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dorchadas

草原。
ゆらゆら揺れる草。そよそよと吹く風。黒の空に浮かぶ金色の月。微かに灯る月明かり。
一面に広がる鮮やかな緑も夜の闇にかかれば黒に染まり、草の原もたちまち黒の原となる。
その黒の原に一人の異質の黒。否、正確に言えば一人の少年が立っていた。

華奢な体を黒の執事服で身を包み胸には黒のタイ、
少し跳ねたややブルーがかった髪が全身の黒と対比して目立っている。

そして目を惹くのが少年の顔。
女顔かつ童顔で幸薄い容姿が一部の人の保護欲を引き立てるであろう。
綾崎ハヤテ。
両親が残した1億5680万4000円の借金返済のため三千院家の執事を努める少年である。

「……殺し合いですか。見たところドッキリではなさそうですね」

ハヤテは深妙に手を顎に当てながらなぜ自分がこの殺し合いに巻き込まれたかを考える。

(思い当たる理由なんていくらでもある。僕を倒せば三千院の遺産は全て手に入る。
 そのためにこんな殺し合いに僕を参加させたのかもしれない。
 そんなことを考えるよりも今は、現状の確認が優先ですけどね)

次々と思い浮かぶ理由に頭を抱えながらも、今はそんなことを考えるときではないとハヤテは思考を切り替える。
今の最優先事項は自分が今の状態で何を目標としてどう行動すべきか。

とりあえず、ハヤテはデイバッグを開け、まずは名簿の確認を行う。
あのホールでは人が多すぎて知り合いがいるかどうかわからなかったためだ。
できれば僕の知り合いが誰もいませんように、そう願いながら名簿をパラパラとめくり確かめる。
だが、その願いは粉々に打ち砕かれる。

「お嬢様!?それにマリアさんまで、ということはやはり遺産狙い……!
 ここで現時点での相続者であるお嬢様もろとも亡き者にするつもりなのか!
 汚い手を使ってくれますね」

自分の大切な人達がこの殺し合いに参加していることに憤りを表情に表し、
ハヤテは両手を強く握りしめる。

その怒りに呼応したのか吹く風も強くなり、草が大きく揺れる。

(でも、遺産にはマリアさんは関係ないはず。どうして呼ばれた?
 ついでに?わからない。あの女――郷田真弓が何を考えているか。
 それに遺産だけなら僕らだけを狙えばいいはず。
 他の人達が参加している理由は?
 だめですね、ごっちゃになってまとまらない)

ハヤテはうんうんと唸りながらこの殺し合いの開催の理由を考えてみるが一向に思い浮かばない。
それもそのはず。初めて会った人の考えなどいきなりわかるはずもない。
心を読む超能力でも持っていなければ到底無理な話だ。

(僕を覗いてこの島には77人の参加者がいる。
 そんな人数を警察にバレずに誘拐することなんて可能なんでしょうか?
 それに三千院家のセキュリティをどうやってかいくぐり僕達をここに?
 だめだ、今はそんなことを考えるよりもお嬢様とマリアさんだ。
 こんな危険な島に一人で……早く見つけないと!)

焦りが何も生まないことぐらいハヤテにもわかっている。
だが、自分の大切な人達が今こうしている間にも危険にさらされていると考えたらじっとしていることなんて到底できない。
ハヤテは他の支給品を確かめた後、ナギ達を探すために歩き始めた。
だがその歩みはすぐに止まる。

「……はぁ」

ハヤテは支給品として入っていたナイフを手に持ち、突然何を思ったのか後ろに振り向き茂みに投げつける。

「いいかげん出てきたらどうです?」
「バレていましたか。これでも気配の隠し方には自信があったのですけど」

暗闇から現れたのは紫のロングヘアの少女。
ハヤテが見た感じではとてもじゃないが殺し合いに乗れるような悪人面ではなく、
秩序を重んじる昔ながらの大和撫子。
そう感じたハヤテであったがどうやら違うと思考に区切りをつける。
「それにナイフの投擲の腕もなかなかのようで。尊敬しますわ」
「それは光栄ですね。で、どのようなご用件でしょうか?」

