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プレデター・ハルケギニア-07 - (2008/03/02 (日) 16:42:23) の1つ前との変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
ルイズがアンリエッタからウェールズへの密書を手にした翌日、アルビオンへの出発となった。
ルイズの護衛についたのは何とルイズの婚約者でもあり現グリフォン隊隊長のワルドであり
予定ではルイズとワルドの二人で大使として出発することになっていたのだが……
「何であんた達がいるわけ?」
「はは、気にするなルイズ、護衛は多い方がいいじゃないか。なぁヴェルダンデ」
「こ~んないい男見てこの『微熱』が黙っていられるわけないじゃないの~」
馬に跨ったギーシュが傍らにいる使い魔の大モグラに語りかけ、キュルケがワルドに寄り添っている。
そしてもう一人、タバサがシルフィールドの上で黙々と本を読んでいる。
ルイズとアンリエッタが再会したあの夜、アンリエッタが入って行くのを目撃したギーシュは鍵穴から
室内を覗き込んでおり勢い余って部屋に入り込んでしまったのである。
自らルイズの護衛に志願するギーシュに最初は困惑したアンリエッタであったが
元帥であるグラモンの息子であることを聞き、これを承認した。
キュルケはいざ出発しようとした一行を偶然見かけるとすぐにタバサを叩き起こし駆けつけてきた。
もちろん目的はワルドである。すらりとした長身に長い金髪、そして形のいい口髭を生やした端正な面持ちの
ワルドの容姿は確かに魅力的であった。黒いマントと羽帽子もよく似合っている。
「では諸君、出撃だ!」
ワルドの掛け声とともにグリフォンが駆け出す。
こうしてルイズ一行はアルビオンに向けて出発となった。
「随分と成長したねルイズ。池の小船で泣いていた頃と比べると本当に見違えるよ」
ルイズを自身の前に乗せたワルドがルイズに話かける。その口調と表情はどこまでもやさしい。
「当然だわ。もう十六になったんですもの」
「はは、それもそうだね。それにしても本当に美しくなった……」
「そんな、からかわないでくださいまし」
ルイズが顔を赤らめ俯く。
「ん?照れているのかい?恥ずかしがることは無いだろう!僕たちは婚約者じゃないか」
その後もワルドはルイズに話かけ続けた。どれもたわいもないような話だったが憧れている婚約者と
久々に出会えたことでルイズの心は弾んでいた。
道中は何事もなく順調だった。グリフォンに乗っているワルドとルイズ、シルフィールドに乗っているキュルケとタバサに比べ
一人早馬に跨るギーシュはきつそうではあったが。通常は馬で二日かかる距離を一日で行こうというのだから
無理もないか。もう日も暮れようかという時間になったころアルビオンへの港町、ラ・ロシェールが見えてきた。
そのころラ・ロシェールでは大勢の傭兵達が道の片隅に集まっていた。
傭兵達に囲まれるように二人の男女が立っている。
女の方は先日アカデミーより脱走したフーケであった。
男の方はフーケを脱走させたあの仮面のメイジだ。
「うまくやりなさいよ。金は払ってんだからね」
「へ、任せな。料金分はきっちり働かせてもらうぜ」
傭兵たちが薄く笑う。
「では後は任せたぞ。『土くれ』よ」
「ああ、わかってるよ。手はず通りやるさ」
フーケが応えると仮面の男の姿が夕刻の闇に消えていく。
「さて、じゃあ準備にとりかかろうかい」
フーケの言葉とともに傭兵達が散らばって行く。
ラ・ロシェールに到着した一行であったがアルビオンへの船は明後日まで出ないということだ。
もう完全に日も落ち夜空の双月が月明かりを落としている。
仕方が無いため一行は宿をとり明後日まで待つこととした。
一行が宿をとり宿屋の1階の酒場で豪勢な食事を取っているころ
トリステインの山中を蠢く影があった。2メイルを超える巨体を木々から木々へと飛び移り移動する様は
