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ソーサリー・ゼロ第三部-12 - (2008/04/25 (金) 21:19:28) のソース
#center{&color(green){[[前ページ>ソーサリー・ゼロ第三部-11]] / [[表紙へ戻る>ソーサリー・ゼロ]] / [[次ページ>ソーサリー・ゼロ第三部-13]]}} ---- 二七一 その鎖篭手は君の手にぴったりの大きさであり、使い心地も悪くない。 長年のあいだ手入れもされずに放置されていたはずだが、錆一つ浮いていないのは驚くべきことだ。 君は知らぬが、これはドワーフの名工の手による逸品であり、手にはめているいるあいだは技術点に一を加えてよい。 君が、このような価値あるものを本当に貰ってもよいのかとシエスタの父に尋ねると、 「私も子供たちも、鍬を振ることはあっても剣を振り回すような機会はないからな。このまま戸棚の中で埃をかぶっているよりは、 あんたのような腕に覚えのある人が使ってくれるほうがずっといい。同郷の者の役に立つのだから、じいさんも草葉の陰で喜んでいるはずだ」という答えが返ってくる。 君は彼に礼を述べる。三二九へ。 三二九 シエスタの父に、ササキ――シエスタの曾祖父である≪タイタン≫からの来訪者のことを尋ねていると、そこにルイズ、キュルケ、タバサの三人がやってくる。 いくらか疲れた表情のルイズが言うには、村長をはじめとした村人一同の挨拶と歓迎の言葉を、延々と聞かされていたのだそうだ。 「ようやく終わったと思ったら、今度はみんなで質問攻めよ。『うちの村のシエスタはよくやっていますか』『魔法学院はどんなところなのですか』 『アルビオンとの戦が始まるらしいが、この辺は大丈夫ですか』なんて調子でね。貴族の客が来るなんて、そうそうないんでしょうね。 キュルケがゲルマニアの生まれだって自己紹介したときなんか……」 そこまで言って、ルイズはにやりと思い出し笑いを浮かべる。 「……ほとんど珍獣扱いだったもん! 『やっぱりゲルマニアの貴族さまは、こっちの貴族さまとは違う』って肌や髪の色をさんざん珍しがられて、 しまいには、来月産まれる子牛の名付け親になってくれとか頼まれてたわよね? 目のつけどころがいいわ。キュルケってば、見た目からして 乳牛の守り神って感じだもんね~。ほかにも……」 くすくすと笑いながらさらに話を続けようとするが、珍しく焦った表情のキュルケが 「む、無駄話はそこまでになさい、ヴァリエール!」と言って背後から組み付いてきたため、 中断を余儀なくされる。 いつも余裕綽々としているキュルケにあのような態度をとらせるとは、村民一同による歓迎の場で、いったいなにがあったのだろうか? 「薬は? ブリュヌベリーはブリム苺だったの?」 つかみ合いの喧嘩をはじめたふたりを気にしたようすもなく、タバサが首尾を尋ねてくる。 君は、当たりだったと答え、タバサの家族を診に行く前に少し寄り道をしたいので、明日はシルフィードに乗せてくれぬかと彼女に頼む。 「どこへ?」 君は、ようやく喧嘩をやめたルイズとキュルケ、そしてタバサに、シエスタの曽祖父のこと、彼が潜り抜けた≪門≫のことを説明する。 シエスタとその父は君たちに気を使ったのか、それとも麗しの令嬢たちのぶざまなつかみ合いにあきれたのか、席を外している。 「じゃあ、その洞窟の奥に、≪サモン・サーヴァント≫を唱えたときに現れるようなゲートが開いているっていうの?」 ルイズが、とても信じられぬと言いたげな表情を見せる。 「普通のメイジがそんな仕掛けを作れるとは思えないわね。エルフの遺した≪先住魔法≫の遺跡かしら? それにしても面白そうじゃない、そのゲートを潜れば 『ロバ・アル・カリイエ』のさらに向こう、ダーリンのお国までひとっ飛びだなんて。あたしもダーリンの故郷を見てみたいわ。素敵なところなんでしょうね」 そう言って、興味深げな様子を見せるのはキュルケだ。 