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トリステイン魔法学院 学院長室 破壊の杖「FGM-148 Javelin」奪還及び盗賊「土くれのフーケ」確保後
ゲイリー・「ローチ」・サンダーソン軍曹 サイモン・ライリー 「ゴースト」中尉
学院長室の室内では数人の子供、そして数人の大人が今話をしている最中だった
学院長のオスマン、教師のコルベール、生徒であるルイズ、キュルケ、タバサ、そしてローチとゴースト
「むぅ…まさかミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとは…美人というだけで雇ってしまったのはいかんかったかのう?」
「どこで採用なさったのですか…?」
コルベールの問いにオスマンは髭を撫で付けながらゆっくりと後ろを向き、答える
「街で飲んどる時にのう…あれはそう、ワシが客で彼女が給仕をしていた時じゃ…彼女が横を通った時にな
いやはや腰から太股にかけて実に美しいラインを描いとったのでついついこの手がそのラインを撫でてしまったのじゃ……
嗚呼やってしもうた叫ばれてしまう!と思ったが彼女は怒らなかったのじゃ、そこでワシは感激してのう、彼女を秘書に雇ったのじゃ」
ゴーストがブフッと噴き出し、笑い始めた
「ぶっはぁ!んだぁ?!つまりあれか!フーケの尻を触ったら怒らなかったからって雇っちまったのか!オッサン若ぇなぁ、オイ!」
「…」
生徒達とコルベールは皆同様に思った(死ねばええねん)と、オスマンは一同の冷め切った目で見られているのに気付いたのか目を背ける
「ゴ、ゴホンッ!いやいや、それは置き諸君よ、ようやってくれた!破壊の杖の奪還!そしてフーケ討伐!
おぬし等がこの学院にいた事をワシは誇りに思うぞ!」
オスマンがにこりと笑い生徒たちを一瞥する、生徒一同は直立不動で話を聞いているのに対し他の人物、つまりローチとゴーストはその限りではなかった
ローチは腕を組みながら移動はしていないがフラフラと体を揺らしている、よく見れば足でリズムを取ってるので脳内で音楽を再生しているのだろうか
ゴーストに至っては暇だったのか部屋の中を歩き回り色々な物を見て回っている、手に取ったりしていないのが救いだろうか
「おぬし等へのシュヴァリエの爵位申請を宮廷に出して置いた、後々それについての話があるじゃろうて
ミス・タバサは既にシュヴァリエの爵位を持っておるから精霊勲章の授与を申請をしておいた」
キュルケとルイズの顔がぱぁっと輝いた、タバサはそれとなく自慢げな顔をしている
「シュヴァリエ?凄いのか?」
ローチが足でリズムを取ったまま疑問を声に出す、直後ゴーストがくるりと振り向き嬉しそうな声を出す
「食い物だな!!」
「まだその話引き摺ってたんですか?!」
「違うわよ!シュヴァリエっていうのは特殊な爵位で実力が評価されないと手に入れる事の出来ない名誉ある物なのよ!
何をどう転んでどう立ち上がったらそんな考えに辿り着くのよ!」
ルイズが声を張り上げせ息を荒げる
「HAHAHAHAHA!落ち着けや嬢ちゃん!深呼吸深呼吸、ほーらヒッヒッフー」
「ばかあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ほっほっほっほっ」
オスマンが生徒とゴーストのやり取りを見て微笑ましそうに笑う、一方ローチとコルベールは何とも言えない顔で二人を見る(片方は顔が見えないが)
すると急にルイズがはっとした顔になりオスマンに尋ねる
「あの…ローチと…ついでにゴーストには…何も無いのでしょうか?」
ゴーストが俺ついでかよ、とぶーたれる
「ふむ…しかし彼らは貴族ではないからのう…いやな?ワシ個人としては彼らにシュヴァリエの爵位を与えても構わないと思うのじゃが
如何せん魔法も何も使えない平民じゃし…ゴミみたいな安いプライドだけの阿呆どもが目を付けるといかん
その代わり彼らの望むものはある程度ワシが用意しよう、それは約束する」
「だったら俺らにはフーケに懸かってた金を二分してくれれば良いぜ?異論はねぇな、ローチ?」
ゴーストの提案にローチはサムズアップをする
「ふむ、お安い御用じゃよ、それ以外にも困った事があったらどんどんワシを頼って来なさい
さてさておぬし等よ、今日はフリッグの舞踏会じゃ、破壊の杖も戻ってきたし今日は予定通り執り行う
しっかりとおめかしして意中の男性を虜にするんじゃぞ?勿論使い魔殿たちも参加してくれて構わん」
