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  • ウルトラ5番目の使い魔、第二部-45

あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ウルトラ5番目の使い魔、第二部-45

最終更新:2011年05月29日 19:32

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 第四十五話
 母のために、娘のために

 宇宙魔人 チャリジャ 登場


 シェフィールドが去った後、タバサの心に残されていたのは深い絶望だけだった。
 あの日……ティファニアに会うために、アルビオンに向かう船の中ですべてが始まった。船倉で一人でいるところを見計らって
現れたシェフィールド。やつは、自分から虚無の担い手の情報を聞き出そうとしてきた。
 だが、当然そんな要求を呑むわけもなく杖を向けたとき、シェフィールドの放った言葉のナイフが、どんな魔法よりも鋭くタバサの
心をえぐった。

「まあそういきり立たないで、北花壇騎士タバサ殿」

 自分と、自分にごく近しい人間しか知らないはずの肩書きを軽く口にしたシェフィールドは、愕然とするタバサにすべてを語った。
「まずは、あらためて名乗っておきましょうか。私はあなたの叔父、ガリア王ジョゼフさまにお仕えする者。ただし、あなたたち
北花壇騎士よりもさらに影の存在にして、ただ一人の直属の配下。あのお方のご意思をそのまま実行する手足が、この私」
「そんな、北花壇騎士のほかに、まだガリアにそんなものが……」
「うふふ、あなたが知らないのも無理はないわ。私は常に、ジョゼフさまのためにのみ働く。命令はジョゼフさまからのみ
受けるため、北花壇騎士団長のイザベラも私のことは知らない……あなたの武勇伝は、前々から拝見させてもらっていたわ。
エギンハイム村での戦い、それに少し前のリュティスでは、できの悪いお姫様がお世話になったわね」
 シェフィールドはその後も、ジョゼフとタバサの父シャルルの因縁や、タバサの母がタバサをかばって心を病んだことも知って
いると告げた。いずれもガリアの中枢に精通していなければ出てくるはずのない知識……タバサも、もはやシェフィールドの
言うことが、本当であると認めざるを得なくなっていった。
「どう? これで、私の言っていることが真実だと理解してくれた? 足りなければ、キメラドラゴン退治をはじめとする、あなたが
これまでの任務であげた代表的な戦果も挙げてみせましょうか」
「もう、いい……」
 抵抗する気力を失った声で、ようやくタバサは答えた。まさか、まさかと思ったが、虚無の担い手……すなわちルイズを狙って
いるのが、自分にとって父の仇であるガリア王ジョゼフに他ならなかったとはと、その事実は大きくタバサを打ちのめした。
 それでも、数々の苦境を乗り越えてきたタバサの屈強な精神の支柱は、彼女に失神することを許さずにシェフィールドに向かい合わせた。
「なぜ、虚無を狙うの?」
「あら? ずいぶんと反抗的な態度をとるのね。そんなこと、聞ける立場だと思ってるの?」
 内心を悟らせまいとする意識が、強気な対応をタバサにとらせた。もし、通常の任務であるならば、どんなに困難で危険で
あってもタバサは表情を変えない。だが、今まで決して他人を巻き込むまいと思ってきたガリアの暗部に、よりにもよって
友人であるルイズたちを巻き込んでしまったという罪悪感が、タバサをより残酷に傷つけていたのだ。
「ふふ、まあいいわ。吼えることもできないような愛玩犬は、ジョゼフさまには必要ないものね。あのお方は、世界に四匹しか
いない竜を戦わせてみたいと思ってる。でも、どうしていいかわからないからとりあえず捕まえることにしたわけ」
「なぜ、そんなことを」
「なぜって? 楽しそうだからに決まってるでしょう。あなただって、小さいころはお母上にイーヴァルディの勇者とか英雄譚を
聞かせてもらったりして、わくわくしなかった? そして、そんな戦いを小説や歌劇とかじゃなくて現実に見てみたいと思ったことはない?」
 タバサの返答は、無言の眼光だけだった。もはや、言葉に表すことができないほどの、憤怒と憎悪が青い瞳の中で荒れ狂っている。
「うふふ、そう怖い顔しないで。もちろん、あなたの気持ちもジョゼフさまはちゃんと汲んでくださっているわ。いつも大変な仕事を
引き受けてもらって悪いと思っていらっしゃる」
 そらぞらしい台詞に、タバサはなんの感銘も受けはしなかった。ただ、シェフィールドがわざわざ自分に正体を明かしたのは、
第二の虚無の担い手の場所を聞き出すためだけではないことは読めていた。ジョゼフは、そんな甘い男ではない。
「わたしに、なにをしろと?」
「いい子ね。そしてとても聡明だわ。まさに、あの方のおっしゃるとおりね。今日はあなたに特別な任務を与えるために来て
