(いったい、何がどうなっている…?)
そこには一人の男が佇んでいた。
和風の着物に肩までギリギリ届かない程度まで伸ばしてある黒髪までならまだ許容範囲内だろうが、男の付けている鬼の頭部を模したかの様な仮面が完全に場違い感を放っていた。
彼の名はハクオロ。
ある世界において、一つの国の皇を勤めており、またその世界の神とも呼べる存在だった男がそこにいた。
だが今彼の表情にあるのは狼狽と焦りのみで、本来持ちえている威厳はなりを潜めていただった。
(私は確かにあの時封印された筈。
それに、その時に外れたはずの仮面までまた付いている…いったいこれは…)
そう思案し、自分の顔、正確には、自分の顔に付き剥がせない仮面へと手を当てる。
ハクオロは戦いの元凶である自らを封印させることにより、世界の争いの種の一つを消し去った筈、だった。
最期の瞬間エルルゥの子守唄を聞きながら、まぶたを閉じ、自分の意識はそこで途絶えた。
だが、気付いた時には彼はこの地に居た。
いったいどういうことなのかさっぱり理解できていなかった。
(理解できない事は、もう一つあるが…な)
あの会場で、自分達に
殺し合いの説明をし、一人の少女の首を吹き飛ばした存在をハクオロは知っていた。
当然といえば当然である。あの翼の少女――ムツミは、事実上ハクオロの娘なのだから。
(ムツミ…どうしてお前はこんな事をする。)
ハクオロの最後の記憶に映っていたムツミは、半身であるカミュと共に生き続ける事を決め、新たな道を歩みだそうとする姿だった。
だから信じたくなかった。
こんな、人の命を駒の様に扱うゲームに、娘が加担することなんて。
自分が眠りについている間に何かあったのだろうか。
(それに…アレは、なんだ?)
あの化け物をムツミが葬った際に放ったあの攻撃。
様々な武器防具が一斉に放たれ、化け物の身体を削り取っていったが、ムツミはあんなものもっていなかった筈…
(っと、すっかり考え込んでしまった。)
ひとまずムツミの事は保留として、ディパックへと手を伸ばし蓋を開ける。
ムツミは自分達に殺し合いをさせる、といっていた。
となれば、おそらく殺し合いに乗る様な人間も多く呼び寄せられているだろう。
そのような奴と出会った時の為にも、今の内に自分の支給品と、名簿を確認しておかなければ。
アルルゥの事も気がかりだし、まずは行動しないと始まらない。
と、ハクオロがディパックの中に手を突っ込んで何かを掴んだ、その時
「よう、今夜はいい月だな」
いきなり後ろから声をかけられた。
ッ!?)
直後、ハクオロはデイバッグを抱え、全力で横っ飛びに跳ねた。
それを追う様にパパパン、と派手な音がハクオロがいた位置で鳴り響いた。
(いきなり殺し合いに乗った奴と出会うとはな…!)
地面に打ち付けた身体をすぐに起こし、襲撃者の位置を突き止めようとしながらデイバッグに右手を突っ込んだところで、
ゴリッという堅い感触と共に、何かが背中に突きつけられた。
「…っ!」
「おっと、動かないでくれよ。一応あんたみたいな普通の…いや、普通の人間はそんなけったいな仮面は付けちゃいないか。
まぁいい。とにかく動かないでくれよ、どてっ腹に風穴を開けられたくなければ、の話だが」
そういって、ハクオロの背中で襲撃者が語る。
突きつけられているものはおそらく拳銃だろう。
(くっ!)
こんな近くまで接近を許してしまうとはなんという失態だ、とハクオロは思うも、それで事態が好転するはずも無い。
「…私をどうするつもりだ。」
「ん?おいおい、そんなに恐い声出すなよ。俺は少し聞きたいことがあるだけなんだからよ」
「お前は突然自分の後ろから凶器を押し付けられて、その相手に笑顔で接することができるのか?」
そういうと、後ろの男は凶器、ねぇ…と呟いた後
「ハハハハハハハハ!」
突然笑い出した。
「何がおかしいんだ?」
そういって反撃の隙を伺うが、男は笑ってはいたが、その実全く油断しておらず隙など全く見当たらなかった。
「ああ、いやーこれは失礼失礼。それじゃ改めて聞くが…まず一つ目、お前は『乗る気か?』」
それはつまり、殺し合いに乗るか否か、という意味の質問だろう
そんな事、考えるまでも無い
「ノーだ」
即答してやると、男は少し間を置いて二つ目の質問をした
「お前はあの主催者について、何か情報を持っているか。」
「…ノーだ」
再び即答するも、ハクオロの言葉の中の迷いを見抜いたのか、男から感じる重圧が増した気がした。
「最後に」
最後、という事はおそらくハクオロに価値は無い、と判断したのだろう。
ハクオロの全身が、本能が、危険を知らせるが、やはり全く隙が無く指一本動かせそうも無い。
……デイパック内の右手以外は。
「お前の名前は?」
なぜ最期に名前を聞くのかと一瞬思ったが、彼はあえてその事は考えないことにした。
今は、この直後に起こる事に対して全神経を集中させるだけなのだから。
「ハクオロだ」
「ハクオロ、か…覚えておくぜ」
そういって、後ろの男は引き金を引く。
が、ハクオロはその直前にあえて後ろへ跳ねた!
