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ハルケギニアの蜻蛉 - (2007/08/30 (木) 15:24:38) の1つ前との変更点
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「お前は一体…!どっちの味方だぁ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
「何!?」
女の意識はそこで途絶えた。
だが、GP-03Dの巨大な砲口から光が集まるより一瞬早く鏡のような光に吸い込まれ女―シーマ・ガラハウは爆散したガーベラ・テトラと共に宇宙(そら)から姿を消した
「ぅぅ…ああ!………たっく」
薄暗い部屋には椅子に座って寝ていたシーマとベッドの上でこの上なく幸せそうに眠っている少女―ルイズだけだ。
「しょうこりもない夢だ…だからあたしは眠るのが嫌いなんだよ…!」
シーマがこの世界に召喚されてからかなりの日数が経っている。
何の因果か知らないが自分の半分しか生きていないような少女の使い魔になれと来たもんだ。
最初は戸惑いはしたが、どの道自分にはもう帰る場所などありはしない。
故郷のマハルはソーラ・レイになり、家とも言える母艦―リリー・マルレーンはあの忌々しいガンダムによって沈められてしまっている。
どうする事もできなかったのでそのまま使い魔生活を送っていたのだが、あの戦場を駆け抜けていた時とは違い目からは生気が失せてしまっていた。
「こっちに来てから色んな事があったけど…やっぱりあたしはMSか船に乗ってる方が性に合ってるのかねぇ…」
そう呟きながら今まで起こった事を思い返す。
ギーシュに決闘を挑まれた時は魔法というものに面食らっていたが。伊達に荒くれ者の集団である海兵隊を仕切ってはいない。
冷静さを取り戻すとサバイバルキットに入っていた自動拳銃でギーシュの杖もろとも手を撃ち抜き降参させ、今ではほぼ下僕扱いとしている。
破壊の杖と呼ばれる物が土くれのフーケと呼ばれる盗賊に奪われた時はミス・ロングビルと呼ばれる女性が犯人(ほし)と睨み
破壊の杖―海兵隊もよく使っていた歩兵用の対MSランチャーでゴーレムをフッ飛ばしケリを付けた。
元々対MS用の兵器である。例えゴーレムが鉄に変化しようとも防ぎきれるものではない。
ゴーレムを倒した後に謀ったようにして出てきたロングビルを有無を言わさず倒し捕獲した。
言動や立ち振る舞いが、あの地獄のような一年戦争を生き抜き策謀と海賊行為でその後の三年間を生き抜いてきた自分達、海兵隊に似ていたからだ。
それからしばらくして、この国の王女であるアンリエッタがルイズを尋ねてきたのだが、そのルイズを利用するような言動に思わずキレた。
自分達を使い捨てにしてきた上層部の…サイド3でぬくぬくと蹲る者達と思わず重なったからだ。
「判るかい?あんたに!常に最前線に立たされてきたあたしらの気持ちが!
命がけで任務を成してもまともな食い物すら与えられずまた出撃さ!やっとこさ戦争が終わってみりゃあどうだい!帰る国もありゃしない!」
かつて自分がデラーズに向け放った言葉がアンリエッタへと向けられる。
ルイズはその言葉を聞いてかなりの衝撃を受けた。
この自分の使い魔は『戦争が終わった』と言った…つまりこれから自分の国に帰るはずだった。
それを自分が遠い所に召喚し国に帰れなくしてしまった。そう思い何も言えなくなっていた。
その後、何とかアルビオンへ向かう任務を受けたのだが、ルイズの心は重く、シーマはその国の名前を聞き複雑な心境だった。
「ハッ…!散々あたしらの邪魔をしてくれたあの船の名前と同じ国に行くなんてのは……なんの因果かねぇ」
そう小さく呟いた後、ワルドとキュルケとタバサとおまけのギーシュが加わり途中キュルケ、タバサ、ギーシュが囮として離脱し
仮面を被った男に襲われ何とかアルビオン行きの船に乗った時に空賊に襲われた。
三人が空賊の頭に引き合わされた時にはシーマはその芝居がかった言動に思わず吹き出してしまう。