あげたの。これに成功したら、大きな報酬があるわ。あなたの母親……毒をあおって心を病んだのよね。その、心を取り戻せる薬よ」

 そして与えられた任務は、虚無の担い手を手に入れるための企てに協力すること。まずは、第二の虚無の担い手の可能性の
強いティファニアの情報を居場所も含めて詳しく教えること、次に現在の虚無の担い手と行動を共にし、動向を逐一報告することだった。
 むろん、タバサに選択の余地はなかった。
 ウェストウッド村の場所を教え、シェフィールドがティファニアをさらったときから、タバサは引き返せない道に足を踏み入れた。
 ルイズもキュルケも、みなタバサには全幅の信頼を寄せていたので、疑われることは一切なかった。
 後ろめたさは、もちろんある。けれど、自分は最初から母の心を取り戻し、ジョゼフに復讐するために生きてきたのだ。そのために
積み上げてきたこれまでの努力を、ここで失うわけにはいかないと自分に言い聞かせてきた。
 だが、エレオノールが内通者がいるのではないかと疑ったときには、本気で怒ってくれている皆を見て、思わず逃げ出して一人で泣いた。
 それでも、母の心を取り戻すにはこれしかないと、必死で心を抑えてここまで来たのに……
 手のひらの中の赤と青の小瓶が、これが悪夢ではなく悪夢のような現実であることを主張してくる。シェフィールドが渡した
二つの小瓶は、睡眠薬と毒薬……やつらはタバサにそれをみなの食事に盛れと命じてきた。虚無を捕らえるのと同時に、ほかの
邪魔者をこの場でまとめて始末するつもりなのだ。
 しかも、その手をくだすのを自分にやれとは! ジョゼフは、どこまで自分の運命をもてあそべば気がすむのか。立っていること
すらできない絶望の中で、タバサは常に手放さない杖さえ捨てて、雷におびえる子供のようにうずくまって涙を流した。
 才人やキュルケを自分の手で殺す。こんな自分を平然と受け入れて、ともに歩んでくれたかけがえのない親友を。
 ルイズだって同じだ。彼女から思い人と姉を奪うなんてできるわけがない。
 ……しかし、やらなければ人質同然にされている母の命が危ない。
 いったいどうすればいいの……親友か母か、片方を生かすためには片方を犠牲にしなければならない。けれど、どちらかを
選ぶなどそんな資格が自分にあるはずがない。
 タバサは憎しみを込めて、手のひらの中の毒薬を睨み付けた。こんなものと、叩きつけて砕けたらどんなに楽だろう。しかし
それは自分のために毒を飲んで心を病んだ母親の命を砕くのに等しい。かといって……何度も、何十回もタバサは自らの中で
自問自答を繰り返した。
 しかし、自分を納得させられる答えを出すには、あまりにもタバサが背負わされた選択は大きくて重すぎた。押しつぶされそうな
重圧の中で苦しむタバサの目に、もう一度二つの小瓶が映りこむ……

 その瞬間、タバサは考えるのをやめた。

「……」
 涙を拭いて立ち上がったとき、もうそこにいたのはタバサではなかった。
 美しく澄んでいた青い瞳は黒く濁り、唇にも潤いが消えて生気がない。どちらを選ぶこともできず、誰を切る決断もできなかった
タバサは、自らの心を殺すことで、その重圧から逃れようとしたのだった。今のタバサには、記憶はあっても感情はない。悲しむ
ことも、いとおしむことも捨て去って、ただ与えられた使命を果たすだけの機械になりさがった。
 それは皮肉にも、これまでいくらそうなじられようとも、決してそれそのものにはなるまいと誓ってきた『人形』に、自らを貶めると
いう悲しすぎる選択だった。
 タバサの姿をした『人形』は、落とした杖を拾うと、毒薬の小瓶を懐にしまって踵を返した。
 ところが、キャンプへ戻ろうとしたタバサの前に、木の陰から立ちふさがるように人影が現れた。
「こんな時間に、子供の一人歩きにしては長すぎるんじゃないかい?」
 現れた人影は、タバサに向かって歩み寄りながら言った。近づいてくるにつれて、タバサのものとは違う形のふちなし眼鏡と、
つやのある緑色の髪が月光に揺れて現れる。
「ミス・ロングビル……」
 現れた人物の名前を、タバサは感情の消えた声でつぶやいた。感情がこもっていないのではない。文字通り存在していないのだ。
その声をキュルケなど、普段の彼女をよく知る誰かが聞いたら、あまりの無機質さに戦慄さえ覚えるだろう。
 だが、ロングビルは臆した様子もなくタバサに近づいてくる。その、あまりにも傲然とした態度に、タバサのほうから口を開いた。
「なぜ、ここに?」
「闇の世界に精通してるのは、あんただけじゃないんだよ。わたしたちを監視してるような、なんともいやらしい気配……あんたも、
それを感じてここに来たんだろ。ここで、なにを見たんだい?」
「別に、なにも」
 それしか言葉を知らないというふうにタバサは答えた。しかし、ロングビルのタバサを見る目は、すでに学院の秘書としての
ものからはほど遠く、視線の先はタバサの杖と口元から動かない。
