やがてシルフィードがトリステインの王宮へとたどり着く、
場合が場合なだけに直接降下し、王宮の中へと進もうとすると、
多数の兵士たちがレイピアのような杖を構えルイズ達を取り囲んだ。
「杖と剣を捨てろ!!」
隊長らしい顔付きの男が警告を放つ、
国運を左右する重要な密命を完遂したにもかかわらず、少々残念な凱旋の出迎えである、 全員むっとした表情に変わる。
「宮廷」
タバサが呟き、杖を投げる。他のみなはしぶしぶ頷き、手にしていた杖を地面にへと放り投げた。―ただ一人を除いては
「今現在王宮の上空は飛行禁止だ!ふれを知らんのか?」
すると、ルイズがシルフィードから飛び降りて、毅然とした態度でそれに応える。
「わたしはラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです!姫殿下に取り次ぎ願いたいわ!」
向こうの隊長が、自慢であろう口髭をひねってルイズを見つめる。本当かどうか判断しているようだった。
隊長がとりあえず掲げた杖を下ろす。
「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」
「いかにも」
隊長の男はルイズの目をじっと見据える。
「ふむ、なるほど、見れば目元が母君にそっくりだ。して、要件を伺おうか?」
「それは言えません。密命なのです」とルイズは首を振った。
「では殿下に取り次ぐわけにはいかぬ。要件も尋ねずに取り次いだ日にはこちらの首が飛ぶからな」
困った口調で隊長は応える。
「では、今すぐに首を飛ばしてやる、それが嫌なら道を開けろ」
中庭に冷たい声が響く、兵士たちがその方向をみると
いつの間にかバージルがシルフィードから降り、閻魔刀の刃を数サントほど押し上げて隊長を睨みつけていた。
「なんだとッ!?」
周囲を取り囲む兵士たちが一斉に杖を構える。
「ちょっと!何挑発してんのよ!お願いだからやめて!」
全員が必死にバージルを止める、なぜこの男はここまできて話をややこしくするのだろうか、ルイズが頭を抱えたその時
「ルイズ!」
驚きと嬉しさが込められた叫び声が中庭に響き渡った。
皆がその叫び主の方を向くと、鮮やかな紫色のマントとローブを羽織った人物――アンリエッタ王女がこちらに駆け寄って来た。
「姫さま!」
ルイズの顔が嬉しさ一杯に溢れ変えり、こちらもまた駆け寄る。
二人は、中庭にいる全員が見守る中、ひしと抱き合った。
「ああ、無事に帰ってきてくれたのね。うれしいわ。ルイズ……」
「姫さま」
あまりの嬉しさに、ぽろりとルイズの目から涙が零れた。
「件の手紙は、無事、このとおりでございます」
アンリエッタの表情が明るくなり、ルイズの手をかたく握り締める。
「やはり、あなたはわたくしの一番のおともだちですわ」
「もったいないお言葉です。姫さま」
アンリエッタはシルフィードに乗っている人達を見渡す。そこにウェールズの姿がいない事を知ると、顔を曇らせる。
「やはり……ウェールズさまは父王に殉じたのですね」
はい……、とルイズは顔を俯かせて小さく答えた。
「……して、ワルド子爵は?姿が見えませんが。別行動をとっているのかしら?」
「それは…ここでは…」
ルイズの表情が曇る、あまり言いたくないのと、下手に口にしてこの場に混乱をもたらすのも避けるべきと考え周囲を見る。
アンリエッタは、魔法衛士隊の面々がこちらを見つめている事に気付いた。
「彼らはわたくしの客人ですわ。隊長どの」
「さようですか、失礼いたしました」
アンリエッタに説明された隊長は、今までの態度とは一変、杖を収めて、隊員達を促し、この場から去っていった。
アンリエッタは、再びルイズの方を向くと、
「とにかくわたくしの部屋でお話しましょう。他のかたがたは別室でお休みになってください」
場合が場合なだけに直接降下し、王宮の中へと進もうとすると、
多数の兵士たちがレイピアのような杖を構えルイズ達を取り囲んだ。
「杖と剣を捨てろ!!」
隊長らしい顔付きの男が警告を放つ、
国運を左右する重要な密命を完遂したにもかかわらず、少々残念な凱旋の出迎えである、 全員むっとした表情に変わる。
「宮廷」
タバサが呟き、杖を投げる。他のみなはしぶしぶ頷き、手にしていた杖を地面にへと放り投げた。―ただ一人を除いては
「今現在王宮の上空は飛行禁止だ!ふれを知らんのか?」
すると、ルイズがシルフィードから飛び降りて、毅然とした態度でそれに応える。
「わたしはラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです!姫殿下に取り次ぎ願いたいわ!」
向こうの隊長が、自慢であろう口髭をひねってルイズを見つめる。本当かどうか判断しているようだった。
隊長がとりあえず掲げた杖を下ろす。
「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」
「いかにも」
隊長の男はルイズの目をじっと見据える。
「ふむ、なるほど、見れば目元が母君にそっくりだ。して、要件を伺おうか?」
「それは言えません。密命なのです」とルイズは首を振った。
「では殿下に取り次ぐわけにはいかぬ。要件も尋ねずに取り次いだ日にはこちらの首が飛ぶからな」
困った口調で隊長は応える。
