「……駄目よ、殺される。アズマさん、殺されちゃうわ」
「そこのメイドの言う通りよ! さっさとあやまりなさいってば!」
「そこのメイドの言う通りよ! さっさとあやまりなさいってば!」
アズマの背後でがたがたと震えながら言うシエスタの言葉に乗り、ルイズは言ったのだが、返って来たのは憮然とした態度での一言だった。
「やだね」
「ちょっと! あんた……」
「大体俺は決闘なんてするつもりはないよ」
「「へ?」」
「ちょっと! あんた……」
「大体俺は決闘なんてするつもりはないよ」
「「へ?」」
続けざまのアズマの言葉に、一同は間抜けな声を上げ、ポカンと固まってしまった。
いつもの冗談めかした口調に戻ったアズマは、さらに言葉を続けた。
いつもの冗談めかした口調に戻ったアズマは、さらに言葉を続けた。
「道理がないだろ。俺はただ、こいつに対してシエスタにあやまれ、と要求してるだけなんだ。恥とかは知らないよ」
そう言ってへらっと笑ったアズマに、あからさまな落胆の溜息が投げかけられる。既に場は白けつつあった。
だが、そう言われて納得出来ない人間がいるのも事実。一部の生徒達の中には、「腰抜け野郎」「弱虫野郎」と言った誹謗中傷をアズマに投げかける者もいた。
だが、そう言われて納得出来ない人間がいるのも事実。一部の生徒達の中には、「腰抜け野郎」「弱虫野郎」と言った誹謗中傷をアズマに投げかける者もいた。
「決闘、なんて言葉は、軽々しく使うもんじゃあない……殺したり殺されたり、おまえにそういう覚悟があるのか? 怖くないのか? 感情の昂ぶりに任せて物を言うのはよくないぜ」
今度はふざけた様子を見せず、真剣な面持ちで言い放ったアズマの言葉に、感じ入った者も多少はいたようで、場は白けから重苦しい空気を放ち始めた。
だが、目の前にいるギーシュは違った。アズマの言葉を、更なる侮辱のそれと捉えたのだ。
だが、目の前にいるギーシュは違った。アズマの言葉を、更なる侮辱のそれと捉えたのだ。
「貴族に覚悟の是非を問うとは、君も愚かな男だ。ヴェストリの広場で待つ。臆病風に吹かれないのなら来るのだね」
敢えて表面上は感情を見せず、ギーシュはそう言い残してアズマの前から去った。
どよめくギャラリー達は、最初はおずおずと言った様子だったが、やがて再び盛り上がり始め、ギーシュの後を追った。
どよめくギャラリー達は、最初はおずおずと言った様子だったが、やがて再び盛り上がり始め、ギーシュの後を追った。
「やれやれ」
ギーシュの言う覚悟と、自分の言う覚悟との認識の食い違いに、アズマは肩を竦めて呟いた。
だが、あそこまで言ってしまっては引き返せないのも、何となくは分かる。
だが、あそこまで言ってしまっては引き返せないのも、何となくは分かる。
「ねぇ、アズマ……あんた行く気?」
「……どうしようかな。正直、あの鼻っ柱は一度叩き折った方がいい気はするけど」
「……どうしようかな。正直、あの鼻っ柱は一度叩き折った方がいい気はするけど」
人気の少なくなった食堂に残った三人。
ルイズはアズマの服の裾をつまみながら、尋ねるのだが、微妙に自信ありげな彼の言葉に、若干の期待が無くもなかった。
だが、やり取りの最中、終始おろおろしていたシエスタは、かぶりを振ってアズマに言う。
ルイズはアズマの服の裾をつまみながら、尋ねるのだが、微妙に自信ありげな彼の言葉に、若干の期待が無くもなかった。
だが、やり取りの最中、終始おろおろしていたシエスタは、かぶりを振ってアズマに言う。
「む、無理ですよそんなの! アズマさん、決闘なんて止めてください!」
「んー、シエスタに言われたら、止めた方がいいんかなぁ、って思っちまうな」
「何よそれ!」
「んー、シエスタに言われたら、止めた方がいいんかなぁ、って思っちまうな」
「何よそれ!」
シエスタの心配げな言葉に、とぼけた声で答えたアズマの頭をルイズは思わずはたいた。どうもシエスタに対しては甘いではないか、この男は。
「……ま、これはきっと決闘なんかじゃないから、そう心配しないでくれ」
そう言って、アズマは何でも無い、と言った風に手を振って食堂を後にしようとし、
「って、なぁ、ルイズ?」
「?」
「ヴェストリの広場って、どこだ?」
「ちょ……締まらないわねぇっ! もうっ!」
「?」
「ヴェストリの広場って、どこだ?」
「ちょ……締まらないわねぇっ! もうっ!」