「ねえあなた、つまらない腹の探りあいはやめにしない? その懐のもの、それを誰に飲ませる気」
 刹那、タバサの杖が振られた。ロングビルに向かって無数の氷の矢が放たれる。だが、それらはすべてロングビルの後ろに
立っていた木に突き刺さり、本人はそのそばに平然と立っていた。
「ウェンディ・アイシクル。あなたぐらいの歳で、瞬時に詠唱を終えてこれを放てるとはたいしたものね」
 木に突き刺さった氷の矢を、指で軽く触れて検分しながらロングビルは言った。タバサが魔法を完成させて杖を振り下ろす瞬間、
彼女はすばやく身をひねってこれをかわしていたのだ。
 第一撃をなんなくかわされたことをタバサは別に驚くこともなく、第二撃のウェンディ・アイシクルを放った。ロングビルは、これも
飛びのいてかわす。
「ふん、本気で殺しにかかってきてるみたいだね。でも、この程度で私を殺せると思わないでほしいわね」
「わかってる。土くれのフーケの実力、甘く見てはいない」
 心を失っても、タバサの中に蓄積された戦いの知識と経験は生きていた。かつて、卓越した錬金の魔法や巨大ゴーレムを
使ってトリステインを震撼させた盗賊・土くれのフーケ。ただし、その悪名が単に魔法の強力さだけに支えられていたわけでは
ないことを、タバサは洞察している。警護の強力な衛士を突破し、多くの追っ手の追撃をかわすのには魔法だけは到底足りず、
幅広い知識と、豊富な経験に裏付けられたフーケ自身の人間の強さが必要であったはずだ。
 また、ロングビルもタバサを侮ってはいない。連発されるウェンディ・アイシクルをかわしつつも、少しでも隙を見せたら即座に
蜂の巣にされることは承知している。
「これが噂にだけは聞いたことがある、ガリア北花壇騎士の力かい。ここまでの使い手は裏社会でも早々みつかりゃしないよ。
あんたの素質もあるだろうけど、相当な修羅場をくぐってきたようだね。違うかい?」
「あなたに答える義務はない」
「はっ、まあそりゃそうだね。けど、あんたの腕がなにより雄弁に語ってくれるよ。その若さで苦労したんだね。同情はしないけどさ!」
 しゃべりながら、タバサの魔法の照準がしだいに正確になってきたことを悟ったロングビルは反撃に打って出た。袖口から
取り出したナイフをダーツのようにタバサに投げつける。魔法の矢に比べれば威力は格段に劣るものの、当たり所によっては
一本でも致命傷になりうる。
「無駄」
 しかしタバサはナイフの弾道を見切ると、余裕を持ってかわした。闇の中での戦いは、裏社会の人間にとって基本の基だ。
タバサの青い瞳は月明かりの中でも常人以上の動体視力を発揮して、迫る脅威を感知していた。
「青い鳥に、フクロウの目までついているとは知らなかったね。だが、これならどうだい!」
 余裕の態度を崩さず、ロングビルはさらに取り出したナイフを投げつける。今度は三本を同時に、それぞれ高さと左右の間隔を
ずらして、簡単には回避できないように弾道を計算してある。並の相手なら避けられないし、杖ではじこうとすれば隙ができる。
しかしそれは並の相手の場合で、タバサは三本のナイフを見切って最小の動作で回避した。
「無駄と……!」
 反撃に出ようとしたタバサは、視界のはしでわずかに感じた違和感に反射的に反応して身をよじった。半瞬後、黒い矢が
タバサの上着をかすめて、わずかな切り傷をつけて通り過ぎていく。
「ちっ、今のをかわすとは、勘のほうもなかなかいいようだね」
 舌打ちしたロングビルの手には、普通のナイフと並んで真っ黒に塗られたナイフが握られていた。木を隠すなら森の中と
いうふうに、闇の中にもっとも溶け込む色は黒だ。最初に投げた三本のナイフは囮で、本命の黒塗りしたナイフを時間差で
投げていた。けれど、ロングビルのつぶやいたとおり、タバサの強みは視力だけではなかったのだ。
「今くらいの小細工をする相手なら、これまでも何度も戦ってきた」
「そりゃ恐れ入ったね。私が現役なら、相棒に誘ってもいいくらいだ。ほめてやるよ」
「わたしの邪魔をするな」
 ロングビルの軽口になんの反応も示さず、冷たくタバサは言い放った。いつものタバサならば、たとえ任務のときでも絶対に
口にしないような威圧感を込めた、相手を力と恐怖で屈服させようとする声だ。が、ロングビルはそんな脅しに心動かされたりはしなかった。
「それは聞けない相談だね。あんた、ミス・ヴァリエール以外の人間を皆殺しにするつもりだろう。私も含めてね」
「そう、わたしの任務の邪魔をするものはすべて殺す」
 それもまた、”タバサ”ならば絶対に言うはずがない言葉だった。ロングビルは、タバサと同じ姿をした『人形』を敵意を込めて睨み返す。
「あの小娘の心は、どうやら完全に死んでしまったようだね。なら、もう容赦はしないよ!」
 覚悟を決めたロングビルは、フーケだったころの冷酷な顔に戻って投げナイフを取り出す。しかし、タバサはそんなロングビルに