さながら巨猿のようである。その巨体は暗闇など関係ないかのように南へ、南へと木々を飛び移って行った。
さて、いよいよアルビオンへと出航する前夜となったがここで予想外の事が起きた。
宿屋を数十人の傭兵が突如、奇襲をかけてきたのだ。
恐らくはアルビオン側の妨害だろう。
「諸君、聞いてくれ」
横にしたテーブルを盾にうずくまる一行にワルドが言った。
「こういう任務は半数が到着すれば成功だ……わかるか?」
ワルドが話している間も宿の外から傭兵たちの矢が撃ち込まれ続ける。
「ど、どういう事ですか、小爵?」
ワルドの言葉にギーシュが不可解そうに言う。
「あんた本当にバカね」
「なんだとキュルケ!」
ため息混じりのキュルケの言葉にギーシュが声を荒だてる。
「小爵さまは私たちに囮になれと言ってるのよ」
「お、囮だって!?」
「ああ、その通りだ。できるだけ奴らを引き付けて欲しい」
「ふぅ……わかったわ。大体私たち、あなたたちがアルビオンに行く目的も知らないのよね」
「礼を言う。じゃあ行こうルイズ」
「え、ええ」
ワルドとルイズが裏口へと駆け出す。すかさず何本もの矢が飛んでくるが
タバサが風魔法で防いでくれた。同時にキュルケがファイヤーボールを傭兵たちに撃ちこむ。
一気に外へと出た二人は炎の明かりが揺らめく宿屋を尻目に桟橋へと走って行った。
「さてと、これからどうしようかしら」
キュルケがそう呟いた時、突如宿の外から傭兵の悲鳴が響いた。
「な、何だ!?」
一同がテーブルから小さく顔を出し外を見ると驚くべき光景が広がっていた。
傭兵が何者かに襲われているのだ。
一人の傭兵の腹部に何かが突き刺さる。間髪いれずに傭兵の体が宿屋の屋根まで放り投げられる。
鎧を着込んでいることを考慮すれば恐らくは傭兵の重さは100kgを超えるだろう。
「何だこいつは!?」
傭兵達が驚きと恐怖の混じった声を上げる。
至近距離で見ればそこに巨大な人型の何かがいるのはわかる。しかしその姿は周りに溶け込むように透明にカモフラージュされているのだ。
絶叫とともに透明な襲撃者に傭兵たちが斬りかかる。しかし逆に突っ込んだ傭兵達が胴から三人まとめて両断されてしまった。
見ると襲撃者の右腕と思われる場所から巨大な刃のような物が伸びており先端から血が滴っている。
それからも傭兵たちは次々と透明な襲撃者に殺されていった。みなバラバラに切り裂かれ。
辺り一帯に傭兵たちの血と臓物の匂いが広がる。
あまりの光景にギーシュが嘔吐する。キュルケの表情も青ざめ冷や汗が流れ落ちる。
襲撃者が傭兵の最後の一人の頭部を透明な手で掴む。鎧を着込んだ傭兵の体を片手で軽々と持ち上げた。
その時透明な体に青い電流が流れカモフラージュされていた姿が現れた。
「あ、あいつは!?」
キュルケが驚嘆の声を上げる。それはあの召喚の儀式の日、キュルケらも眼にしたルイズの召喚したあの亜人であった。
亜人が傭兵の体を持ち上げたまま、宿の屋根へと跳びあがる。高さにして6メイルはある。凄まじき跳躍力だ。
傭兵を投げ捨てるように離した。右腕に持った巨大な一枚刃の武器を背中にしまうと右腕から二本の鉤爪が伸びる。
傭兵が恐怖に顔を歪め、口からは小さく脅えた声を出している。
傭兵の体を亜人の巨大な爬虫類のような手が押さえつけると一気に鉤爪を傭兵の体へと振り下ろした。
つんざくような傭兵の絶叫が響いたがすぐにそれも聞こえなくなった。
全身の生皮を剥がされた傭兵の体を屋根の縁にワイヤーで逆さ吊りにすると亜人は夜空に向かい巨大な咆哮を上げた。
その時だった。ラ・ロシェールの上空を巨大な船が横切った。亜人が驚いたように獣のような声を出す。
「あ~あ、一気にアルビオンまで行っちまおうかと思ったけど船行っちまったぜ。相棒が遊んでるから……」
亜人の腰に差された大剣が鎬をカタカタと鳴らし喋る。
亜人は小さく喉を鳴らしながら飛び去って行く船を見つめていた。
「あいつはあの時の……何だってこんな所にいやがるんだい?
