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#navi(デュープリズムゼロ)
第二十話『新たな魔法』
「ワルドォッ~~~~~~~~~~~~!!!!!!」
窮地に陥っていたルイズの耳に聞き慣れ親しんだミントの声が聞こえた。
何故アルビオンを発っているはずのミントが此処に居るのか?何故ワルドを既に敵視しているのか?等、疑問を浮かべようとすれば幾らでも思い浮かぶだろうがルイズは今そんな些末事を気になど出来ない。
ルイズの視界の先で礼拝堂の扉を蹴破ったミントは脇目もふらず走り出すとワルド目掛けて跳躍し、必殺の跳び蹴りを放つ。
(ミント…来てくれた。)
その勇ましい姿が安堵を与えルイズのギリギリまで張り詰めていた緊張の糸を緩め、目からはまるで関を切ったかのように止めどなく涙が溢れ出した。
ミントの跳び蹴りをワルドは半身を反らせる様に最低限の動作で回避し、驚きもそこそこに油断無く目の前の少女へと杖の先端を向ける。
「これはこれはミント王女、随分と乱暴な登場ですな…船には乗船されなかったので?」
華麗に着地したミントはその場でくるりとターンするとワルドに向き直り、チラと蹲るルイズを目視した後、手にしたデュアルハーロウを突きつける。
「ルイズ、生きてるわね!?」
「うん…うん!!でもウェールズ皇太子殿下が…」
しゃくり上げる様なルイズの声を聞き、ウェールズの姿をその目にしたミントの頭に血が上る…その度に左手に刻まれたルーンは熱く激しく脈動した…
「ワルド…あんた、あたしを怒らせたわよ。」
「それはそれは……恐怖のあまり身ぶるいが止まりませんな。」
ワルドはそう言って言葉とは裏腹に余裕ありげに肩を窄ませ含み笑いを浮かべる。
「それはそうとミント王女、私から君に提案がある…この話は本来ならばルイズをこの手にすると同時に持ちかけようと思っていたのだが…」
「提案??」
「その通りだ。ミント王女、私と共にレコンキスタの元に来るつもりはないか?
我等レコンキスタは国境を越えた正しき貴族の連名。その最終目的は全ての国家を統合しエルフ共がブリミルより奪った聖地の奪還という崇高な使命にある。
私は余りこう言った品の無い直接的な言い方は好まぬが、君の目指す世界征服と我等の目指す国家の統合…本質的には似ているとは思わないか?
そして君は始祖の使い魔である『ガンダールブ』のルーンをその身に宿す人物だ、我等レコンキスタは間違いなく諸手を挙げて君を歓迎するだろう。」
ワルドはそう言って杖を持たない左の腕をゆっくりとミントへと誘う様に差し出した…
「それに直に此処にはレコンキスタ五万の兵が押し寄せる。どちらにせよ最後の脱出船に乗らなかった以上、君が生き残るにはこの私の誘いを受ける以外に術は無い。」
そう、ワルドの言う通り既にミント達にはアルビオンを脱出する手立ては事実上無くなっているのだ。
その様な条件を突きつけられ、ミントのワルドへの返答は決まり切っていた…
「はっきり言ってやるわ!!お断りよ。ワルド、あんたのやり方ってば陰険で陰湿で、いちいちムカつくわ!
味方の振りなんてして裏ではこそこそこそこそと余計な手を回して!!挙げ句の果てには乙女の純情踏みにじって結婚詐欺!!?
あんたみたいな、ふざけた奴はボコボコにしてやらないとあたしの気がすまないのよ!!
それにいっとくけどアルビオンもトリステインもいつかはこのあたしが支配するの。つまりあんた達はあたしの国を土足で踏み荒らしてくれた訳よ!