「はははははは!…なっちゃいないねぇ!それで空賊のフリかい?笑わせてくれるよ全く!」
連邦の輸送艦、時にはジオン共和国の船を襲い
三年間を海賊行為で生き延び悪名高い『シーマ艦隊』を率いてきたシーマからすればこの男達が空賊で無い事は一目で分かった。
「さっさと正体を現したらどうだい?」
「まいったな…次からはもっと変装を徹底させなければならないな
バレてしまったからには隠す必要は無いだろう、私がアルビオン王国皇太子、ウェールズ・デューダーだ。…もっとも次はもう無いだろうがね」
さすがのシーマも皇太子が空族の真似事をやっているとは思っていなかったが、話は進みニューカッスル城へ行く事になった。
そこでウェールズを含む貴族連中が全員死ぬつもりである事を聞いたのだが、それがデラーズと重なった。
「命あってこそだろうが!死んでなんになる!!」
「死を求めるのではない。醜い生を嫌うだけだ。それが、判らんのか」
グワデンでのやり取りを思い出し思わず背筋が寒くなった。
(こいつらも所詮、大義や信念とやらを信じている連中と同じさぁね)
だが、落城前のパーティでウェールズに話しかけられた時、気が変わった。
こいつらは民衆や国土がこれ以上戦火に巻き込まれないようにするために立ち向かわねばならないと言った。
「あたしらの上官もあんたみたいにあたし達海兵隊の事を考えてくれてたら、こうはならなかったんだけどねぇ…」
その後、ウェールズと別れて窓を開け泣いているルイズを見付けたのだが、召喚した事を泣きながら謝られ何があっても帰る方法を見つけると言われた。
何の事か分からずに面食らっていたのだが、理由が分かるにつれバカみたいにおかしくなった。
「あたしらの故郷や家はとっくになくなってるんだよ!あんたのせいじゃあないさね。ま…戻る方法ってのには期待せずに待っとくよ」
あの世界に戻っても何も残されてはいないのだがやはり自分はMS乗りで船に乗っているのが性に合っている。
少なくともこんな所でファンタジーな世界を味わっているべきではないと思っていた。
ルイズとワルドの結婚式が進み、ワルドがルイズを殺そうとした時、ウェールズの死体がデラーズに重なった。
「…たく。あたしは故あれば寝返るんだが…あんたは個人的に気に入らないし借りもある…だから、おしおきしてあげるよ!」
ドS全開でルイズが買ったデルフリンガーと自動拳銃を片手にワルドと分身を打ち倒す。
白兵戦など部下の仕事だったが、ガンダールヴの印のおかげで絶好調だった。
自分が伝説の使い魔だと知った時には思わず呆れ自嘲気味だったのだが現金なものである。
ワルドの左腕を切り落とし頭を撃ち抜こうと思いトリガーを引いたがその銃から弾は吐き出されなかった。
「弾切れッ!?こんな時に…!」
それでワルドを逃がすが、下から掘ってきたヴェルダンディの穴をつたい無事脱出路を確保する事ができた。
「あんたの業はあたしが背負っといてあげるよ。もっとも…背負えるほど余裕が無いんだけどねぇ…」
コロニーでのあの光景は未だ頭からこびり付いて離れないでいるのだ。
そう言いつつ、ウェールズから指輪を抜き取ると自分も穴に滑り込むようにして飛び込んだ。
そして、今現在。
何故か、ここに来たとき以来よく付き合っている平民連中の一人のシエスタの故郷にある空を飛ぶ『竜の戦艦』というものを見に行く事になった。
シエスタ曰く
「…インチキなんですよ。どこにでもあるような、名ばかりの秘法なんです。でも地元の皆はとてもありがたがって建物まで作って覆ってるんです」
「そりゃあまた、ずいぶんと難儀な代物だねぇ」
「実を言うと…それの持ち主はわたしの村の皆のひいおじいちゃん達だったんです。
昔、わたしの村に大勢の人がやってきてその人たちが『竜の戦艦』で遠いところからやってきたって皆に言ったそうです」
「凄いじゃないの」
キュルケが驚いたように答えるがシエスタの返事は暗めだ。
「でも、誰も信じなくて…その人たちは頭がおかしかったって皆言ってました」
「どうして?」
「誰かがそれで飛んでみろって言ったんですけど、飛べなかったんです。色々言い訳してたらしいんですけど誰も信じなくって