キュルケがにんまりと笑顔になってポンと手を叩く
「あら!私とした事が舞踏会の事をすっかり忘れるなんて!ふふ、楽しみね…貴女も気になる人のハートを狙い撃つのよ、タバサ?」
「…近い」
キュルケがタバサの肩に手を置いて顔を近づけるのをタバサがキュルケの顔を押しのけ抵抗する
「さて、おぬし等は行きなさい、おっと使い魔どのは話があるからここに残って頂けるかな?」
「だと、ルイズは先に行っててくれ」
「一度部屋に寄ってから来なさいね?ローチ」
ローチがルイズの頭を撫でて進行を促す、ルイズは一度頷いて学院長室を出て行く、キュルケとタバサはルイズに続き部屋を出て行った
二人が出たのを確認するとゴーストが口を開く
「俺はローチと一緒にいるが大丈夫か?」
「うむ、大丈夫じゃ、何も問題は無いよ
では話を始めようか、まずはローチ殿じゃったか?お主の左手にあるルーンのことについてじゃが…」
「武器を持ったら身体能力が馬鹿みたいに上がるこいつの事か?」
ローチは左手のグローブを外してオスマンとコルベールに見せる
「それの事じゃ…そのルーンにはそのような効果があるのじゃな?それにしてもルーンが光るとは…」
「あー…光ってるのは武器を持ってる時だけだ、今は右手にまだバトルグローブを付けているから光ってるんだ」
そう言って右手のグローブも外すと確かに左手のルーンが光を失う
「それはガンダールヴのルーンと言ってな、伝説の使い魔のルーンなのじゃ、一説によればあらゆる武器を使いこなしたそうじゃ
その戦いは一騎当千とも言われておる」
「そいつぁスゲェなローチ、お前もうコードを「デスマシーン」とか「ウォーマシン」とかにすれば?ゴキブリにはあわねぇよ」
「何でコードをM134やアイアンマンの代役的なアレにしなきゃならないんですか、好きですけどもねウォーマシン」
「しかしのうローチ殿、ガンダールヴであることは秘匿して頂きたいのじゃ」
「あなたがガンダールヴである事が知られれば噂は広がり、王宮に伝わり戦争の駒として利用されてしまいます
そうなればあっと言う間に戦火は広がる…私は…戦争を目の当たりにしたくありません…」
コルベールは顔を俯け唇を噛む
「あーあー、なるほどなるほど、今分かったわ、アンタの事が気にいらねぇ理由が、いやな?最初は乗りの悪い奴だと思ったんだよ
でも今気付いた、アンタ俺等の事兵士だって分かってたんだろ?
そしてアンタも元兵士だ、だろう?まぁ兵士を辞める理由なんて腐るほどあらぁな、アンタみてぇな奇麗事大好きな甘ちゃんなら尚更な
でもよぉ、戦争なんざ起こる時には起こるし起こらねぇ時には起こらねぇ、何で理解できねぇ?
アンタが気にいらねぇ理由は全てが綺麗事で片付けられると思ってるところだ
戦争に綺麗も糞もねぇよ、前方に出てきて撃った「物」が敵ならグッドキル、そうでなければただの「誤射」だ」
「あなたは民間人でさえ殺すと言うのか!!」
「戦争屋風情が偉そうに…選んで殺すのが、そんなに上等かね?
前に人が出てきてもたもたしてる内にそいつに殺されりゃ話になんねぇんだよ、クソが」
コルベールが杖を抜きゴーストに突きつける
「ミスタ・コルベール!落ち着きなさい」
オスマンが一喝し声を荒げるコルベールを落ち着かせる
「まぁ置いておこう、次は俺から質問させて貰って良いか?」
「うむ、構わんよ」
ローチの言葉にオスマンが反応しローチの質問を促す
「破壊の杖、あいつの名前はFGM-148 Javelinって言うんだ、これで分かると思うがアレは俺らの所の武器だ、なぜこの世界にある?」
「それはな…ワシの命の恩人が持ってた物なんじゃ…30年も前になる…ワシが森でワイバーンに襲われた時にな
もう駄目だ、お終いだと思った瞬間ワイバーンが急に凄まじい爆発音と共に砕け散ったのじゃ
ワシは助けてくれた彼に礼を言おうと駆け寄った時倒れてしまったのじゃ、彼は既にボロボロで虫の息じゃった
彼を助けようと学院に運び治療をしたが…駄目じゃった、彼は「元の世界に…イギリスに…家に帰りたい」と言って息を引き取った
ワシは彼を埋葬し彼の持っていた内のジャベリン?の片方を彼と共に埋め残ったもう片方を破壊の杖と名付け宝物庫にしまったのじゃ
出来る事ならせめて遺体だけでも彼の故郷に帰したかったが故郷がわからなんだ」
「はぁ?待てよ、意味わかんねぇ」
「確かに元の世界と言ってた事は疑問に思うかもしれないが本当なんじゃ」
「いや、違ぇ違ぇ、何で2本もジャベリンを持ってたんだ?絶対おかしいって、だってアレだろ?