レコンキスタだかレンコンスキダだか知らないけど、この落とし前…きっちり付けさせて貰うわ!!」
ミントはそう言い放ち、ずいと一歩ワルドへと歩を進める。
ワルドはミントの物言いに思わず目眩を覚える感覚に陥り、呆れる様に溜息が零れる…内心説得に応じるとは思っていなかったが目の前の少女はもう言っている事が無茶苦茶だ…
「フッ…残念だよ、やはり結局はルイズと同じで我等に与する気は無いか…しかし結果としては逆に君の様な馬鹿げた人物を受け入れなくて済むのは良かったのかも知れない。
最後の情けだ…全メイジで最強と謳われる風のスクウェアたる私がこの手でウェールズの様に此処でルイズ共々始末してやるぞガンダールブ!!」
「ケリをつけてやるわ、ワルドっ!スクウェアだかなんだか知らないけどあたしの魔法で……ボコボコよっ!!!」
ミントが叫ぶと同時に両者が魔法を撃ち出す…
結果として相殺した両者の風の魔法によって向かい合った二人の間で空間が強烈な衝撃波を伴って弾けた。
ミントとワルドはその衝撃波を合図にして、申し合わせたかの様にそれぞれ同時に後退し、互いの距離をとって睨み合う。
ミントは自分の後方に居るどう見ても戦えそうに無いルイズをこれから戦闘に成るであろう空間から退避させる為。
ワルドはより長い詠唱を必要とする自身の扱う最強の呪文の詠唱を行う為に…
「ルイズ、立てるわね?後はあたしに任せて下がってて。」
「………うん。」
ルイズは素直にミントの言葉に従ってヨタヨタとした足取りで礼拝堂の隅へと移動する。途中自分の杖を見つけはしたが損傷が激しくもう使えそうには無かった。
「小手調べとはいえまさか私の風の魔法を相殺させるとわな…王女よ、やはり君を相手取るのに油断は出来そうに無い。故に何故風のメイジが最強と謳われるかを見せて差し上げよう。…ユビキタス・デル・ウインデ!」
詠唱を終えたワルドは自身を睨みながらデュアルハーロウを構えたミントに対し口上を上げると呪文を唱える。
だが、ミントはそんなワルドにいちいち付き合う義理は無いと言わんばかりに構わず魔法を撃ち出す。
ミントの魔法によってワルドの丁度頭上に現れた無数の氷の槍…タバサが得意とする『ジャベリン』に酷似したその魔法の名前は『アイシクル』。自分の周囲では無く直接標的の頭上で生み出されるというその性質の違いがワルドの虚を突いた。
だがワルドは杖を振るうと風を纏い、アイシクルを素早い反応で身を捻りながら大きく後方へと飛び上がる様に回避する。
そして再び地に足を付けると次の瞬間には何故かワルドの姿は空間ごとぶれる様に歪み、ミントの目の前で五人に増えていたのである。
「なぬっ?!増えた??」
その光景に驚き、思わず魔法を放つ手を止めたミント。
「風のユビキタス……俗に偏在と呼ばれる魔法でね、風の吹くところ、何処となくさまよい現れ、その距離は意思の力に比例する…」
五人に増えたワルドから発せられた声が礼拝堂にこだまする。そしてその中の一人がまるでミントに見せつけるかの様に懐から何かを取り出した。
それは見覚えがある白い仮面。
その仮面を被るワルドの所作…ミントはそれを一目見て全てを察した…
「あの仮面のメイジもあんただったって訳ね…」
「その通りだ。君にはあそこで退場して貰いたかったんだがね…」
言って五人のワルドが杖を振りかざし一斉に散開しミントに躍り掛かる。ワルドの最早この戦力差は覆す事など出来はしないだろうという確信と油断を持っての行動だ。
だが、ミントはその状況を冷静に見極めると引く事も怯む事も無くそれと違わぬタイミングで一つの魔法を発動させた。
黒色の魔法タイプ 『ハイパー』 かつて怪炎竜ウィーラーフが恐れ、封印を施した程の凶悪な魔法…