「では、今すぐに首を飛ばしてやる、それが嫌なら道を開けろ」
中庭に冷たい声が響く、兵士たちがその方向をみると
いつの間にかバージルがシルフィードから降り、閻魔刀の刃を数サントほど押し上げて隊長を睨みつけていた。
「なんだとッ!?」
周囲を取り囲む兵士たちが一斉に杖を構える。
「ちょっと!何挑発してんのよ!お願いだからやめて!」
全員が必死にバージルを止める、なぜこの男はここまできて話をややこしくするのだろうか、ルイズが頭を抱えたその時
「ルイズ!」
驚きと嬉しさが込められた叫び声が中庭に響き渡った。
皆がその叫び主の方を向くと、鮮やかな紫色のマントとローブを羽織った人物――アンリエッタ王女がこちらに駆け寄って来た。
「姫さま!」
ルイズの顔が嬉しさ一杯に溢れ変えり、こちらもまた駆け寄る。
二人は、中庭にいる全員が見守る中、ひしと抱き合った。
「ああ、無事に帰ってきてくれたのね。うれしいわ。ルイズ……」
「姫さま」
あまりの嬉しさに、ぽろりとルイズの目から涙が零れた。
「件の手紙は、無事、このとおりでございます」
アンリエッタの表情が明るくなり、ルイズの手をかたく握り締める。
「やはり、あなたはわたくしの一番のおともだちですわ」
「もったいないお言葉です。姫さま」
アンリエッタはシルフィードに乗っている人達を見渡す。そこにウェールズの姿がいない事を知ると、顔を曇らせる。
「やはり……ウェールズさまは父王に殉じたのですね」
はい……、とルイズは顔を俯かせて小さく答えた。
「……して、ワルド子爵は?姿が見えませんが。別行動をとっているのかしら?」
「それは…ここでは…」
ルイズの表情が曇る、あまり言いたくないのと、下手に口にしてこの場に混乱をもたらすのも避けるべきと考え周囲を見る。
アンリエッタは、魔法衛士隊の面々がこちらを見つめている事に気付いた。
「彼らはわたくしの客人ですわ。隊長どの」
「さようですか、失礼いたしました」
アンリエッタに説明された隊長は、今までの態度とは一変、杖を収めて、隊員達を促し、この場から去っていった。
アンリエッタは、再びルイズの方を向くと、
「とにかくわたくしの部屋でお話しましょう。他のかたがたは別室でお休みになってください」
アンリエッタの居間にルイズとバージルが入る、
そこで、ルイズはアンリエッタにことの次第を報告し始めた。
もちろんワルドが裏切ってウェールズを殺害した事もはっきりと言った。
裏切り者であるワルドはバージルにより処刑され、手紙は奪われずにこの手に取り戻した。
反乱軍である『レコン・キスタ』の野望はつまずき、こちらの任務は成功し、平和な時間がもどったのだ、
だが、アンリエッタは悲しみの表情で一杯だった。
「奴は…勇敢に戦って死んだ。確かに伝えた」
バージルが初めて口を開く、そこまで言うとさっさと退室していった。
そこで、ルイズはアンリエッタにことの次第を報告し始めた。
もちろんワルドが裏切ってウェールズを殺害した事もはっきりと言った。
裏切り者であるワルドはバージルにより処刑され、手紙は奪われずにこの手に取り戻した。
反乱軍である『レコン・キスタ』の野望はつまずき、こちらの任務は成功し、平和な時間がもどったのだ、
だが、アンリエッタは悲しみの表情で一杯だった。
「奴は…勇敢に戦って死んだ。確かに伝えた」
バージルが初めて口を開く、そこまで言うとさっさと退室していった。
「わたくしの婚姻を妨げようとする暗躍は未然に防がれたのです。わが国はゲルマニアと無事同盟を結ぶことができるでしょう。
あなたのおかげで、危機は去り、平和な時間に戻りました。ありがとう、ルイズ」
バージルが退室してしばらくの後、
アンリエッタは無理矢理にでも明るい声を出した。いつまでも落ち込んではいけないと考えたのだろう。
その後、ワンテンポ置いて、ルイズはポケットから水のルビーと風のルビーを取り出した。
「姫さま、これをお返しします」
「これは、風のルビーではありませんか。ウェールズ皇太子から預かってきたのですか?」
「はい、姫様にお渡しするようにと」
アンリエッタは早速風のルビーを手に取り指に通す。ウェールズがはめていたものなので、アンリエッタの指にはゆるゆるだった。
しかし、小さく呪文を紡ぐと、あっという間に指輪のリングの部分がぴたりとおさまった。
アンリエッタは、風のルビーを愛おしそうになで、はにかんだように笑むと水のルビーをルイズに手渡す、
「それはあなたが持っていなさいな。せめてものお礼です」
「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」
「忠誠には、報いるところがなければなりません。いいから、とっておきなさいな」
アンリエッタの言葉に折れたのか、ルイズは頷くとそれを指にはめた。
あなたのおかげで、危機は去り、平和な時間に戻りました。ありがとう、ルイズ」
バージルが退室してしばらくの後、
アンリエッタは無理矢理にでも明るい声を出した。いつまでも落ち込んではいけないと考えたのだろう。
その後、ワンテンポ置いて、ルイズはポケットから水のルビーと風のルビーを取り出した。
「姫さま、これをお返しします」
「これは、風のルビーではありませんか。ウェールズ皇太子から預かってきたのですか?」
