「つかわれるもの-1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
つかわれるもの-1 - (2007/09/08 (土) 05:05:24) の最新版との変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
第01話 呼び出されたもの
ここトリステイン魔法学院では、現在二年生の「春の使い魔召喚の儀式」の真っ最中だ。
午後から始まったこの儀式だが、生徒達は順調に召喚に成功して行き、一人の女生徒を残すのみ。
しかしその女生徒が召喚の魔法を唱えても……聞こえてくるのは儀式を終えた生徒や使い魔の叫び声と―――爆発音だけであった。
その女生徒――ルイズはこれで16度目となる爆発にも決して諦めようともせず、ゆっくりと深呼吸を行って精神を集中させていた。
(今度こそ大丈夫だ、落ち着こう……)
周りから聞こえて来る罵声と悲鳴、教師がまた明日行えば……と言ってくるが、ルイズはもう一度だけやらせて下さい!と半ば強引に押し切った。
(今まで沢山練習したんだ、落ち着いてやれば成功するわよッ……)
そして再び杖を掲げ、声を張り上げた。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
――再び巻き起こる轟音を伴った大爆発、今までで最大の規模だ。
太った一人の生徒が巻き込まれ、焼き過ぎて焦げてしまった豚のように真っ黒になってしまった。
ルイズはついに地面に崩れ落ちた。
今までの努力は、勉強は、練習は、無駄だったのだろうか。
所詮「ゼロ」のルイズには召喚なんか無理だったのだろうか。
そう考えると涙が出そうになった……が、周りの叫び声で我に返った。
「お、おい!何か動いてるぞ!」
「あのルイズが成功したのか!?」
「マリコルヌ!傷は深いぞ!しっかりしろ!!!」
何かが、居る?
勢い良く顔を上げ、土煙の中を確認すべく目を凝らす。
そこには確かに何か動くものが存在し、ルイズは期待に胸を膨らませた。
(ドラゴン?グリフォン?この際だったら鷲とか、梟とか、何でも良いわ!)
そして段々と土煙が晴れて行き、そこに居たのは……
「あ、亜人!?」
獣の耳と尾を持つ女性と、鷲の翼のような耳を持つ女性の二人だった。
カルラが目を開いた時、目の前は土煙で覆われていた。
そして辺りからは罵声や悲鳴、そして驚愕の声が聞こえて来る。
落ち着いて周囲を見回すと、隣にトウカが倒れているのが見えた。
「トウカー、死んでませんわよねー?」
ゆっさゆっさとトウカの身体を揺する。
呼吸はしているようだから死んではいないだろう。
片手で顔を抑えながら、トウカはゆっくりと上体を起こした。
「んー……ここは?」
「良く判りませんけど、生きてはいるみたいですわねー」
「先程居た戦場では無いみたいだな……」
「どうやら"あの鏡"で何処かに飛ばされた、と考えるのが妥当ですわね……」
結論から言えば、カルラの読みは正しかった。
土煙が晴れて目にしたのは、珍妙な衣装に身を包んだ子供達であった。
それを見守っていた教師――二つ名「炎蛇」のコルベールは、目の前で起こった事態に困り果てていた。
何しろ亜人が召喚された、というだけで相当の異常事態であると言うのに、あまつさえそれが二人も居るのだ。困るのも当然と言えば当然なのだが。
試しに彼女達に『ディテクト・マジック』を使ってみたのが、結果として両方から魔力反応があった。
やはり先住魔法が使える、と考えるべきなのだろう。いきなり暴れ出そうものなら手が付けられない事は明白だ。
そして、コルベールを悩ませる理由は彼女達の存在だけでは無かった。
「ミスタ・コルベール……私はどうすれば良いのでしょうか……」
そう、彼女達を召喚したのが――ルイズだと言う事だ。
コルベール自身、彼女の努力は良く判っているつもりでいた。
そしてルイズに才能が無いのでは無く、まだ開花していないだけだ、と考えていた。
ルイズが今日の儀式の為に、毎日毎日努力をしていた事を知っていた。
だからこそ、この機会に召喚できずに退学、という事態だけは絶対に避けて欲しかった。
もしこれを認めなかったら、次に召喚する時に成功する保証は……無い。
コルベールは考える。
召喚される使い魔は、主にとって最も必要とされる存在だ。
恐らく何らかの理由で、彼女達は呼ばれたのだろう。
今更何をした所で、杖はもう振られたのだ。ならばこの流れに全てを任せよう。
もしこの女性達が暴れ出そうものなら、自身が全力で止めてみせる。生徒達を守ってみせる。
コルベールは意を決して、ルイズに声を掛けた。
「前例には無いが……例外は認めらない。春の使い魔召喚の儀式はあらゆるルールに優先する」