魔力を帯びた暗黒の閃光がミントを包んだと思った瞬間、ミントの足下が爆発する様に弾け、ミントの姿はその場から消えさる。結果としてワルド達が放ったエアハンマーとエアカッターは正に空を切る事になった。
そして次の瞬間にはミントに対して迂闊にも丁度真正面の位置を取っていた仮面を付けたワルドの顔面が無残にもデュアルハーロウの殴打によって仮面もろともに力任せに打ち砕かれる。
『闇の一撃』と名付けられたその魔法は一瞬の間だけではあるが限定的にミントの身体能力を桁違いに跳ね上げる効果を持つ。
無論、その効果には落とし穴もある。一つはハイパーの魔法全般に言えるが燃費が極端に悪いのだ。もう一つ、効果の維持が本当に瞬きする程度の時間でしかない事だ。
またその間の行動はミント自身の反応速度を明らかに超えてしまう。その為魔法の発動中、その行動ははっきり言えば真っ直ぐ突っ込んで敵を全力で殴るという使い方以外実質出来ない。
「チッ…ハズレか…」
仮面を付けていたワルドの身体が風に溶ける様に消滅するのを見てミントは舌打ち混じりに周囲を警戒しながらその場から直ぐに離れる。
ミントは様々な場所で無数のモンスターと、時にはゴロツキや別の冒険者等と多数を同時相手に一人で戦ってきた。そういう状況で一番不味いのは完全に包囲された状況だ。
ミントはワルドの魔法の的にならぬ様、礼拝堂の柱と壁を利用しながら足を止める事無く走る。
ワルドもまたミントを追うようにして二人を、待ち受けるようにして残った二人をと意思統一の出来た偏在だからこそできる抜群のコンビネーションでミントを追い詰めていく。
その間にミントの放った追尾性能の高い雷の魔法『トライン』がワルドの偏在の一人を焼いたがやはり攻撃に移ったミントのその隙を逃さず、ワルドの放ったウィンドブレイクがミントを吹き飛ばし、その身体を容赦無く壁へと叩き付けた…
「げふっ…!!」
「ミントッ…」
ルイズは不安に押しつぶされそうになりながらも立ち上がろうとするミントからは目を離さず始祖へと祈り続ける。もはや自分に出来る事はミントを信じて祈る事だけだ。
普通の人間なら間違いなく決着となっていたであろうウィンドブレイクの直撃を受けて尚、歯を食いしばり立ち上がったミントに対してワルドは偏在の一人をエアニードルの魔法を使わせて突貫させる。
「その首貰うぞ!ガンダールブ!!」
内心ワルドはミントの戦闘能力に対して驚愕していた。未だかつて全力で相対して自分の偏在を二人も打ち破った敵などワルドにとっては初めてだった…
ここでわざわざエアニードルで近接戦闘を行うのも偏にミントへの評価の表れだ。エアニードルがミントを貫けばそれで良し、
思わぬ魔法なり方法なりでこの窮地を凌いだならば控えた本体ともう一体の偏在のライトニングクラウドで確実な止めを刺す!!
魔法の発動は間に合わないと即座に判断し、偏在のエアニードルをミントは両手持ちしたデュアルハーロウで袈裟切りに力任せに打ち払う。
杖を折られながらもワルドの偏在はそのミントの行動に対しニヤリと勝ち誇ったように笑った。
杖を持っていなかったワルドの左手は振り抜かれたデュアルハーロウのミントが握る方とは反対側をを握り込む。既にライトニングクラウドは発動体勢にある。
「魔法は使わせん!逃しもせん!さぁ、私と共に雷雲に焼かれ「離っせ!!」イィッッ!!!!!!!!」
突然ワルドの偏在は何とも切ない悲鳴のような声を上げて泡を吹きながら全身から力を失い膝を突く…
ワルドの股間にはミントの足が深々とめり込んでいた。偏在を通し本体のワルド自身にも男として薄ら寒い感覚が背中を走る…
「だが、とったぞ!!」
「ミントッ、危ない!!」
二人のワルドの杖から同時に強烈な紫電がほとばしる…同時にルイズの悲鳴にも似た絶叫がミントの耳に届いた…
(やばっ…!!!!)