「はい、姫様にお渡しするようにと」
アンリエッタは早速風のルビーを手に取り指に通す。ウェールズがはめていたものなので、アンリエッタの指にはゆるゆるだった。
しかし、小さく呪文を紡ぐと、あっという間に指輪のリングの部分がぴたりとおさまった。
アンリエッタは、風のルビーを愛おしそうになで、はにかんだように笑むと水のルビーをルイズに手渡す、
「それはあなたが持っていなさいな。せめてものお礼です」
「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」
「忠誠には、報いるところがなければなりません。いいから、とっておきなさいな」
アンリエッタの言葉に折れたのか、ルイズは頷くとそれを指にはめた。
場所は変わりアルビオン、ニューカッスル、
死体と瓦礫が散乱する戦場の跡を、聖職者然とした服装の三十代の男が歩いている。
その冴えない聖職者にしか見えないその男こそ、『レコン・キスタ』の指導者にして神聖アルビオン帝国皇帝、オリヴァー・クロムウェルであった。
クロムウェルは礼拝堂へたどり着くと言葉を失う、
そこは一面赤黒く変色した血の海と化し腐臭が漂っている、礼拝堂というより、地獄を連想させる。
「これは…」
思わずそう呟きながら礼拝堂内へと足を踏み入れる、
ここにあったウェールズの遺体はすでに回収し『アンドバリの指輪』の力で蘇生させた、ワルド子爵がしくじり
虚無の娘と手紙を入手することができなかったのが残念だが、すべては順調だ。
「しかし…ワルド子爵を失ったのは少々痛手だな…」
クロムウェルはそう呟きながら始祖像を見上げる。
すると、崩れ落ちた天井の穴から威厳あふれる声が響く。
天には三つの赤い目が輝きクロムウェルを見下ろしていた。
「クロムウェルよ…」
その言葉を聞き慌てたようにクロムウェルが片膝をつく。
死体と瓦礫が散乱する戦場の跡を、聖職者然とした服装の三十代の男が歩いている。
その冴えない聖職者にしか見えないその男こそ、『レコン・キスタ』の指導者にして神聖アルビオン帝国皇帝、オリヴァー・クロムウェルであった。
クロムウェルは礼拝堂へたどり着くと言葉を失う、
そこは一面赤黒く変色した血の海と化し腐臭が漂っている、礼拝堂というより、地獄を連想させる。
「これは…」
思わずそう呟きながら礼拝堂内へと足を踏み入れる、
ここにあったウェールズの遺体はすでに回収し『アンドバリの指輪』の力で蘇生させた、ワルド子爵がしくじり
虚無の娘と手紙を入手することができなかったのが残念だが、すべては順調だ。
「しかし…ワルド子爵を失ったのは少々痛手だな…」
クロムウェルはそう呟きながら始祖像を見上げる。
すると、崩れ落ちた天井の穴から威厳あふれる声が響く。
天には三つの赤い目が輝きクロムウェルを見下ろしていた。
「クロムウェルよ…」
その言葉を聞き慌てたようにクロムウェルが片膝をつく。
「これはこれは…ムンドゥス様…」
「聖地の奪還、どうなっている」
「はっ、我が『レコン・キスタ』はアルビオン王国を陥落させ、拠点を得ることができました。
ウェールズ皇太子も我らが手中にございます」
「そうか、ではこのまま貴様に一任する」
「全身全霊をもってお受けいたします。して、スパーダの血族はいかがいたしましょうか、
情報によれば虚無の担い手の使い魔として召喚されたとか…」
「今は捨て置け、貴様らがいくら束になろうと死体の山が築かれるだけだ。
我が力は完全には復活してはおらぬ。こうして貴様と話すにも時空が安定しない。
故に未だ少数の悪魔しかそちらへ送ることはできぬ。」
「はっ…」
「何、いずれ奴は我が元へ、魔界へ来る…自らの意思でな…」
「…」
「クロムウェル」
「はっ…」
「一人だが、兵をくれてやる、どう使うかは貴様の自由だ」
「ははっ!ありがたき幸せ!」
ムンドゥスはそう言うと、礼拝堂内部が揺れ始める。
すると周囲の血が一か所に集まり人の形を作る、
やがてそれは一人の長身の男を生み出した、
クロムウェルはその姿を見て驚愕の表情を浮かべる。
男はそんなクロムウェルに気さくな笑顔で話しかける。
「ごきげんよう陛下」
「ワルド子爵…君なのか…?」
クロムウェルは恐る恐る目の前の男―ワルドに話しかける。
「えぇ、私です陛下。ムンドゥス様のおかげでこれほどまでに素晴らしい力を手に入れることができました」
そうにこやかに言うと、詠唱もせずに、自身の一部を雷に変えた。
呆気にとられるクロムウェルにムンドゥスは続ける。
「この場の血に残る全ての魔力を再結晶しその男を作り直した。貴様等のいうメイジ十数人分の魔力をその男は持っている。
一人だが、人間よりは役に立つだろう」
そう言うと、天に浮かぶ三つの眼が消え始める。
「クロムウェル、必ずや聖地を奪還するのだ、さすれば我が魔界はこの世界に本格介入することができる…失敗は許さん」
「ははっ!必ずや聖地を奪還してご覧にいれます!」
その言葉に我に返ったクロムウェルは急ぎムンドゥスに膝をつく。
空は元の青空へともどっていた。
「聖地の奪還、どうなっている」
「はっ、我が『レコン・キスタ』はアルビオン王国を陥落させ、拠点を得ることができました。
ウェールズ皇太子も我らが手中にございます」
「そうか、ではこのまま貴様に一任する」
