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銀の左手 破壊の右手-01 - (2008/03/19 (水) 14:13:27) の編集履歴(バックアップ)
――――どんなときでも、あなたは一人じゃないよ
春の使い魔召喚でルイズが召喚がしたのは岩に刺さった一本の剣と、一人の娘であった。
剣と契約など冗談ではない、そう思ったルイズは娘と契約しようとしその姿に息を呑む。
娘は美しかった、これがただ顔形が整っているだけならルイズはけしてコントラクト・サーヴァントを途中で踏みとどまったりはしなかっただろう。
実際、娘の服装や容貌自体はこれと言って珍しいものではない。
あえて言うなら長く伸ばして二つに束ねた青みがかった黒髪くらいのものだろう、だがそれ以外は至って普通。
着ている白と紫の服も、革の手袋と靴も、頭を飾る赤いカチューシャと揃いの硝子の髪飾りも。
その気になれば平民でも手に入れることが出来るだろう品だった。
だが娘は美しいのだ。
何処にでもいる普通の娘、なのに何故こんなに心を揺さぶられるのか……そう考えてはたとルイズは気づく。
雰囲気だ。
娘が纏う雰囲気が平凡なものだけで構成された娘の姿をまるで剣のように研ぎ澄ましている。
荘厳な儀式に望む聖女のような、戦場を駆ける戦士のような、そしてどこにでもいる普通の娘のような。
そんな相反する印象が、しかし互いに背信を行う事無く重なり合い、娘を包んでいた。
娘纏う雰囲気がこれまで出会ったことのないものであったからこそ、ルイズは思わず気後れしてしまったのだ。
「貴女は、一体……」
その言葉に、まるで信じられない天変地異が起こったかのように稚気を色濃く残す瞳できょろきょろと周囲の状況を伺っていた娘はルイズを認め。
「えっと、あの、此処、何処……?」
これまでの雰囲気をぶち壊すような、実に頼りない言葉を放った。
剣と契約など冗談ではない、そう思ったルイズは娘と契約しようとしその姿に息を呑む。
娘は美しかった、これがただ顔形が整っているだけならルイズはけしてコントラクト・サーヴァントを途中で踏みとどまったりはしなかっただろう。
実際、娘の服装や容貌自体はこれと言って珍しいものではない。
あえて言うなら長く伸ばして二つに束ねた青みがかった黒髪くらいのものだろう、だがそれ以外は至って普通。
着ている白と紫の服も、革の手袋と靴も、頭を飾る赤いカチューシャと揃いの硝子の髪飾りも。
その気になれば平民でも手に入れることが出来るだろう品だった。
だが娘は美しいのだ。
何処にでもいる普通の娘、なのに何故こんなに心を揺さぶられるのか……そう考えてはたとルイズは気づく。
雰囲気だ。
娘が纏う雰囲気が平凡なものだけで構成された娘の姿をまるで剣のように研ぎ澄ましている。
荘厳な儀式に望む聖女のような、戦場を駆ける戦士のような、そしてどこにでもいる普通の娘のような。
そんな相反する印象が、しかし互いに背信を行う事無く重なり合い、娘を包んでいた。
娘纏う雰囲気がこれまで出会ったことのないものであったからこそ、ルイズは思わず気後れしてしまったのだ。
「貴女は、一体……」
その言葉に、まるで信じられない天変地異が起こったかのように稚気を色濃く残す瞳できょろきょろと周囲の状況を伺っていた娘はルイズを認め。
「えっと、あの、此処、何処……?」
これまでの雰囲気をぶち壊すような、実に頼りない言葉を放った。
――――抱きしめてた痛み零れ落ちた瞬間に
――――優しさ束ね嵐の中へ駆け出す
――――優しさ束ね嵐の中へ駆け出す
「使い魔の契約?」
「ええ、君には申し訳ないのですが使い魔が死ぬまで契約は解除できないのですが」
「ごめんなさい、貴女が貴族ともっと早く知っていたら……」
「いいわ、退屈してたし。それに……」
わたしはもう死んでいるもの。
続けようとしたその言葉は口からは出てこなかった。
娘は思う、死んだはずの自分が何故生身の肉体を持って呼び出されたのか?