そう思うとほぼ同時にミントは雷を逸らす為デュアルハーロウを放り投げようとしたが、ある意味で死んでしまったワルドの偏在が最後の力を振り絞り未だそれを邪魔している。
しかし万策尽きたと思われたその瞬間、ミントの背中でデルフリンガーが鍔を鳴らした…
「相棒!!俺を抜けぇっ~~~!!!!」
デルフリンガーの叫びと同時にワルドの杖からはライトニングクラウドが撃ち出された…
「燃え尽きろガンダールブ!」
ミントはあれこれ考える間もなく咄嗟にデュアルハーロウを手放しデルフリンガーの言葉に従うように背にした鞘からデルフリンガーをするりと引き抜いた。
ライトニングクラウドが迫る中、なんとミントの手に握られたデルフリンガーはその錆び付いた刀身でワルドのライトニングクラウドをまるで当たり前のように吸収してみせる。
そしてライトニングクラウドを飲み干した瞬間、デルフリンガーの刀身が眩い光を放ち、錆び付いていた刀身はまるで今磨き上げたばかりだというような輝きを放ち始めた。
「な…に…?」
その光景にワルドを始め、その場にいる全員が呆気に取られている。
「いやぁー忘れてたぜ!これが俺のほんとの姿だった!かつて六千年前にガンダールヴに振るわれていた伝説の剣!!それがこのデルフリンガー様よ!!」
デルフリンガーは愉快そうに再び鍔を鳴らした。
「ちょっと…あんたそんな便利な能力あるんだったらさっさと教えなさいよ。」
言ってミントはデルフリンガーの刀身をじと目で睨む。助けられはしたが腹が立つ剣だ。
「んなこと言ったって忘れてたんだから仕方ねえだろう。思い出させたのはお前さんだぜ、相棒。さっきからビンビン来てたお前さんのとんでもない心の震えが俺の記憶を呼び覚ましたんだ。」
「心の震え?あんた確か前もそんな事言ってたわね…」
「ああ。怒り、悲しみ、愛、喜び……。何だっていい大きく心が震えれば、それはそのままガンダールヴの力になる。」
「ふーん……」
デルフリンガーに改めてそう言われてミントは納得した。
不思議な事にワルドとの戦闘中、ミントは魔力を結構消費していたがそれ以上に沸き上がるような勢いで魔力が回復しているのだ。
「あんたって…もしかして遺産だったりしてね…」
改めてデルフリンガーを眺めてミントはそんな冗談を呟いて口元を緩める。
「相棒っ!!」
デルフリンガーの反応に合わせてミントは自分へと襲いかかってきた突風を切り裂く。
ミントの視線の先ではウインド・ブレイクを放った姿勢のまま、ワルドがわなわなと震えていた。
「何だ…その剣は!!魔法の吸収等……」
「へっ…吸収だけが脳じゃ無いぜ!!相棒、お前さんになら解るだろう?俺様の力がよ!!」
饒舌なデルフリンガーに対してミントは答えを返さないままただ口角をつり上げる…
(だが…奴は魔法の要を失った。である以上!!)
ワルドは再び冷静さを取り戻すと杖にエアニードルの魔法をかけて偏在と共にミントへと接近する。
「魔法の渦の中心に杖がある以上、この魔法は吸収できまい!そして閃光と謳われた私の剣技、それもそれが二人同時だ!…もはやこれまでだ。」
一人目のワルドの放つ青白く輝く杖の初手をミントは素早く回避して見せる。続いて二人目の斬撃をデルフリンガーの刀身で容易くいなしてみせる。
ワルドの推察通り、杖を中心とした魔力をデルフリンガーは吸収しきれなかった様だったがミントにとっては最早そんな事はどうでも良かった。
「貰ったぁ!!…??」
再び一人目のワルドが踏み込もうとする…だがそれは視界を遮るように突然巻き起こった炎によって阻まれる事になる。
「何っ、炎だと?」
予想外の事態にワルドが怯んだ次の瞬間、ワルドの胸を燃えさかる炎を纏ったデルフリンガーの刃が貫いた。
「何…だと…そんなバカ……な……ぐぁぁぁっ!!!!」
胸を貫かれ、身体の内から焼き尽くされたワルドの最後の偏在の身体が消滅する…
ミントは最後のワルド…必然的に本物へと向き直るとデルフリンガーの切っ先を突きつける。その刀身は先程まで燃えさかっていたにも関わらず今は既に何やら黒い靄の様な物を纏っていた。
「聖地の奪還だかなんだか知らないけど……。ひとたび、あたしを怒らせたらワルド、あんたに勝ち目はカケラもないっ!ボコボコよ!!
魔法【デルフ】をゲット!
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