「全身全霊をもってお受けいたします。して、スパーダの血族はいかがいたしましょうか、
情報によれば虚無の担い手の使い魔として召喚されたとか…」
「今は捨て置け、貴様らがいくら束になろうと死体の山が築かれるだけだ。
我が力は完全には復活してはおらぬ。こうして貴様と話すにも時空が安定しない。
故に未だ少数の悪魔しかそちらへ送ることはできぬ。」
「はっ…」
「何、いずれ奴は我が元へ、魔界へ来る…自らの意思でな…」
「…」
「クロムウェル」
「はっ…」
「一人だが、兵をくれてやる、どう使うかは貴様の自由だ」
「ははっ!ありがたき幸せ!」
ムンドゥスはそう言うと、礼拝堂内部が揺れ始める。
すると周囲の血が一か所に集まり人の形を作る、
やがてそれは一人の長身の男を生み出した、
クロムウェルはその姿を見て驚愕の表情を浮かべる。
男はそんなクロムウェルに気さくな笑顔で話しかける。
「ごきげんよう陛下」
「ワルド子爵…君なのか…?」
クロムウェルは恐る恐る目の前の男―ワルドに話しかける。
「えぇ、私です陛下。ムンドゥス様のおかげでこれほどまでに素晴らしい力を手に入れることができました」
そうにこやかに言うと、詠唱もせずに、自身の一部を雷に変えた。
呆気にとられるクロムウェルにムンドゥスは続ける。
「この場の血に残る全ての魔力を再結晶しその男を作り直した。貴様等のいうメイジ十数人分の魔力をその男は持っている。
一人だが、人間よりは役に立つだろう」
そう言うと、天に浮かぶ三つの眼が消え始める。
「クロムウェル、必ずや聖地を奪還するのだ、さすれば我が魔界はこの世界に本格介入することができる…失敗は許さん」
「ははっ!必ずや聖地を奪還してご覧にいれます!」
その言葉に我に返ったクロムウェルは急ぎムンドゥスに膝をつく。
空は元の青空へともどっていた。
場面はまたも変わりトリステイン
魔法学院へと戻った次の朝からルイズの行動が変わった。
召喚されて数週間バージルもここの生活に慣れたのか使い魔、というより使用人の仕事を放棄していた。
今まではそれに対しルイズはわめき散らしていたのだが、この日に限って何も言わない。
自分のことは全て自分でするようになったのだ。
着替えも、普段はバージルが目の前にいようがお構いなく着替えていたのだが、
なぜか顔を真っ赤にしバージルに外へ出て行くように言いだした。
断る理由もないのでバージルは外へ出る。そんなバージルにデルフが話しかけた。
「おいおい、相棒、もしかしてもしかしちゃったりするんじゃないの~?」
「…?」
「気づいてるくせに~このぉ憎いねぇ」
「…??何を言ってるんだお前は?」
本当になんのことだかわからないといった表情でバージルはデルフに尋ねる、
「…相棒…もうちょっと女を勉強しろ」
デルフが心底呆れたように溜息を吐いた。
魔法学院へと戻った次の朝からルイズの行動が変わった。
召喚されて数週間バージルもここの生活に慣れたのか使い魔、というより使用人の仕事を放棄していた。
今まではそれに対しルイズはわめき散らしていたのだが、この日に限って何も言わない。
自分のことは全て自分でするようになったのだ。
着替えも、普段はバージルが目の前にいようがお構いなく着替えていたのだが、
なぜか顔を真っ赤にしバージルに外へ出て行くように言いだした。
断る理由もないのでバージルは外へ出る。そんなバージルにデルフが話しかけた。
「おいおい、相棒、もしかしてもしかしちゃったりするんじゃないの~?」
「…?」
「気づいてるくせに~このぉ憎いねぇ」
「…??何を言ってるんだお前は?」
本当になんのことだかわからないといった表情でバージルはデルフに尋ねる、
「…相棒…もうちょっと女を勉強しろ」
デルフが心底呆れたように溜息を吐いた。
授業が始まる前、ルイズの周りにはクラスメイトで一杯であった。
この数日間、何かとんでもない冒険をして凄い手柄を立てたらしい、との噂が今一番の話題であった。
裏付け証拠に、魔法衛士隊の隊長と出発するところを何人かの生徒たちが見ていたのである。
何かがあるに違いない。そう思ったクラスメイトたちは聞きたくてしょうがなかった。
バージルに聞こうにも纏う雰囲気が怖すぎて近づけない。ゆえに矛先がルイズに向いたのだった。
「ねえルイズ、あなたたち、授業を休んでどこに行っていたの?」
クラスの代表者として話しかけてきたのは、香水のモンモランシーであった。
ルイズは澄ました顔で答える。
「なんでもないわ。ちょっとオスマン氏に頼まれたの、王宮までお使いに行ってただけよ。ギーシュ、キュルケ、タバサ、そうよね」
タバサは黙々と本を読み、キュルケは「ま、そんなとこよ」と適当に流した。
ギーシュは「そうそう、そんなとこだよ」となんだか話したくて仕方ないといった顔でうなずく、
事前にルイズにより「バラしたら姫様に報告するわよ」と釘を刺され、言うに言えない状況なのだ。
テンションがすっかり落ちたクラスメイト達は、やめだやめだといった感じに自分の席へと戻っていく。
ルイズの言動に腹を立てた人もいたらしく、負け惜しみを吐き捨てた。
「どうせ、たいしたことじゃねーよな」
「そうよね、ゼロのルイズだもん。魔法のできないあの子に何か大きな手柄が立てられるなんて思えないわ!