20万ドル(約1700万円)、44.6キロを背負ってたってぇのか?一兵士が?
それに30年前ってまだジャベリンは配備されてねぇよな?」
ないわー、とゴーストがぶちぶち言っているのを見事にスルーしてローチが発言する
「OK、入手経路も理解できた、もし良かったらこいつは俺らが貰っていいか?」
「もう撃てんと聞くし、持って行ってくれても良い、それともうひとつ聞きたいのじゃが…
おぬし等の持っとる武器、恐らく銃のことについて聞きたいのじゃ」
「あぁ、俺らの銃に関しては答えられねぇぜ?あんた等にとっちゃぁ完全にオーバーテクノロジーだ、諦めるんだな
俺らの聞きたいことは終わったしあんた等の聞きたい事も済んだ、って訳で俺らはお暇すんぜ」
ゴーストはくるりと踵を返し扉の方へと歩いて行く、それに続きローチも扉へと向かう
「おっと、そういやフーケは簡単に脱走できねぇような所に投獄したろうな?」
「うむ、勿論じゃとも、ちゃんとチェルノボークの監獄に入れたと聞くわい」
ゴーストは一度頷きローチを引き連れて部屋を出た
ゴーストと分かれた後ローチがルイズに言われた通り一度部屋に戻る
ノックをして見るが返事も無いのでガチャリと開け、部屋の中に入った
「…居ないのか…先に行ったんだろうな …?」
部屋を見渡すとローチのベッドの上に一つの箱が置いてあった、ローチはその箱を見ると箱の上に文字の書いてある一枚の紙を見つけた
「…読めん」
丁寧でありかつ丸みを帯びた可愛らしい字を見る限りルイズの書いた字だろうが読めない、言語体系が違うのだから仕方が無い
ちなみにこの紙には「これを着てパーティーに参加するように!」と書いてあるのだがローチは知る由も無い
「…中を見ていいのか…?」
「よう相棒、俺っちの事忘れてねぇ?」
急にカチカチという音を伴って声が聞こえてくる、ローチはそう言えばこいつが居たなと思い出す、私も忘れてた
「あー…悪いな、すっかり忘れてた…と言うよりもな、お前居なくてもゴーストがストーリの進行を促してくれるから…
もしかしたら一度も出てこない話が出てくるかも…」
「ひっでぇ!!メタってなおひでぇ!!」
「あぁ、お前の出番が今のところ文字の翻訳だけって…」
「いやだわぁ!この人!愚痴を聞く役もしっかりと奪われちゃってるし!それに何?!銃!銃って!」
「せっかく出て来たんだから役割をこなせ、ほら、翻訳翻訳」
「畜生!わかったよ!「これを着てパーティーに参加しろ」って書いてあるんだよ!あと相棒よ!お願いだから文字を覚えようとしないでくれよ!