少女は笑顔で言葉を放ち、ハヤテもその言葉を受け取って喜びの表情を作る。
だが二人ともそれは表面だけのように見える。
少なくともハヤテの内心は喜びとは程遠い。
ハヤテの内心としてはこの人が黒か白かはまだ測りかねず、
表面上がどうであれ信用するには材料が足りなさすぎると判斷。
ひとまずは話を聞こうと問いかけるが。

「いえ、悪いのですけれど死んでいただけたらなと思いまして」

その間は一瞬にして終わる。
その言葉が言い終わるのと同時に少女は地を駆け一息でハヤテの懐まで跳ぶ。

「惨たらしく死んでくれませんか」

少女はデイバッグから取り出した槍で突きを放つがハヤテはしゃがんで躱す。

「お断りです、ってそのデイバッグから出したんですか!?明らかに物理法則おかしいですよ!」
「そんなことを気にしてる余裕あるんですか?」
「……っ!申し訳ありませんが、少しは痛いのを覚悟して下さいよ」

ハヤテは地をはうように回し蹴りを少女の脇腹に叩き込もうとするがそれは直接通らない。
少女は素早く槍の先端部分で受け、さらに出来る限り衝撃を受けないように横に跳び、蹴りの衝撃を殺す。
そこに間髪入れずにハヤテはナイフをくるぶし辺りの高さに投げつける。

「ははっ、なかなかですね。ですが、狙うなら頭を狙った方がいいと思いますよ」

少女は槍を横薙ぎに振るうことで飛んできたナイフを弾き飛ばす。

「ご教授感謝します、よ!」

ハヤテは再びナイフを放つ。そして少女が槍で弾き迫る。
少女の槍による斬撃をハヤテがナイフで受け流し後退。
そこから三度目の正直と言わんばかりに投擲。
その繰り返しが何回か続く。
しかし、その繰り返しも終わる。ハヤテのナイフの投擲がなくなることによって。

「っ!もうない!」
「あらあら、それは残念ですね。隙ありです」

ナイフが飛んでこないのに気づいたのか少女はハヤテに迫り槍で刺し殺そうとするが。

「くそっ…………なんてね」
「!?」

それよりも早くハヤテは袖からナイフを出し顔面目がけて投擲する。
少女はその場で足を止め、落ち着いて槍で飛んでくるナイフをなぎ払う。

「そこだ!」

その一瞬の間にハヤテは迫り少女の持っている槍の柄を思い切り上に蹴り上げる。
少女は耐えきれず槍を手放してしまう。
槍はくるくると上に高く舞い上がり少女の後ろの地面に突き刺さる。

「嘘も方便ですよ。これでチェックメイトです」

少女は槍を取ろうと後退しようとするがハヤテがそれをさせない。
ハヤテは即座に少女の懐に迫り拳を放つ。

「チェックメイトにはまだお早いと思いますけど!」

少女はハヤテの拳を叩き落とし貫手を放つ。
それをハヤテは腕を掴むことで貫手を止め、そのまま均衡状態が続く。
それからどのくらいたったのだろうか、均衡が破れる。
第三者の乱入によって。

「おいおい、俺も混ぜてくれよぉ」

その声が聞こえたのと同時に二人は逆の方向に大きく跳躍する。
二人は何か嫌な予感を察知したのだ。

「ひゃっはー!」

次の瞬間、二人の立っていた場所を銃弾が蹂躙した。

暗闇の中から現れたのは一人の少年。まだ中学生くらいだろうか。
半袖のパーカーに半ズボン、それに加えて背丈と顔から判斷するとまだ幼い印象が見受けられる。
しかしそんな少年の手には普通ではありえない、無骨なアサルトライフルが握られていた。

先程の銃撃はこれでやったのだと二人は判斷した。
少年は嫌な笑みを浮かべながらアサルトライフルを二人に向ける。
そこからの二人の行動は迅速だった。

「くそ!おい、逃げるなぁ!」

これを見た二人は脇見もせずにそれぞれ全速力で別の方向へ逃亡を開始した。
重火器相手に手ぶらでかなうはずがなく、それに武器も心許ない上にまだ序盤だから。
無理をする必要はない。
ハヤテも少女も状況を理解して、戦略的撤退を選んだのだ。