フーケを捕まえたのだって、きっと偶然よ、あの使い魔が一人で倒しちゃったんじゃないの?」
モンモランシーが嫌味ったらしく言った。
流石のルイズにもこれにはカチンときた。しかし、実際活躍していないのも事実である。
ぎゅっと唇を悔しそうに噛み締めるが、何も言い返せなかった。
この数日間、何かとんでもない冒険をして凄い手柄を立てたらしい、との噂が今一番の話題であった。
裏付け証拠に、魔法衛士隊の隊長と出発するところを何人かの生徒たちが見ていたのである。
何かがあるに違いない。そう思ったクラスメイトたちは聞きたくてしょうがなかった。
バージルに聞こうにも纏う雰囲気が怖すぎて近づけない。ゆえに矛先がルイズに向いたのだった。
「ねえルイズ、あなたたち、授業を休んでどこに行っていたの?」
クラスの代表者として話しかけてきたのは、香水のモンモランシーであった。
ルイズは澄ました顔で答える。
「なんでもないわ。ちょっとオスマン氏に頼まれたの、王宮までお使いに行ってただけよ。ギーシュ、キュルケ、タバサ、そうよね」
タバサは黙々と本を読み、キュルケは「ま、そんなとこよ」と適当に流した。
ギーシュは「そうそう、そんなとこだよ」となんだか話したくて仕方ないといった顔でうなずく、
事前にルイズにより「バラしたら姫様に報告するわよ」と釘を刺され、言うに言えない状況なのだ。
テンションがすっかり落ちたクラスメイト達は、やめだやめだといった感じに自分の席へと戻っていく。
ルイズの言動に腹を立てた人もいたらしく、負け惜しみを吐き捨てた。
「どうせ、たいしたことじゃねーよな」
「そうよね、ゼロのルイズだもん。魔法のできないあの子に何か大きな手柄が立てられるなんて思えないわ!
フーケを捕まえたのだって、きっと偶然よ、あの使い魔が一人で倒しちゃったんじゃないの?」
モンモランシーが嫌味ったらしく言った。
流石のルイズにもこれにはカチンときた。しかし、実際活躍していないのも事実である。
ぎゅっと唇を悔しそうに噛み締めるが、何も言い返せなかった。
一方バージルはその日の授業は出ずに、図書館へと足を運んだ
誰もいない一角にたどり着くと、静かにデルフを引き抜く、
「さて、親父の…スパーダの事を話してもらおう」
「あぁ、そういやそうだったな。その前にちと訪ねたいんだが、
お前さんはこの世界の宗教…始祖ブリミルについてどのくらい知ってる?」
「宗教に縁はない、が少々聞いたことがある」
「どんなことだい?」
「強大な虚無の魔法を操っていたこと、それと、俺のこのルーンを含め4人の使い魔がいたことぐらいだ」
「何を目指したか、ってのは知らないんだな?んじゃ、そこの本棚からブリミルの伝説をちと探してみろ」
「…これか」
そう言いながら一冊の本を手に取りページをめくる、
「もうちょい先だ、あぁ、そこそこ、聖地の所だ」
デルフが止めたところを静かに読む。
そこには4人の使い魔を従え聖地を目指し旅をしたものの先住魔法を操るエルフ達により阻まれてしまい、
ついには聖地にたどり着くことができなかった、と書かれていた……
誰もいない一角にたどり着くと、静かにデルフを引き抜く、
「さて、親父の…スパーダの事を話してもらおう」
「あぁ、そういやそうだったな。その前にちと訪ねたいんだが、
お前さんはこの世界の宗教…始祖ブリミルについてどのくらい知ってる?」
「宗教に縁はない、が少々聞いたことがある」
「どんなことだい?」
「強大な虚無の魔法を操っていたこと、それと、俺のこのルーンを含め4人の使い魔がいたことぐらいだ」
「何を目指したか、ってのは知らないんだな?んじゃ、そこの本棚からブリミルの伝説をちと探してみろ」
「…これか」
そう言いながら一冊の本を手に取りページをめくる、
「もうちょい先だ、あぁ、そこそこ、聖地の所だ」
デルフが止めたところを静かに読む。
そこには4人の使い魔を従え聖地を目指し旅をしたものの先住魔法を操るエルフ達により阻まれてしまい、
ついには聖地にたどり着くことができなかった、と書かれていた……
「これがどうした?まさかスパーダがブリミルとやらの使い魔だった、とでも?」
「まさか、その逆さ。
スパーダはブリミルに敵対していたんだ」
「何だと?」
「そのままの意味さ、その本…というよりほぼ全ての歴史書にはエルフによって阻まれた、とあるが事実はそうじゃない。
エルフは特に問題にはならなかったのさ、ちゃんと聖地にはたどり着けたんだ。なんで知ってるかって?
実はな、初代のガンダールヴが握っていた剣は何を隠そう俺っちなんだぜ!」
自慢そうにデルフは語り始める。
「………」
「でだ、その聖地で待っていたのが、一人の魔剣士、スパーダだった。そいつが言うにはこの先には進んではならないと警告してきたんだ。
もちろんここまで来て引き下がるわけにはいかないさ、ブリミルと4人の使い魔はスパーダと戦った」
「(親父が…この世界に…?)それで…?どうなった」
「完敗だったよ、ぐうの音も出ないほどな。笑っちまうほど強かったぜ?
