「ここ……どこ? 」
純和風の部屋、つまるところの和室に、私――麻弓=タイムはいた。
壁に立てかけてある掛け軸、机の上に置いてある花瓶を見ればここが旅館の一室だとわかる。
でも、今の私にはそんなことはどうでもいい。
それよりこれは何?
「寝ぼけてて聞いてなかった……」
寝起きだったし全く頭に入らなかった。
なんかおばさんが壇上でしゃべってるのは覚えてるんだけど。後、周りがすごくうるさかった。
がやがや騒いでいて悲鳴のようなものまで聞こえてた気がする。……たぶんだけど。
覚えているのはそれだけ。
それに私は自宅の自分の部屋で寝てたはずなんだけどな。
何時の間にこんな所に運んだのよ。
「あ~、いらいらする。しかも何で制服なのよ……」
これも謎だ。私が今着ている服は私の通うバーベナ学園の制服。
ちゃんと自分の制服であることも確認した。
でもおかしい。
私は寝る前に寝間着に着替えてた。これは頭の中にしっかりと残ってる。
じゃあなんで私は制服を着ているわけ?
「まさか……寝ている間に勝手に!?」
そうとしか考えられない。服を着せ替える魔法なんて聞いたことないし。
「ということは、私のあられもない体が見・ら・れ・ただと……? 」
これが女だったらまだいい。ぎりぎりだが許容範囲。男だった暁には。
ハッとして私は両手で胸を隠す。でも今更だ。もう遅い。
「もし見た奴が男なら、この麻弓ちゃんの悩殺ボディを見たのが男なら、」
それならば必ずしなければならないことある。それは絶対の決定事項であってとても重要なことだ。
「ギタギタのメタメタにしないと、ねぇ。私の裸を見たのが男なら同じ目に……
いやそれだけじゃ飽きたらないわ。町中を裸で引きずり回してやる……!」
乙女の裸は何よりも重い。鉄則だ、特に私のは。
「さて、どうしようか、ってうわぁ!」
私は立ち上がりこんな目に合わせてくれた奴をボコリに行こうと思ったが、その一歩は早くも妨げられた。
何かにつまづいて転んでしまった。
「何なのよ、人がせっかく意気込んでいるのを邪魔したのは」
下を見ると黒いデイバッグがちょこんと置いてあった。
私がつまづいたおかげで中身が一部飛び出してしまっている。
「この冊子は……?それにこれってPDA? 」
とりあえず飛び出していた冊子をとってめくる。
そしたら名前がびっしりと載っていた。同じようにここに居る人の名前だろうか?
「私の名前は、あった。それに緑葉くんのも」
驚いたことに私の知り合いである緑葉くんの名前もある。
「緑葉くんがいる?何で?このイベントって女の子脱がすだけじゃなかったんだ……」
他の名前も目を通してみると土見くんにシアちゃん、リンちゃんと楓、土見ラバーズがほぼ大集合だった。
「みんなもここに居るんだ。安心していいんだか悪いんだか」
はぁと溜息を吐いて私は名簿を閉じる。他の名前は誰も知らないし、これ以上見ていても何も起こらないだろう。
次にPDAを見る。どうやら現在位置と地図を表示するようだ。
「ここは……C-6、旅館。それにここ島なんだ」
全体の地図を見てみるとここは大きな島のようだ。正直、びっくりだ。
ただの嫌がらせにしては規模が大きすぎるし、変なイベントか何かなのだろう。
「ひとまず外に出ようかな……」
地図によるとここは旅館。ということは当然温泉があるはずだ。
この部屋にはテレビがないことだし行こうかな。何もしないのは暇だし。
私は立ち上がって押し入れに入っていたタオルを取り出し、机に置いて会ったこの部屋の鍵をとる。
丁寧にも玄関には靴もあった。用意のいいことだ。
私はさっさと靴を履いてドアを開ける。
ガチャッとノブを回してドアを開けた先には少し薄暗い廊下が待っていた。
廊下は……普通だ。至って何の変わりばえもしない。
あ、そういえばPDA持ってくんの忘れたな。デイバックも。
ま、いいか。温泉入りに行くだけだし。鍵ももうかけちゃったからめんどい。
たいして重要なものなんて入ってないっしょ。
「すいませーん誰かいますかー」
静寂を破るかのように上から一人の声が聞こえてきた。
若い女の人の声だ。私と同じように突然連れてこられて困惑しているんだろう。
ここは私がこれは何かのイベントですよ~って教えてあげるべきだ。
麻弓ちゃんってばなんて優しい!
そうと決まれば即行動。温泉に行く前に上へ向かおう。
廊下を早足で私は歩き、階段を見つけた。
さっさと登って上の階に進んでしまおう。
「誰かー。誰かいないんですかぁ……」
女性の声が近い。もう少し。
私は階段を登りきり、廊下へ出る。
「あのー」
「あ!やっと人がいましたー。よかったです、誰もいないんじゃないかと思いましたよ」
目の前にいたのは中国風の服を着た赤い髪の女性。
……胸大きい。服からでもわかるあの大きな質量。
パットを入れてる?落ち着け、クールになれ、クールになるのよ麻弓=タイム!