実際のところ、『ロバ・アル・カリイエ』(ハルケギニアより東方の土地の漠然とした総称だ)からどれだけ進もうと≪タイタン≫に行き着くことはないだろうし、 ササキの記述が正確なら≪門≫の繋がっている先は君の故郷ではなく、遥か離れたアランシアの危険な地下迷宮なのだが、話がややこしくなるために、 あえて訂正せずに話を進める。 君は、タバサの家族に癒しの術を施す前に、≪門≫が存在するという洞窟を調べに行きたいのだと告げる。 今もまだ≪門≫はあるのか、シエスタの曽祖父以外にも≪タイタン≫から来た者の痕跡が残されておらぬかを、調べたいのだと。 ルイズは君の眼をじっと見つめる。 「それで……もしも、そこにゲートがあったら……あんたはその、アナランドだかカーカバードだかに帰っちゃうのよね?」と尋ねる。 君はもちろんだと答え、タバサとルイズの家族を診るという約束を果たしたのち、あらためてもう一度洞窟を訪れることになるだろうと語る。 アランシアから≪旧世界≫へ向かう旅は月日がかかるうえに危険だが、それでも君は、危機に瀕した祖国に戻らねばならぬのだ。 このハルケギニアで、安穏と≪使い魔≫生活を続けるわけにはいかない。 「え、どういうこと? ルイズ、あなた自分の使い魔を国に帰しちゃうつもり? 高慢で嫉妬深くて独占欲の塊みたいなあなたが、 自分の魔法が成功した唯一の証である、使い魔の彼を手放すっていうの?」 キュルケが驚きの声を上げる。 「わたしは彼と約束したのよ。故郷に帰れるようにできる限り協力するって」 そう言ってルイズはキュルケのほうに向き直り、毅然とした態度で言葉を続ける。 「だから、ほんとに帰る方法が見つかったのなら、引き止めたりせずに送り出してあげなきゃだめなのよ。貴族に二言はないもの。 使い魔に逃げられたって馬鹿にされるかもしれないけど、約束を守って正しいことをするんだから、気にしないわ」 君は、ルイズの真摯な心意気に感激する。 彼女が君のために、それほどの覚悟を決めてくれていたとは! 「へえ……立派じゃないの、ルイズ。でも、なんでそこまで急いで帰らなきゃいけないわけ? ダーリンは、ぶらりと気ままに旅してる行商人かなにかじゃなかったの?」 君はキュルケの問いに答えようとするが、ルイズが先に説明を始める。 「本当は、大事な任務を果たすための旅の最中だったのよ。悪いメイジに故郷を狙われているから、一刻も早く戻らなきゃだめなんだって。 こんな話、普通ならまず信じないでしょうけど、≪土塊のフーケ≫の一件であの大蛇たちを見たすぐ後に聞かされたから……。少なくとも、わたしは本当の話だと思ってるわ」 「あら、あたしも信じてるわよ。ルイズから逃げ出す口実にしてはあまりに突拍子がなさすぎるし、ダーリンがただ者じゃないことの説明にだってなるもの。 ところで、その悪いメイジってもしかして、ヒドラの首から七匹の大蛇を作ったっていう、あの?」 君は無言でうなずくが、内心ではキュルケの記憶力のよさに驚いている――オスマンに七大蛇のことを語ったとき、彼女やタバサもそばで話を聞いていたが、 そのような細部まで覚えていたとは驚きだ。 やはり彼女は、ただの享楽的なのらくら者ではない。 「じゃあ、ルイズは『イーヴァルディ』みたいな勇者さまを召喚しちゃったってわけね。しかも、お話の途中で」 「あんな胡散臭い御伽噺と一緒にしないでよ。こっちはもっと現実的な話をしているんだから」 ルイズがそう言った瞬間、タバサの表情がぴくりと動くが、すぐにもとの物静かな面持ちに戻る。 それに気づいた様子もなく、ルイズは続ける。 「とにかく、明日の洞窟探索にはわたしも付き添ってあげるからね!」と。一一九へ。 一一九 ルイズからの同行の申し出に、君は眉をひそめる。 洞窟にはどのような危険が潜んでいるのかわからぬのだから、村で帰りを待つべきだと説得するが、ルイズは 「あんたの大切な任務を邪魔して悪かったと思ってるから、お詫びに手伝ってあげようって言ってんのよ。人の行為は素直に受け取りなさい!」と、 君に反発する。 「でも、魔法の使えない≪ゼロのルイズ≫になにができるって言うの? 荷物持ち? それとも、道に迷わないように毛糸玉でも転がす?」 突如、君とルイズのやりとりに割り込んできたのはキュルケだ。 「な、なによツェルプストー。あんたには関係ないでしょ」 「ヴァリエール、あなたじゃダーリンの足手まといになるって言ってるの。