ブリミル含め、全員が剣の一薙ぎで20メイルほど吹っ飛ばされた時は茫然としちまったよ、
つーか戦ってる途中マジで折れるかと思ったぐらいさ」
「…それが何故ここまで改変されている」
「認めたくないんだろうよ。
信仰するブリミル御一行がたった一人に、それも悪魔に、手も足も出なかったってのがね。
宗教ってものはそんなものさ、相棒の世界で何が信仰されてるかは知らないが、どれも似たようなもんなんじゃねぇの?」
そういうと愉快そうにカチカチとデルフが笑う、
「確かにな…だが、何故聖地にたどり着いたことまでも改変されている」
「それはだな…、スパーダの話だと、聖地の向こう側は魔界につながっているらしいんだ」
「何!?」
「スパーダは聖地の奥にある『地獄門』を守っていたらしい。開けちまったら大変だ、魔界と繋がっちまうってな」
「『地獄門』…」
「んで、ブリミルはそれを信じ、聖地を封印し後にした、ってのが本来の歴史だ」
「まさか、その逆さ。
スパーダはブリミルに敵対していたんだ」
「何だと?」
「そのままの意味さ、その本…というよりほぼ全ての歴史書にはエルフによって阻まれた、とあるが事実はそうじゃない。
エルフは特に問題にはならなかったのさ、ちゃんと聖地にはたどり着けたんだ。なんで知ってるかって?
実はな、初代のガンダールヴが握っていた剣は何を隠そう俺っちなんだぜ!」
自慢そうにデルフは語り始める。
「………」
「でだ、その聖地で待っていたのが、一人の魔剣士、スパーダだった。そいつが言うにはこの先には進んではならないと警告してきたんだ。
もちろんここまで来て引き下がるわけにはいかないさ、ブリミルと4人の使い魔はスパーダと戦った」
「(親父が…この世界に…?)それで…?どうなった」
「完敗だったよ、ぐうの音も出ないほどな。笑っちまうほど強かったぜ?
ブリミル含め、全員が剣の一薙ぎで20メイルほど吹っ飛ばされた時は茫然としちまったよ、
つーか戦ってる途中マジで折れるかと思ったぐらいさ」
「…それが何故ここまで改変されている」
「認めたくないんだろうよ。
信仰するブリミル御一行がたった一人に、それも悪魔に、手も足も出なかったってのがね。
宗教ってものはそんなものさ、相棒の世界で何が信仰されてるかは知らないが、どれも似たようなもんなんじゃねぇの?」
そういうと愉快そうにカチカチとデルフが笑う、
「確かにな…だが、何故聖地にたどり着いたことまでも改変されている」
「それはだな…、スパーダの話だと、聖地の向こう側は魔界につながっているらしいんだ」
「何!?」
「スパーダは聖地の奥にある『地獄門』を守っていたらしい。開けちまったら大変だ、魔界と繋がっちまうってな」
「『地獄門』…」
「んで、ブリミルはそれを信じ、聖地を封印し後にした、ってのが本来の歴史だ」
「『レコン・キスタ』と呼ばれる連中が聖地奪還を目指すのは、何故だ?
この本を見るに聖地にたどり着くことがブリミル教徒の目的と書かれているようだが」
「あぁ、大方ブリミルの弟子の中に魔に魅入られた奴がいたんだろう、
んで長い時間をかけ聖地奪還を浸透させたってとこだろ、ご苦労なこった。
あ、ちなみにこのことを人前で言うと異端で火刑だ、”気をつけろ”よ?」
デルフがカチカチと笑う。
「人は皆、潜在的に魔を恐れる…だがしばしば人は魔に魅入られ、恐れることなく闇の中を突き進む。
人間ってのは、おかしな生きものさ」
「話がつながった。礼を言う」
「いいってことよ!」
「(魔帝ムンドゥスの介入…聖地奪還を目指す『レコン・キスタ』…聖地の奥にある魔界に通じる『地獄門』…)」
線が繋がった。ワルドはまだ知らなかったようだが、裏で魔帝が手を引いている。
ハルケギニア支配などは本来の目的ではないのかもしれない。
この世界を征しようと・・・・・・
若しくは自分を狙っているのか・・・・・・
この本を見るに聖地にたどり着くことがブリミル教徒の目的と書かれているようだが」
「あぁ、大方ブリミルの弟子の中に魔に魅入られた奴がいたんだろう、
んで長い時間をかけ聖地奪還を浸透させたってとこだろ、ご苦労なこった。
あ、ちなみにこのことを人前で言うと異端で火刑だ、”気をつけろ”よ?」
デルフがカチカチと笑う。
「人は皆、潜在的に魔を恐れる…だがしばしば人は魔に魅入られ、恐れることなく闇の中を突き進む。
人間ってのは、おかしな生きものさ」
「話がつながった。礼を言う」
「いいってことよ!」
「(魔帝ムンドゥスの介入…聖地奪還を目指す『レコン・キスタ』…聖地の奥にある魔界に通じる『地獄門』…)」
線が繋がった。ワルドはまだ知らなかったようだが、裏で魔帝が手を引いている。
ハルケギニア支配などは本来の目的ではないのかもしれない。
この世界を征しようと・・・・・・
若しくは自分を狙っているのか・・・・・・
「面白い」
バージルはニヤリと笑う。
貴様が俺を追ってきているのならば、俺自ら貴様の首を取りに行ってやる。
バージルは決意を固める、必ずや魔界へ赴き、魔帝の首を取ると。
ガンダールヴのルーンですら永劫破ることはできないであろう強固な決意だった。
