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世界最強コンビハルケギニアに立つ-05 - (2009/05/02 (土) 15:16:35) の最新版との変更点
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#navi(世界最強コンビハルケギニアに立つ)
ルイズは暁、ボーとともに教室の片付けをしていた。
教室の状況は惨状と言うにふさわしい状態である。
普通に授業していたらこうなった、などと言っても絶対誰も信じない。
この惨状を引き起こした罰として魔法を使って修理することを禁止されていたものの、
元々ルイズはそんな魔法を使えないし、男手が二人分あるのでそこまでの苦労はない。
「なるほど、『ゼロ』か」
ルイズにとっておそらく触れて欲しくないであろう個所にボーが触れた。
机を拭いていたルイズの背中がピクリと反応する。
「由来はともかくとして、中々かっこいい二つ名ではないか」
「馬鹿にしてるの?」
少し声が震わせながらそう言い、ルイズがボーの方を振り返る。
顔が赤い。なるほどそろそろ耐えるのも限界らしい。
「気に障ったのなら謝ろう。だがかっこいいと思ったのは事実だ」
「どこがかっこいいのよ!貴族なのに魔法も使えないって馬鹿にされてるのよ!?」
ルイズの目は潤んでいた。
魔法などと言うものにさほど縁の無かった暁にもボーにもルイズの苦しみなどわかろうはずが無い。
ただ、相当な屈辱に耐えてきたであろうことは想像に難くない。
「ふむ、魔法なら使えたではないか」
「使えないわよ、何をやっても爆発ばっかり。成功したことなんて無いわよ」
既にルイズの声は涙声である。
おそらくボーの言葉は気休めの類にしか聞こえていないのだろう。
ボーの言いたいであろうことは暁にも想像できる、だがルイズには想像できないようだ。
なんだかんだ言ってやはり子供なのだな、と暁はルイズを眺めながら思った。
「ではここにいる私と暁は何だ?お前が召喚したのだろう」
ボーはぐずっているルイズに歩み寄り、ポンと頭に手を置いた。
放っておいても大丈夫そうだな、と思い暁は一人で作業を再開する。
「あんたたちの召喚だって失敗よ。ただの平民なんて――」
「強い使い魔を召喚するのが成功なのか?」
ボーは屈み、目線をルイズの高さに合わせる。
そして落ち着いた声で続ける。ならば、お前は誇るべきだと。
「何を誇れって言うのよ」
「この世界での平民は弱いのかも知れん。だが我々は異世界の人間だ、この世界の常識で我々を計ってもらっては困るな」
「お前は元の世界でも異常じゃねぇか」
それはもう色々とボーという男はおかしい。
強さから言動まで、下手すると存在そのものが。
「お前が召喚したのは世界最強のコンビだ。他の連中が召喚した使い魔など問題にならん」
ルイズが疑わしげな目でボーと暁を見比べている。
その目がそんなこと到底信じられないと言っていた。
「少しは自分と使い魔を信じてみたらどうだ。自分で自分を否定するのが貴族としての矜持か?」
ボーはそう言いながらルイズの頭をくしゃくしゃと撫でた。
手がでかい上に微妙に力加減が出来ていないため、ルイズの頭がそれにあわせて動いているのは突っ込むべきところだろうか。
「私はなルイズ、お前を気に入っているぞ。あの状況でなお堂々と振舞える強い人間こそ人の上に立つものにふさわしい」
ボーがゆっくりと立ち上がる。そしてそれに合わせてルイズが上を向いた。
彼女は何も言わず、ただボーの目をじっと見ている。
「暁、お前もそう思うだろう」
「俺に振るな」
暁はボーと価値観が同じわけではない。
と言うかボーという男はかなり偏った選民思想を持っている。
『人間はより優れた人間によって正しき道を選ぶ、そこに幸福があるのだ。
そして優秀な者は、より弱き者達を守る義務がある。
そのかわり支配する者は誰よりも優れていなければならない』
これが彼の思想である。
一般的な人間に言ったら間違いなく引くだろう。
暁は自分を一般的な人間――少なくとも思想や価値観は――と思っているので無論これには同調できない。
「……まぁ、あそこで打ちのめされて起き上がれない奴が主人ってのは俺は嫌だね」
てっきり泣くか喚くかすると思っていたため、あの時のルイズの反応は暁としては意外であった。
よくよく考えれば彼女は学園での長い期間を『ゼロ』と馬鹿にされながらも、一人でそれに耐えてきたのだ。
ルイズの精神力は相当のものだと思う。