あなたがどんな目に遭おうが知ったことじゃないけど、ダーリンまで巻き込むつもり? いくら主人を護るのが使い魔の仕事だと言っても、限度があるわよ」 冷たく言い放つキュルケに、ルイズは返す言葉もない。 「だ・か・ら」 キュルケは君に向き直る。 「あたしもついて行ってあげる。ルイズなんかより、ずっと頼りになるところを見せてあげるから。たとえなにが出てこようと、あたしの炎で一掃してみせるわ!」 そう言って君の腕にすがりつき、豊かなふくらみを押し当ててくる。 「な、なにやってんの、離れなさい! キュルケ、あんたなんだかんだ言って、自分が楽しみたいだけでしょ!?」 ルイズが慌てて君とキュルケを引き離そうとする。「こんな面白そうな冒険の機会を、黙って見過ごしたりできるわけないでしょ? それにダーリンは、タバサとルイズ両方のご家族を診なきゃいけない大事な身。 もしもの事がないように護ってあげなきゃ。ついでにルイズも護ってあげるわ」 キュルケはそう言って微笑む。 少女を危険な場所に同行させるのは気が進まぬが、≪火≫の魔法を操るキュルケが、怪物との闘いにおいて頼もしい戦力となることは確かだ。 君がしぶしぶながらふたりの同行を認めると、タバサが無言で進み出て杖を掲げる。 「タバサ、あんたも来るつもり? 心強いけど、空気のよどんだ洞窟の中じゃ≪風≫の魔法は威力が落ちるわよ」 「それでも、ルイズの爆発よりはよっぽど頼りになるわ。ありがとうタバサ! これでもう、怖いものなしね!」 それぞれの反応を示すルイズとキュルケに、タバサは 「心配。それに、彼には借りがある」と返す。 その一言を聞いたふたりの少女は物問いたげな視線を浴びせてくるが、君自身にも『借り』がなにを指しているのかわからない。 シエスタの家で夕食をとった君は(ルイズたち三人は村長の家に招かれ、そこでもてなしを受けている)、食後の紅茶を飲みながらシエスタの家族と雑談をする。 自分たちの先祖であるササキが君と『同郷』の生まれ――君はハチマン国が≪タイタン≫のどこに存在するかも知らぬのだが――だということが明らかになったため、 彼らは君のことを家族同然に扱ってくれる。 君はこれからどうする? 一同を楽しませる笑い話をするか?・二六五へ ササキが通り抜けたという洞窟について聞き出そうとするか?・一七一へ 疲れたので今夜はもう寝たいと言うか?・二四二へ 一七一 ササキの通った道を逆にたどって、故郷へと通じる≪門≫を探すつもりだと君が語ると、シエスタは驚きに息を呑み、彼女の父は眉根を寄せる。 村から東へ二日ほど歩いたところに存在する洞窟については、さまざまな噂が囁かれているのだという。 いくらか真実らしいのは、それが天然の洞窟ではなく、とある≪土≫の魔法使いが手を加えた広大な地下迷宮だということだ。 港町ラ・ロシェールの建設に関わった魔法使いのひとりが新たな街を築こうとした成れの果てとも、王国からの独立を企む貴族が城塞として 築いたとも言われているが、実態は定かではない。 どちらにせよ、建設途中で放棄されたそれは今や、まっとうな者は誰も寄り付かぬ場所になっているという。 洞窟の主はあるときは山賊ども、またあるときはオーク鬼の群れへと変遷し、ときおりこの地方の領主が討伐隊を送り込んで彼らを追い散らすのだが、すぐにまた新たな住人が棲みつくのだ。 数十年前に派遣された討伐隊は義務感かはたまた好奇心からか、洞窟の奥まで踏み入ったのだが誰ひとりとして帰ってこなかったと、シエスタの父は告げ、 あのようなところに近づいて命を粗末にしてはいけないと警告する。 行手がすこぶる危険だと言うことだけははっきり解ったが、君の意志は固い。 なにを言われようが、洞窟の探索を諦めるつもりはないと説明する。 シエスタの父は悲痛な表表情で君の眼をじっと見据えているが、やがて 「それなら、明日にそなえて早く休んだほうがいい。シエスタ、寝室までご案内してさしあげろ」と言って会話をしめくくる。 夜明けとともに眼を覚ました君は、背嚢の中身を確認し、デルフリンガーを鞘から抜くと、その刀身をじっと見つめる。 「今日は大変な一日になるんだってな。