トリステイン魔法学院の秘宝である『破壊の杖』と『青い石』が、盗賊フーケに盗まれた。
そこでルイズ、キュルケ、タバサの三人が討伐隊に志願し、才人と案内役のミス・ロングビルを加えた
五名でフーケの潜伏先の森の小屋へ向かった。しかし小屋にフーケの姿はなく、『破壊の杖』だけが
発見された。そこに襲い掛かるフーケの土ゴーレム! 苦戦する才人を助けようと『破壊の杖』を
使おうとしたルイズだが、その正体はマジックアイテムではなく、才人の世界の武器、
スパイダーショットだった。何故か使い方を完璧に理解した才人がスパイダーでゴーレムを粉砕したのだが、
その時ロングビルがフーケの正体を露わにしてスパイダーを奪い取った。フーケの目的は、
スパイダーの使用方法を知ることだったのだ。才人は取り返そうとするのだが、
そこに突如地中より怪獣アントラーが出現。シルフィードで逃げようとするも磁力光線に捕まり、
全員が叩き落とされる。しかしその瞬間に才人がウルトラマンゼロに変身。ここに、
ウルトラマンゼロとアントラーの正面切っての決闘が始まろうとしていた。
そこでルイズ、キュルケ、タバサの三人が討伐隊に志願し、才人と案内役のミス・ロングビルを加えた
五名でフーケの潜伏先の森の小屋へ向かった。しかし小屋にフーケの姿はなく、『破壊の杖』だけが
発見された。そこに襲い掛かるフーケの土ゴーレム! 苦戦する才人を助けようと『破壊の杖』を
使おうとしたルイズだが、その正体はマジックアイテムではなく、才人の世界の武器、
スパイダーショットだった。何故か使い方を完璧に理解した才人がスパイダーでゴーレムを粉砕したのだが、
その時ロングビルがフーケの正体を露わにしてスパイダーを奪い取った。フーケの目的は、
スパイダーの使用方法を知ることだったのだ。才人は取り返そうとするのだが、
そこに突如地中より怪獣アントラーが出現。シルフィードで逃げようとするも磁力光線に捕まり、
全員が叩き落とされる。しかしその瞬間に才人がウルトラマンゼロに変身。ここに、
ウルトラマンゼロとアントラーの正面切っての決闘が始まろうとしていた。
「う……うぅん……」
地響きの震動で、地面に這いつくばって失神していたルイズが目を覚まして起き上がった。
怪獣の力ではたき落とされたので、誰もが『フライ』、『レビテーション』を使う暇すらなく落下したが、
幸い森の葉がクッションになったことで、重傷は負っていなかった。
「ど、どうなったのかしら……はッ!」
一瞬呆けていたが、木々の向こうを見上げて、にらみ合うゼロとアントラーの姿を目の当たりにしたことで状況を把握する。
「サイトとゼロが戦ってる……他のみんなは!?」
「ルイズぅ……うるさいわよ……」
辺りを見回すと、キュルケたちはそう離れていないところで起き上がった。フーケは未だ気を失ったままだが、
三人はルイズと同様に目立った怪我はない。
「きゅい……」
しかしアントラーの大顎を直接食らったシルフィードは別だった。翼がまずい方向に折れ曲がっており、
苦しそうにあえいでいる。
「タバサ! シルフィードは大丈夫なの!?」
キュルケが血相を抱えて尋ねると、容態を診たタバサが、青い顔で答える。
「ダメ……動かせない。無理に動かすと、危険……」
「そう……ごめんなさい、私たちのせいで……」
ルイズもキュルケも、自分たちを助けようとして重傷を負ったシルフィードに謝った。
しかしこれは大分まずい状況である。ゼロが相手しているとはいえ、巨大怪獣がすぐそこにいる