少なくとも彼女を馬鹿にしている生徒たちにはまず耐えられまい。
ボーがうむうむと頷いている。
……間違いなくこの男は今の言葉を曲解した。
頭の中は見れないし見る気も無いのだが、暁はそう確信していた。
「あんたたちもしかして私を励ましてるの?」
目をごしごしとこすり、ルイズが口を開いた。
「お生憎様、あんたたち使い魔に励まされるほど私は落ちぶれてないわよ」
小さな胸を張り、ルイズはそう宣言した。
その表情はいつもの気の強い少女に戻っている。目は赤いが。
「ほら、何休んでるのよ!早く掃除終わらせるわよ!!」
それでも二人に顔を見られるのが恥ずかしいのか、顔を赤くしてルイズが吼える。
暁はその様子に苦笑しつつ、掃除を再開した。
結局掃除が終わるまでにはそれなりに時間を要した。すべてが終わったのは昼休み前である。
そこそこ空腹となった三人は、昼食を取るため食堂へ向かった。
相変わらずルイズが食堂、暁とボーは厨房で食べている。
ルイズは昼食を食べながら自分が召喚した二人の使い魔のことを考えていた。
不思議な男たちである。
異世界から来たと言い、平民だというのに貴族をまったく恐れず、自分たちを『最強』と言う。
ルイズから見れば暁も十分常識の範疇に無いが、ボーはもっと酷い。
少なくとも彼女の二つ名である『ゼロ』を『かっこいい』などと言った人間は初めてである。
「……どこがかっこいいのよ」
誰にともなく呟く。
彼女にとって『ゼロ』は屈辱的な二つ名である。
魔法が成功した回数がゼロ、成功する可能性もゼロ、それでも貴族。
そんな意味が込められた嘲りの言葉であるからだ。
『魔法なら使えたではないか』
ボーの言葉と、頭の上に置かれた手の感触を思い出す。
ごつごつしてはいたが、暖かい手だったような気がする。
『お前が召喚したのは世界最強のコンビだ。他の連中が召喚した使い魔など問題にならん』
「ほんとかしら」
彼らが本当に強いかどうかなどルイズにはわからない。
おそらくはボーなりに励ましてくれたのではないか、ルイズはそう考えていた。
「……ダメね、使い魔に励まされてるようじゃ」
気合を入れなおす。
自分は絶対に折れない、何度失敗し、罵倒されても立ち上がろう。
それがヴァリエール家の令嬢としての、平民の上に立つ貴族としてのルイズなりの矜持である。
もう彼らの前で醜態は晒すまい。彼女はそう決意した。
「お嬢様、デザートのケーキでございます」
低い声とともにルイズの背後から太い腕が伸び、テーブルの上にケーキの乗った皿を置く。
ルイズは非常に強い違和感を抱いた。
おかしい、普段は可愛らしい声のメイドがケーキを配っているはずだ。
当然ながらこんなに手は大きくないし腕も太くない。
そう思いながら後ろを振り返ると、間違いなくケーキが似合わないガタイのいい男――暁が立っていた。
「……ボーに付き合わされてるんだ」
「そ、そう。たいへんね」
暁が大きなため息を吐いた。どう見ても好きでやっているようには見えない。
短い付き合いだが、暁と言う男がこういう仕事を好んではいなさそうだと言うことはルイズにも理解できる。
大方厨房で出された食事のお礼をしたがったボーに無理矢理手伝わされているのだろう。
「……ボーも配ってるの?」
ケーキの皿を持ち、配って回っているボーの姿を想像する。
……致命的に似合わない。暁の方がマシであった。
「ああ、向こうの方で――……何か修羅場が展開されてるんだが」
暁の見ている方向に顔を向けると、確かに修羅場が展開されていた。
見事な巻き髪の少女――モンモランシーと言うルイズのクラスメイトである――が怒りの形相で一人の少年の頭の上からどぼどぼとワインをかけている。
被害に合っている少年の名はギーシュ・ド・グラモン。
元帥を父に持つグラモン伯爵家の四男で、ナルシストで気障な性格の男である。
事のあらましはルイズにはわからないが、なんとなく想像はついた。
ギーシュは女好きである。
おそら二人は付き合っており、浮気がばれたか何かでモンモランシーの逆鱗に触れたのだろう。
ワインを瓶一本分ギーシュにかけ終わると、モンモランシーは「うそつき!」と怒鳴ってその場を立ち去った。
残されたギーシュはハンカチで顔を拭きながら芝居がかった動きで何かを言っている。
そしてそばにいた一人の人物に文句を言い始めた。
「ボーに見えるわね」
「ボーに見えるな」
ルイズと暁のの視線はギーシュに文句を言われている男に向けられている。
やたらとデカい体躯、ごつい顔に似合わずさらさらの金髪。
その姿はどう見てもボー・ブランシェだった。
