Human Hunter

――――夢。


そうだ。 これはきっと夢。 そうに決まっている。


悪い夢なんだ。 これまで見た物は、私の作り出した妄想。


覆面の男も、金属製の首輪も、首無し死体も、全部。


――――目覚めよう。


いつもの天井が、いつもの景色が、私が夢から覚めるのを待っている。


目を開ければ、そこにはきっと――――




「……………………。」

絶望。
それが、少女――小島多恵の心の中に最初に生じた感情である。
目に飛び込んできたのは、見慣れた天井ではなく、夜空で淡い光を放つ小さな球体。
背中からひんやりとした感触を感じるのは、自分がコンクリートの上で横になっているからだ。

「……………夢じゃ……ない………」

現実。
今まで見た物は、夢でも、妄想でもない。
紛れも無い“現実”。
ともだちも、殺し合いも、首輪の事も、
みんな、みんな、みんな、みんな、みんな………!

「……………あぁ………あぁ………!」

多恵の目から、大粒の涙が零れだした。
コップから溢れ出る液体のように、涙は流れていく。

「なんで………………どうして………!」

どうして、自分が選ばれたのか。
今まで自分が罰を受けるような事をしたか? 
断言できる。 そんな事をした覚えは一切、無い。
それなのに。 何故、自分が殺し合いをしなくてはならないのか。

「嫌……こんなの………………!」

ただただ、泣き続ける。
解かっている。 泣けばどうにかなる訳ではない。
だが、この状況で冷静になれる程彼女の精神は強い物ではなかった。
涙は止まらない。
止めたくても、その意志に反して涙は溢れてくる。

「………………誰か…助けて……………………」

喉から振り絞るような声で、助けを求めた。
―――誰でもいい。 誰か私を助けて……!

――――――カッ  カッ  カッ  カッ

助けを求めた、その直後。
多恵の耳が小さな音を捉えた。
この音は、コンクリートを叩く音だ。

―――誰かがここに来ている?

多恵は立ち上がって、その音に耳を傾けた。

カッ  カッ  カッ  カッ 

ゆっくりと、だが、確実に、その音はこちらに迫ってきている。
しかも、その音は前方から聞こえてくる。
間違いない。 誰かがここに近づいているのだ。

……逃げるべきだろうか。 いや。

「そこに………誰かいるんですよね…………?」

多恵は、前方にいるであろう者に声をかけた。
足音を聞いて、少し冷静になって考えたのだ。
こんな狂ったゲームに乗っている人間なんている筈がない。
ここに来たのも、仲間を集めるためなんだ。 そうに決まっている――。

カッ カッ カッ カッ カッ カッ

その何者かは、多恵の声に応えるかのように歩く速度を速くした。
何者かの纏う闇は徐々に消えてゆき、やがて、その全貌を多恵の目の前に現す。

―――男だ。
小麦色の肌を持った、肩幅の広い大男。
その身には、鉄製の鎧を纏っており、どことなく中世の騎士をイメージさせた。
そして、なにより目を引くのが…右手に握られた大きな錨である。
かなり重そうな代物だ。 あれを片手に持ったまま移動できるなんて――――

………………錨?

なぜ男は錨なんて持っているのだろうか。
多恵の心に疑問が生じる。
自身の身を守るため? たまたまデイパックの中に入っていたから?

………まさか。

多恵は、恐る恐る、錨から男の目へと視線を移した。
男の目に映っていた物。 それは―――

「……………………。」

一般人にも確認できるほど明確な、殺意。
それが自分に対する物である事は、多恵にも理解できた。

「…………………………………」

体が震え始める。
歯と歯が打ち合わさって、ガチガチと音を立てる。
足から急激に力が抜けて、その場にへなへなと座り込んでしまう。

「…………………いや…………嫌…………!」

早く逃げないと殺されてしまうのは解かっている。
だが、体に力が入らない。 後退りする事すらままならない。

……男は目線を逸らさずじっと、彼女の姿を見つめていた。
それは、獲物を見つけたハンターの瞳。
必ず仕留めるという意志を持った、冷徹な瞳。

――――死ぬ……殺される!

多恵の脳内に、頭をかち割られる自分の姿が映し出される。
ぐしゃぐしゃに潰れる自分の頭。
その頭から噴出する真っ赤な液体。

―――嫌だ………そんな死に方なんてしたくない!

「やめて………!おねがい………………!」

多恵は震えた声で懇願する。
だが、男はそれに耳を傾ける様子は無かった。

「…………………………………………」


彼は手に持った錨を、


ゆっくりと自らの頭上の辺りまで持ち上げると、


それを多恵に向かって振り落とした。


―――錨は、綺麗な弧を描きながら彼女の頭に衝突し、



その頭部を、いとも容易く粉砕した。



【小島多恵@GANTZ 死亡】
【残り66名】




化け物の命はこれまで数え切れない程奪ってきた。
だが、人間の命を奪うのはこれが初めてである。
罪悪感ならあった。
少女の頬を伝う涙。 喉から搾り出したような声。
それら全てが、自らの心をキリキリと締め付ける。
無表情のままでいるのは、とてつもなく辛かった。
殺した後は、体のあちこちが痙攣するように震えた。 何度か吐きそうにもなった。
……だが、自分は決心したのだ。
「このゲームに優勝し、元の世界に帰還する」、と。
もう後戻りはできない。 いや、するつもりも無い。


たとえ外道と罵られようが、戦い続ける。


いつものベットで、いつもの天井を見ながら眠る為に。




【深夜/E―3/道路】

【男主人公@MHP2nd G】
[状態]:健康 精神疲労(小)
[装備]:村紗水蜜の錨@東方Project
[持物]:基本支給品一式×2、ランダム支給品4~5
[思考]
基本:優勝し、帰還する。 
1:参加者を見つけたら殺す。


002殺戮遊戯 時系列順 004[[]]
002殺戮遊戯 投下順  004[[]]

GAME START 男主人公      
GAME START 小島多恵 GAME OVER

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最終更新:2010年05月01日 13:55
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