大変危険な場所にシルフィードを置いていないといけないのだ。『レビテーション』を使って
ゆっくり移動させようにも、すぐ近くで40メイル級の質量を持つ怪獣に暴れられていては、
それが起こす震動に邪魔され精密な魔法のコントロールが出来ない。
「ゼロが、あの怪獣をやっつけるのを待つしかないのね……」
ルイズがつぶやくと、皆が固唾を呑んでゼロに自分たちの命運を託した。
地響きの震動で、地面に這いつくばって失神していたルイズが目を覚まして起き上がった。
怪獣の力ではたき落とされたので、誰もが『フライ』、『レビテーション』を使う暇すらなく落下したが、
幸い森の葉がクッションになったことで、重傷は負っていなかった。
「ど、どうなったのかしら……はッ!」
一瞬呆けていたが、木々の向こうを見上げて、にらみ合うゼロとアントラーの姿を目の当たりにしたことで状況を把握する。
「サイトとゼロが戦ってる……他のみんなは!?」
「ルイズぅ……うるさいわよ……」
辺りを見回すと、キュルケたちはそう離れていないところで起き上がった。フーケは未だ気を失ったままだが、
三人はルイズと同様に目立った怪我はない。
「きゅい……」
しかしアントラーの大顎を直接食らったシルフィードは別だった。翼がまずい方向に折れ曲がっており、
苦しそうにあえいでいる。
「タバサ! シルフィードは大丈夫なの!?」
キュルケが血相を抱えて尋ねると、容態を診たタバサが、青い顔で答える。
「ダメ……動かせない。無理に動かすと、危険……」
「そう……ごめんなさい、私たちのせいで……」
ルイズもキュルケも、自分たちを助けようとして重傷を負ったシルフィードに謝った。
しかしこれは大分まずい状況である。ゼロが相手しているとはいえ、巨大怪獣がすぐそこにいる
大変危険な場所にシルフィードを置いていないといけないのだ。『レビテーション』を使って
ゆっくり移動させようにも、すぐ近くで40メイル級の質量を持つ怪獣に暴れられていては、
それが起こす震動に邪魔され精密な魔法のコントロールが出来ない。
「ゼロが、あの怪獣をやっつけるのを待つしかないのね……」
ルイズがつぶやくと、皆が固唾を呑んでゼロに自分たちの命運を託した。
「キャ――――――――オォォウ!」
「セリャアッ!」
ウルトラマンゼロは自分に向かって走ってくるアントラーへ、こちらからも肉薄していき、
がっぷりと取っ組み合った。
「デリャアッ!」
組み合ったまま相手のボディに拳を打ち込むのだが、アントラーの甲殻は怪獣の中でも非常に頑強な部類。
丸で通用せず、ゼロの拳の方が痛んでしまった。
『いっつつ……かてぇ身体しやがって!』
肉弾戦は分が悪いようなので、アントラーを押しのけて距離を作る。すると相手は後ろ足だけで器用に穴を掘り始め、
同時に息で砂塵を吹き上げてゼロの視界を遮った。
『うわッ! せこい手を使いやがるぜ!』
ゼロがひるんでいる間に、アントラーの全身が完全に土の中に隠れた。ゼロは敵がどこから現れても対応できるように、
全方位に注意を向ける。
「キャ――――――――オウ!」
しかしアントラーは、ゼロの背後から顔だけをわずかに出すと、彼が反応するよりも早く磁力光線を放出した。
『うおおおッ!? ひ、引きずられる……!』
磁力光線はゼロの身体すらも捕らえ、引き寄せる。地中から上がってきたアントラーは磁力光線を出し続け、
大顎をガチガチと鳴らす。
「キャ――――――――オォォウ!」
そしてゼロが大顎の間合いに入った瞬間に、顎を閉じて胴体を両断しようとする!
