「ゼロの夢幻竜-01」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
ゼロの夢幻竜-01 - (2008/02/27 (水) 22:05:48) の1つ前との変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
「大丈夫。次こそきっと上手くいく。」
今トリステイン魔法学校では、今年の春に晴れて二年生になった者達の「使い魔召喚の儀」が行われている。
午後から一人ずつ執り行われている非常に重要なその儀式は遂に残すところあと一人の女生徒だけとなった。
しかし彼女がそれに取り掛かってからすっかり15分近くかかろうとしていた。
他の者なら1分とかからないこの儀式に何故そこまで時間がかかっているのか?
理由は簡単。その女生徒ことルイズが悉く召喚を失敗させるからである。
彼女が呪文を唱えて杖を振ると、儀式を終えた者達から叫び声と野次がとぶほどの爆発が起きる。
ついでにその者達に召喚された使い魔達も爆発の度に大騒ぎする。
教師も今しがた、今日はやめにして明日また改めて行ったらどうか、といってくる始末だ。
その提案をルイズはもう一回やらせてください!と頼み込んで蹴った。
あと一回という事になったが、回りからは少々疲れ気味の罵倒が止む事は無い。
「いい加減にしろよ!次で何度目かこっちだって数えるの面倒なんだぞ!」
「ちょっと!使い魔宥めなきゃならないこっちの身にもなってよね!!」
いちいち相手にしていたらキリが無い。
大体あんなもの、この学園に入った時からそうだったのだから。
意識を集中させ、杖を高く掲げて声を上げる。
「宇宙の何処かにいる私の下僕(しもべ)よッ!!」
そのいきなりの口上に野次は止むが、同時にきょとんとした雰囲気も作り出す。
だがそんな空気は気にもせずにルイズは続ける。
「強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
口では格好の良い事を言っていても正直そんな事はどうでもよかった。
どんな物でも良い。
召喚されて私の感情を十分満足させてくれる生き物であるならば猫でも鼬でも歓迎するわ。
今度爆発だけで何も起こらなかったらここにいる事さえ危うくなってしまう。
失敗は許されない。もうさっき言った様なやつでも良いから何か来て!!!
次の瞬間目も眩むような白銀の閃光が生まれ、次に今までには無い強烈な爆発が起きる。
その為周囲は大量の土煙のせいで完全に視界が利かなくなってしまった。
やがて大分薄くなったそれを一陣の風が遠くへ運ぼうとした時、ルイズにははっきりと見えた。
爆発の中心地に何かが確かにいる事を。
「おい!あそこになんかいるぞ!!」
そして生徒の一人もやや興奮気味にルイズの見ている方向と同じ方向に指を指す。
一瞬それは皆の目には竜の様に映った。
しかし煙が晴れて直ぐにそれは自分達の世界で知られているどの竜とも違うという事に気付かされる。
大きさにして1メイルから2メイルの中間くらい。
色は赤と白を基調としており、草原の中にいれば一目で分かる程はっきりとしている。
体は卵の様な丸みを帯びており長い首がついていた。
そして翼は一般的な竜とは違い、中折れに相当する箇所が無く体から真っ直ぐ伸びている。
「嘘だろ……ゼロのルイズが成功しやがった!」
「でも……何なのよ、あれ?!!」
確かに見た事の無い生き物のためにあれとしか表現しようの無い生き物。
そしてそれは今、目を閉じている。
気絶しているのだろうか?それともどこかで昼寝でもしているところを召喚されたからだろうか?
だがそれを呼び出したルイズにとってそんな事は瑣末な問題の一つにしか過ぎない。
魔法の成功確率ゼロ故に‘ゼロのルイズ’と言われ続けた自分が、やっと成功する事が出来たのだから。
砂漠を歩き続けた旅人が水辺を見つけた時の様に、ルイズはふらふらとその生き物の所へ足を進める。
「や、やったわ……やったわ!!」
正に感激の極みといったところだ。
周囲が動揺していようが何を言おうが最早彼女の耳には何も聞こえてきはしない。
鼠でも鼬でもと考えていたせいか、立派な使い魔を召喚出来たのだから文句の一つも出なかった。
近づいてみると、離れていたときは分からなかったが全身の細かな体毛がガラスの破片の様にキラキラと輝いている。
体が一定間隔で上下している所を見ると、どこかで休んでいる所を召喚されたのだろう。
何より安らかそうなその顔は見ていて愛らしいところもある。
「これは、見た事の無い生き物ですね……詳しい事は図鑑で調べるか専門の研究機関に訊くかしなければ分かりませんが、
兎に角、サモン・サーヴァント成功です。おめでとう、ミス・ヴァリエール。さ、儀式の続きを。」
「あ、有り難う御座います!コルベール先生!」
儀式を監督していたコルベールが興味深げな視線をそれに送りつつ賞賛の声を向ける。
教師に褒められた事が魔法関係ではそうそう無かった彼女は感無量となる。
そして未だ周りの喧騒に微々として気付く事も無く、すやすやと眠り続けているその生き物の顔に自分の顔を近づけて言う。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」
言葉と共に杖を振り、口ととれる頭部の下にある切れ込みに自らの唇を重ねる。
と、その時何かの音がルイズの心の中に響いてくる。
それは霧の彼方から聞こえて来る様な感触だった。
やがてそれははっきりと言葉になっていき、幼くも透明感のある声となる。
「あなた……だあれ?」
#navi(ゼロの夢幻竜)
「大丈夫。次こそきっと上手くいく。」
今トリステイン魔法学校では、今年の春に晴れて二年生になった者達の「使い魔召喚の儀」が行われている。
午後から一人ずつ執り行われている非常に重要なその儀式は遂に残すところあと一人の女生徒だけとなった。
しかし彼女がそれに取り掛かってからすっかり15分近くかかろうとしていた。
他の者なら1分とかからないこの儀式に何故そこまで時間がかかっているのか?