娘っ子のお守りにてんてこ舞いなのはいつものことだが、今度は皆で化け物の巣に踏み込むんだろ? 相棒の気苦労、お察しするぜ」 デルフリンガーが同情したように言う。 君は、だからこそお前のことを頼りにしているぞと、魔剣に語りかける。 「お、おいおい、おだてたってなにも出ねえぞ? 相手がメイジじゃねえのなら、俺ぁただの喋る段平(だんびら)だかんな」 照れた声を出すデルフリンガーに笑いかけ再び鞘に収めると、寝室を出る。 外ではタルブの村の人々が起きだしており、炊事の煙が上がっている。 シエスタの家の前でルイズたちとの合流を待っていると、背後に何者かの気配を感じ取る。 振り向くとそこには、シエスタが立っている。 学院で奉公しているときの奇妙な制服とは違った、いかにも村娘といった風情の素朴な服装だ。 シエスタは恥ずかしげにうつむきながら言う。 「その……洞窟の奥にある≪門≫を見つけたら、すぐに帰っちゃうんですか? 故郷に――ひいおじいちゃんの生まれた、月がひとつしかない国に」 君はかぶりを振り、今回は下調べであり、また戻ってくると答える。 「ああ、よかった……それなら、本当に帰っちゃうときは、また家に寄ってくださいね! めいっぱいおもてなししますから! あ、その前に学院でお別れのパーティを開かないと! きっとマルトーさん、泣いて引き止めようとしますわ」 まだ≪門≫が見つかったわけではないのだから、あまり先走ったことを口にするものではないと君が諌めると、シエスタは顔を赤くする。 「ご、ごめんなさいっ! わたしったらいつもこうなんです。自分の中で勝手にどんどん話を進めて……」 もごもご言うシエスタの肩をぽんと叩き、本当にそうなった時はよろしく頼むと言うと、彼女は 「はい!」と言ってぱっと笑顔を咲かせる。 やがて、ふらふらと足元のおぼつかぬルイズ、しきりに眼をこすりあくびを漏らすキュルケと火狐、いつも通り物静かなタバサが現れ、出発の時が来る。 シエスタの一家が総出で君たちの無事を祈ってくれる。 強運点に二を加えよ。 シエスタの父は地底の旅の助けにと、カンテラと油、火口箱(ほくちばこ)、それに四人ぶんの保存食をくれる。 シエスタを含めた女たちの眼に涙が光っているように見えたが、君は振り返らずに足を進める。 村はずれの林で、シルフィードが君たちを待っているはずだ。一九〇へ。 一九〇 歩いて二日の道のりも、シルフィードの翼をもってすれば一時間もかからず、君たちを乗せた竜は目的地から一マイルほど離れた場所に降り立つ。 君は真っ先に竜の背から降りると、続いて降りる少女たちに手を貸す。 物音を立てぬよう慎重に歩を進めた君は、やがて目当てのものを見つけ出す――同時に、出会いたくなかったものも。 草一本生えておらぬ空き地の向こう、六十ヤードほど先の切り立った崖にぽっかりと開いた暗い洞窟の入り口があるのだが、その手前では六匹の大柄な人間型の生き物が、 焚き火を囲んで座り込んでいるのだ。 人間より頭一つぶん背が高く、太った体は醜いが強靭そうだ。 潰れた鼻と口元からはみ出した牙をもつ顔は、豚や猪を思わせる。 獣の皮をまとい、おのおのが傍の地面に太い棍棒を転がしている。 焚き火を囲んだ怪物どもは、猪らしき動物を丸焼きにしている――いささか共喰いめいた光景だ! 藪陰にしゃがみこんで様子を窺う君の背後から、三人と一匹の仲間たちが近づいてくる。 「あれは、オーク鬼ね。わたしも本物を見るのは初めて」 ルイズが君の耳元で囁くが、その声はいくらか震えている。 「六匹だけなら、不意をつけば勝てるわね」 そう言って君の隣に来たのはキュルケだ。 彼女の≪使い魔≫である火狐はじっとオーク鬼どもを睨み、低く小さな唸り声を上げている。 「危険。洞窟の中にまだいるかもしれない」 キュルケの楽観的な台詞を、タバサが諌める。 六匹のオーク鬼(≪タイタン≫のオークよりずっと大柄で、むしろトロールに近い体格だ)を排除せぬ限り、洞窟には近づくこともできそうにない。 君は、魔法の援護のもと武器を手に正面から強襲するか(二九へ)? それとも、術を使うか? 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