まぁいいさ、目的は果たせた。私もおいとまさせてもらうよ」
物陰から一部始終を見ていたフーケが闇夜へと飛び去って行く。
ラ・ロシェールの大地に傭兵達の血潮が染み込んでいった。
#navi(プレデター・ハルケギニア)
ルイズがアンリエッタからウェールズへの密書を手にした翌日、アルビオンへの出発となった。
ルイズの護衛についたのは何とルイズの婚約者でもあり現グリフォン隊隊長のワルドであり
予定ではルイズとワルドの二人で大使として出発することになっていたのだが……
「何であんた達がいるわけ?」
「はは、気にするなルイズ、護衛は多い方がいいじゃないか。なぁヴェルダンデ」
「こ~んないい男見てこの『微熱』が黙っていられるわけないじゃないの~」
馬に跨ったギーシュが傍らにいる使い魔の大モグラに語りかけ、キュルケがワルドに寄り添っている。
そしてもう一人、タバサがシルフィールドの上で黙々と本を読んでいる。
ルイズとアンリエッタが再会したあの夜、アンリエッタが入って行くのを目撃したギーシュは鍵穴から
室内を覗き込んでおり勢い余って部屋に入り込んでしまったのである。
自らルイズの護衛に志願するギーシュに最初は困惑したアンリエッタであったが
元帥であるグラモンの息子であることを聞き、これを承認した。
キュルケはいざ出発しようとした一行を偶然見かけるとすぐにタバサを叩き起こし駆けつけてきた。
もちろん目的はワルドである。すらりとした長身に長い金髪、そして形のいい口髭を生やした端正な面持ちの
ワルドの容姿は確かに魅力的であった。黒いマントと羽帽子もよく似合っている。
「では諸君、出撃だ!」
ワルドの掛け声とともにグリフォンが駆け出す。
こうしてルイズ一行はアルビオンに向けて出発となった。
「随分と成長したねルイズ。池の小船で泣いていた頃と比べると本当に見違えるよ」
ルイズを自身の前に乗せたワルドがルイズに話かける。その口調と表情はどこまでもやさしい。
「当然だわ。もう十六になったんですもの」
「はは、それもそうだね。それにしても本当に美しくなった……」
「そんな、からかわないでくださいまし」
ルイズが顔を赤らめ俯く。
「ん?照れているのかい?恥ずかしがることは無いだろう!僕たちは婚約者じゃないか」
その後もワルドはルイズに話かけ続けた。どれもたわいもないような話だったが憧れている婚約者と
久々に出会えたことでルイズの心は弾んでいた。
道中は何事もなく順調だった。グリフォンに乗っているワルドとルイズ、シルフィールドに乗っているキュルケとタバサに比べ
一人早馬に跨るギーシュはきつそうではあったが。通常は馬で二日かかる距離を一日で行こうというのだから
無理もないか。もう日も暮れようかという時間になったころアルビオンへの港町、ラ・ロシェールが見えてきた。
そのころラ・ロシェールでは大勢の傭兵達が道の片隅に集まっていた。
傭兵達に囲まれるように二人の男女が立っている。
女の方は先日アカデミーより脱走したフーケであった。
男の方はフーケを脱走させたあの仮面のメイジだ。
「うまくやりなさいよ。金は払ってんだからね」
「へ、任せな。料金分はきっちり働かせてもらうぜ」
傭兵たちが薄く笑う。
「では後は任せたぞ。『土くれ』よ」
「ああ、わかってるよ。手はず通りやるさ」
フーケが応えると仮面の男の姿が夕刻の闇に消えていく。
「さて、じゃあ準備にとりかかろうかい」
フーケの言葉とともに傭兵達が散らばって行く。
ラ・ロシェールに到着した一行であったがアルビオンへの船は明後日まで出ないということだ。
もう完全に日も落ち夜空の双月が月明かりを落としている。
仕方が無いため一行は宿をとり明後日まで待つこととした。
一行が宿をとり宿屋の1階の酒場で豪勢な食事を取っているころ
トリステインの山中を蠢く影があった。2メイルを超える巨体を木々から木々へと飛び移り移動する様は
さながら巨猿のようである。その巨体は暗闇など関係ないかのように南へ、南へと木々を飛び移って行った。
さて、いよいよアルビオンへと出航する前夜となったがここで予想外の事が起きた。
