――――夢。
そうだ。 これはきっと夢。 そうに決まっている。
悪い夢なんだ。 これまで見た物は、私の作り出した妄想。
覆面の男も、金属製の首輪も、首無し死体も、全部。
――――目覚めよう。
いつもの天井が、いつもの景色が、私が夢から覚めるのを待っている。
目を開ければ、そこにはきっと――――
◆
「……………………。」
絶望。
それが、少女――小島多恵の心の中に最初に生じた感情である。
目に飛び込んできたのは、見慣れた天井ではなく、夜空で淡い光を放つ小さな球体。
背中からひんやりとした感触を感じるのは、自分がコンクリートの上で横になっているからだ。
「……………夢じゃ……ない………」
現実。
今まで見た物は、夢でも、妄想でもない。
紛れも無い“現実”。
ともだちも、
殺し合いも、首輪の事も、
みんな、みんな、みんな、みんな、みんな………!
「……………あぁ………あぁ………!」
多恵の目から、大粒の涙が零れだした。
コップから溢れ出る液体のように、涙は流れていく。
「なんで………………どうして………!」
どうして、自分が選ばれたのか。
今まで自分が罰を受けるような事をしたか?
断言できる。 そんな事をした覚えは一切、無い。
それなのに。 何故、自分が殺し合いをしなくてはならないのか。
「嫌……こんなの………………!」
ただただ、泣き続ける。
解かっている。 泣けばどうにかなる訳ではない。
だが、この状況で冷静になれる程彼女の精神は強い物ではなかった。
涙は止まらない。
止めたくても、その意志に反して涙は溢れてくる。
「………………誰か…助けて……………………」
喉から振り絞るような声で、助けを求めた。
―――誰でもいい。 誰か私を助けて……!
――――――カッ カッ カッ カッ
助けを求めた、その直後。
多恵の耳が小さな音を捉えた。
この音は、コンクリートを叩く音だ。
―――誰かがここに来ている?
多恵は立ち上がって、その音に耳を傾けた。
カッ カッ カッ カッ
ゆっくりと、だが、確実に、その音はこちらに迫ってきている。
しかも、その音は前方から聞こえてくる。
間違いない。 誰かがここに近づいているのだ。
……逃げるべきだろうか。 いや。
「そこに………誰かいるんですよね…………?」
多恵は、前方にいるであろう者に声をかけた。
足音を聞いて、少し冷静になって考えたのだ。
こんな狂ったゲームに乗っている人間なんている筈がない。
ここに来たのも、仲間を集めるためなんだ。 そうに決まっている――。
カッ カッ カッ カッ カッ カッ
その何者かは、多恵の声に応えるかのように歩く速度を速くした。
何者かの纏う闇は徐々に消えてゆき、やがて、その全貌を多恵の目の前に現す。
―――男だ。
小麦色の肌を持った、肩幅の広い大男。
その身には、鉄製の鎧を纏っており、どことなく中世の騎士をイメージさせた。
そして、なにより目を引くのが…右手に握られた大きな錨である。
かなり重そうな代物だ。 あれを片手に持ったまま移動できるなんて――――
………………錨?
なぜ男は錨なんて持っているのだろうか。
多恵の心に疑問が生じる。
自身の身を守るため? たまたまデイパックの中に入っていたから?
………まさか。
多恵は、恐る恐る、錨から男の目へと視線を移した。
男の目に映っていた物。 それは―――
「……………………。」
一般人にも確認できるほど明確な、殺意。
それが自分に対する物である事は、多恵にも理解できた。
「…………………………………」
体が震え始める。
歯と歯が打ち合わさって、ガチガチと音を立てる。
足から急激に力が抜けて、その場にへなへなと座り込んでしまう。
「…………………いや…………嫌…………!」
早く逃げないと殺されてしまうのは解かっている。
だが、体に力が入らない。 後退りする事すらままならない。
……男は目線を逸らさずじっと、彼女の姿を見つめていた。
それは、獲物を見つけたハンターの瞳。
必ず仕留めるという意志を持った、冷徹な瞳。
――――死ぬ……殺される!
多恵の脳内に、頭をかち割られる自分の姿が映し出される。
ぐしゃぐしゃに潰れる自分の頭。
その頭から噴出する真っ赤な液体。
―――嫌だ………そんな死に方なんてしたくない!
「やめて………!おねがい………………!」
多恵は震えた声で懇願する。
だが、男はそれに耳を傾ける様子は無かった。
「…………………………………………」
彼は手に持った錨を、
ゆっくりと自らの頭上の辺りまで持ち上げると、
それを多恵に向かって振り落とした。
―――錨は、綺麗な弧を描きながら彼女の頭に衝突し、
その頭部を、いとも容易く粉砕した。
【小島多恵@GANTZ 死亡】
【残り66名】
■
化け物の命はこれまで数え切れない程奪ってきた。
だが、人間の命を奪うのはこれが初めてである。
罪悪感ならあった。
少女の頬を伝う涙。 喉から搾り出したような声。
それら全てが、自らの心をキリキリと締め付ける。
無表情のままでいるのは、とてつもなく辛かった。
殺した後は、体のあちこちが痙攣するように震えた。 何度か吐きそうにもなった。
……だが、自分は決心したのだ。
「このゲームに優勝し、元の世界に帰還する」、と。
もう後戻りはできない。 いや、するつもりも無い。
たとえ外道と罵られようが、戦い続ける。
いつものベットで、いつもの天井を見ながら眠る為に。
【深夜/E―3/道路】
【男主人公@MHP2nd G】
[状態]:健康 精神疲労(小)
[装備]:村紗水蜜の錨@東方Project
[持物]:基本支給品一式×2、ランダム支給品4~5
[思考]
基本:優勝し、帰還する。
1:参加者を見つけたら殺す。
002殺戮遊戯 |
時系列順 |
004[[]] |
002殺戮遊戯 |
投下順 |
004[[]] |
GAME START |
男主人公 |
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GAME START |
小島多恵 |
GAME OVER |
最終更新:2010年05月01日 13:55