『おっとぉ!』
だがゼロも負けていなかった。背を向けたまま迫る大顎を両手でキャッチして食い止め、
アントラーから離れることに成功した。
「ゼリャアッ!」
すかさずゼロスラッガーを飛ばす。ふた振りの刃は、アントラーの顎を半ばから切り落とした。
「キャ――――――――オォォウ!」
一番の近接武器を失ったアントラーだが、まだ戦意は衰えていなかった。地面を踏み鳴らして、
再度ゼロへ突進してきたのだ。
一瞬かわそうかと考えたゼロだが、ふと背後を振り返って、すぐに受け止めるために身構える。
「ドリャアアアッ!」
「キャ――――――――オォォウ!」
アントラーの突進を真正面から食い止めるゼロ。相手のパワーはかなり強く、さしものゼロもわずかに押されるが、
渾身の力を発揮して踏みとどまる。
彼の後ろには、動けないシルフィードとそれを守るように囲んでいるルイズたちがいるのだ。
ここで止めなければ、彼女たちがアントラーに踏み潰されてしまう。
『ぐッ……ぐぅぅッ……!』
だがウルトラ戦士のエネルギーは消耗が激しいのだ。食い止めている最中に、ゼロのカラータイマーが
ピコンピコンと赤く点滅し始めてしまう。
「この音は……!」
「何だかウルトラマンゼロ、焦ってるみたいじゃない……?」
ルイズはカラータイマーの点滅の意味するところを先日教えてもらったので、 危機的状況であると
すぐに分かった。キュルケとタバサも、点滅の意味は知らないのだが、ゼロの様子の変化で
危ないということは何となく理解した。
『ちっくしょう! 早く決めねぇと!』
このままでは自分のみならずルイズたちの命も危ういと判断したゼロは、アントラーに両の掌底を入れて突き飛ばすと、
すかさずワイドゼロショットを叩き込んだ。
「シェアァァァッ!」
だが、何と、アントラーの甲殻はゼロの必殺光線まで弾いた!
『何だと!?』
アントラーはウルトラマンのスペシウム光線が直撃しても平然としていた実績がある。
その甲殻は、特殊な手段を用いない限り、よほどの破壊力を持った攻撃でないと破れないほど頑丈なのだ。
『ゼロ! あの円盤を落とした、ゼロツインシュートはどうだ!? あれだったら、アントラーを倒せるかも……』
ゼロの中の才人がこらえ切れなくなって口出ししてきたが、ゼロはそれを却下する。
『ダメだ! あんまり威力のある攻撃だと、すぐそこのルイズたちを巻き込んじまう!』
『そんなッ!』
ゼロはワイドゼロショット以上の威力の必殺技をいくつか持っている。だがこんなにルイズたちがアントラーに近かったら、
その余波が彼女たちに降りかかってしまいかねない。特にゼロツインシュートは、その威力の強さは反動で足場がへこむほど。
今使えば、確実にルイズたちが陥没に巻き込まれる。それは出来ないので、ゼロは攻めあぐねているのだ。
「キャ――――――――オォォウ!」
アントラーはゼロの苦悩に構わずじりじりと接近をして、彼にプレッシャーを与える。
ウルトラマンゼロを支える太陽エネルギーはハルケギニア上では急激に消耗する。太陽エネルギーが残り少なくなると、
カラータイマーが点滅を始める。そしてもしカラータイマーが消えてしまったら、ウルトラマンゼロは二度と再び
立ち上がる力を失ってしまうのである。ウルトラマンゼロ、頑張れ! 残された時間はもうわずかなのだ!
「セリャアッ!」
ウルトラマンゼロは自分に向かって走ってくるアントラーへ、こちらからも肉薄していき、
がっぷりと取っ組み合った。
「デリャアッ!」
組み合ったまま相手のボディに拳を打ち込むのだが、アントラーの甲殻は怪獣の中でも非常に頑強な部類。
丸で通用せず、ゼロの拳の方が痛んでしまった。
『いっつつ……かてぇ身体しやがって!』
肉弾戦は分が悪いようなので、アントラーを押しのけて距離を作る。すると相手は後ろ足だけで器用に穴を掘り始め、
同時に息で砂塵を吹き上げてゼロの視界を遮った。
『うわッ! せこい手を使いやがるぜ!』
ゼロがひるんでいる間に、アントラーの全身が完全に土の中に隠れた。ゼロは敵がどこから現れても対応できるように、
全方位に注意を向ける。
「キャ――――――――オウ!」
しかしアントラーは、ゼロの背後から顔だけをわずかに出すと、彼が反応するよりも早く磁力光線を放出した。
『うおおおッ!? ひ、引きずられる……!』
磁力光線はゼロの身体すらも捕らえ、引き寄せる。地中から上がってきたアントラーは磁力光線を出し続け、
大顎をガチガチと鳴らす。
「キャ――――――――オォォウ!」
そしてゼロが大顎の間合いに入った瞬間に、顎を閉じて胴体を両断しようとする!
