人気のない路地の真ん中。
柊かがみは名簿を手に、物憂げな表情を浮かべていた。
(失態だわ……。まさか幸星党の主力メンバーが、揃いも揃って拉致されるなんて……。
くじらさんや桜庭先生がまだ向こうに残ってるとはいえ、アメリカの物量相手じゃ明らかに駒不足……。
絶対に死人を出さずにみんなでここから脱出しないと……。
だいいち、戦争の勝敗以前にこなたやつかさやみゆきが死ぬなんて嫌だもの!)
かがみの脳内に、優勝して自分が生き残るという選択肢はない。
仲間と一緒に生き残らなければ意味がないのだ。
そもそも、このゲームを主催した「ハルヒ」は彼女にとって元から敵だ。
素直に言うことを聞く義理などないし、聞いたところで無事帰してもらえるとも思えない。
ならば道は一つ。このゲームに反逆し、「ハルヒ」を打ち倒すしかない。
もとより、いつかは倒さなければならない相手だ。その方法が変わっただけの話である。
(よし、そうと決まればさっそく行動よ! まずはこなた達との合流ね!
見てなさい、こんな
殺し合いなんかすぐにぶっ潰してあげるんだから!)
決意を固め、かがみは颯爽と歩き出す。だが、その足はすぐに止まってしまった。
前方から、ものすごい勢いで走ってくる何者かに気づいたからだ。
(まさか、さっそく殺し合いに乗った人が……?
あんまり殺しなんてしたくないけど、最悪の場合は自分の身ぐらいは守らないとね……)
支給品の拳銃を構え、かがみは迫ってくる相手を待ちかまえる。
少しして、闇の中でもはっきりと見えるほど相手との距離が詰まる。
近づいてきたのは、簡素ながら品のいい衣服を身につけた、凡庸な顔立ちの青年だった。
(来る!)
止まる気配もなく突っ込んでくる青年に対し、かがみは威嚇射撃を行おうとする。
だが彼女が引き金を引くより早く、その体は青年の腕に包み込まれていた。
(えっ!?)
予想外の展開に、戸惑うかがみ。そんな彼女に向かって、青年は言う。
「よかった、こんなに早く見つかって……。無事だったんだな、かがみん!」
「いや、あの……。どちら様ですか?」
◇ ◇ ◇
数十分後。
「だーかーらー!! 私はあなたの娘じゃないって!! 他人の空似なんですってば!!」
「うーん、でもなあ……。ここまでうり二つで、なおかつ名前までそっくりってのは……」
「あーもう……」
いくら言っても納得してくれない目の前の青年……
空気王に対し、かがみはもはや何度目かわからぬ溜め息を漏らす。
話を聞くに彼の養女がかがみとうり二つで、それ故かがみのことを娘だと勘違いしているらしい。
その誤解を解くために先程からかがみは説明を繰り返しているのだが、結果はごらんの通りである。
(あの涼宮さんが私たちの知ってる涼宮さんの異次元同位体であるのと同様に、この人の娘ってのもおそらく平行世界の私なんだろうけど……。
あんなのが父親って……。我ながら同情するわ)
浮かない表情で、またしても溜め息をつくかがみ。だが直後に空気王が放った一言が、彼女の表情を一変させる。
「まあいいや。ここは納得しておこう。うん、納得した」
「はあ? ちょっと、いきなりどういうことよ?」
突然発言を翻した空気王に、かがみはたまらず詰め寄る。
「いや、いきなりっていうか……。ずっと考えてた末に出した結論だよ。
君のその姿は、俺にはかがみんにしか見えない。けど、君がかがみんだとしたら俺に嘘をつく理由が全くない。
つまり君は、本当にかがみんとは別人なんだろう。理屈で考えればすぐにわかることだ。
けど、感情でどうしても納得できなかった。その整理がようやく出来たってことだよ。
悪いね、迷惑かけちゃって」
「い、いや、謝られても困るんだけど……」
「お詫びと言っちゃなんだけど、君に力を貸すよ。わざわざ話に付き合ってくれたってことは、積極的に他の人を襲うつもりはないんだろ?
だったら俺と志は同じだ。俺もこんなふざけたゲームに付き合うつもりはないからな。
それに、娘とそっくりの女の子を放っておくわけにはいかないよ。
ああ、もちろん迷惑だったら断ってもらってもかまわないけど」
「あ、いえ、断るだなんてそんな……。こちらこそ、よろしくお願いします」
急にまともになった空気王に、どう対応していいのかわからないかがみ。
流れでつい、彼からの申し出を受け入れてしまう。
「よし、それじゃあ交渉成立だな! よろしく、柊さん! それじゃまあ、早速行きますか!