宿屋を数十人の傭兵が突如、奇襲をかけてきたのだ。
恐らくはアルビオン側の妨害だろう。
「諸君、聞いてくれ」
横にしたテーブルを盾にうずくまる一行にワルドが言った。
「こういう任務は半数が到着すれば成功だ……わかるか?」
ワルドが話している間も宿の外から傭兵たちの矢が撃ち込まれ続ける。
「ど、どういう事ですか、小爵?」
ワルドの言葉にギーシュが不可解そうに言う。
「あんた本当にバカね」
「なんだとキュルケ!」
ため息混じりのキュルケの言葉にギーシュが声を荒だてる。
「小爵さまは私たちに囮になれと言ってるのよ」
「お、囮だって!?」
「ああ、その通りだ。できるだけ奴らを引き付けて欲しい」
「ふぅ……わかったわ。大体私たち、あなたたちがアルビオンに行く目的も知らないのよね」
「礼を言う。じゃあ行こうルイズ」
「え、ええ」
ワルドとルイズが裏口へと駆け出す。すかさず何本もの矢が飛んでくるが
タバサが風魔法で防いでくれた。同時にキュルケがファイヤーボールを傭兵たちに撃ちこむ。
一気に外へと出た二人は炎の明かりが揺らめく宿屋を尻目に桟橋へと走って行った。
「さてと、これからどうしようかしら」
キュルケがそう呟いた時、突如宿の外から傭兵の悲鳴が響いた。
「な、何だ!?」
一同がテーブルから小さく顔を出し外を見ると驚くべき光景が広がっていた。
傭兵が何者かに襲われているのだ。
一人の傭兵の腹部に何かが突き刺さる。間髪いれずに傭兵の体が宿屋の屋根まで放り投げられる。
鎧を着込んでいることを考慮すれば恐らくは傭兵の重さは100kgを超えるだろう。
「何だこいつは!?」
傭兵達が驚きと恐怖の混じった声を上げる。
至近距離で見ればそこに巨大な人型の何かがいるのはわかる。しかしその姿は周りに溶け込むように透明にカモフラージュされているのだ。
絶叫とともに透明な襲撃者に傭兵たちが斬りかかる。しかし逆に突っ込んだ傭兵達が胴から三人まとめて両断されてしまった。
見ると襲撃者の右腕と思われる場所から巨大な刃のような物が伸びており先端から血が滴っている。
それからも傭兵たちは次々と透明な襲撃者に殺されていった。みなバラバラに切り裂かれ。
辺り一帯に傭兵たちの血と臓物の匂いが広がる。
あまりの光景にギーシュが嘔吐する。キュルケの表情も青ざめ冷や汗が流れ落ちる。
襲撃者が傭兵の最後の一人の頭部を透明な手で掴む。鎧を着込んだ傭兵の体を片手で軽々と持ち上げた。
その時透明な体に青い電流が流れカモフラージュされていた姿が現れた。
「あ、あいつは!?」
キュルケが驚嘆の声を上げる。それはあの召喚の儀式の日、キュルケらも眼にしたルイズの召喚したあの亜人であった。
亜人が傭兵の体を持ち上げたまま、宿の屋根へと跳びあがる。高さにして6メイルはある。凄まじき跳躍力だ。
傭兵を投げ捨てるように離した。右腕に持った巨大な一枚刃の武器を背中にしまうと右腕から二本の鉤爪が伸びる。
傭兵が恐怖に顔を歪め、口からは小さく脅えた声を出している。
傭兵の体を亜人の巨大な爬虫類のような手が押さえつけると一気に鉤爪を傭兵の体へと振り下ろした。
つんざくような傭兵の絶叫が響いたがすぐにそれも聞こえなくなった。
全身の生皮を剥がされた傭兵の体を屋根の縁にワイヤーで逆さ吊りにすると亜人は夜空に向かい巨大な咆哮を上げた。
その時だった。ラ・ロシェールの上空を巨大な船が横切った。亜人が驚いたように獣のような声を出す。
「あ~あ、一気にアルビオンまで行っちまおうかと思ったけど船行っちまったぜ。相棒が遊んでるから……」
亜人の腰に差された大剣が鎬をカタカタと鳴らし喋る。
亜人は小さく喉を鳴らしながら飛び去って行く船を見つめていた。
「あいつはあの時の……何だってこんな所にいやがるんだい?
まぁいいさ、目的は果たせた。私もおいとまさせてもらうよ」
物陰から一部始終を見ていたフーケが闇夜へと飛び去って行く。
ラ・ロシェールの大地に傭兵達の血潮が染み込んでいった。
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