「何してんだあいつ」
暁が呆れた声で呟く、ルイズも同感であった。
#navi(世界最強コンビハルケギニアに立つ)
#navi(世界最強コンビハルケギニアに立つ)
ルイズは暁、ボーとともに教室の片付けをしていた。
教室の状況は惨状と言うにふさわしい状態である。
普通に授業していたらこうなった、などと言っても絶対誰も信じない。
この惨状を引き起こした罰として魔法を使って修理することを禁止されていたものの、
元々ルイズはそんな魔法を使えないし、男手が二人分あるのでそこまでの苦労はない。
「なるほど、『ゼロ』か」
ルイズにとっておそらく触れて欲しくないであろう個所にボーが触れた。
机を拭いていたルイズの背中がピクリと反応する。
「由来はともかくとして、中々かっこいい二つ名ではないか」
「馬鹿にしてるの?」
少し声を震わせながらそう言い、ルイズがボーの方を振り返る。
顔が赤い。なるほどそろそろ耐えるのも限界らしい。
「気に障ったのなら謝ろう。だがかっこいいと思ったのは事実だ」
「どこがかっこいいのよ!貴族なのに魔法も使えないって馬鹿にされてるのよ!?」
ルイズの目は潤んでいた。
魔法などと言うものにさほど縁の無かった暁にもボーにもルイズの苦しみなどわかろうはずが無い。
ただ、相当な屈辱に耐えてきたであろうことは想像に難くない。
「ふむ、魔法なら使えたではないか」
「使えないわよ、何をやっても爆発ばっかり。成功したことなんて無いわよ」
既にルイズの声は涙声である。
おそらくボーの言葉は気休めの類にしか聞こえていないのだろう。
ボーの言いたいであろうことは暁にも想像できる、だがルイズには想像できないようだ。
なんだかんだ言ってやはり子供なのだな、と暁はルイズを眺めながら思った。
「ではここにいる私と暁は何だ?お前が召喚したのだろう」
ボーはぐずっているルイズに歩み寄り、ポンと頭に手を置いた。
放っておいても大丈夫そうだな、と思い暁は一人で作業を再開する。
「あんたたちの召喚だって失敗よ。ただの平民なんて――」
「強い使い魔を召喚するのが成功なのか?」
ボーは屈み、目線をルイズの高さに合わせる。
そして落ち着いた声で続ける。ならば、お前は誇るべきだと。
「何を誇れって言うのよ」
「この世界での平民は弱いのかも知れん。だが我々は異世界の人間だ、この世界の常識で我々を計ってもらっては困るな」
「お前は元の世界でも異常じゃねぇか」
それはもう色々とボーという男はおかしい。
強さから言動まで、下手すると存在そのものが。
「お前が召喚したのは世界最強のコンビだ。他の連中が召喚した使い魔など問題にならん」
ルイズが疑わしげな目でボーと暁を見比べている。
その目がそんなこと到底信じられないと言っていた。
「少しは自分と使い魔を信じてみたらどうだ。自分で自分を否定するのが貴族としての矜持か?」
ボーはそう言いながらルイズの頭をくしゃくしゃと撫でた。
手がでかい上に微妙に力加減が出来ていないため、ルイズの頭がそれにあわせて動いているのは突っ込むべきところだろうか。
「私はなルイズ、お前を気に入っているぞ。あの状況でなお堂々と振舞える強い人間こそ人の上に立つものにふさわしい」
ボーがゆっくりと立ち上がる。そしてそれに合わせてルイズが上を向いた。
彼女は何も言わず、ただボーの目をじっと見ている。
「暁、お前もそう思うだろう」
「俺に振るな」
暁はボーと価値観が同じわけではない。
と言うかボーという男はかなり偏った選民思想を持っている。
『人間はより優れた人間によって正しき道を選ぶ、そこに幸福があるのだ。
そして優秀な者は、より弱き者達を守る義務がある。
そのかわり支配する者は誰よりも優れていなければならない』
これが彼の思想である。
一般的な人間に言ったら間違いなく引くだろう。
暁は自分を一般的な人間――少なくとも思想や価値観は――と思っているので無論これには同調できない。
「……まぁ、あそこで打ちのめされて起き上がれない奴が主人ってのは俺は嫌だね」
てっきり泣くか喚くかすると思っていたため、あの時のルイズの反応は暁としては意外であった。
よくよく考えれば彼女は学園での長い期間を『ゼロ』と馬鹿にされながらも、一人でそれに耐えてきたのだ。
ルイズの精神力は相当のものだと思う。
少なくとも彼女を馬鹿にしている生徒たちにはまず耐えられまい。
ボーがうむうむと頷いている。
……間違いなくこの男は今の言葉を曲解した。
頭の中は見れないし見る気も無いのだが、暁はそう確信していた。