『おっとぉ!』
だがゼロも負けていなかった。背を向けたまま迫る大顎を両手でキャッチして食い止め、
アントラーから離れることに成功した。
「ゼリャアッ!」
すかさずゼロスラッガーを飛ばす。ふた振りの刃は、アントラーの顎を半ばから切り落とした。
「キャ――――――――オォォウ!」
一番の近接武器を失ったアントラーだが、まだ戦意は衰えていなかった。地面を踏み鳴らして、
再度ゼロへ突進してきたのだ。
一瞬かわそうかと考えたゼロだが、ふと背後を振り返って、すぐに受け止めるために身構える。
「ドリャアアアッ!」
「キャ――――――――オォォウ!」
アントラーの突進を真正面から食い止めるゼロ。相手のパワーはかなり強く、さしものゼロもわずかに押されるが、
渾身の力を発揮して踏みとどまる。
彼の後ろには、動けないシルフィードとそれを守るように囲んでいるルイズたちがいるのだ。
ここで止めなければ、彼女たちがアントラーに踏み潰されてしまう。
『ぐッ……ぐぅぅッ……!』
だがウルトラ戦士のエネルギーは消耗が激しいのだ。食い止めている最中に、ゼロのカラータイマーが
ピコンピコンと赤く点滅し始めてしまう。
「この音は……!」
「何だかウルトラマンゼロ、焦ってるみたいじゃない……?」
ルイズはカラータイマーの点滅の意味するところを先日教えてもらったので、 危機的状況であると
すぐに分かった。キュルケとタバサも、点滅の意味は知らないのだが、ゼロの様子の変化で
危ないということは何となく理解した。
『ちっくしょう! 早く決めねぇと!』
このままでは自分のみならずルイズたちの命も危ういと判断したゼロは、アントラーに両の掌底を入れて突き飛ばすと、
すかさずワイドゼロショットを叩き込んだ。
「シェアァァァッ!」
だが、何と、アントラーの甲殻はゼロの必殺光線まで弾いた!
『何だと!?』
アントラーはウルトラマンのスペシウム光線が直撃しても平然としていた実績がある。
その甲殻は、特殊な手段を用いない限り、よほどの破壊力を持った攻撃でないと破れないほど頑丈なのだ。
『ゼロ! あの円盤を落とした、ゼロツインシュートはどうだ!? あれだったら、アントラーを倒せるかも……』
ゼロの中の才人がこらえ切れなくなって口出ししてきたが、ゼロはそれを却下する。
『ダメだ! あんまり威力のある攻撃だと、すぐそこのルイズたちを巻き込んじまう!』
『そんなッ!』
ゼロはワイドゼロショット以上の威力の必殺技をいくつか持っている。だがこんなにルイズたちがアントラーに近かったら、
その余波が彼女たちに降りかかってしまいかねない。特にゼロツインシュートは、その威力の強さは反動で足場がへこむほど。
今使えば、確実にルイズたちが陥没に巻き込まれる。それは出来ないので、ゼロは攻めあぐねているのだ。
「キャ――――――――オォォウ!」
アントラーはゼロの苦悩に構わずじりじりと接近をして、彼にプレッシャーを与える。
ウルトラマンゼロを支える太陽エネルギーはハルケギニア上では急激に消耗する。太陽エネルギーが残り少なくなると、
カラータイマーが点滅を始める。そしてもしカラータイマーが消えてしまったら、ウルトラマンゼロは二度と再び
立ち上がる力を失ってしまうのである。ウルトラマンゼロ、頑張れ! 残された時間はもうわずかなのだ!