「しっかし皮肉だな。ブリミルの敵の息子が、ガンダールヴたぁね…」
踵を返し、図書館の出口へ向かうバージルにデルフが話しかける。
「…そうだな」
「んで、相棒、聖地へ行くのかい?」
「今すぐにでも行きたいところだが…情報がまだ足りんな。
それに…そこまでの道のりがわからん、多少なり路銀も必要になる。お前は何か覚えてないのか?」
「わりぃ、覚えてねぇな」
「まあ…期待してなかったがな」
「ひでぇな、ま、気長に情報を集めりゃいいさ…。お、ありゃタバサじゃねぇか」
バージルが視線を向けると、タバサがこちらに向かって歩いてきた。
「本、読めた?」
タバサはバージルに話しかける
「お前のおかげで読み書きも問題ない、礼を言う」
そう言うと図書館の外へ向かうバージルに、
タバサが話しかける。
バージルはニヤリと笑う。
貴様が俺を追ってきているのならば、俺自ら貴様の首を取りに行ってやる。
バージルは決意を固める、必ずや魔界へ赴き、魔帝の首を取ると。
ガンダールヴのルーンですら永劫破ることはできないであろう強固な決意だった。
「しっかし皮肉だな。ブリミルの敵の息子が、ガンダールヴたぁね…」
踵を返し、図書館の出口へ向かうバージルにデルフが話しかける。
「…そうだな」
「んで、相棒、聖地へ行くのかい?」
「今すぐにでも行きたいところだが…情報がまだ足りんな。
それに…そこまでの道のりがわからん、多少なり路銀も必要になる。お前は何か覚えてないのか?」
「わりぃ、覚えてねぇな」
「まあ…期待してなかったがな」
「ひでぇな、ま、気長に情報を集めりゃいいさ…。お、ありゃタバサじゃねぇか」
バージルが視線を向けると、タバサがこちらに向かって歩いてきた。
「本、読めた?」
タバサはバージルに話しかける
「お前のおかげで読み書きも問題ない、礼を言う」
そう言うと図書館の外へ向かうバージルに、
タバサが話しかける。
「タバサ」
急に自分の名前を言い出したタバサにバージルは振り向き怪訝な顔をする。
急に自分の名前を言い出したタバサにバージルは振り向き怪訝な顔をする。
「知ってるが…急に何だ?」
「呼んで」
何を言い出すかと思えば、そんなことか、とバージルは軽く鼻をならす。
「次に呼ぶことがあればな…」
そう言いながらバージルは振り向かず歩き去った。
タバサはどこか嬉しそうな表情を浮かべ(それこそよく見ないと分からないが)
どことなく軽い足取りで図書館の奥へと消えていった。
「呼んで」
何を言い出すかと思えば、そんなことか、とバージルは軽く鼻をならす。
「次に呼ぶことがあればな…」
そう言いながらバージルは振り向かず歩き去った。
タバサはどこか嬉しそうな表情を浮かべ(それこそよく見ないと分からないが)
どことなく軽い足取りで図書館の奥へと消えていった。
バージルが部屋へと戻ると、ルイズのベットの前に
シーツを天井から吊り下げた簡単なカーテンが出来上がっていた。
その中でルイズが着がえをしているのだろう、ガサゴソと音が聞こえてくる。
それを特に気にするわけでもなく、椅子に腰かけ図書館からこっそり頂戴してきた本を読み始める。
そうしている間に、カーテンが外され、ネグリジェ姿のルイズが顔をだした。
「あら?帰ってきてたのね?一日見なかったけどどこいってたのよ」
それに答えることもなくバージルは読書に耽る。
邪魔しちゃ悪いと思ったのか、ルイズはそのままベッドの上からバージルを見ていた。
やがて消灯時間となり、ルイズが声をかける
「そろそろ寝るわよ、明かりを消すわ」
その言葉とともにバージルがパタンと本を閉じる、
それを確認したルイズが杖を振り机の上の明かりを消し、ベッドに横になった。
バージルはそのまま脚と腕を組み、目を閉じる、バージルの寝床はたいていはこの椅子となっていた。
明かりが消え数秒後、ルイズががばっ!とシーツごと身を起こし、バージルに声をかける。
「ね、ねぇ、バージル?」
「…なんだ」
目を開け短く答える
しばらくの沈黙、ルイズは顔を赤くして言いにくそうにしているのだが、バージルは気がつかない。
「用がないなら呼ぶな」
にべもなくそう言うと再び目をつむってしまった。
「えと、その……いつまでも、椅子ってのはあんまり…よね。だ…だから……その、ベッドで寝てもいいわよ?」
「断る」
鞘に収まった刀が抜刀されるがごとく、一瞬で答えが返ってきた。
「なっ…なんでよ…?別にかまわないのよ?」
あまりの速度にルイズは思わず肩をずるっと落とした。
「気遣いは要らん。最早慣れた」
「そ、そう?なら別に構わないわ…」
ルイズはおとなしく再びベッドに横たわる。
「(今さら…か…もう少し早くなら…)」
そう考えながらルイズが声をかける
「ごめんね、私なんかが召喚しちゃって」
「お前には命を救われた。そのことには一応感謝している」
「一応って何よ…」
「俺は、いずれ魔界へ行く」
バージルの口から飛び出してきた言葉に再びガバっと起き上がる。
「何ですって?」
「魔界へ行き、魔帝を討つ。そのために救われた命だ、お前には感謝している」
「何よそれ…」
思わずルイズが呟く、バージルが魔界へ?手も届かないほど遠くへ行ってしまう?