ひるむ様子もなく、冷徹に言い放った。
「無駄な抵抗はよしたほうがいい。所詮、魔法の使えないあなたでは勝ち目はない」
「ちっ!」
 やはりそこを突かれたかと、ロングビルの顔が曇った。そうだ、ロングビルはかつてはトリステインを震撼させたほどのメイジ
だったというのに、この戦いでは一度も魔法を使っていない。彼女の魔法の力は、以前彼女の心の闇を狙ったヤプールが
取り付かせたガディバに奪われて以来、回復していなかった。
 魔法が使える者と使えない者では、戦闘において大幅なアドバンテージの差がある。メイジの側の実力が低いか、使えない
側にガンダールヴ並の力があれば話は別であろうが、タバサは一級のメイジであり、正面から戦えばロングビルにまず勝ち目はない。
それでも、ロングビルはあきらめるわけにはいかなかった。
「だが、ここで殺されるわけにはいかないんだ。私の肩にはティファニアやウェストウッドの子供たちの未来がかかってるんだよ!」
 そのとき、タバサの眉がわずかに震えた。『エア・ニードル』が放たれて、数本の木に貫通した風穴が開けられる。
 むろん、ロングビルも唯一の武器である投げナイフで対抗する。が、一度タネが割れてしまえば奇策は二度と通用しなかった。
通常のナイフはもちろん、黒塗りのナイフもどんなに変化をつけて投げようとすべて回避されてしまう。
 どちらも、相手の攻撃をかわすだけのすばやさを持っているがゆえに、戦いは長引く様相を見せてきた。
「さすがだね。闇の中でこれだけ戦えるやつなんて、私も会ったことないよ」
「黙って、死ね」
「あいにくと、こちとら仕事は派手にやるのがモットーなんでね。あんたこそ、女の子はちょっとはしゃべらないと男も寄ってこないよ」
 夜目の利くタバサ相手に声を殺してもあまり意味はないので、ロングビルはつねにしゃべり続けた。そうしているうちにも、
ロングビルの放ったナイフとタバサの放った魔法が、地面や樹木に命中して乾いた音が立つ。ただ、タバサは最初から『氷嵐』
のような大きな魔法は使わずに、『ウェンディ・アイシクル』か、『エア・ニードル』のような威力の小さい魔法しか使っていない。
それは、威力の大きい魔法は詠唱に時間がかかり、その間無防備になるというのがひとつだが、もうひとつどうしても使えない
理由があった。
「じれてきてるようだね。まともにやりあったら、私はあんたの魔法で逃げ場もなくズタズタにされる。でも、そんなことをしたら
寝てる連中もさすがに気がつくからね」
 ロングビルにとって、ほぼ唯一といっていいアドバンテージがそれだった。強力な魔法を使えば轟音が鳴り、眠っている皆の
目を覚まさせてしまうことになる。そうでなくとも、木を切り倒したりしたりすれば大きな音が出るために、広域破壊の魔法は使えない。
「なら、なぜ仲間を呼ばない? おまえ一人で、わたしに勝てると思っているの」
「バカ言ってんじゃないよ。あいつらはエルフからテファを奪い返すための大事な戦力だ。あんたごときを相手に消耗させるわけ
にはいかないんだよ」
 森の中という地形もロングビルにとって数少ない救いとなっていた。開けた場所ならとてもかなわないだろうけど、入り組んだ
場所の戦いなら、遮蔽物の陰で休憩しながら戦える。しかしそれでも、ドットクラスの魔法ならば何十発も放てる精神力の容量を
持つタバサに対して、投げナイフの数が限られているロングビルのほうが不利なことに変わりはなかった。
「あと、七本か……さて、これであれを相手にどうしのぐか」
 木の陰に隠れて、息をつきながらロングビルは吐き捨てた。衣の中に隠せるほど小さく、数十本を用意してきたナイフも、タバサ
ほどの使い手を相手にしては消耗は早かった。対して、向こうは見たところたいした消耗はしておらず、精神力には余裕がありそうだ。
 そのとき、ロングビルの隠れていた木の中から、巨大な氷の槍が生えてきて彼女の肩をえぐった。
「あぐっ!? こ、これはジャベリン! いえ、違う!?」
 打ち抜かれた肩を押さえ、ロングビルは振り向いた先の木が樹氷のように変わっているのを見て愕然とした。しかも一本や二本
ではない。周辺の木がすべて凍結し、鋭い氷の刃を八方に生やしている。
「樹木の中の水を凍結させて吹きだささせることで、木そのものを凶器に変えたっていうの!? なんて子なのよ!」
 隠れている自分を追い出すためだけにそんなことをするとは! ロングビルはタバサの底知れない戦闘センスに恐怖すら感じた。
いや、これまでにも何度か彼女の戦いを目の当たりにし、相当な強さを持っていると思っていたが、これはそれらとは違う。
 恐らく、タバサは普通に戦うときでも相手や仲間に配慮して、無意識に手を緩めている部分があったのだろう。いくら外面を
冷たく固めようとも、内側に存在する年頃の女の子らしい暖かさが無益な血を流すことを抑えていた。その抑制されていた
戦士としての冷酷な強さが、優しさという制御を失ったときにここまでになるとは。