「うぉあっ!?」
後ろの男がバランスを崩し、倒れかける。
その隙を逃さず、ハクオロは畳み掛けるようにデイパックの中身を取り出し、後ろに居た男に突きつけた!!
「「…は?」」
だが、その直後に二人は揃って間抜けな声を上げる事になった。
男が見ていたものは、ハクオロが自分に対して突きつけていた物だった。
ハクオロが取り出し、男に突きつけていた物は、鋭利な刃物でも、黒光りする銃口でもなく…ハリセン。
対してハクオロは、男の持っていた物を見ていた。
男が持っていて、ハクオロの背中に突きつけていた物は確かに銃だった。
銃だったのだが、その銃口から垂れている物があった。
それは…水。水が銃口から垂れている。詰まる所水鉄砲だった。
よくみると、先程彼のいた所にはクラッカーが幾つか落ちている。
…つまり、ハクオロは騙されたのだった。
3分後
「ははは、いやーすまなかったな脅かしちまって」
「…笑ってすむ問題か」
「仕方がねーだろ、あんたが殺し合いに乗ってないなんて保障はどこにもなかったんだからよ。」
「……」
「おいおいそんなにふて腐れんなよ、仲良くやろうぜマイブラザー!」
「誰がブラザーだ!」
やや投げやりな様子で返事を返すハクオロに対し、水鉄砲を押し付けてきた男はやたら親しげにハクオロに絡んでいた。
こんな仮面を付けていれば警戒されるのも道理かもしれないが、あんな事をした直後にも関わらず、よくもまぁこうも馴れ馴れしく接することが出来るものだ、と半ばハクオロは呆れながら思った。
だが、同時にこの男が只者ではない事も分かった。
仮にも皇と呼ばれ、何度もの戦いに生き残ってきたハクオロにまったく気付かれず接近した事や、ただの玩具をも利用して相手の動きを封じる手腕は決して侮ることは出来ない。
警戒するに越したことは無い。
「…まぁ、過ぎたことをうだうだ言っても始まらない。とりあえず互いの情報を交換しないか?」
「ああ、そうだな…っと」
なにより…この男からは感じるのだ。
自由と理想を愛し、故にその為の犠牲を強いることも厭わない強靭な意志を。
自分と似て非なる、しかし確かな…解放者の、貫禄を。
「そういやまだ俺は名乗ってなかったな、ハクオロ」
そう言うと、男は口元に笑みを浮かべた。
その笑みの裏にあるのは、果たして信頼か、打算か。
それを知るは当人のみ。
「俺の名は
アイオーン…世間じゃ悪魔って言われてる。」
【H-4/荒地/一日目/深夜】
【ハクオロ@うたわれるもの】
[状態]: 健康
[服装]: ハクオロの服
[装備]: 京子のハリセン@永遠のアセリア
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×2
[思考]
基本:殺し合いに乗ってやる気は無い、主催者を打倒する
0: 悪魔…?
1: アイオーンを警戒しつつ情報交換する
2: 名簿、支給品の確認をする
3: アルルゥを探す
4: カミュ(ムツミ)は……
[備考]
※参戦時期は封印直後からの参戦です
【アイオーン@クロノクルセイド】
[状態]: 健康
[服装]: 白いコート
[装備]: 水鉄砲@現実
[道具]: 基本支給品一式、クラッカー×5@現実、不明支給品×1(確認済み)
[思考]
基本:スタンスは決めかねている
0: ハクオロに同行する?
1: ハクオロと情報交換する
2: クロノやお嬢さんと出会ったらどうするかねぇ…
最終更新:2010年02月24日 14:28