でもあの確かな重みを感じさせるのは、むむむ。
これはひとつ確かめ……いやいや初対面の人の胸を揉むなんて変態じゃない。
何考えてんだか、私は。
「私は紅美鈴といいます。すいません、これはいったい何の騒ぎでしょうか?
情けないことにさっきまで寝ていまして何も聞いていなくて。えっと……」
「ああ、私の名前は麻弓=タイム。気軽に麻弓でいいわ」
「あ、そうですか。麻弓さん、改めて聞きますがこれは一体?」
「実は私も寝ててよく聞いてなかったんだよねー。でもこれってただのイベントだと思う。
終わりの時間が来たら迎えがくるんじゃない?」
正直、私には何が何だかわからない。いきなりここにいたことも含め何かおかしなことに巻き込まれたのかと疑っている。
でも、私の中の常識的な部分がそれを否定する。……はぁ。何で寝ちゃったんだろ、私。
よく聞いておけばよかった。
「それなら安心ですけどね。咲夜さんに香霖堂の店主さんもいることですし。
すいません、わざわざ」
「別にいいよ、これぐらい。ところでさ、美鈴」
「はい、何でしょう」
「今さ暇?私はこれから温泉に入りに行こうと思うんだけど、よかったら一緒に来ない?」
一人でポツンと温泉に浸かるより誰かと浸かった方が気持ちいい。
銭湯の娘としてはそう思うのですよ。
「申し出はありがたいんですが、その……」
「ん、何か問題あったかな」
「はい、実は私以外にもう一人、女の子が居るんです」
少し驚いた。まだこの旅館に人がいたなんて。
いや、不思議でも何でもない。この広さの旅館だ。
私達以外に人がいてもぜんぜんおかしくない。
「へえー、その子は今何を?」
「寝ています。ぐっすりと。一応呼びかけてはみたんですが。
全然起きないんです~」
こんな変な状況でもまだ寝ていられるとは結構図太いのね。
最初の開会式みたいなのを寝ぼけていた私や美鈴が声を大にして言えたことじゃないが。
「じゃあさ、その子が起きたらどう?もちろんその子も一緒にね」
「ええ、構いませんよ。あっ、ついでですので部屋に来ます?」
いいよ。ああでもその前に荷物をとってきていい?置いてきちゃってさ」
めんどくさいことにデイバックを私がいた部屋にそのまま置き去りにしてしまった。
こんなことなら持ってくるべきだったわ。
「いいですよ、私とその子が居る部屋は203です。
鍵は開けとくので勝手に入ってきちゃって下さい」
そこで一旦美鈴と別れて、元居た部屋に戻った。
そしてさっさと荷物をとって203の部屋に向かう。
やっぱりこの島には私以外にも人がいたのね。名簿を信じると土見君達もいる。
いったい何だっていうのよ。何度自問自答しても答えは見つからない。
「本当に訳わかんない……。それにどうやって家から運んだの?」
私をつれていくのに親は気づかなかったのだろうか。
それとも親には了解をとってあるっていうの?
「あ~考えれば考えるほど嫌になってくる。怖くなるじゃない」
そんなことを考えているうちに美鈴達が居る部屋に着いた。
203……うんあってる。
「美鈴~入るわよ」
奥からどうぞーと声が聞こえてきた。さっさとあがろう。
靴を脱ぎ、奥の部屋に行くと、そこには美鈴の言った通り女の子がいた。
頭にちょこんと乗った薄いピンク色のリボンに金色の長髪、白雪姫のような儚げな幼さが顕著な寝顔、華奢な体つき。
女の私から見ても文句なしに美少女だ
「私が起きたときに隣で寝ていたんです。起こそうとしても全く起きないですし……
麻弓さんがいて助かりましたよ」
「大げさよ、そこまで感謝されるような事してないって」
どうやって私をここに連れてきたのだろう。本当に不思議だ。
服が着替させられていることといい、訳が分からないわ。
この寝ている女の子は果たして何かを知っているだろうか。
「何か嫌な予感がするのよね」
可能性は低いけど、この子が開会式みたいなのをきちんと聞いていて私の心の奥の不安を取り除いてくれることを願うしかない。
「憂鬱だわ……」
【C-6旅館/一日目・深夜】
【麻弓=タイム@SHUFFLE!】
【状態】健康
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
1.女の子が起きるまで待つ
2.その後温泉にでも行く
※ゲームを理解していません。
【紅美鈴@東方project】
【状態】健康
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
1.女の子が起きるまで待つ
2.その後温泉にでも行く
※ゲームを理解していません。
【椎名真冬@生徒会シリーズ】
【状態】睡眠中
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
1.????
最終更新:2010年06月30日 18:22