「見つけた」
「ちっ、目ざとい小娘だねえ」
「そろそろ観念する。利き腕の肩をつぶした。あなたはもう戦えない」
「それはどうかねえ。土くれのフーケさまの底力、まだ見くびってんじゃないか」
 強がってはみても、自分が戦闘を継続するうえで致命的な傷を受けたことをロングビルは理解していた。利き腕をやられては
もう満足にナイフを投げることはできない。そればかりか、腕を使えなくてはタバサの攻撃を避け続けるのももう無理だ。人間は
激しく動く際に腕でバランスをとる。走るときに腕を前後に振ったり、平均台を渡るときに腕を大きく広げるのがそれだ。
 タバサが放ったエア・ニードルを避けきれずに、ロングビルの脇腹に切り傷がつけられる。知り合いに対する躊躇や、獲物を
なぶるつもりなどはまったくない。一撃で息の根を止めるために迷わず心臓を狙ってきた。
 冗談じゃない! こいつは本物の化け物か! ロングビルはあらためて目の前にいるのが、あのタバサかと目を疑った。
 どこまでも冷酷で無機質。冷たさの中に穏やかさと気高さを併せ持つ『雪風』は消えうせて、すべての生物を零下の地獄に
封滅する『氷嵐』の化身がそこにいた。
「今度こそ、死ね」
 放たれたエア・ニードルが、ロングビルの左脇腹をかすめて地面に突き刺さる。なんとか直撃だけはかわしたものの、重い
痛みが受けた傷の深さを物語る。苦し紛れで投げた四本のナイフもすべてかわされた。
「無駄なあがきはやめたほうがいい。せめて、苦しまずに死なせてあげる」
「そうはいかないよ……あとちょっとのところで、テファが待ってるんだ。私が、助けにいってやらなきゃならないんだよ!」
 叫び返したロングビルの声に、タバサのほおがぴくりと触れた。
「むだなことを、お前はここで死ぬ……」
「それこそ冗談じゃないね。私はね、お前なんかとは背負ってるものの重さが違うんだ。母親のおっぱい恋しがって、仲間を
裏切るようなガキがナマ言うんじゃないよ!」
 その瞬間、タバサの目が見開かれて、口元が大きく歪んだ。
「あなたになにがわかる!」
 エア・ハンマーがロングビルの体を吹き飛ばした。背後の木に背中を打ち据えられて、背骨とあばらが悲鳴をあげる。しかし、
激痛の中で、ロングビルは今の瞬間タバサに現れた変化に気がついていた。
「ぐぅぅ……おやおや、本当のことを言われて怒ったのかい……?」
「だまれ……」
 とどめを刺そうと近づいてくるタバサを、ロングビルは挑戦的な目で見返した。その目の先で、タバサはそれまでの貼り付けた
ような無表情の仮面がはがれ、目じりににらみ殺されそうなほどの怒りが浮き出ている。だがその顔が、逆にロングビルに
わずかな希望を持たせていた。
「ふ……どうやら、さっきの一言があんたのトラウマをひっかいちまったみたいだねえ……けど、どうやらあんたの心は完全に
死んでしまったってわけじゃあなさそうだ」
 そうだ、人形は感情を持ったりしない、怒ったりしない。ならば、タバサにはまだ心が残っている。
 ロングビルは、学院長秘書としていろいろな生徒の心の機微を見てきた経験からタバサを見てみた。元々、子供というのは
感受性が強く、いろいろなものに影響されやすい。しかし、その感受性の強さゆえにいじめや虐待などの外部からのストレスにも
深刻な影響を受けやすく、自らを守るためにあえて外からの刺激を一切遮断してしまうことがある。魔法学院にも、そうして自分の
部屋に閉じこもって授業に出なくなった生徒がおり、話し相手になってやってくれと学院長に頼まれたときのことを思い出した。
「あんたも、まだそんな顔ができるだけの感情があったんだ? いやあ、理性が麻痺したことで感情の抑制もなくなったのね。
ふふふ……それが、あんたの本来の心の姿ってわけだ」
「うるさい!」
 小ばかにするように笑うロングビルに、タバサは再度エア・ハンマーを放った。しかし、冷静さを失った攻撃なら今のロングビルでも
かわすことはできる。そして、さらにロングビルは確信を深めた。
「どうやら、母親のことはあんたにとって相当なタブーだったようだね。失ったはずの心をここまで呼び覚ますとは。しかしまあ、
みっともなくとりみだしちゃって、よっぽど甘やかされて育ったんだね」
「だまれっ!」
「あらまあ、顔真っ赤にしちゃって。そんなにお母さんが恋しいの? かわいい我が子って抱きしめてほしいの?」
「だ、黙れと言っているのに!」
「図星指されたようだね。あっははは、これはけっさくだ! 闇社会に名高いガリア北花壇騎士が、母恋しさに戦ってたなんてね」
「貴様ぁ!」
 逆上して見境のない攻撃をかけてくるタバサから身を避けながらも、ロングビルはタバサへの呼びかけをやめなかった。
 『母親』がタバサにとってなによりも重要なキーワードであることを知ってから、執拗にタバサを言葉でなぶる。しかし、
ロングビルは決してやけになったわけでも、タバサへの憎しみで我を忘れてしまったわけでもない。むしろ、ロングビルの心は