「こ、このままじゃゼロが危ないわ!」
アントラーが光線を弾いたことで、ルイズも本格的に焦り出した。自分たちの配慮のためにゼロが本気で戦えないことは、
薄々理解している。その状況を打破するためにも何らかの助けを果たしたいのだが、40メイル級の生物の戦いで、
2メイルも身長がない自分に何が出来るというのか。
「何か、何か手はないの……?」
必死に考えを巡らせていると、フーケが盗み出したものの内、『青い石』がまだ見つかっていないことがふと頭に浮かんだ。
「そういえば……」
小屋の中にはなかったという。ならば、今フーケが持っているのではないか? そう考えて気絶中のフーケの懐を探ると、
果たして手の平で包み込める程度の大きさの青い結晶体が出てきた。これが秘宝『青い石』に違いない。
「あった……!」
「ちょっとルイズ! 何してるのよ! それが今の状況で役に立つ訳?」
そこにキュルケが咎めるように指摘してきた。確かに彼女の言う通り、『青い石』はどんな宝石にも負けないほど
美しい輝きを持っているが、攻撃に使えるようには全く見えない。
「けど、秘宝になるくらいなんだから、何かすごい力を秘めてるかも……」
何でもいいからゼロを助ける力になりたいと願っているルイズが、『青い石』を強く握り締める。
そうすると、突然ルイズの脳裏に、「声」としか言いようがない何かが響いてきた。
「え!? 何!? 急に!?」
「? ルイズ、一体どうしたの?」
その「声」は他の者には一切聞こえておらず、キュルケもタバサも怪訝な顔をしている。
だがルイズは彼女たちには構わず、「声」が訴えかけていることに耳を傾ける。言葉は全く分からず、
そもそもちゃんと意味のある言葉なのかも判別つかないが、不思議と自分に望まれていることは理解できる。
「杖を……出すの……?」
手が自然と杖に伸びていき、アントラーの方へと向けられる。そして口からは、短い呪文が紡ぎ出された。
「……『爆発』(エクスプロージョン)……」
アントラーが光線を弾いたことで、ルイズも本格的に焦り出した。自分たちの配慮のためにゼロが本気で戦えないことは、
薄々理解している。その状況を打破するためにも何らかの助けを果たしたいのだが、40メイル級の生物の戦いで、
2メイルも身長がない自分に何が出来るというのか。
「何か、何か手はないの……?」
必死に考えを巡らせていると、フーケが盗み出したものの内、『青い石』がまだ見つかっていないことがふと頭に浮かんだ。
「そういえば……」
小屋の中にはなかったという。ならば、今フーケが持っているのではないか? そう考えて気絶中のフーケの懐を探ると、
果たして手の平で包み込める程度の大きさの青い結晶体が出てきた。これが秘宝『青い石』に違いない。
「あった……!」
「ちょっとルイズ! 何してるのよ! それが今の状況で役に立つ訳?」
そこにキュルケが咎めるように指摘してきた。確かに彼女の言う通り、『青い石』はどんな宝石にも負けないほど
美しい輝きを持っているが、攻撃に使えるようには全く見えない。
「けど、秘宝になるくらいなんだから、何かすごい力を秘めてるかも……」
何でもいいからゼロを助ける力になりたいと願っているルイズが、『青い石』を強く握り締める。
そうすると、突然ルイズの脳裏に、「声」としか言いようがない何かが響いてきた。
「え!? 何!? 急に!?」
「? ルイズ、一体どうしたの?」
その「声」は他の者には一切聞こえておらず、キュルケもタバサも怪訝な顔をしている。
だがルイズは彼女たちには構わず、「声」が訴えかけていることに耳を傾ける。言葉は全く分からず、
そもそもちゃんと意味のある言葉なのかも判別つかないが、不思議と自分に望まれていることは理解できる。
「杖を……出すの……?」
手が自然と杖に伸びていき、アントラーの方へと向けられる。そして口からは、短い呪文が紡ぎ出された。
「……『爆発』(エクスプロージョン)……」
「キャ――――――――オウ!」
アントラーは大分近づいてきた。これ以上接近されたら、どの道ルイズたちの身が危うい。
『こうなったら、これで行くぜ!』
意を決したゼロが左手を胸の前に持っていくと、嵌まっているウルティメイトブレスレットが強く輝き、
同時に肉体が一瞬赤く光る。