しかも――
見つめた先には紫の光を放つ剣。
かつて自分が使ったこの剣も岩に刺さった状態で呼ばれるなんて……
娘は咽喉奥までせりあがってきた一つの回答を飲み込むと、ルイズに付いて歩き出した。
せいぜいやりたかったこと、やりたくても出来なかった沢山の事をやろうと思った。
そして勿論彼女が思ったのなら、それが即現実にならない筈がない。
さし当たってはまず自己紹介から。そう言って手を差し出した娘に向かって、ルイズもおずおずと言った感じで手を差し出す。
「アナスタシア・ルン・ヴァレリアです」
「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。これからよろしくお願いね」
「ええ、君には申し訳ないのですが使い魔が死ぬまで契約は解除できないのですが」
「ごめんなさい、貴女が貴族ともっと早く知っていたら……」
「いいわ、退屈してたし。それに……」
わたしはもう死んでいるもの。
続けようとしたその言葉は口からは出てこなかった。
娘は思う、死んだはずの自分が何故生身の肉体を持って呼び出されたのか?
しかも――
見つめた先には紫の光を放つ剣。
かつて自分が使ったこの剣も岩に刺さった状態で呼ばれるなんて……
娘は咽喉奥までせりあがってきた一つの回答を飲み込むと、ルイズに付いて歩き出した。
せいぜいやりたかったこと、やりたくても出来なかった沢山の事をやろうと思った。
そして勿論彼女が思ったのなら、それが即現実にならない筈がない。
さし当たってはまず自己紹介から。そう言って手を差し出した娘に向かって、ルイズもおずおずと言った感じで手を差し出す。
「アナスタシア・ルン・ヴァレリアです」
「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。これからよろしくお願いね」
至極自然に実の姉にするような口調が漏れたことに一番驚いたのは他ならぬルイズ自身だった。
もっとももこんな驚きなど序の口であったと、後にルイズはさんざ思い知ることになる。
もっとももこんな驚きなど序の口であったと、後にルイズはさんざ思い知ることになる。
「ギーシュくん、モンモンちゃんとはどれくらい進んでるのかなー?」
「は、はは。何を言っているのかな、ぼくとモンモランシーがそんな……」
「おうおう照れちゃって、愛い奴じゃのぉ。お姉さん可愛がってあげたくなっちゃう」
これまで眺めてるだけだった人の恋路に横槍を入れてみたり。
「は、はは。何を言っているのかな、ぼくとモンモランシーがそんな……」
「おうおう照れちゃって、愛い奴じゃのぉ。お姉さん可愛がってあげたくなっちゃう」
これまで眺めてるだけだった人の恋路に横槍を入れてみたり。
「やっぱりね、ルイズちゃんにはこの“ふりふりレース”が似合うと思うの!」
「甘いわね、ここはルイズのコケティッシュな魅力を最大限引き立たせる“小悪魔ビスチェ”よ!」
「着ぐるみ」
「え、俺の出番これだけ?」
ルイズを使ってウインドゥショッピングとしゃれ込んでみたり。
「甘いわね、ここはルイズのコケティッシュな魅力を最大限引き立たせる“小悪魔ビスチェ”よ!」
「着ぐるみ」
「え、俺の出番これだけ?」
ルイズを使ってウインドゥショッピングとしゃれ込んでみたり。
「そりゃあお姉さんだってHなことくらい考えるわよ!」
「そうよそうよ、なんであそこで露骨にモーションかけてるのに他の女に靡くのよギーシュの奴……」
「いいじゃない、別に恥ずかしいことじゃないわ」
「あんたたちこんな時間に人の部屋で何やってんのよ! ああもぅ洪水のモンモランシーや脳みそ十八禁なツェルプストーまで連れ込んで……」
友人と酒盛りに高じて長年の無聊を慰めてみたり。
「そうよそうよ、なんであそこで露骨にモーションかけてるのに他の女に靡くのよギーシュの奴……」
「いいじゃない、別に恥ずかしいことじゃないわ」
「あんたたちこんな時間に人の部屋で何やってんのよ! ああもぅ洪水のモンモランシーや脳みそ十八禁なツェルプストーまで連れ込んで……」
友人と酒盛りに高じて長年の無聊を慰めてみたり。
けれどそんな時間はあっと言う間に過ぎてしまうのだけれども……
――――約束して此処へ帰ると
――――果てしなく遠くへ行っても
――――果てしなく遠くへ行っても
「ねぇルイズちゃん、もしこの国が戦争に巻き込まれたら貴女はどうするの?」
噂程度に漏れ聞こえてくるアルビオンのレコンキスタ、トリステインを覆う暗雲は隠しようもない。
そのことにアナスタシアは凄く悲しい気持ちになっていた、何故わざわざ人と人とが争わねばならないのか? わざわざ互いに殺しあわなくても滅びの種などあちらこちらに転がっていると言うのに……
そのことにアナスタシアは凄く悲しい気持ちになっていた、何故わざわざ人と人とが争わねばならないのか? わざわざ互いに殺しあわなくても滅びの種などあちらこちらに転がっていると言うのに……
「勿論、戦うわ。姫殿下に忠誠を誓い、いざと言う時にはお助けするのが貴族ですもの!」
「戦争に、人を殺す訓練をしていない人が行っても邪魔なだけよ。きっと……」
「それでも私は貴族だもの!」
「戦争に、人を殺す訓練をしていない人が行っても邪魔なだけよ。きっと……」
「それでも私は貴族だもの!」
万感の思いで叫んだルイズに、アナスタシアは一つ嘆息する。
その様はかつて見た<聖女>の末裔として剣を求めた一人の青年の姿を思い起こさせたからだ。
<聖女>の血など何の意味さえないと言うのに……
暗く沈んだアナスタシアの様子に思うところがあるのか、いつも通りきざったらしい仕草で隣に座っていたギーシュは言った。
その様はかつて見た<聖女>の末裔として剣を求めた一人の青年の姿を思い起こさせたからだ。
<聖女>の血など何の意味さえないと言うのに……
暗く沈んだアナスタシアの様子に思うところがあるのか、いつも通りきざったらしい仕草で隣に座っていたギーシュは言った。
「そうだね、ぼくも戦場へ馳せ参じることになるだろう。ぼくの父は元帥だし、それに――男と言うのは戦場で武勲を立てて英雄と呼ばれることを夢見るものだからね」
ふふん、と笑ったギーシュに帰ってきたきたのは底冷えするような声だった。
「知ってる?」
「え? な、なな何をだい?」
「え? な、なな何をだい?」
訳の分からない悪寒に背筋を振るわせたギーシュにアナスタシアは言った。
「『英雄』って言葉は、『生贄』の別の呼び方でしかないってことに」
そう告げるアナスタシアの言葉は、とてもとても悲しそうだった。
そう告げるアナスタシアの言葉は、とてもとても悲しそうだった。
――――どんなときでもあなたは一人じゃないよ
――――繋いだ手は離さない
――――繋いだ手は離さない
「結局、こうなっちゃったか……」
今、アナスタシアの目の前には雲霞の如く押し寄せるレコンキスタの軍勢があった。
正直言って恐い、震えが止まらない、出来ることなら投げ出してしまいたいとも思う。
だってそれは当たり前だ、アナスタシアは本当はどこにでもいるただの娘なのだから。
お洒落だってしたいし、恋もしたい、友達だってもっとたくさん作りたい、もっともっとみんなと一緒に生きていたい!
正直言って恐い、震えが止まらない、出来ることなら投げ出してしまいたいとも思う。
だってそれは当たり前だ、アナスタシアは本当はどこにでもいるただの娘なのだから。
お洒落だってしたいし、恋もしたい、友達だってもっとたくさん作りたい、もっともっとみんなと一緒に生きていたい!
だがそれは出来ない話だ、ここで逃げればルイズが死ぬ。
自分に再び生きる喜びをくれた、真面目で不器用でそして本当はとても優しい少女が死んでしまう。
それだけではない、ギーシュもモンモランシーもキュルケもタバサもシエスタもコルベールだって死んでしまうかもしれない。
いや美人だからとおまけしてくれた肉屋のおじさんや、よく行く屋台のおばさん、そしてこれから友達になれたかもしれない見知らぬ誰かも殺されてしまうかもしれない。
自分に再び生きる喜びをくれた、真面目で不器用でそして本当はとても優しい少女が死んでしまう。
それだけではない、ギーシュもモンモランシーもキュルケもタバサもシエスタもコルベールだって死んでしまうかもしれない。
いや美人だからとおまけしてくれた肉屋のおじさんや、よく行く屋台のおばさん、そしてこれから友達になれたかもしれない見知らぬ誰かも殺されてしまうかもしれない。
「まったく相棒は損な性分だねぇ」
「分かってるわ、分かってるから黙ってて、頭痛くなってくるもの」
「分かってるわ、分かってるから黙ってて、頭痛くなってくるもの」
そう言ってアナスタシアはもう一人の相棒に向かって振り返った。
「ごめんね、あなたまで付き合わせちゃって……」
その言葉に“彼”は何を馬鹿なことをとばかりに空に輝く二つの月に高く高く吼えた、故郷と変わらぬ空は絶好の戦日和だと。
アナスタシアの言葉を待たず、ただ独りきりで敵陣へ向かって飛び込んでいく。
アナスタシアの言葉を待たず、ただ独りきりで敵陣へ向かって飛び込んでいく。
「まったくしょうがないなぁ」
不器用なくせに、こんな時までわたしのことを元気付けようとするんだから……
「それじゃあ行こうか、相棒」
「ええ、デルフリンガー」
「ええ、デルフリンガー」
そう言って、アナスタシアは運命の一歩を踏み出した。
空には彼女が死んだの世界と同じように、二つの月が煌々と輝いていた。
空には彼女が死んだの世界と同じように、二つの月が煌々と輝いていた。
――――信じてるあの日の絆
――――強い想いが
――――強い想いが
「私の、せいだ……」
アナスタシアはただ一人戦場へ行った。
「私のせいで、アナスタシアは……」
生きて帰れるはずがない。
そしてそれはアナスタシアの制止を押し切って戦争へ行こうと言った私のせいだ。
私が、アナスタシアを殺したんだ!
そしてそれはアナスタシアの制止を押し切って戦争へ行こうと言った私のせいだ。
私が、アナスタシアを殺したんだ!
「私は、私は!」
その時、ふと誰かの呼ばれた気がして私は背後を振り返った。
そこにはいつもアナスタシアが大事にしていた岩に刺さった一本の剣がある。
私は操られるようにその柄に手を伸ばし、そして……
そこにはいつもアナスタシアが大事にしていた岩に刺さった一本の剣がある。
私は操られるようにその柄に手を伸ばし、そして……
「ああああああああああああああああ!」
その剣の名はアガートラーム。
伝説の、銀の腕。
未来を司るガーディアンの失われた左手を鍛えて作り上げられた聖剣である。
その力は……
伝説の、銀の腕。
未来を司るガーディアンの失われた左手を鍛えて作り上げられた聖剣である。
その力は……
――――同じ夢を探し続けてる……
アナスタシアは満身創痍だった、体中は傷だらけで足元はおぼつかず、デルフリンガーを杖代わりに荒く息を吐く。
その姿はとてもフォルガイアから焔の災厄を退けた聖女のようには思えないが、しかしそれも無理もない。
もともと彼女は戦うべき人ではなかった、ただ『生』に対する欲望が誰よりも強いと言うだけの、何処にでもいるごく普通の少女だったのだから。
或いは此処に彼の聖剣を持ち込んでいれば結果は変わっていただろう。
だがアナスタシアには出来なかった、かつて人の負の想念を食らい無限の力を得る怪物すら対等に戦った力を、彼女は同胞である“人間”に使う気にはどうしてもならなかったのである。
実際、これほど圧倒的な相手を前にしてアナスタシアは一人として死なせてはいなかった――もう一度<英雄>になるには<剣の聖女>はあまりにも優しすぎる。
だがそれ故に現在の窮地がある、血を流しすぎて視界すらぼやけてきた。朦朧とする頭でアナスタシアは考える。
――この状態で死んだら一体わたしはどうなるのだろう?