おまけに『ある人がここに来た時のためにこれ以上飛ばす事はできない』と言って、その全員でわたしの村に住み着いて
一生懸命働いてその皆でお金を作って、何十人もの貴族にお願いして『竜の戦艦』に『固定化』の呪文までかけてもらったそうです」
「変わり者だったのね。さぞかし家族の人たちは苦労したでしょうに」
「その件以外では、皆働き者の良い人達だったそうなので村の人たちにも受け入れられていたそうです」
「いいのかい?あたしらがそんな物貰ってさ」
「…大きいんですよ凄く。詳しく計った事はないんですけど250メイルぐらいあるらしいんです」
その大きさを聞いたキュルケとギーシュは開いた口が塞がらないでいた。
「そ…そりゃあ無理だわ。まるで城じゃないの…そりゃあ、そんな物が浮くなんて到底信じられないわね」
「僕のワルキューレより百倍も大きいじゃないか…」
「ま、まぁ見に行くだけ見に行ってみましょ。シエスタの故郷ってとこにも興味あるし」
6人を乗せたシルフィードがタルブの村へと向う。
「見えました、あれがタルブの村です」
「へぇ~~結構いい村じゃない」
「『竜の戦艦』ってのはどれなんだい?君が言っていた大きさだともう見えてもよさそうだが」
「え~~っと…あった、あそこです」
そうシエスタが指差す方向には巨大な緑色の物体が鎮座していた。
固定化のおかげか少なくとも表面上に劣化は見られない。
「は~~ほんと大きいわね…まぁアレじゃあ飛びそうにないわね」
「結局、無駄足って事だね…せっかく来たんだ、シエスタの家でヨシェナヴェでもご馳走になろうじゃないか」
ルイズ、キュルケ、ギーシュは興味無さ気に、タバサはその巨大さに興味深そうに見ているがシーマだけは別の目でそれを見ていた。
失われたはずの物。帰るべき家。震える声でその『竜の戦艦』の名前を呟く。
「リリー…マル…レーン…」
脳裏に浮かぶは母艦が家族とも呼べるクルー達と共に爆散していく姿。
「一年戦争で何もかも失っていたと思っていたが…そうかい…こうも身包み剥ぐかねぇ・・・」
それが今、あの時と変わらない姿で、この世界に鎮座している。
「?姐さんこれ知ってるの?」
「シエスタ…これの…他に何か残ってる物はないのかい…?」
なおも震える声で言うシーマに気圧されつつもシエスタが答えた。
「大したものは…お墓と遺品が少しですけど」
「見せてくれないかい」
墓の前にシーマが立つがその墓の横に板が立てかけられ見知った文字が書かれていた。
「リリー・マルレーンクルー 一同、撃沈され…異界に眠る…」
呟くようにしてそれを読み上げるが、それを聞いたシエスタは驚いた。
「読めるんですか…?これが」
「遺品もあると言ったね。持ってきてくれないかい」
シエスタがそれを取りに行くと『リリー・マルレーン』へと近付き手を当てるとルーンが光り情報が頭に流れ込んできた。
「各部システム異常無し、核融合炉異常無し、推進剤残量79%、メガ粒子残量86%…便利なもんだねぇ…魔法ってのは」
構造自体は知っているが状態まで分かることに驚く。だがそれと同時に疑問も湧き出てくる。
「妙だねぇ…推進剤も十分、システム、核融合炉にも異常が無いのに何で飛ばなかったんだい…?」
そうしてるとシエスタが持ってきたボロボロになった紙を見る。
「ひいおじいちゃん達が『ある人』に残した遺書らしいんですけど…誰も読めなかったんです」
「『…申し訳ありやせん…俺たちがドジ踏んだせいでリリー・マルレーンを沈めてしまって』だって…?あのバカヤロウ共が…ッ!」
「それを読める人に遺言を遺していたそうです」
「…どんな内容だい?」
「なんとしてでも『中佐』にこれを渡して欲しい、だそうです。誰の事なんでしょうね中佐って」
「ジオン公国軍キシリア少将麾下突撃機動軍所属シーマ海兵隊シーマ・ガラハウ中佐…あたしの事さね」
「ほんとですか…?でもこれひいおじいちゃん達が生きていた頃からあったんですよ?」
「そのあたりは、あたしにも分からないさ。だが…これは紛れも無くあたしとあいつらの船だよ…」
「じゃあ、ほんとにおじいちゃん達は『竜の戦艦』に乗ってタルブの村に来たんですね…」