しかしその輝きは、突然アントラーを包み込んだ大爆発の閃光で覆い隠された。
『えッ!?』
ギョッとして、光が収まるゼロ。その直後には、アントラーの全身が爆発によってひび割れ、ボロボロになっていた。
「キャ――――――――オォォウ……!」
一瞬で形勢が逆転したことに才人が興奮する。
『すげぇ! ゼロ、今何をしたんだ!?』
だが爆発は、ゼロの起こしたものではなかった。
『い、いや……俺はまだ何もしてなかったんだが……』
『え? それってどういうこと……』
『俺にも、何が何やらさっぱり……』
完全に想定外の事態に混乱しているが、この機を逃す手はない。エメリウムスラッシュを撃ち込み、
アントラーを完全に爆破した。もうこの攻撃も耐えられなくなっていた。
「……ジュワッ!」
腑に落ちない勝利だったが、もう残り時間もない。ゼロは深く考える間もなく飛び立って、
才人の姿に戻りルイズたちの下へ走っていった。
アントラーは大分近づいてきた。これ以上接近されたら、どの道ルイズたちの身が危うい。
『こうなったら、これで行くぜ!』
意を決したゼロが左手を胸の前に持っていくと、嵌まっているウルティメイトブレスレットが強く輝き、
同時に肉体が一瞬赤く光る。
しかしその輝きは、突然アントラーを包み込んだ大爆発の閃光で覆い隠された。
『えッ!?』
ギョッとして、光が収まるゼロ。その直後には、アントラーの全身が爆発によってひび割れ、ボロボロになっていた。
「キャ――――――――オォォウ……!」
一瞬で形勢が逆転したことに才人が興奮する。
『すげぇ! ゼロ、今何をしたんだ!?』
だが爆発は、ゼロの起こしたものではなかった。
『い、いや……俺はまだ何もしてなかったんだが……』
『え? それってどういうこと……』
『俺にも、何が何やらさっぱり……』
完全に想定外の事態に混乱しているが、この機を逃す手はない。エメリウムスラッシュを撃ち込み、
アントラーを完全に爆破した。もうこの攻撃も耐えられなくなっていた。
「……ジュワッ!」
腑に落ちない勝利だったが、もう残り時間もない。ゼロは深く考える間もなく飛び立って、
才人の姿に戻りルイズたちの下へ走っていった。
「おお、よくぞ戻ってきた! 怪獣が現れたのはこちらでも確認しておる。心配したが、無事で何よりじゃ」
アントラーが倒された後、ルイズたちはフーケをそのまま捕らえ、魔法学院へ帰っていた。
そして今、学院長室でオスマンに報告をした。
「ふむ……。まさか、ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな……。して、
『破壊の杖』と『青い石』は無事に取り戻せたのかの?」
「それが……『青い石』はここにあるんですが、『破壊の杖』は怪獣にバラバラにされてしまいまして……」
ルイズが差し出したのは、『青い石』のみ。スパイダーショットは見つけた時には、
アントラーに修復不可能なほどに壊されてしまっていた。
「そうか……。まぁ、仕方ないことじゃろうな。諸君が生還したのと、フーケを見事捕らえ、
更に言いつけ通り『青い石』を取り戻しただけでも奇跡的なのじゃ」
オスマンはいささか気落ちしたようだったが、咎めはしなかった。
「フーケは、城の衛士に引き渡した。君たちの働きは実に見事じゃ。故に『シュヴァリエ』の爵位申請を、
宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。といっても、ミス・タバサはすでに『シュヴァリエ』の
爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」
「ほんとうですか? 嬉しいわぁ! ウルトラマンゼロに危ないところを助けてもらっただけじゃなく、
そんなご褒美まで頂けるなんて!」
キュルケはアントラーに致命傷を与えた爆発を、ゼロが起こしたものだとすっかり思い込んでいた。
だがタバサの方は、無言でルイズをじっと見つめた。
そのルイズはタバサの視線に気づかず、オスマンに尋ねかける。
「……オールド・オスマン。サイトには、何もないんですか?」
「残念ながら、彼は貴族ではない」
「何もいらないですよ」
ルイズの気遣いに、才人は自分から遠慮した。
ここでオスマンは話を切り替える。