もしそんな事されたら俺っち本格的に出番無くなっちゃう!」
「はいはい、フラグフラグ」
「嫌だわぁ!嫌だわぁ!!おでれーたとかもう口癖じゃねぇもん!まず台詞ねぇもん!」
出番を得ようと必死で喋るデルフを他所にのったりと服を着替えるローチ、嗚呼かの剣の出番は何処…
時は少し進み場所は変わり現在はパーティー会場の屋内からちょこっとはみ出るバルコニーの手すりに体重を預けるローチとデルフ
ローチの格好はタキシードにバラクラバとゴーグルの珍妙不可思議な格好である、右太股には例の如くDE入りのホルスターが付けられ
今見えはしないが上着を少し捲くり上げると背中の腰部分からバトルナイフがこんにちわの挨拶をする
その姿は頭部の装飾品が無ければ非常に様になっているだろう
会場から少量とって来た料理をむぐむぐと頬張っているとデルフが声を上げる
「相棒よ、何だどうした?黄昏ちまってよぉ」
「ん、いやな?ただあの中に俺が混ざってたら変だろう?」
「あー…一応変だって自覚はあるんだな、そのマスクのこと…なら取っちまえばいいじゃねぇか」
「取れないさ、たとえ取ったとしても顔の描写は入らないさ、入れれないさ、フェイスグラフィックが無いからな
感覚で言うなら何処ぞの古道具店で店主が「この店に無いものは無いよ」って言うようなもんだ
その店で例えば傘が無いとしよう、なら店の中何処探しても傘は無い、そりゃそうだ、店に無い物は店の中幾ら探しても無いんだからな
無い物は描写の仕様が無いんだよ」
そう言うとクルリと体を回して手すりに背中を預けパーティ会場の中を見渡す
キュルケは人が多くてよく見えないが男に囲まれているのは良く分かる、チラチラと見える顔は笑顔だ
テーブルの方へ視線を動かすと一つのテーブルだけ高く料理が積まれている、さてどんな大喰らいの太っちょが陣取っているのだろうとテーブルに面している人物を見ると驚愕した
無表情で青い髪のあの少女、タバサが凄まじい速度で料理を消滅させていっていた、見るとサラダを好んで食べている様だがどっちにしろ凄まじい量だ
一体あの小柄な少女の何処にアレだけの食べ物が入るのだろうと真剣に頭を悩ませているとふとタバサと目が合う
ローチは一応視線が合ったので軽く右手を挙げ手首をスナップさせて小さく手を振る
するとタバサはフォークを咥えたまま見る見る顔を赤くしてもそもそと食べる速度をスローダウンさせた
ローチはくつくつと小さく笑いまた会場内を見渡す、するとギーシュがモンモランシーと言ったか、少女と楽しそうに話をしていた
どうやら仲は良好なようだ、よかったよかった、うんうんと頷いているとギーシュがこちらに気付きモンモランシーの手を引いてローチの方へ歩いて来た
「やぁ、ローチ!楽しんでいるかい? 紹介しよう、彼女が僕の愛しのモンモランシーさ!」
「ギ、ギーシュ!」
ギーシュが嬉しそうに彼女の紹介をする、それに対し紹介された少女、モンモランシーは顔を赤くしてギーシュに怒鳴る
「HAHAHAHAHA!!仲が良くて羨ましい限りだ!俺はローチ、よろしくなお嬢さん、一応ギーシュの訓練教官をしている」
「そうだ、ローチ!見て欲しい物があるんだ!」
ギーシュは紹介を終えたのを確認するとポケットに手を突っ込む
「どうした?」
「これを見てくれ」
ローチの眼前で手を開くと手の上にコロンと乗っていたのは銃弾である
「弾がどうした?」
「ふふん、僕が作ってみたんだ!」
「何?!」
ローチはギーシュが作ったと言う銃弾を手に取り色々な角度から見始める
形、重さ、手に取って見る限りは本物と全く同じそれはギーシュが作った物とはにわかに信じられない
「…使ってみたか?」
「いや、何が起こるか分からないから使ってはいないよ」
「それでいい、待ってろ」
ローチはタキシードからナイフを抜き逆手持ちから順手持ちに変える、ナイフを抜いた瞬間モンモランシーがひっと小さく悲鳴を上げた
銃弾(仮)を手すりに置き左手で抑える、右手のナイフで薬莢部分と先端部分の間にナイフの切っ先を差し込もうとする
「…なるほど…使わなくて良かったな、ギーシュ」
「駄目だったかい?」
「これじゃ火薬が爆発しても弾頭が飛ばない、それどころか弾丸自体が爆発して酷い事になる、どういう風になるのかは勝手に想像しろ
分かりにくいか?じゃぁヒントをやろう、今頃利き手が無くなってた所だ」
「うわぁ…」
「薬莢と弾頭を一体化させるな、パウダーは正しく作れているか怪しいが確認する術が無い、まぁギーシュの事だ、大丈夫だとは思うが
…まぁ改善すべき点は少ないしいいだろう、それよりも彼女を放って置くのは感心しないな?」
「あぁ!」
「そうら、二人でダンスでも踊って来い、長々と俺の話に付き合うこともないだろう」
ローチがしっしっと二人を会場内に押し込み上を向いて大きく息を吐いた
「疲れたか?相棒よ」
「殆ど何もしてないだろうが、にしてもルイズは何処に行ったんだ」
そう独り言を呟いた時に会場の中が急にがやがやと騒がしくなり始める、ローチは何事だと上に向けていた顔を会場内部に向ける
先ほどのキュルケ周辺のように男子生徒がしきりに一人の女子生徒にダンスを申し込んでいる、しかしどうやら片っ端から断られているようだ
一人、また一人と肩を落として離れていく、さぁどんなお嬢様かと興味を持って見ると見たことのある顔
それも、あー何処かで見たなぁでは無い、よく知る人間の顔だった、その女子生徒は全ての男子生徒の申し出を叩き潰しローチの下へと歩いて来た
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