「彼女達のどちらか片方と、『コントラクト・サーヴァント』を」
#navi(つかわれるもの)
第01話 呼び出されたもの
ここトリステイン魔法学院では、現在二年生の「春の使い魔召喚の儀式」の真っ最中だ。
午後から始まったこの儀式だが、生徒達は順調に召喚に成功して行き、一人の女生徒を残すのみ。
しかしその女生徒が召喚の魔法を唱えても……聞こえてくるのは儀式を終えた生徒や使い魔の叫び声と―――爆発音だけであった。
その女生徒――ルイズはこれで16度目となる爆発にも決して諦めようともせず、ゆっくりと深呼吸を行って精神を集中させていた。
(今度こそ大丈夫だ、落ち着こう……)
周りから聞こえて来る罵声と悲鳴、教師がまた明日行えば……と言ってくるが、ルイズはもう一度だけやらせて下さい!と半ば強引に押し切った。
(今まで沢山練習したんだ、落ち着いてやれば成功するわよッ……)
そして再び杖を掲げ、声を張り上げた。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
――再び巻き起こる轟音を伴った大爆発、今までで最大の規模だ。
太った一人の生徒が巻き込まれ、焼き過ぎて焦げてしまった豚のように真っ黒になってしまった。
ルイズはついに地面に崩れ落ちた。
今までの努力は、勉強は、練習は、無駄だったのだろうか。
所詮「ゼロ」のルイズには召喚なんか無理だったのだろうか。
そう考えると涙が出そうになった……が、周りの叫び声で我に返った。
「お、おい!何か動いてるぞ!」
「あのルイズが成功したのか!?」
「マリコルヌ!傷は深いぞ!しっかりしろ!!!」
何かが、居る?
勢い良く顔を上げ、土煙の中を確認すべく目を凝らす。
そこには確かに何か動くものが存在し、ルイズは期待に胸を膨らませた。
(ドラゴン?グリフォン?この際だったら鷲とか、梟とか、何でも良いわ!)
そして段々と土煙が晴れて行き、そこに居たのは……
「あ、亜人!?」
獣の耳と尾を持つ女性と、鷲の翼のような耳を持つ女性の二人だった。
カルラが目を開いた時、目の前は土煙で覆われていた。
そして辺りからは罵声や悲鳴、そして驚愕の声が聞こえて来る。
落ち着いて周囲を見回すと、隣にトウカが倒れているのが見えた。
「トウカー、死んでませんわよねー?」
ゆっさゆっさとトウカの身体を揺する。
呼吸はしているようだから死んではいないだろう。
片手で顔を抑えながら、トウカはゆっくりと上体を起こした。
「んー……ここは?」
「良く判りませんけど、生きてはいるみたいですわねー」
「先程居た戦場では無いみたいだな……」
「どうやら"あの鏡"で何処かに飛ばされた、と考えるのが妥当ですわね……」
結論から言えば、カルラの読みは正しかった。
土煙が晴れて目にしたのは、珍妙な衣装に身を包んだ子供達であった。
それを見守っていた教師――二つ名「炎蛇」のコルベールは、目の前で起こった事態に困り果てていた。
何しろ亜人が召喚された、というだけで相当の異常事態であると言うのに、あまつさえそれが二人も居るのだ。困るのも当然と言えば当然なのだが。
試しに彼女達に『ディテクト・マジック』を使ってみたのが、結果として両方から魔力反応があった。
やはり先住魔法が使える、と考えるべきなのだろう。いきなり暴れ出そうものなら手が付けられない事は明白だ。
そして、コルベールを悩ませる理由は彼女達の存在だけでは無かった。
「ミスタ・コルベール……私はどうすれば良いのでしょうか……」
そう、彼女達を召喚したのが――ルイズだと言う事だ。
コルベール自身、彼女の努力は良く判っているつもりでいた。
そしてルイズに才能が無いのでは無く、まだ開花していないだけだ、と考えていた。
ルイズが今日の儀式の為に、毎日毎日努力をしていた事を知っていた。
だからこそ、この機会に召喚できずに退学、という事態だけは絶対に避けて欲しかった。
もしこれを認めなかったら、次に召喚する時に成功する保証は……無い。
コルベールは考える。
召喚される使い魔は、主にとって最も必要とされる存在だ。
恐らく何らかの理由で、彼女達は呼ばれたのだろう。
今更何をした所で、杖はもう振られたのだ。ならばこの流れに全てを任せよう。
もしこの女性達が暴れ出そうものなら、自身が全力で止めてみせる。生徒達を守ってみせる。
コルベールは意を決して、ルイズに声を掛けた。
「前例には無いが……例外は認めらない。春の使い魔召喚の儀式はあらゆるルールに優先する」
「彼女達のどちらか片方と、『コントラクト・サーヴァント』を」
#navi(つかわれるもの)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: