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ゼロの花嫁-05 A - (2008/10/20 (月) 05:40:40) のソース
#navi(ゼロの花嫁) モンモランシーは最近とみに不機嫌であった。 「ルイズ! 今日こそは君と決着を着けてやる!」 ここ最近の定例行事となったギーシュの雄たけび。 ルイズはギーシュの姿を見た瞬間には、既に部屋の窓から飛び出している。凄まじい反応速度だ。 2Fぐらいの高さは最早ルイズにとって障害でもなんでもないらしかった。 「逃がすものか! 今日という今日は追い詰めてみせる!」 同じく2Fの窓から飛び降りるギーシュ。 残されたキュルケ、タバサ、燦の三人は手なんか振って暢気に見送っている。 こんな感じでギーシュがひたすらルイズに構ってばかりいるからだ。 時々二人きりになっても、話題はルイズの事ばかり。 どうルイズを追い詰めるか、ゴーレムの運用方法等なのだが、何かとルイズルイズ言うギーシュはとても気に入らない。 そして、遂に彼女は一線を越える。 法で禁じられている惚れ薬の作成に手を出したのだ。 嫉妬心に支えられ完成したそれを手に、モンモランシーは何処からどう見ても悪人面にしか見えない顔で笑った。 夜半の中庭、そこにギーシュを呼び出したモンモランシーは、二人で星空を眺めながら夜のデートと洒落込んでいた。 二人分の果実ジュースをテーブルに置き、向かい合って椅子に腰掛ける。 既にブツは仕込み済みだ。 いざ実行してみると、とんでもなく緊張する。 今まで露ほども感じなかった罪悪感も首をもたげてくる。 「こうして二人っきりでゆっくりするのも久しぶりだねモンモランシー」 「そ、そうね」 つい口数も少なくなる。 ギーシュはそれを気にしてモンモランシーの顔を下から覗き込む。 「どうしたんだいモンモランシー。悩み事があるんなら僕に話してごらんよ」 (あんたの事で悩んでるなんて、そんな事言えるわけないでしょ!) 頭の中で毒づきながら、ふんとそっぽを向き、自分の分のジュースに口をつける。 ギーシュはご機嫌斜めのモンモランシーに肩をすくめながら、同じようにジュースを手に取る。 モンモランシーの喉が鳴る。後少しだ。後少しで事は成る。 「あれ? こんな夜更けに二人してどないしたん?」 思わず椅子からずり落ちそうになったモンモランシーに代わって、ギーシュが返事をする。 「やあサン。良い夜だね」 声をかけてきたのは燦だ。 何やら肩で息をしながらテーブルの側まで走りよってくる。 「こんばんわ。そうじゃね、星もよう見えるし月も綺麗じゃ」 燦はあの決闘騒ぎの後、きちんと謝罪したギーシュをもう怒っていなかった。 そして、酒盛りでルイズとキュルケが引っくり返った時に色々手助けしてくれたモンモランシーも同じだ。 現在クラスの人間で燦がこうして話を出来るのは、いつもの三人とこの二人だけなのだ。 ギーシュも、ルイズの使い魔ではあるが、燦に対して何かをしようというつもりはない。 むしろこうして話すと人柄の良さがわかり、機会がある時は喜んで燦と話す。 それはモンモランシーも同じなのだが、何せタイミングが悪い。 さっさとどっか行けと心の中で毒づきながら、適当に話をあわせる。 「ミス・サンはこんな夜更けにどうしたんだい?」 「私うっかり今日の分のランニングしてなかったんよ。じゃから、こんな時間だけどやっとこって」 ギーシュはすっとグラスに手をつける。 「そうかい。じゃあ喉が渇いたろ、これでもどうぞ」 とても気配り上手なギーシュさん。 「ええの? ありがとう! 汗掻いちゃってちょうど飲み物欲しかったんよ!」 (はいはい、それ飲んだらさっさと行ちゃってよね。全く、こっちは取り込み中なんだから空気読みなさいよ) そこでようやく気付いた。 「え?」 ギーシュは、既にグラスを燦に渡している。そう、媚薬入りのジュースが入ったグラスを。 (嘘っ!? 何よこの展開!?) 冷静に考えなければならない、今急にグラスを取り上げるのは不自然。 そうだ、代わりに自分のものを勧めれば。ギーシュのは酸っぱい系果実、私の甘い系の方がより燦に向いてるし、それなら自然に渡せる。 だが、自分の分は既に飲み終わっていた。 (ノーーーーォォウ!! しかしまだ手はあるわ!) そうよ、今から燦に声をかけて新しいの持ってくるから、人の物飲むなんてみっともない事しないでと言えばいい。 これなら自然っ! 誰にも怪しまれる事なくギーシュに再度グラスを戻す事が出来るっ! 値千金ッ! 大逆転の一手! 諦めなければ……こんな逆転劇があるっ…… 「ぷはー、おいしかった。ありがとなギーシュさん」 無かった。 逆転劇も何も既に燦は飲んでしまった後な訳で。 「えー! ちょ、ちょっとサン!」 大慌てのモンモランシーを他所にグラスをギーシュに返す燦。そんな燦に微笑み返すギーシュ。 その時、燦の脳内に電撃が走る。 (な、なんじゃろ……なんか……ギーシュさんが……) グラスを渡した後も見つめてくる燦に、ギーシュは怪訝そうな顔をする。 「どうしたの?」 (めっちゃ漢前になっとるーーーーーー!!) 「え、えっと……ギーシュさんは……その……」 燦の変化にギーシュは気付かない。 「ん?」 「や、ヤクザの娘とか嫌いじゃろか?」 燦は直球しか投げられないらしい。 ギーシュは少し考えた後、笑って答えた。 「親云々より、その娘がどれだけ魅力的かが問題なんじゃないかな? 美しい花を愛でるのにその出自を問うのは無粋というものだよ」 ギーシュの言葉に燦はにぱーっと花が咲いたような笑顔になる。 「そ、そっか。じゃったら……うん、良かった」 それだけ言うと燦は部屋へと戻っていく。何やらスキップしはじめそうなぐらい上機嫌だ。 「また明日なギーシュさん」 「ああ、お休みサン」 残されたのは、呆然と事態の推移を見つめるモンモランシーと、全くそれを理解していないギーシュの二人だけであった。 翌朝、ルイズが目を覚ますと既に燦はベッドには居なかった。 特に何に困るでもなし、何時もどおり朝の支度をして寝ぼけ眼のまま食堂へと向かう。 ルイズは燦に小間使いじみた事をほとんどやらせていなかった。 その代わり、毎日体を動かす事と、しっかり勉強をする事を課している。 文字も読めないでは、この先苦労するだろうとそこから学ばせているのだ。 手間のかかる事は、最近仲良くなったシエスタに頼んでいるので不便は全く無かった。 食堂の入り口で並んでつっ立っているキュルケとタバサを見つけた。 「おはよー。どうしたのよ、入らないの?」 ルイズの声に振り返ったキュルケは、とても深刻そうな顔をしていた。 「……見て」 言われるままにひょいっと脇から食堂を覗いてみるルイズ。 そこには予想もしない光景があった。 燦が、ギーシュの朝食の給仕をしている。 ギーシュの食事は何故か他の人の物とは異なっており、それを一皿一皿づつ燦がギーシュに出してやっているのだ。 「何事?」 キュルケに問うが、キュルケも当惑したままだ。 「知らないわよ。でもね、ほら、見てあの燦の表情」 ギーシュが何かを言う度に、とても幸せそうな顔になる。 時々頬を赤らめて目線を逸らしたりはするが、概ね燦はギーシュから視線を離そうとはしていない。 全く意味がわからないが、このままここに居ても仕方が無い。 三人はギーシュ達の側へと向かった。 「ギーシュ、これ一体何事?」 開口一番そんな事を訊ねるルイズ。 ギーシュはだらしなくゆるみきった顔でルイズに答えた。 「いや~、サンが朝食を作ってくれたって言うからさ。おいしいね彼女の料理は」 燦はギーシュの言葉に、嬉しそうに手を叩く。 「ホンマ? ありがとう。私ルイズちゃんに料理作ってあげよ思ってシエスタちゃんにこっちの料理教えてもらってたんよ」 そんな燦の手料理、未だルイズは食べた事が無い。 「今度ルイズちゃん達にも作ったげるな。味はシエスタちゃん仕込じゃから安心してええで」 キュルケはあからさまに不審そうな顔になる。 「なんでサンがギーシュの料理とか作ってるのよ」 気持ち俯いて照れた顔をする燦。 「そ、それは……えっと、わ、私が作ってあげたかったんよ」 そんな言葉、キュルケは欠片も信用していない。 「サン、ギーシュに何か弱み握られてるんなら素直に言いなさい。私がギーシュの顔、二度と人前に出られないようにしてやるから」 慌てて両手を振る燦。 「そ、そんなんちゃう。ギーシュさんはいきなり私が料理作った言うても快く食べてくれたんよ。ホンマええ人じゃ」 食事はほぼ終わっていたのでギーシュは席を立ち、キュルケ、タバサも釈然としないながらも朝食を取る。 ルイズは燦の手料理をギーシュに先に食われた事がよっぽどショックだったのか、二人が食事を終えるまで、灰になって立ち尽くしていた。 そして授業の時間。 休憩が入る度に燦はギーシュの元へ行き、二人での会話を楽しんでいる。 燦は、今まで見た事が無いぐらいにはしゃいで、そして幸せそうに笑っていた。 キュルケは胸の辺りを押さえながら、隣に座るタバサに泣き言を漏らす。 「ごめん、あれ、何とかならない? もう、何ていうか……胃に来るわ。見てるだけで私、こう、切なさで死ねそう……」 「……」 タバサは燦のそんな様をじっと見ている。 そして、一つ結論づけた事がある。 「サンは自発的にああしている。ギーシュに文句を言うのは筋違い」 タバサの言葉がルイズ、キュルケの胸に突き刺さる。 ちなみにルイズは、ちらっと横目で二人を見て、すぐに見ていられなくなって顔を伏せるを延々飽きもせず繰り返している。 問題の打開策を求めて昼食時に燦を含めた四人が集まったが、燦が嬉々としてギーシュの話をしてくる為、ルイズとキュルケが更に心労を積み重ねただけであった。 夜、キュルケの部屋にルイズ、キュルケ、タバサの三人が集まる。 対策会議の委員長はキュルケだ。 ルイズはたった一日の事で憔悴し使い物にならなくなっている。 委員長キュルケは静かに話し始める。 「私の経験から言わせてもらうと、燦のアレはとある状態に酷似しているわ」 タバサは頷き、ルイズは何も聞こえていないようでほけーっとしている。 「正直、口にするのもおぞましい、考えるだけで気分の悪くなる事態だけど……ああっ、ありえないわ。ごめんなさい、やっぱり私の言った事は忘れて」 よっぽどギーシュの男性としての魅力に疑問があるのだろう。 どうにも話が進みそうにないので、タバサが既に出ている結論を述べてやる。 「サンはギーシュの事が好き」 がたんっ! 側にあったテーブルごとその場にくず折れるキュルケ。 同じく椅子から滑り落ちてその拍子に椅子をひっくり返したルイズ。 キュルケは首を何度も横に振る。 「お、落ち着きましょう。そもそも、そんな事ありえないんだから、そういう仮定の話したって仕方がな、ないじゃない」 ため息をつくタバサ。 「ギーシュは見た目は良い。女の子にも優しい。好かれる要素は充分ある」 ばんっ! ルイズは側にひっくり返っていたテーブルを全力でひっぱたく。 「~~っっっ!!!!!」 激怒寸前でありながら今にも泣き出しそうな複雑な顔でタバサを睨むルイズ。 そんな視線をしれっと受け流してタバサは続ける。 「それがサンの意思なら、尊重してあげるのが良い。邪魔をしたら本気で嫌われる」 嫌われる、の所で体が平衡感覚を失ったようによろけるルイズ。 既に床に突っ伏しているキュルケは、消え入りそうな声で言った。 「……お願いタバサ、もうちょっと優しく言って……身が持たないわ……」 結局実の有る解決策は見出せず、忍の一字という事で話はまとまった。 しかし、ルイズに安息の時間はない。 自室のベッドにて二人で寝る時、ギーシュの事を飽きもせず何度も話す燦という、とても心苦しいものの相手をしなければならなかったのだから。 翌日も全く同じ一日になった。 いつもはギーシュがルイズにつっかかってくるのだが、ギーシュは燦との会話が楽しいようで、結局一回もケンカを売ってこなかった。 耐え難きを耐える二人を、タバサは何を考えてるんだかよくわからない無表情で見つめていた。 「……保って後一日」 ぼそっと呟いて席を立ち、教室を後にするとその日一日タバサは教室には戻らなかった。 コルベールはオールドオスマンに呼ばれて出頭する。 内容は決闘騒ぎの事後処理報告である。 この件は全てコルベールが引き受ける事になっており、一件一件細かくそれらの報告を済ませる。 コルベールはこれらを一人で全部処理しているため、最近は研究に割く時間がまるで取れていない。 燦の紋章も調べたいのだが、どうにもそれどころではないのだ。 険しい顔で全てを聞き終えたオールドオスマンはコルベールに問う。 「で、その後問題児共は静かにしておるか?」 これは、ルイズ、キュルケ、タバサ、燦の四人の事である。 事件を調べた結果、決闘騒ぎ前後にも問題行動を起こしている要注意人物と判明したのだ。 コルベールは冷汗を隠しながら答える。 「はい、元気は元気ですが、あくまで学園の秩序に乗っ取った形で、です。時々模擬戦闘のような事もしておりますが、彼女達の技術ならば問題は無いかと」 「そうか」 それだけ言うと、もう報告する事も無くなったのでコルベールは退室する。 ミス・ロングビルがオールドオスマンの為にお茶を入れる。 オールドオスマンは頬杖をつきながらぼやいた。 「どうも薬が効きすぎたようじゃの。生徒達だけでなく教師陣までまともにワシに意見せんようになってしもうた」 ミス・ロングビルは苦笑する。 「あの怒りようを見せられれば誰でもそうなります。それを狙ってらっしゃったのでは?」 「そうなんじゃがのう、この状態じゃと問題が起こった時、ワシまで話が来ないよう連中全力を尽くすようになるじゃろ? それはそれでマズイ事態ではあるしのう」 お茶の入ったティーカップをオールドオスマンの前に置く。 「あんなに怒ったご自身の責かと」 しかめっ面になるオールドオスマン。 「半分は演技じゃ。そのぐらい見抜かんかい」 窓の外を眺めるミス・ロングビル。 「ミスタ・コルベールはどうやら見抜いているようですわよ。アレを指して模擬戦とは、良くもまあいけしゃあしゃあと言えたものです」 彼女の眼下では、ギーシュ操るゴーレムが槍やら剣やら振り回しながらルイズを追っかけている。 「ふん、奴のは追い詰められて誤魔化すしか手が無いからそうしてるだけじゃよ。内心心臓が引っくり返りそうになっとるじゃろ」 口元に手を当てて楽しそうに笑うミス・ロングビル。 「それが分っていながら、わざわざここで話題に出して虐めるオールドオスマンも大概だと思いますが」 オールドオスマンはいたずらっ子のように口の端を上げる。 「奴には今後もあの跳ねっ返り共の面倒を見てもらわねばならんからの。今の内から鍛えられるだけ鍛えておかんとな」 二人は顔を見合わせて笑う。 ミス・ロングビルにとっては、この決闘事件は非常に幸運な出来事であった。 何せオールドオスマンが『おっかない』キャラクターを作るのに苦心している為、いつものセクハラが出来なくなってしまったのだから。 燦がギーシュに付きっ切りになって三日目。 その日の授業も昨日、一昨日と同様の展開をみせたが、昼休みにルイズがぼそぼそっと燦に頼みごとをしていた。 それを聞いた燦は快くルイズの頼みごとを引き受ける。 ギーシュに手を振って教室を出る燦。 それを見て、ギーシュも今日はお話は無しと見たのか両手を振って席を立つ。 「よし! しばらくご無沙汰だったが、今日こそはルイズ、君を倒してみせる!」 杖をルイズに向けてかざすギーシュ。 ルイズは、薄ら笑いを浮かべる。 「そう……その言葉……待ってたわ」 机の下に置いてあった物を取り出しながら立ち上がる。 その手にはデルフリンガー。鯉口を切ると、きんっと響く良い音がする。 「決闘なら、事故よね」 すらーっと剣を抜きながら一歩一歩、ゆっくりとギーシュへと歩み寄っていく。 「そう事故よ、どんなに惨たらしい死に方をしたとしても。そうよねギーシュ」 「よう娘っ子。今日は相棒じゃねえのか?」 デルフリンガーの言葉は無視。というより、本気で聞こえていないのかもしれない。 いつもとは逆の展開。 ギーシュはルイズのどろっと濁っていながら、強烈に鈍い輝きを放つその目に釘付けになる。 「あー、えっと……ルイズ?」 ルイズのここ数日のストレスを、ギーシュはまるで感じ取っていなかったようだ。 しかし、そこから放たれる狂的な殺気には、後ずさりを禁じえない。 とん、と誰かにぶつかる。 振り返ったそこには巨大な胸。キュルケがそこに立っていた。 「ねえ、私考えたの。鉄の箱の上と横に穴空けてそこにギーシュを入れるのよ」 「き、キュルケ?」 「それでね、横の穴から首だけ出して、上の穴から煙出すのよ。そうすれば、きっと業火に焼かれて悶え苦しむギーシュの顔を最期まで見ていられるわ」 ふと気が付く。 教室に居た他の生徒の姿が見えない。 入り口の所では、モンモランシーが避難誘導していた。 「モンモランシー! 僕を見捨てるのかい!?」 モンモランシーは親指を自分の首に当てて真横に引いて見せ、最後に親指を下に向ける。 死ね、という事らしい。 前からは一歩、また一歩とルイズが近づいてくる。 ( 僕 も し か し て 生 命 の 危 機 で す か ? ) ルイズが目の前に来たら終わりだ。ギーシュは突然真横に向かって飛び、教室の入り口に向かって駆け出した。 「逃がすとでも思ってるの!?」 そこにキュルケの魔法が炸裂する。 ギーシュの背後に爆炎が迫るも、ルイズとの勝負でやたら鍛えられた脚力で振り切って教室のドアを閉める。 ドアにかかる巨大な負荷と、ガラスを震わす程の轟音、教室の中がどんなになっているのかなんて想像したくもなかった。 すぐにドアの前を離れて廊下を疾走する。 直後、教室のドアがぶち抜かれた。 まだ教室内を暴れまわっていた炎が入り口から噴出す。 その中心から、炎を突き抜けてルイズが飛び出してきた。 「ギイィィィシュゥゥゥゥ!!」 ギーシュは確信する。ルイズはあの時と同じだ。 決闘の時と同じように、自らの負傷の事などその思考から完全に除外されている。 でなくては、キュルケの炎に飛び込んでまでギーシュを追うなんて真似が出来るものか。 そして、今回は最初からギーシュを殺る気で武器を手にしている。 もちろんギーシュもルイズと決着を付けるつもりであったから望む所ではある。 あの時のルイズを打倒すべく準備もしている。 だが、その、なんというか。 この殺気は明らかに想定外である。しかもルイズはどうも決着云々ではない部分に重きを置いている模様。 ギーシュは、全身の細胞がそう主張するように、逃げる事に全力を注ぐ事にした。 #navi(ゼロの花嫁)