「こいつは竜の戦艦なんて名前じゃない」
「じゃあ、シーマさんの国ではなんと呼ぶんですか?」
「ザンジバルⅡ級機動巡洋艦『リリー・マルレーン』。あたしの国の船さね」
それだけ言うとキュルケ達を呼びフライをかけてもらい手動ハッチをこじ開け中に入った。
核融合炉は完全に落されているため電力は通っていない。暗い通路を通りかつてブリッジだった場所に向かう。
固定化が中まで効いているのか内部装飾も一切劣化はしていなかった。
ブリッジに着くとかつて自分が愛用していたホワイトタイガーの毛皮も当時のままに残されていた。
それに昔のように座る。何も変わっていない。あの時のままだ。ただ違うのはクルーは既に居ない事だ。
かつてのクルーの名を一人づつ呟くようにして読み上げる。全員分読み上げると、自室へと向かう。
エレベーターが止まっているため非常用のハシゴの移動になるが今のシーマにとってそれは苦ではない。
自室に着くと着慣れた軍服を引っ張りだし着替えた。
軍服に袖を通すと、今まで生気が失われていた目にそれが蘇えった。
ハッチから再び姿を現したシーマをルイズが見るが、雰囲気が違っている事に気付く。
「勝手に入っていって…どうしたのよその服は」
「この前、戻る方法に期待しとくって言ったけど取り消させてもらうよ!あたしの家はここにある!」
「…どういう事よ?」
「あいつらが三代賭けて守ったこの船とこの村をあたしは守らなくちゃならないんだからねぇ!」
シエスタはこの船に乗って来たひいおじいちゃん達がこの村に住み着いたと言った。
ならあいつらの子孫はあたしの家族という事になる。家族なら今度こそ惨めな思いなぞさせたりはしない。
その決意がシーマを奮い立たせていた。
「さぁ、さっさとトリステインに戻るよ!コッパゲに推進剤の複製の依頼とこの船を動かす人員をかき集めなけりゃならないんだからねぇ!」
それからしばらくし、アルビオン艦隊がトリステイン艦隊を打ち破り侵攻してきたとの知らせが入る。
アルビオンの艦が礼砲を撃つとそれに返答するために礼砲ほ撃ち返したらアルビオン艦の一隻が爆沈したというのだ。
それが元で全面会戦となり瞬く間にトリステイン艦隊を撃破しタルブの村へと迫っていた。
ラ・ロシェールにトリステイン軍が布陣を始めるが制空権を奪われている事と敵に竜騎兵が多数配備されている事から戦術的に不利な立場にあった。
「ちッ!このままだと村が焼かれるねぇ…!こいつらじゃまだ、マトモな操艦も期待できないだろうし…墜落するのがオチか!」
宇宙母艦など見たことも無い連中に僅かな期間で覚えこませようとしているのが無茶なのだがイラついたように扇子で手を叩き立ち上がる。
「あたしが出るよ!ルイズ、主砲の狙い方は覚えてるんだろうね!直撃でなくてもいいから敵が見えたらしっかりブッ放しな!」
それだけ言うと格納庫へと向かう。
乗り込むのは巨大な鋼鉄のゴーレム。一年戦争を生き延びた愛機だ。右手に持つ武装は黒光りする長身の銃。左手も短めだが同じく銃。
このゴーレムを動かせるのは自分しか居ない。なら他はスペアパーツに回すべきだと判断した。
「エルアンコンフ、チェック!」
カタパルトにその巨大な片脚を乗せる
「エアブリード、チェック!」
艦の側面カタパルトから突き出ている棒を持つ
「エンジン、アンティアイ!」
発艦準備完了、その巨大なゴーレムともいえる機体が飛び立つのを今か今かと待ち望んでいる。
「よーし!マリーネライター出る!」
「大漁を!」
「あいよ!」
無線とカタパルトの操作は比較的単純なため覚えさす事はできた。
そしてその言葉と共にゴーレム―MS-14Fsは中空へと飛び立つ。
大気圏でしかも地上にあるザンジバルのカタパルトではロクに距離も稼げないが、それでも今は少しでも村の手前で敵を止めたかった。
制空権を完全に抑えられ壊走寸前のトリステイン軍だったが後方から放物線を描くように猛スピードで突っ込んでくる鉄のゴーレムに気が付き混乱を極めた。
なにせアンリエッタが陣頭指揮を取っているのだ。うろたえるのは当然と言えた。
だが、そのゴーレムを凝視するかのように見ていたアンリエッタに声が聞こえた。