先ほどよりもずっと冷めていて、タバサの『人形』を倒すことのできる唯一の『武器』を磨いていた。
「私はあんたの過去なんて詳しく知らないし、はなから興味もない。でも、そんなにまでなるってことはよほどのことがあった
ようだね。で、お母さまの心とやらを取り返すためにシェフィールドの手先にまで成り下がったわけだ」
「違う! わたしはあんな奴らに忠誠を誓ったことなんてない。本当は、私が殺されるはずだったのをお母さまが身代わりになって
くれたのよ。だから、わたしは命に代えてもお母さまを救い出すの」
「そりゃ健気でけっこう。でも、そのあげくがこのありさまとはね。あなたのお母さまも教育に失敗したね。いいや、もともとまともな
子育てができるような人間じゃなかったんだろ。身代わりに毒をあおったって、子供を守って戦う度胸もなかっただけなんじゃないか?」
「母を、お母さまを侮辱するなぁ!」
 怒りの臨界点を超えたタバサは、フライでロングビルに体当たりして押し倒すと、喉元にブレイドをかけた杖をあてがった。
「取り消せ! さもないと殺す」
「やなこったね。誰があんたらみたいなバカ親子のために頭を下げてやるもんか、あんたに比べたらウェストウッドの子供たちの
ほうがまだ立派さ。あの子たちはあんたよりずっと幼いのに、親兄弟をすべて奪われた。それでも明るく前を見て生きてるんだ。
それに引き換えそんだけの強さがあって、母親もまだ生きてるっていうのにあんたはなんだい!」
 ロングビルの怒声に、タバサは気おされたようにびくりとなった。
「う、うるさいっ! なにも知らないくせに、お母さまは毒をあおられてからすっかり変わってしまった。わたしを娘だともわからなく
なって、おもちゃの人形をわたしだと思い込んで、わたしには罵声を浴びせてものを投げてくるようになった。でも、そうまで
なってもお母さまはわたしの人形を心から愛して、誰にも渡すまいとしてくれる。そんなお母さまをどうして見捨てられるっていうの!」
「じゃあどうして母を苦しませるようなことをするんだい!」
 その瞬間、ロングビルの首を切り落とそうとしていたタバサの動きが止まった。怒りで震えていた顔が一瞬で蒼白となり、杖に
かかっていたブレイドも解除される。ロングビルは、その隙にタバサを押しのけて立ち上がるも、タバサはそれを静止しようとはしなかった。
 仮にこのとき、ロングビルが最後の投げナイフで刺すなりすれば、決着はついていただろう。だが、彼女は立ち上がる以上は
せずに、愕然としているタバサにもう一度正面から向かい合った。
「もしもあんたがこのまま私を殺して、命令どおりに皆を毒殺して虚無とやらを奪って、それで解毒薬を手に入れたとして、それで
あんたは目が覚めた母親のところに喜んで帰るのかい?」
「う、うっ」
「帰れはしないだろうさ。いくら取り繕ったって、あんたは仲間殺しの重さから逃げられるような人間じゃない。あんたの母親だって、
隠したとしても娘の様子がおかしいことくらいすぐに気づく。そうなったとき、娘が虐殺者に堕ちたことを知った母親が、死ぬよりも
苦しむってことがなんでわからないんだ!?」
「うっ、ぐぅぅ!」
 心の底からえぐるようなロングビルの言葉に、タバサは杖を放り出し、両手で頭を抱えて苦しみだした。今ならば、武器を
使わなくても素手でタバサを無力化するとができるだろう。だが、やはりロングビルは手を出さない。なぜなら、今がタバサに
成り代わっている人形を破壊できる唯一の機会だからだ。そのために必要なものは、暴力ではない。
 言葉、今のタバサに一番効き目がある武器は言葉なのだ。いつもならば、厚い理性の殻に守られて届かない呼びかけも、裸の
心がむきだしになっている今ならば、直接心に届く。強靭な精神力で押さえつけている戦いの恐怖心や、忘れようとしていた
罪悪感もまとめて表に出てきている今ならば、作り物ではない本物のタバサと向かい合うことができる。
「あんたは強がっちゃいるけど、ほんとは臆病で卑怯者さ。ほんとは誰かに助けてもらいたいくせに、関わり方がわからないから
もったいつけた理由で人を遠ざけようとする。そのくせ、心の中じゃ自分を特別扱いしてる。自分を悲劇のお姫様よばわりして、
なんて自分はかわいそうなんだって自分を甘やかしてる」
「違う、わたしはそんなことは」
「違わないさ、あんたくらいの年頃の娘はそんなものよ。自分を物語の世界のヒロインに重ねて、幻想に逃げようとする。誰でも
あることさ。あんたは強くなったつもりかもしれないけど、心の成長ってのは一足飛びにはいかないんだよ。でも、自分の弱さから
目をそらしても、本当に追い詰められたときには耐えられない。あんたは戦士としては比肩するものがいないほど強いけど、
心は他人に踏み入れられるのを恐れてるただの子供さ」
「違う……わたしは、わたしは」
