69話「崩壊」
F-2のとある民家。
学生服姿の美少女、吉良邑子と、吉良とは別の学校の制服に身を包んだ狼獣人の青年、神田修次は、
リビングの椅子に座り、先刻の放送で発表された情報を纏めていた。
「……そういや、吉良。お前が殺したのって」
「そう、太田君」
「……普段仲良くなかったの?」
「仲は良いっちゃあ良いけど、別に悲しくは無いね」
「ほう」
「それより、禁止エリアは……書いたね。どこも遠いから、気にしなくて大丈夫でしょ」
「そうだな。はぁ…ちょっと冷蔵庫見てこよ」
知り合いもいないため、死者発表で憂鬱になる事も無い修次は、
空腹のため台所に行って食糧を探し始めた。
ここで吉良は自分の荷物の中にある、太田から奪ったある物を思い出す。
「これ」の事は修次には伝えてはいない。
(催淫剤、ねぇ……女に使うと大変な事になるらしいけど、
男に使うとどうなるのかしら)
説明書には「男に使うな」という主旨の注意書きがあるが、
使ったらどうなるのかまでは書いていない。
男に使うとどうなってしまうのか。吉良は無性に試したくなる。
実験台になりそうな男は、すぐ近くにいる。
形容し難い色をした液体が入った注射器を一本手に取り、
台所を漁っている修次に後ろからゆっくりと近付く。
修次は冷蔵庫のみならず食器棚まで物色し始めていた。
「チッ、何も無いんだが……」
(神田君……ゴメンねー)
銀色の毛皮を持った、狼の獣人である神田修次。
この催淫剤、打ち込んだらどうなるのか。
もしかしたら、まさに野獣のようになって自分に性的な意味で襲い掛かるかもしれない。
正直そういった事態は避けたいが、興味の方が警戒心を上回る。
(ええい、いっちゃえ!)
吉良は注射器を構え、修次の背中に突進した。
「いっ!?」
突然背中に感じる圧力、そして小さな痛みに驚く修次。
「いってえ、何すんだよ、吉良……ぐ……?」
「……」
そしてその効果はすぐに現れた。
「ぐっ、う゛、が、あああああああああ」
修次は口から赤い泡を吹き、床に倒れ激しく苦しみ始めた。
泡は次第に吐血へと変わり、台所の清潔な床があっという間に鮮血で染まる。
予想していなかった凄惨な光景に、流石の吉良も息を呑む。
どうやらあの催淫剤は男に使うと毒薬の効果が表れるらしい。
この様子では、修次はもう助からないだろう。
(でもまあいいか、どうせゆくゆくは殺すつもりだったし)
むしろ手っ取り早く済む、と、吉良は内心喜んでいた。
その時。
「ガアアアアアアアアッ!!!」
修次が立ち上がり、腰に差していた刀を引き抜き、一閃した。
吉良は何が起こったのか分からなかった。そして、もう一生分かる事は無くなった。
彼女の上半身に、下から上に向けて斜めに深い切り傷が出来ていた。
修次の放った刃は吉良の生命維持に必要な臓器を全て斬り裂いていたのだ。
吉良は修次と同じように、口から大量の血を吐き、二度目となる死を迎える。
床に崩れ落ちる吉良の姿を確認すると、修次もまた、
ぷつりと糸が切れたかのように倒れ、虚空を見詰めたまま動かなくなった。
結論から言って、この急造訳ありコンビは上手くいくはずが無かったのである。
だからこのような結果になってしまったのだ。
なるべくしてなった結果、と言えよう。
【吉良邑子@自作キャラでバトルロワイアル 死亡】
【神田修次@オリキャラ 死亡】
【残り 23人】
最終更新:2010年02月21日 12:50