君の友達や俺の娘を早く見つけてやらないとな!」
「あ、ちょっと待ってください!」
「ん?」
意気揚々と駆け出そうとする空気王だが、かがみはそれを制止した。
「本格的に行動する前に、お互いの武器をチェックしておきたいんです。
もしかしたら、相手にゆかりのある武器が支給されてるかも知れませんし……。
というか、私の武器が空気王さんに支給されていないか確認したいんです。
柊かがみ専用強化スーツ、って支給されてませんか?」
「いや、残念ながら」
かがみの問いに対し、空気王は首を横に振る。
「使用者の名前が入ってれば、俺もピンと来るだろうしな。というか、俺のランダム支給品はこれだけ」
そう言って、空気王はかがみに何かを投げ渡した。
「なんですか、これ。変な形のベルトみたいですけど……」
「ギャレンバックル、って代物らしい。融合係数が高い人間しか使えないが、使うことが出来ればギャレンという戦士に変身できるらしい。
まあ、騎乗士の国で使われてる『宝具』と同じようなものだな」
「ふーん、こっちでいう変身ヒーローのアイテムってことかしらね……」
「騎乗士の国」というのはかがみには聞き覚えのない固有名詞であったが、すでに空気王を異世界の人間と認識している彼女はさほど気にしてはいなかった。
「それじゃ、こっちからも聞かせてもらうかな。『龍騎』と『クレイジーダイヤモンド』、この二つのどっちか、支給されてないか?」
ギャレンバックルを返してもらいながら、空気王はかがみに尋ねる。
「んー、申し訳ないけどそれもないですね。私に支給されたのはこの銃とナイフと……。
それから、この槍みたいなやつ……」
かがみの取り出した、三つ目の支給品。それを見たとたん、空気王の目の色が変わった。
「悪い、ちょっとそれ貸して!」
「えっ?」
戸惑うかがみから半ば強引に支給品を奪うと、空気王はそれをまじまじと見つめる。
「間違いない……。これは三国ロワ国に伝えられる伝説の武将・呂布が使っていたとされる武器、方天画戟!!
まさかこの目で見られる日が来るとは……」
「あの、空気王さん?」
あっけに取られるかがみをよそに、空気王は独白を続ける。
「保存状態も良好、よく手入れされている……。武器としてでなく、骨董品としての価値も付くな……。
持って帰れば1000万……いや、2500万ルルーシュぐらいの値段は……」
「あのー、もしもし?」
かがみの呼びかけは、またしても無視される。
空気王は異様なまでに真剣な表情で方天画戟を構えると、それをたまたま近くにあった道路標識目がけて振るった。
小気味よい音を立てて、標識は半ばから断ち切られる。
「…………!」
「実用性も問題なし、だな」
満足そうな笑みを浮かべる空気王の横で、かがみは驚きのあまり目を見開いていた。
「ちょ、ちょっと! 空気王さん、見た目によらずけっこうすごいこと出来るじゃない!
何? 実は武術の達人だったとかそういう話?」
「いやいや、そんなたいそうなものじゃないよ。俺はただ、使い方がわかるだけさ」
興奮気味のかがみに対し、自分の腕を叩きながら空気王は言う。
「俺はもともと、流浪の行商人だったからな。自分で言うのもなんだが、目利きは一級品だぜ?
その目を持ってすれば、初めて使う道具を使いこなすこともたやすい」
「それはそれですごいわね……」
「まあ逆に言えば、道具が何もないとそこらのチンピラにも簡単に負けるんだけどな!」
「いやいや、そんなこと誇らしげに言うなー!!」
なぜか高らかに笑う空気王に、かがみの鋭いツッコミが炸裂する。
「まあいいわ……。それ、空気王さんにあげます。
どうせ強化スーツなしの私じゃ、筋力が足りなくて使いこなせないだろうし」
「おお、それはありがたい! 恩に着るぜ!」
目を輝かせながら、かがみの手を握る空気王。かがみは若干呆れつつも、それに付き合う。
「それじゃ武器の確認も済んだし……。改めて行動開始といきますか」
「ああ、そうだ。その前に言っておきたいことがある。俺の呼び方についてなんだが……」
「え? 『空気王さん』じゃ何か問題あるんですか?」
「パパと呼べ」
「だが断る」
「じゃあ俺は、断ることを断る!」
「なんじゃそりゃー!」
こうして、微妙に不安な二人の旅路が始まったのであった。
【一日目・深夜/D-3・市街地】
【柊かがみ@こなたとハルヒの第二次世界大戦】
【状態】健康
【装備】ベレッタ M92@仮面ライダーSPIRITS、朝倉さんのナイフ@涼宮ハルヒちゃんの憂鬱
【道具】支給品一式
【思考】
基本:主催者である「ハルヒ」の打倒。
1:幸星党メンバーとの合流(こなた、つかさ、みゆきを優先)。
2:強化スーツが支給されているなら入手したい。
※南米でアメリカ連邦と交戦している時期からの参戦です。
【空気王@パロロワ戦記】
【状態】健康
【装備】方天画戟@中華武将祭り
【道具】支給品一式、ギャレンバックル@仮面ライダーディケイド
【思考】
基本:バトルロワイアルの打破。
1:知り合いとの合流(かがみん、みWikiを優先)。
2:宝具「龍騎」とクレイジーダイヤモンドのDISCが支給されているなら入手したい。
最終更新:2010年01月05日 00:53