59話「自分でも分からない感情」
E-4市街地の上空を飛ぶ黒竜・
石川清憲。
その背中には坊主頭の少年・大沢木小鉄が乗っていた。
「小鉄、今何時だ?」
「ん? ちょっと待って…」
清憲が背中の小鉄に時刻の確認を求める。
小鉄は自分のデイパックの中からデバイスを取り出し、表示されている時刻を報告する。
「えーと、5時40分だってさ」
「そうか…じゃあ、もうすぐ放送があるな。そろそろどこかで降りよう」
死者と禁止エリアの発表が行われる定時放送はしっかり聞いておかなければならない。
どこかで落ち着く必要があると感じた清憲は飛行速度を落とし、着陸準備を始める。
その際に、遠心力と思しき力が小鉄に大きく働き、その小さな身体が大きく後ろに動いた。
「あっ」
「ん?」
清憲が背中に感じていた重力を感じなくなるのと、
小鉄が急激に浮遊感を感じるようになったのはほぼ同時。
そして小鉄は当然のように落下を始めた。
「わああああああああああああ!!」
「小鉄!!?」
悲鳴を上げながら民家の屋根の上に落下を始める小鉄。
そしてその真下には先端の尖ったテレビアンテナ。
清憲の顔から一気に血の気が引き、気付いた時には高速で小鉄に向かっていた。
一方の小鉄は、どういう訳か周りの風景がスローモーションに見えていた。
(やべえ、俺は死ぬのか)
以前、彼は人が死ぬ時、人生の思い出が頭の中に次々と蘇る「走馬灯」というのを体験したいと思い、
様々な試みを重ね、必死の思いで走馬灯を見る事に成功した。
その際、数々の思い出が頭の中に蘇ると同時に周囲の風景がスローモーションに見えたのだ。
そう、今の状況とほとんど同じ。つまり、死の直前。
裏付けるかのように小鉄の頭の中に今まで生きて来た人生の思い出が次々と浮かんでは消える。
(走馬灯…畜生、やっぱ俺死ぬのか。ああ、まだ沢山遊びたかったのに…)
アンテナの先端が迫る。
上空を向いている小鉄はその事は分からなかったが、
少なくとも落ちたら怪我では済まないだろうと言う事は彼にも分かった。
しかし――小鉄はアンテナに串刺しになる事は無かった。
「あっ…?」
まさにアンテナの先端が小鉄の背中を貫くまで僅か数メートルという所。
黒い影が小鉄を受け止め、再び数メートル上空へ飛び上がった。
最初、何が起きたのか分からない小鉄だったが、徐々に状況を認識していく。
自分は黒い竜の腕に抱かれていた。
そして自分を救ってくれたのはこの黒い竜――石川清憲だという事。
民家の庭先に降り立ち、清憲が小鉄をゆっくりと地面に下ろす。
「し、死ぬかと思った……マジで……」
緊張が解けたのかへなへなと芝生の上に座り込んでしまう小鉄。
「こ、小鉄、大丈夫か? どこも、怪我無いか?」
清憲が小鉄に寄り、心配そうな、今にも泣き出しそうな顔で小鉄に尋ねる。
「大丈夫大丈夫。あ、ありがとうな、助けてくれて…」
「……良かった。本当に良かった。ごめんな小鉄、ごめんな……うっ、うっ」
目から大粒の涙が溢れ、黒い竜は嗚咽を漏らし、泣き崩れてしまった。
泣き出してしまった清憲を目にして小鉄はかなり困惑する。
「え? いやいや、な、泣くなよ!?」
「うっ…ぐすっ……あそこでっ…もしっお前が死んだらっ……どうしようと思ってっ……!」
「大丈夫だって! ほら、俺何とも無いだろ? お前のおかげだよ!
だから泣く事無いって! 泣くなよ男だろ!」
「……うん……」
小鉄に励まされ、しゃくり上げながら右腕で涙を拭う清憲。
一応言っておくと、清憲は小鉄より10歳程年上である。
着陸した庭のある民家の中に入り、放送を待つ事にした清憲と小鉄。
家の中を漁って回っている小鉄を、清憲は和室に座りながら見ていた。
そして、先程自分の取った行動を振り返っていた。
(俺は何で、あんなに必死になって小鉄を助けようとしたんだろう)
たかが出会って数時間過ごしただけの、赤の他人であるはずの少年を、
どうして自分はあそこまで必死で救おうとしたのか。
しかも、助けられ、少年が無事だという事が分かった途端、号泣してしまった。
落としてしまってすまないという罪悪感と助けられて、無事で良かったという安堵からだったが、
なぜ自分はそこまであの大沢木小鉄という少年を心配するようになったのだろう。
――ああ、もしかしたら。
(俺は、知らない内に――)
その時。
会場を覆い尽くすような、大音量のサイレンが鳴り響いた。
「な、何だ!?」
「うわわわっ、何だよ!?」
突然鳴り響いたサイレンに二人は驚く。
ふと、壁の時計を見れば、針は6時を指していた。
時計が指し示す時刻、そしてこの大音量のサイレン。何を意味するのかはすぐに見当が付いた。
「小鉄……放送だ……」
「放送!?」
【一日目/早朝/E-4市街地民家】
【石川清憲@オリキャラ】
[状態]:精神的疲労(大)、涙の跡
[装備]:エグゼキューショナーズソード
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]:
0:死にたくない。生き残る。
1:放送だ……!
2:小鉄には死んで欲しく無い。
[備考]:
※「西川のり子」「仁ママ」のおおよその特徴を把握しました。
※大沢木小鉄が自分とは別世界の人間だと判断しました。
【大沢木小鉄@浦安鉄筋家族】
[状態]:健康
[装備]:文化包丁
[所持品]:基本支給品一式、発炎筒(3)
[思考・行動]:
0:とりあえずキヨノリ(石川清憲)と一緒にいる。
1:放送!?
2:春巻が死ぬなんて…。
[備考]:
※本編最終話より後からの参戦です。
※バトルロワイアルのルールと性質について若干理解しました。
最終更新:2010年02月21日 12:51