そう考えると急に胸が苦しくなり、鼓動が速くなる。
「ダメダメダメダメ!!絶対ダメ!!」
突如頭を横に振り叫び出すルイズに静かにバージルは視線を向ける。
「何故だ?」
「なんでも絶対ダメ!魔界に行くなんて!そんなの絶対認めないんだから!」
「まだかかる時間も方法もわからんのに、気の早い女だ…」
「そんなの関係ない!あんたは私の使い魔だもん!絶対遠くになんか行かせないから!」
半ば涙声になって叫ぶルイズをあきれるようにバージルが見つめる。
「俺の命だ、好きに使わせてもらう」
そうあっさり言うと再び目を閉じる。
その言葉を聞いたルイズが枕を投げつける、それを片手で受け止める。
「あんたもウェールズ殿下と同じよ!残される人の気持ちをなんで考えないの!?」
「…知らんな。考える必要があるのか?」
そういいながら枕を投げ返す、
「ばかっ!ばかっ!ばかばかばか!大ありよ!このばか!」
自分のもとにもどってきた枕を叩きながら叫ぶ、
「理解出来ん。もう眠れ」
「もう!このわからずや!とにかく絶対行かせないんだから!」
そう言いながら頭からシーツをかぶり泣き出してしまった。
「くだらん…」
バージルは静かに呟くと、静かに目を閉じた。
シーツを天井から吊り下げた簡単なカーテンが出来上がっていた。
その中でルイズが着がえをしているのだろう、ガサゴソと音が聞こえてくる。
それを特に気にするわけでもなく、椅子に腰かけ図書館からこっそり頂戴してきた本を読み始める。
そうしている間に、カーテンが外され、ネグリジェ姿のルイズが顔をだした。
「あら?帰ってきてたのね?一日見なかったけどどこいってたのよ」
それに答えることもなくバージルは読書に耽る。
邪魔しちゃ悪いと思ったのか、ルイズはそのままベッドの上からバージルを見ていた。
やがて消灯時間となり、ルイズが声をかける
「そろそろ寝るわよ、明かりを消すわ」
その言葉とともにバージルがパタンと本を閉じる、
それを確認したルイズが杖を振り机の上の明かりを消し、ベッドに横になった。
バージルはそのまま脚と腕を組み、目を閉じる、バージルの寝床はたいていはこの椅子となっていた。
明かりが消え数秒後、ルイズががばっ!とシーツごと身を起こし、バージルに声をかける。
「ね、ねぇ、バージル?」
「…なんだ」
目を開け短く答える
しばらくの沈黙、ルイズは顔を赤くして言いにくそうにしているのだが、バージルは気がつかない。
「用がないなら呼ぶな」
にべもなくそう言うと再び目をつむってしまった。
「えと、その……いつまでも、椅子ってのはあんまり…よね。だ…だから……その、ベッドで寝てもいいわよ?」
「断る」
鞘に収まった刀が抜刀されるがごとく、一瞬で答えが返ってきた。
「なっ…なんでよ…?別にかまわないのよ?」
あまりの速度にルイズは思わず肩をずるっと落とした。
「気遣いは要らん。最早慣れた」
「そ、そう?なら別に構わないわ…」
ルイズはおとなしく再びベッドに横たわる。
「(今さら…か…もう少し早くなら…)」
そう考えながらルイズが声をかける
「ごめんね、私なんかが召喚しちゃって」
「お前には命を救われた。そのことには一応感謝している」
「一応って何よ…」
「俺は、いずれ魔界へ行く」
バージルの口から飛び出してきた言葉に再びガバっと起き上がる。
「何ですって?」
「魔界へ行き、魔帝を討つ。そのために救われた命だ、お前には感謝している」
「何よそれ…」
思わずルイズが呟く、バージルが魔界へ?手も届かないほど遠くへ行ってしまう?
そう考えると急に胸が苦しくなり、鼓動が速くなる。
「ダメダメダメダメ!!絶対ダメ!!」
突如頭を横に振り叫び出すルイズに静かにバージルは視線を向ける。
「何故だ?」
「なんでも絶対ダメ!魔界に行くなんて!そんなの絶対認めないんだから!」
「まだかかる時間も方法もわからんのに、気の早い女だ…」
「そんなの関係ない!あんたは私の使い魔だもん!絶対遠くになんか行かせないから!」
半ば涙声になって叫ぶルイズをあきれるようにバージルが見つめる。
「俺の命だ、好きに使わせてもらう」
そうあっさり言うと再び目を閉じる。
その言葉を聞いたルイズが枕を投げつける、それを片手で受け止める。
「あんたもウェールズ殿下と同じよ!残される人の気持ちをなんで考えないの!?」
「…知らんな。考える必要があるのか?」
そういいながら枕を投げ返す、
「ばかっ!ばかっ!ばかばかばか!大ありよ!このばか!」
自分のもとにもどってきた枕を叩きながら叫ぶ、
「理解出来ん。もう眠れ」
「もう!このわからずや!とにかく絶対行かせないんだから!」
そう言いながら頭からシーツをかぶり泣き出してしまった。
「くだらん…」
バージルは静かに呟くと、静かに目を閉じた。