「どこだどこだどこだ!」

少年はアサルトライフルを乱射するが二人はもうすでにいない。
行動の迅速さが銃撃から逃れることを可能にしたのだ。

「畜生!逃がしたか。ああ、もう!もっと使い易い銃を寄越せよ!重くて撃ちにくいんだよ」

少年は悪態をつきここに居もしない主催者に対して憤りを表す。
この少年の名は長沢勇治。ひきこもりであり、日頃から人を殺してみたいなど危険な思考を持つ少年である。
そのような思考を持つ勇治がこの殺し合いに乗るのはもはや必然だった。
両親も知り合いもいないので気兼ねなくこのゲームに参加出来る。
勇治の気分はウキウキだった。

それにこの島で人を殺しても罪には問われない、むしろ推奨されているということが拍車をかけている。
勇治にとってこのバトル・ロワイアルはゲームなのだ。クリアは全員殺しての優勝。

ゲームはクリアしなくちゃいけないだろう?と考えながら勇治は嘲う。

「まぁいいさ。次会ったら殺せばいいんだし。僕、いや俺にはこのアサルトライフルがある。
それにあの女達が落としていった武器もここにある」

勇治は少女の落とした槍とハヤテの投げたナイフを丁寧に拾う。
ランタンをつけて明かりを灯せばナイフがどこに落ちているかなどもすぐに分かる。
このような地道なこともゲームのクリアに繋がる。むしろこれは王道だ。
武器集めは他人に対して有利になることだ、と勇治はそう考えていた。

「っし。たぶんこれで全部だな。辺りは大体は見て回ったし。
 見てろよ、全員俺が血祭りに上げてやるんだ。ははははは!」

どこまでも自分勝手な少年は高笑いをしながら草原を去っていった。


【A-2/一日目・深夜】

【長沢勇治@キラークイーン】
【状態】健康
【装備】コルト M4 カービン(10/30)
【持ち物】支給品一式、予備マガジン×2、献身@永遠のアセリア、スティンガー×12@魔法少女リリカルなのは
不明支給品0~2
【思考】
0.人を殺したい
1.優勝を目指す。

【コルト M4 カービン】
 米国の特殊部隊統合軍SOCOMが、コルト社に開発依頼したM16A2のカービンモデル。
 汎用性は極めて高く、ダットサイトやスコープ、レーザーサイトなどといった照準用光学機器だけでなく、
フラッシュライトやスリング用スイベル、バイポッド、バーチカルグリップ等の補助器具が状況に応じて自在に交換可能。

【献身@永遠のアセリア】
槍型の永遠神剣。位は第七位。

【スティンガー@魔法少女リリカルなのは】
チンクの固有武装であるナイフ。何の変哲もないただの金属のナイフである。12本セット。



◆ ◆ ◆



「どうやら……逃げ切れたようですね」

B-2の北部にハヤテはいた。あの逃亡で少女とは別の方向へ逃げたため一人である。

「アサルトライフル、あんな物まで支給されているとは。
 この殺し合いどうやら一筋縄ではいかないようですね」

いくらハヤテが常人より鍛えているとはいえ、銃で撃たれたら死んでしまう。
アサルトライフルならばなおさらだ。
それ故の逃走。だが仕方が無い、ハヤテはまだ死ねない。そう思ってしまったのだから。

「僕はまだ死ねない……お嬢様とマリアさんを無事に、平穏な生活に返すまでは」

大切な人達の笑顔を守るためにハヤテは再び自分に言い聞かせるように決意する。
その決意は何よりも固く、自分を犠牲にしてもいいと言えるぐらいだ。

(早く、銃火器に値する武器を見つけないと。あれに対抗するには必要だ。
さっき、ナイフは全部使っちゃったし武器はもうない。
 残るのはこれだけだ)