「耳を閉じるな! あんたがどう否定しようと、あんたみたいなガキの性根くらいお見通しなんだよ。なんでだか、わかるかい?」
 ロングビルは、最後の質問の部分を声色を穏やかにして問いかけた。
 タバサは、その答えがわからずに沈黙で答える。すると、ロングビルはティファニアにするときのように優しくタバサに語りかけていった。
「それはね。あんたは子供で、私は大人だからさ。十年近い歳の差を甘く見るんじゃないよ。あんたがしてきたようなことは、私も
とっくにやってきた。だから、隠したって無駄なんだよ」
 タバサの肩に手を置き、ロングビルは微笑む。彼女は、タバサの瞳から少しずつ狂気の色が引いていくのが見えたような気がした。
「あんたが、死ぬほど苦しい思いをしてきたってのはわかるよ。私も元は貴族で、ある日突然なにもかも失った口だ。それで
貴族を憎んで、唯一残ったテファを守ろうとした……なんだ、私とあんたは似たもの同士だったんだねえ。だけど、その行き着く
先はなんの救いもない地獄だよ。あんたも、見たろう?」
 タバサは少しずつ冷めて、我を取り戻しながら記憶を蘇らせた。
 ティファニアのため、復讐のためと自らに言い訳しながら悪事を重ねていたかつてのロングビル。しかし、ねじまがっていく心と
蓄積されていく心の闇は、本物の悪魔にとってかっこうの餌食だった。ヤプールに利用され、侵略の道具とされ、すんでのところで
命まで失うところであった。
 あのときのロングビルと、今の自分のどこが違うとタバサは思った。自ら深い闇の中に入っていったあげく、その闇に
がんじがらめにされて、本当に失ってはいけないものを失おうとしている。
「わたしのやってきたことは……間違っていたというの?」
「ようやく、正気に戻ったみたいだね。そんなこと、誰にもわかりゃしないよ。どんな道を選んだって、自分の歩んだ道を振り返る
ことは必ずいつかくる。あんたは、あんたの大事なもののためにがむしゃらだっただけだろう。ただ、それでも超えちゃいけない
一線はある。どんな理由があろうとも、今あんたがやろうとしたことは許されることじゃあない」
 タバサは無言でうなづいた。正気を失っていたとはいえ、その間にやっていたことの記憶は残っている。過去のどんな任務でも
なかったほど、タバサの中には罪の意識があふれていた。
「でも、だったらわたしはどうすればよかったというの。お母さまもみんなも、どっちも選ぶことなんてできない。あなただったら
どうしたの? あなただって、わたしと同じだったんでしょう」
「私だったら、もしテファの命と仲間の命を天秤にかけなきゃいけなくなったら、テファをとるね。そして、すべて終わった後で
あの子の前から姿を消す。それは盗賊であの子たちを食わせてたときから決めてた。でも、あんたは違う。あんたは別の答えを
出さなきゃいけなかった」
「なぜ?」
 母を見捨てることが正しかったというのかと、タバサは低い身長からいっぱいにロングビルを見上げた。
「あんたの母親が、そう望むからさ」
「えっ……」
「あんたの母親は、自分の心を捨ててまであんたを救おうとしたんだろ。だったら、娘の手が自分のために血に染まるくらいなら
死んだほうがいいと思うさ。きっと、心を失ったときも自分のことなんか忘れて、あんたには自由に生きてほしいと思ったはずだよ」
 ロングビルの言葉に、タバサは母との最後の時間のときを思い出した。
 父が暗殺され、ジョゼフが自分も抹殺しようと呼び出してきた晩餐会。行けば必ず死が待っているそこにおもむく直前、母が言い残した言葉。
”シャルロット。明日を迎えることができたら……父さんと母さんのことは忘れなさい。決して、敵を討とうなどと考えてはいけませんよ”
 忘れるはずもないあの日の最後の言葉と、ロングビルの言葉が完全に重なる。
「どうして、私がそんなことがわかるんだって顔してるね。簡単さ……私も、母親だからだよ」
「え……」
「そりゃ、お腹を痛めて生んだことはないさ。でも、テファや村の子供たちはずっと小さいころから面倒みてきたんだ。姉さんって
呼ばれてるけど、実際のところは私にとってテファは娘に近い。もしもあの子が私のために罪を負おうとすることがあれば、私は
その前に自分の命を絶つ。だからこそ、わたしはあなたの前に立ちふさがったんだ」
 タバサの口からは、いつの間にか嗚咽が漏れていた。
 負けた、わたしはこの人に負けた。力なんかじゃない、誰かのために戦う人間として負けた。この人は、より未来を遠くまで
見える目で見て行動している。それに引き換え、自分は目的を重視するあまり、それがどんな結果を引き起こすのか考えてもみなかった。
 お母さま、ごめんなさい。キュルケ、みんな、ごめん。
 もう自分はここにはいられない。そう思ったとき、タバサは杖を拾い、森の奥へと駆け出していった。
「あっ、ま、待ちなっ……うっ!」
 とっさに追いかけようとしたロングビルだったが、タバサとの戦いで受けた傷がそれを許さなかった。タバサの小さい姿はすぐに