もう一度あの何もない事象地平の狭間の世界に戻るのだろうか? それとも今度こそ跡形もなく消え去ってしまうのだろうか?
前者も困るが後者も困る、まだまだ生きたい、大切な人達と笑いあいたいのに……
マリアベルと一緒に笑いあいたい、ルシエドをもっともふもふしてあげたい、アシュレーとマリナちゃんのバカップルぷりも気になる、ティムとコレットちゃんの初々しいのも捨てがたいし……
そして何よりルイズだ。
「やっぱり、わたしが死んだら怒るよね」
『アナスタシア!』
「そうよね、黙って出てきちゃったし……」
『アナスタシア!!』
「――幻聴まで聞こえてきたみたい」
『アナスタシアーーー!!!』
その姿はとてもフォルガイアから焔の災厄を退けた聖女のようには思えないが、しかしそれも無理もない。
もともと彼女は戦うべき人ではなかった、ただ『生』に対する欲望が誰よりも強いと言うだけの、何処にでもいるごく普通の少女だったのだから。
或いは此処に彼の聖剣を持ち込んでいれば結果は変わっていただろう。
だがアナスタシアには出来なかった、かつて人の負の想念を食らい無限の力を得る怪物すら対等に戦った力を、彼女は同胞である“人間”に使う気にはどうしてもならなかったのである。
実際、これほど圧倒的な相手を前にしてアナスタシアは一人として死なせてはいなかった――もう一度<英雄>になるには<剣の聖女>はあまりにも優しすぎる。
だがそれ故に現在の窮地がある、血を流しすぎて視界すらぼやけてきた。朦朧とする頭でアナスタシアは考える。
――この状態で死んだら一体わたしはどうなるのだろう?
もう一度あの何もない事象地平の狭間の世界に戻るのだろうか? それとも今度こそ跡形もなく消え去ってしまうのだろうか?
前者も困るが後者も困る、まだまだ生きたい、大切な人達と笑いあいたいのに……
マリアベルと一緒に笑いあいたい、ルシエドをもっともふもふしてあげたい、アシュレーとマリナちゃんのバカップルぷりも気になる、ティムとコレットちゃんの初々しいのも捨てがたいし……
そして何よりルイズだ。
「やっぱり、わたしが死んだら怒るよね」
『アナスタシア!』
「そうよね、黙って出てきちゃったし……」
『アナスタシア!!』
「――幻聴まで聞こえてきたみたい」
『アナスタシアーーー!!!』
――――どんなときでも、あなたは一人じゃないよ
自分の胸に飛び込んで来たルイズを抱きしめると、アナスタシアは目を白黒させる。
直接心に流れ込んでくる声、これは……
「ど、どうしたのルイズちゃん!?」
『あんた、<英雄>は<生贄>の別名だって』
直接心に流れ込んでくる声、これは……
「ど、どうしたのルイズちゃん!?」
『あんた、<英雄>は<生贄>の別名だって』
にやりと、悪戯を企む子供みたいな顔でルイズは笑う。
『見せてあげるわ、あんたの常識をひっくり返す荒唐無稽な<英雄>の姿!』
掲げた剣が銀の光を放ち――
これが、後に<トリステインの奇跡>と呼ばれる誰一人死なない戦争の幕開けであった。
これが、後に<トリステインの奇跡>と呼ばれる誰一人死なない戦争の幕開けであった。
――Fin――