ハヤテがデイバッグから取り出したのはパイプ椅子と女の子の人形。
どちらも殺し合いに向く物ではない。
改めて見ても使えそうにないとハヤテは判斷しデイバッグの中に二つを戻す。

「無事でいて下さい、お嬢様、マリアさん。僕が行くその時まで」

ハヤテは再び走る。かけがえのないものを護るために。だがハヤテは知らない。
護るべき者の片方が既に死に至っていることに。
哀れな執事はこのまま知らずに踊り続ける。
殺し合いの島で道化のように。


【B-2北部/一日目・深夜】

【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
【状態】疲労(中)
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、上海人形@東方Project、パイプ椅子@SHUFFLE!
【思考】
0.お嬢様とマリアさんを探す
1.殺し合いには乗らない。
2.銃火器に値する物が欲しい。

【上海人形@東方Project】
アリス・マーガトロイドが持つ人形。上海かわいいよ、上海。

【パイプ椅子@SHUFFLE!】
リシアンサスが父親である神王を自重させる時に武器に使う椅子。
正直、これで叩かれるとそれなりに痛そうである。



◆ ◆ ◆



「疲れた……」

ハヤテと反対の方向、B-1の北東部に少女はいた。
少女の名は真田設子。アイギスの敵対組織に属し、セント・テレジア学園に潜入している暗殺者である。

「しかしなぜ、このような所に私はいるんだ。私は確か、学園の寮の自室にいたはず。
 おかしいな……私がなすがままに攫われたということか」

設子はお嬢様口調を止め、普段の口調に戻す。どうせここでは誰も聞いていないので演技の必要もないということもある。

「それに、ここには私の他に山田妙子、いや本当の名は如月修史か。あいつもここにいる」

なぜか自分と同じようにここにいるアイギスのエージェントのことを設子は思い出す。
最も設子には彼がどう動こうと関係なく、興味もないのだが。

「どっちにしろ私のやることは変わらない。この島で優勝してさっさと戻ることだ。
 幸いのことにここには私を楽しませてくれる奴がたくさんいることだしな」

設子はそう言ってついさっき戦った執事服の少年のことを思い出す。

(あの執事服の奴は槍による鋭い一撃を躱し、それだけではなく一撃を加えようとした。
ナイフの投擲の腕も申し分ない)

設子は心が踊っていた。自分と互角に渡り合える強者に。
バトルジャンキーと言われるほど戦いに渇望しているわけではないが、
それでも強者と戦えるのは嬉しいと設子は思う。

「奴とはもう一度戦いたいものだな。今度はお互い万全な状態で。
 次は邪魔を入れさせんぞ」

あの邪魔さえ入らなければもっと戦えたのに、と設子は愚痴を漏らす。

(然るべき武器があればあの邪魔をした少年を殺していたのだがな。
 生憎、銃はなく槍もどこかへ飛んでしまった。逃げて正解だったんだ、あれは)

 今の手持ちの武器は槍がなくなった今、他に入っていた鉄パイプぐらいしかない。
 仕方なく鉄パイプを現在の主戦武器にして設子は進む。

「ここはB-1の北東部。この先は劇場があるはず。地図に乗るほどなんだ、大きな施設だろう。
 人がいるに違いない……楽しみだな。私を満足させてくれる奴がいればいいが」

設子はニヤリと嗤う。
これから進む先に自分を満足させてくれる好敵手がいてくれるといいと願いながら。

(如月修史、お前もだ。そう簡単に死んでくれるなよ。
 ここでは殺さず生け捕りは難しいしな。殺す気でかかって来ることを願うよ)

最後に自分と同じ場所に潜入しているエージェントを思い浮かべて。
設子は夜の帳に消えた。


【B-1北東部/一日目・深夜】

【真田設子@恋する乙女と守護の楯】
【状態】疲労(中)
【装備】鉄パイプ
【持ち物】支給品一式、不明支給品0~1(武器はなし)
【思考】
0.優勝狙い。戦いを楽しむ 。
1.街に向かう。
2.銃が欲しい。

【鉄パイプ】
何の変哲もないただの鉄パイプです。特殊能力もついてません。



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最終更新:2010年05月22日 02:31
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