「あんたたちもしかして私を励ましてるの?」
目をごしごしとこすり、ルイズが口を開いた。
「お生憎様、あんたたち使い魔に励まされるほど私は落ちぶれてないわよ」
小さな胸を張り、ルイズはそう宣言した。
その表情はいつもの気の強い少女に戻っている。目は赤いが。
「ほら、何休んでるのよ!早く掃除終わらせるわよ!!」
それでも二人に顔を見られるのが恥ずかしいのか、顔を赤くしてルイズが吼える。
暁はその様子に苦笑しつつ、掃除を再開した。
結局掃除が終わるまでにはそれなりに時間を要した。すべてが終わったのは昼休み前である。
そこそこ空腹となった三人は、昼食を取るため食堂へ向かった。
相変わらずルイズが食堂、暁とボーは厨房で食べている。
ルイズは昼食を食べながら自分が召喚した二人の使い魔のことを考えていた。
不思議な男たちである。
異世界から来たと言い、平民だというのに貴族をまったく恐れず、自分たちを『最強』と言う。
ルイズから見れば暁も十分常識の範疇に無いが、ボーはもっと酷い。
少なくとも彼女の二つ名である『ゼロ』を『かっこいい』などと言った人間は初めてである。
「……どこがかっこいいのよ」
誰にともなく呟く。
彼女にとって『ゼロ』は屈辱的な二つ名である。
魔法が成功した回数がゼロ、成功する可能性もゼロ、それでも貴族。
そんな意味が込められた嘲りの言葉であるからだ。
『魔法なら使えたではないか』
ボーの言葉と、頭の上に置かれた手の感触を思い出す。
ごつごつしてはいたが、暖かい手だったような気がする。
『お前が召喚したのは世界最強のコンビだ。他の連中が召喚した使い魔など問題にならん』
「ほんとかしら」
彼らが本当に強いかどうかなどルイズにはわからない。
おそらくはボーなりに励ましてくれたのではないか、ルイズはそう考えていた。
「……ダメね、使い魔に励まされてるようじゃ」
気合を入れなおす。
自分は絶対に折れない、何度失敗し、罵倒されても立ち上がろう。
それがヴァリエール家の令嬢としての、平民の上に立つ貴族としてのルイズなりの矜持である。
もう彼らの前で醜態は晒すまい。彼女はそう決意した。
「お嬢様、デザートのケーキでございます」
低い声とともにルイズの背後から太い腕が伸び、テーブルの上にケーキの乗った皿を置く。
ルイズは非常に強い違和感を抱いた。
おかしい、普段は可愛らしい声のメイドがケーキを配っているはずだ。
当然ながらこんなに手は大きくないし腕も太くない。
そう思いながら後ろを振り返ると、間違いなくケーキが似合わないガタイのいい男――暁が立っていた。
「……ボーに付き合わされてるんだ」
「そ、そう。たいへんね」
暁が大きなため息を吐いた。どう見ても好きでやっているようには見えない。
短い付き合いだが、暁と言う男がこういう仕事を好んではいなさそうだと言うことはルイズにも理解できる。
大方厨房で出された食事のお礼をしたがったボーに無理矢理手伝わされているのだろう。
「……ボーも配ってるの?」
ケーキの皿を持ち、配って回っているボーの姿を想像する。
……致命的に似合わない。暁の方がマシであった。
「ああ、向こうの方で――……何か修羅場が展開されてるんだが」
暁の見ている方向に顔を向けると、確かに修羅場が展開されていた。
見事な巻き髪の少女――モンモランシーと言うルイズのクラスメイトである――が怒りの形相で一人の少年の頭の上からどぼどぼとワインをかけている。
被害に合っている少年の名はギーシュ・ド・グラモン。
元帥を父に持つグラモン伯爵家の四男で、ナルシストで気障な性格の男である。
事のあらましはルイズにはわからないが、なんとなく想像はついた。
ギーシュは女好きである。
おそら二人は付き合っており、浮気がばれたか何かでモンモランシーの逆鱗に触れたのだろう。
ワインを瓶一本分ギーシュにかけ終わると、モンモランシーは「うそつき!」と怒鳴ってその場を立ち去った。
残されたギーシュはハンカチで顔を拭きながら芝居がかった動きで何かを言っている。
そしてそばにいた一人の人物に文句を言い始めた。
「ボーに見えるわね」
「ボーに見えるな」
ルイズと暁のの視線はギーシュに文句を言われている男に向けられている。
やたらとデカい体躯、ごつい顔に似合わずさらさらの金髪。
その姿はどう見てもボー・ブランシェだった。
「何してんだあいつ」
暁が呆れた声で呟く、ルイズも同感であった。
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