA
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]:
0:殺し合いに乗る。但し優勝したい訳でも無い。
1:病院内を調べてみる。
2:他の参加者を見つけ次第、殺す。
[備考]:
※初日0:00にサイレンを聞き、意識を失った直後からの参戦です。
従って幻視能力は目覚めていません。
≪支給品紹介≫
【アインの刀@FEDA】
アルカディア解放軍第3遊撃部隊員、アイン・マクドガル愛用の刀。
公式絵でアインが背負っているアレ。
最終更新:2010年01月21日 00:52