理由は簡単。その女生徒ことルイズが悉く召喚を失敗させるからである。
彼女が呪文を唱えて杖を振ると、儀式を終えた者達から叫び声と野次がとぶほどの爆発が起きる。
ついでにその者達に召喚された使い魔達も爆発の度に大騒ぎする。
教師も今しがた、今日はやめにして明日また改めて行ったらどうか、といってくる始末だ。
その提案をルイズはもう一回やらせてください!と頼み込んで蹴った。
あと一回という事になったが、回りからは少々疲れ気味の罵倒が止む事は無い。
「いい加減にしろよ!次で何度目かこっちだって数えるの面倒なんだぞ!」
「ちょっと!使い魔宥めなきゃならないこっちの身にもなってよね!!」
いちいち相手にしていたらキリが無い。
大体あんなもの、この学園に入った時からそうだったのだから。
意識を集中させ、杖を高く掲げて声を上げる。
「宇宙の何処かにいる私の下僕(しもべ)よッ!!」
そのいきなりの口上に野次は止むが、同時にきょとんとした雰囲気も作り出す。
だがそんな空気は気にもせずにルイズは続ける。
「強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
口では格好の良い事を言っていても正直そんな事はどうでもよかった。
どんな物でも良い。
召喚されて私の感情を十分満足させてくれる生き物であるならば猫でも鼬でも歓迎するわ。
今度爆発だけで何も起こらなかったらここにいる事さえ危うくなってしまう。
失敗は許されない。もうさっき言った様なやつでも良いから何か来て!!!
次の瞬間目も眩むような白銀の閃光が生まれ、次に今までには無い強烈な爆発が起きる。
その為周囲は大量の土煙のせいで完全に視界が利かなくなってしまった。
やがて大分薄くなったそれを一陣の風が遠くへ運ぼうとした時、ルイズにははっきりと見えた。
爆発の中心地に何かが確かにいる事を。
「おい!あそこになんかいるぞ!!」
そして生徒の一人もやや興奮気味にルイズの見ている方向と同じ方向に指を指す。
一瞬それは皆の目には竜の様に映った。
しかし煙が晴れて直ぐにそれは自分達の世界で知られているどの竜とも違うという事に気付かされる。
大きさにして1メイルから2メイルの中間くらい。
色は赤と白を基調としており、草原の中にいれば一目で分かる程はっきりとしている。
体は卵の様な丸みを帯びており長い首がついていた。
そして翼は一般的な竜とは違い、中折れに相当する箇所が無く体から真っ直ぐ伸びている。
「嘘だろ……ゼロのルイズが成功しやがった!」
「でも……何なのよ、あれ?!!」
確かに見た事の無い生き物のためにあれとしか表現しようの無い生き物。
そしてそれは今、目を閉じている。
気絶しているのだろうか?それともどこかで昼寝でもしているところを召喚されたからだろうか?
だがそれを呼び出したルイズにとってそんな事は瑣末な問題の一つにしか過ぎない。
魔法の成功確率ゼロ故に‘ゼロのルイズ’と言われ続けた自分が、やっと成功する事が出来たのだから。
砂漠を歩き続けた旅人が水辺を見つけた時の様に、ルイズはふらふらとその生き物の所へ足を進める。
「や、やったわ……やったわ!!」
正に感激の極みといったところだ。
周囲が動揺していようが何を言おうが最早彼女の耳には何も聞こえてきはしない。
鼠でも鼬でもと考えていたせいか、立派な使い魔を召喚出来たのだから文句の一つも出なかった。
近づいてみると、離れていたときは分からなかったが全身の細かな体毛がガラスの破片の様にキラキラと輝いている。
体が一定間隔で上下している所を見ると、どこかで休んでいる所を召喚されたのだろう。
何より安らかそうなその顔は見ていて愛らしいところもある。
「これは、見た事の無い生き物ですね……詳しい事は図鑑で調べるか専門の研究機関に訊くかしなければ分かりませんが、
兎に角、サモン・サーヴァント成功です。おめでとう、ミス・ヴァリエール。さ、儀式の続きを。」
「あ、有り難う御座います!コルベール先生!」
儀式を監督していたコルベールが興味深げな視線をそれに送りつつ賞賛の声を向ける。
教師に褒められた事が魔法関係ではそうそう無かった彼女は感無量となる。
そして未だ周りの喧騒に微々として気付く事も無く、すやすやと眠り続けているその生き物の顔に自分の顔を近づけて言う。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」
言葉と共に杖を振り、口ととれる頭部の下にある切れ込みに自らの唇を重ねる。
と、その時何かの音がルイズの心の中に響いてくる。
それは霧の彼方から聞こえて来る様な感触だった。
やがてそれははっきりと言葉になっていき、幼くも透明感のある声となる。
「あなた……だあれ?」
#navi(ゼロの夢幻竜)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: