「ちくしょう、わからねえ……。わけがわからねえっつーんだよ! なんなんだ、これは!」
暗い森の中、「ジュクの秀」こと小島秀範は感情をむき出しにして叫んでいた。
彼は悪の組織「バダン」の一員として、島根まで巨大ロボット「キングダーク」を移動させる任務に就いていたはずだった。
だがその途中ふいに意識が飛び、気が付けばこの殺人ゲームの参加者とされていたのだ。
「冗談じゃねえ! 俺がいなきゃあの作戦は成り立たねえんだぞ!」
秀のバダン内における立場は最下層、下の下である。にもかかわらず、彼が重大な作戦の中枢に抜擢されたのにはわけがある。
キングダークは、もともと秘密機関GODの長である呪博士が作り上げたロボットを復元したものである。
博士は自分以外の者がキングダークを操作できないよう、あるプロテクトをかけていた。
それは改造手術を受けていない、生身の人間にしか操作できないというもの。
そして構成員のほとんどが改造人間であるバダンの中で、数少ない生身の人間が秀なのだ。
彼が選ばれたのはそれだけの理由であり、彼の能力も組織への忠誠心も関係がない。
だが、彼がいなければ作戦が根底から崩壊することも事実なのだ。
「こうなったら、やるしかねえのか……。全員ぶっ殺して、あの女に頼んで元の場所に返してもらうしか……」
自分のせいで作戦が失敗したとあっては、自分を拾ってくれた恩人・三影に会わせる顔がない。
なんとしてでも、自分は帰らなければならないのだ。
そのために、秀はバトルロワイアルゲームに乗る決意を固める。
彼は自分に支給された荷物をあさり、中に入っていた拳銃を手に取った。
「やってやらあ……。ジュクの秀を舐めるなよ……!」
◇ ◇ ◇
数分後、秀は一人の少女を発見する。
桃色の長い髪が印象的な彼女は、地面にはいつくばって「メガネメガネ……」と呟いていた。
どうやら、この視界の悪い森でメガネを落としてしまったらしい。
(カモだな……)
少女に気づかれないよう物陰に隠れつつ、秀は改めて銃を構える。
そして、銃口を少女に向けた。
心臓が激しく脈打つ。銃を持つ手が異常なまでに震える。
かつては新宿で悪党を気取り、今は邪悪な組織に身を置く秀だが、自分の手で人を殺したことはない。
他者の命を奪うという重圧が、彼の心身に重くのしかかっていた。
(何をビビってやがる、俺……! たしかに俺は自分で人を殺したことはねえ……。
けど、兄貴や怪人どもが人を殺すところはさんざん見てきたじゃねえか!
今更びびる必要なんか、どこにもねえんだよ!)
腕の震えが止まる。目が据わる。秀が覚悟を決めた証だ。
(死んでもらうぜ、姉ちゃんよお!)
歯を食いしばり、秀は引き金を引く。直後、少女の肩を弾丸が貫いた。
「あう!」
突然我が身を襲った痛みに、少女は悶絶の声をあげながら崩れ落ちる。
「ちっ、急所には当てられなかったか。仕方ねえ。もうちょっと近くからもう一発ぶち込むか」
不満げに呟きながら、秀は少女の前に姿を見せる。
相手は無力な少女、しかも手負い。万が一にも反撃を喰らうことはないはず。
そんな慢心ゆえの行動である。
「おとなしくしておけよ。次は確実に脳天ぶっ飛ばして、楽にしてやるから」
やがて少女の眼前まで近づくと、秀は彼女の額に銃の照準を合わせる。
彼はすでに、自分は100%確実に少女を殺せると思いこんでいた。
ゆえに、秀は気づかない。彼女……
高良みゆきが、いつの間にか落としたメガネを見つけてそれをかけ直していたことに。
秀の銃が二発目の弾丸を発射する直前、みゆきは叫んだ。
「ペルソナァ!」
「なっ!」
秀は驚きを隠すことが出来なかった。目の前の少女が何やら叫んだ瞬間、彼女の周りにおもちゃの如く小さな兵隊たちが大量に出現したのだ。