「ずいぶんとこっ酷くやられたもんだねぇ、まぁあたしが来たからには安心しな!」
「…その声は…もしかしてシーマさんですか?」
「そっちの声は聞こえないから耳の穴かっぽじってよーく聞くんだね。邪魔だから今すぐ陣を引き払って下がりな!」
外部スピーカーでの警告を済ませると竜騎兵隊に向けまた放物線を描くようにして飛んだ。
一体のゴーレムが近付いてくるがそれを見ていた竜騎兵達は笑った。
敵は一体のみ、しかもゴーレム。空を飛ぶこちらには一切の攻撃は当たらないとそう思っていた。
だが、そのゴーレムが左手を火竜に向けると、音が鳴り響きその手から光が奔る。
そう思った瞬間、竜騎兵達の火竜のうち数体が一瞬にして絶命した。
MMP-80マシンガン、公国軍統合再生計画により作られた全機種対応マシンガンだ。
MS戦を想定して作られたものであり火竜如き撃ち抜く事はわけはない。
ロックオン機能こそ働かないが相手は直進的な動きしかできない火竜である。大戦撃墜スコア56機。エースに属するシーマには手動照準で十分だ。
弾幕を張り竜騎兵の半数を落すとサディスティックな声が辺りに響き渡る
「ははははははは!さぁさぁ慌てておくれ!あたしゃ気が短いんだ!す~ぐ楽にしてあげるからねぇ!」
ドSここに極まれり。その声を聞いた竜騎兵が高度を上げる。だがそれを見たシーマは薄く笑い右手に持った長身の銃を構えると一本の光の矢が轟音と共に放たれた。
MRB-110式ビームライフル。その数万度ともいえるメガ粒子の光の矢は直撃を受けなくとも周りにいた生物を焼きつくす。
光の矢がかすめた火竜と竜騎兵がその熱量に焼かれ次々と墜落し全滅していった。
それを後方から見ていたトリステイン軍は士気を取り戻しつつあったがまだマザリーニ枢機卿はまだ戦局は不利とみていた
「竜騎兵隊はシーマのゴーレムによって全滅したようですが…敵艦隊は依然として健在であり…このまま行けばタルブが砲火に晒されるのも時間の問題かと…」
「手は無いのですか…?」
「我が艦隊は既に主力艦艇を失っており…敵旗艦『レキシントン』に対抗する艦は残されておりません』
「…ではタルブの民に避難を呼びかけてください」
「ふふ…やっとこさ本命のおでましかい…よりどりみどり…どれから殺ろうかどれから…」
そう怪しく呟くと遥か上空の戦艦目掛けビームを放った。
大気圏ならビームは減衰するがこの距離なら十分だ。
下から撃ち出される光の矢に次々と船が沈められていく。
宇宙艦艇の装甲さえも容易く貫く光の矢。ハルケギニアにおいてこれを止める装甲などありはしない。
だが、本命の旗艦を狙おうとしたトリガーを引くが警告音が鳴り響く
「ちっ!肝心な時に弾切れかい!」
マシンガンや速射砲ではあそこまで届かないと見て、リリー・マルレーンに通信を入れる。
「聞こえるかいルイズ!教えたとおり一番デカイ艦を狙ってトリガーを引きな!」
「分かってるけど…なんで主人が使い魔に命令されてんのよ!」
「その船はあたしの家だよ!そこではあたしが主人さね!ぶつくさ言ってないでさっさとブッ放しちまいな!」
「~~~~っ!帰ったらご飯抜きだからね!」
そう叫ぶとルイズが主砲のトリガーを引き込む。
連装メガ粒子砲2門 連装メガ粒子副砲4門 計6門の巨大な光の矢がアルビオン艦隊に吸い込まれるように飛んでいき、一本が『レキシントン』に直撃
MSのビームライフルとは比べ物にならない核融合路に直結させた膨大な出力の世界最強の砲。
これを食らっては『レキシントン』と言えどひとたまりもなかった。
残りの5本も至近弾となり残存艦艇を襲いその高熱で艦を焼き尽くし、次々と墜落させていく。
艦艇を瞬時に失い浮き足立った地上軍など的でしかない。アンリエッタ直接指揮のトリステイン軍がそこに突撃し勝敗は決した。
この戦いの後、トリステイン王立空軍は『シーマ艦隊』と名を変え再編される事になるが
その巨大な旗艦に最強の虚無のメイジと最恐の使い魔が乗っている事はまだあまり知られていなかった。
『ハルケギニアの蜻蛉 完』
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