夜の闇にまぎれて見えなくなり、あたりには何事もなかったかのような静寂が戻る。
 呆然と見送ったロングビルは、やがて戦いの疲労から草の上に座り込んだ。
 あの子……いったいどうするつもりかしら。
 ロングビルは、去っていったタバサを思って息を吐いた。おそらく、タバサはもう二度と自分たちの前に姿を見せる気はないだろう。
ならば、自ら命を絶つか、自暴自棄になってジョゼフに戦いを挑むか……そのどちらも、彼女の母は絶対に望まないことだろうに。
 そのとき、ロングビルの後ろから足音がし、振り返るとそこには赤毛の少女が立っていた。
「お疲れ様です。ミス・ロングビル」
「ミス・ツェルプストーかい、見てたなら手伝ってくれたらよかったのに。いつからそこにいたんだい?」
「十分くらい前ですわ。見張りの交代の時間になってもタバサがいないので探しにきたら、あなたと戦ってるんですもの。
驚いたわ。でも、あの子の尋常じゃない様子と、必死に呼びかけるあなたを見てたら、横槍を入れる気にはならなかったので。
大丈夫ですの?」
「ふん、元土くれのフーケをなめないでよ。このくらい、なんてことないわ」
 ロングビルは、強がった様子で腕を振って見せた。
「無理なさらないほうがよくてよ。タバサを相手に、無事でいられるわけがありませんわ……でも、感謝します。タバサを、殺さないでいてくれて」
「ふん、あんな小娘どうなろうと知ったことじゃないさ。私はあくまでテファのために戦っただけ。あんなのでも、死んだらテファが
悲しむだろうからね」
 くだらなそうに吐き捨てるロングビルの横顔は、キュルケはどこか照れくさそうにしているように見えた。
「それにしても、やっぱりあの子ガリアからそんな命令を受けていたのね。絶対に、人に悩みを打ち明けたりしない子だから……
だけど、もうあなただけを苦しめたりしないからね」
 髪をかきあげて、空を見上げたキュルケが、ロングビルはまぶしく輝いたように思えた。
「行くのね」
「ええ、閉じたタバサの心を開くのは、あの子と同じ闇を歩いてきたあなたにしかできなかった。そして、傷ついたタバサのそばに
行ってはげましてあげるのは、親友であるわたしの役目……シルフィード、いるんでしょう! タバサのところに連れて行って」
 空の上から、きゅーいきゅーいと悲しげに鳴くシルフィードが下りてくると、キュルケはその背に飛び乗った。
 シルフィードは飛び上がり、双月の星空へと消えていく。

 そして、場所を遠く離れたガリア王都リュティス。グラン・トロワでも、すでにタバサの敗北は知られていた。
「我が姪は失敗したか。やつらにもなかなかできるやつがいるな」
「申し訳ありませんジョゼフさま。すべて、私の不手際です」
「なに、かまわぬ。おもしろいものも見れたし、よしとしようではないか」
 満足げに笑うジョゼフは、シェフィールドに扱わせていた遠見の鏡を切らせると、豪華な椅子にたくましい体を深く沈めた。
 シェフィールドはジョゼフの前にかしこまると、主に向かって進言する。
「それで、シャルロットさまのほうはいかが処理いたしましょう。約束どおり、オルレアン夫人を始末いたしましょうか?」
「まあ待てミューズよ。あせることはない。半死人を処理するのはいつでもできる。我が姪がこれからどう出るか知れぬが、
慌てて先の楽しみをつぶすことはない。それより、明日はいよいよ彼奴らもアーハンブラに着く、そのことのほうが今はなによりも
楽しみなのだ」
「はっ、ビダーシャル卿は虚無の力を恐れています。それがもう一人現れて、虚無を奪還せんとするなら、まず戦いになるかと」
「伝説の虚無対エルフの先住の力……想像しただけで震えが走る。それに、お前のことだ。まだなにかあるのだろう?」
 ジョゼフが下目使いで笑いかけると、シェフィールドはうやうやしく頭を垂れた。
 そして、シェフィールドが退室していくと、しばらくして部屋に別の客人が現れた。顔を白塗りにした小太りで黒のスーツを着た
その男は、ジョゼフの前にやってくると、芝居がかったお辞儀をした。しかし、顔をあげたときにはその姿は茶色い姿の宇宙人、
チャリジャのものへと変わっていた。
「久しぶりだな。どうだ、近頃の景気は?」
「王様のおかげで、こちらでの営業も順調です。この星では、私どもの世界にはいない怪獣が豊富に見つかりますもので、
大いに助かっております。わたくしの商品のほうも、お気にめしていただけていますか」
「ああ、どれも大いに役立て、楽しませてもらっている。だが、お前はそんなことを言いに来たわけではあるまい」
「ええまあ。こちらの世界もそろそろ雲行きが怪しくなってまいりましたので、そろそろ撤退を考えておりまして。でも、その前に
お得意様に閉店セールのご案内に来たしだいであります」


 続く

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