事実を事実としていえば、このとき動揺せずに引き金を引いていれば秀は勝っていた。
だが予想外の事態に混乱する彼は、それが出来なかった。その瞬間、彼の敗北は決定したのだ。
棒立ちの秀に、小さな兵隊たちは銃弾を浴びせる。その銃弾はお返しと言わんばかりに、秀の肩を貫いた。
「あぎゃああああ!!」
悲鳴を上げながら、秀は背中から地面に倒れ込む。その様子を、みゆきは冷たい眼差しで見つめていた。
「この私に傷を負わせるとは……。覚悟は出来ているのでしょうね?」
丁寧だが、刃のごとき鋭さを帯びた口調でみゆきは言い放つ。
それを聞いて、秀は確信した。この女は、平気で人を殺せる人間だと。
怪我の度合いは、おそらく五分。だが撃たれた拍子に銃を手放してしまった自分に対し、相手は謎のミニ兵士たちを従えている。
まともにやれば、殺されるのは自分だ。
とっさにそう判断した秀は、急いで体勢を変える。
両足を正座の形にし、両手と額を地面に付ける。すなわち、土下座である。
「すまねえ! 俺だっていきなり殺しあえなんて言われて、怖かったんだ!
だから無防備にしてたあんたを見てつい、魔が差して……。
もうこんなことはしねえ! 約束する! だから、命だけは助けてくれ!」
秀が選んだ選択肢は、命乞い。
彼にもプライドはある。たかが小娘にここまでして嘆願することに、屈辱を感じないわけではない。
だが、命には代えられない。秀には、どうしてもここで死ねない理由があるのだ。
「顔を上げてください」
自分に頭を下げる男に対し、みゆきはそう告げた。
許されたものと判断し、秀は喜びの笑みを浮かべながら顔を上げる。
だが、その笑顔は一瞬にして凍り付いた。彼の目に飛び込んできたのは、自分を包囲する兵隊たちの姿だったのだ。
「たかが土下座ごときで、私を傷つけた罪が償えるわけないじゃないですか」
聖女のような笑みを浮かべながら、みゆきは悪鬼のような言葉を言い放つ。
「やりなさい、バッド・カンパニー」
みゆきの号令と同時に、兵隊たちは一瞬のずれもなく同時に銃弾を放つ。
瞬く間に秀は蜂の巣となり、息絶えた。
「ふう……。まったく、こういう身の程知らずには困りますね」
溜め息を漏らしながら、みゆきは秀の首輪に付けられたチップと彼の荷物を回収する。
まるで、それが当然の権利だと言わんばかりの態度で。
それが終わると、みゆきは脇目も振らずに移動を開始した。
撃たれた肩の傷が痛むが、幸い自分に支給された命のリングは歩くことで傷をいやしてくれるという優れもの。
効果もわざとかすり傷を付けてから歩くことで実証済みである。
もっともその実験中にうっかり転んでメガネを落としてしまい、先程の男につけいる隙を与えてしまったのだが。
「やはり私一人では、どうしても隙ができてしまいますねえ……。
こんな愚かなイベントを開催したあの女に制裁を下すためにも、早く皆さんと合流しないと……。
泉さんたち、どこにおられるのでしょう」
とても殺人を犯した直後とは思えぬ穏やかな口調でひとりごち、みゆきはなおも歩き続けた。
【一日目・深夜/C-6・森】
【高良みゆき@こなたとハルヒの第二次世界大戦】
【状態】右肩に銃創、黒みwiki
【装備】命のリング@ドラゴンクエスト4コマ漫画劇場、ヨッミーの拳銃@パロロワ戦記
【道具】支給品一式×2、不明支給品0~4、スターチップ×1
【思考】
基本:バトルロワイアルを頓挫させ、「ハルヒ」に制裁を加える。
1:幸星党メンバーとの合流。
2:襲ってくる相手は容赦なく葬る。
※南米でアメリカ連邦と戦っている時期からの参戦です。
【ジュクの秀(小島秀範)@仮面ライダーSPIRITS 死亡】
最終更新:2010年01月15日 00:51