「さてと、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。『青い石』も戻ってきたし、予定どおり執り行う。
今日の主役は君たちじゃぞ」
「そうでしたわ! フーケの騒ぎで忘れておりました!」
キュルケははしゃぐが、タバサはその彼女に告げる。
「先に行ってて。シルフィードの具合、診てから行くから」
「あッ……そうだったわね」
大怪我をしたシルフィードのことを思い出したキュルケは、タバサに返す。
「待って。私も行くわ。シルフィードには、頑張ってくれたお礼を言わなくちゃいけないし」
「……いいの?」
「もちろんよ。元気いっぱいな男たちより、怪我人を優先するべきでしょ?」
才人はキュルケの友情に厚い面を垣間見て、少々意外に思った。
キュルケとタバサは退室していったが、才人と、そしてルイズはオスマンに控え目に視線を向けながら残った。
「二人はなにか、私に聞きたいことがおありのようじゃな」
オスマンが興味津々なコルベールを学院長権限で退出させると、ルイズから質問を切り出した。
「オールド・オスマン……『青い石』は、一体何なのでしょうか?」
「ふむ? 貴重なマジックアイテム……では、納得がいかんのかね?」
「とてもそれだけとは思えません。こんなことを言うと頭がおかしくなったと思われるかもしれませんが……
怪獣を襲った爆発は、私が起こしたものなんです!」
ルイズは、帰ってくるまでずっと胸に抱えていたことを吐き出した。
「『青い石』を持ってたら、自然と頭の中に聞いたこともない不思議な短い呪文が浮かんできて……
無我夢中で唱えたら、あの爆発が起きたんです。私の、今までの失敗魔法の威力の比ではありませんでした。
それだけのことが出来るマジックアイテムが存在するとは思えません」
「なるほど……サイト君の方は何かね?」
オスマンはまだルイズの問いかけには答えず、才人の質問を促した。すると才人は、まずはっきりと告げる。
「あの『破壊の杖』は、俺が元いた世界の武器です」
ルイズが声もなく驚愕し、オスマンの目が光った。
「ふむ。元いた世界とは?」
「俺は、こっちの世界の人間じゃない」
「本当かね?」
「本当です。俺はルイズの『召喚』で、こっちの世界に呼ばれたんです」
「私も保証します。サイトの話は真実です」
ルイズもそう言うと、オスマンはおもむろにうなずいた。
「なるほど。そうじゃったか……。では私からは、『破壊の杖』と『青い石』を入手した経緯を、
君たちへの回答としよう。二つの話は、つながっているのじゃ」
そのひと言で、才人もルイズのオスマンの話すことに集中し出した。
「今から三十年も昔の話じゃ。ある夜、森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。
突然のことになす術がなかった私を、『破壊の杖』の持ち主が救ってくれたのじゃ。
彼は『破壊の杖』でワイバーンを吹き飛ばすと、ばったりと倒れおった。深い怪我をしていたのじゃ」
「そ、その人はどんな格好をしてましたか?」
「見たこともない格好じゃった。ただ、オレンジ色が大部分を占めておったな」
その特徴と、スパイダーを持っていることから、才人はその人が科学特捜隊員だろうと推測した。
ただ、疑問が一つある。科学特捜隊が活躍していたのは三十年どころではないはるか昔のこと。
今の自分との年代が合わない。しかし、話をややこしくするのも気が引けるので、このことは黙っておくことにした。
「私はすぐに彼を学院に運び込もうとしたのだが、その時、空から隕石が降ってきた。その直後に、
あの虫のような怪物……怪獣が現れたのじゃよ」
オスマンの言葉に、ルイズが驚愕した。
「三十年前に、怪獣が出現してたんですか!?」
「うむ。夜だったため、そのことを知るのは私しかいなかったようだがね。怪獣は私たちに襲い掛かろうとし、
命の恩人は最期の力を振り絞って『破壊の杖』をもう一度使ったのだが、ワイバーンを粉砕したそれも
怪獣には通じなかった。そしてもう駄目かと思われた、その時……」
どうやってオスマンは助かったのだろうか。才人は、まさか、と思う。
そして推測は当たっていた。
「空から突然、光り輝く巨人が現れて私たちをかばうと、格闘の末に怪獣に光線を食らわせたのじゃ。
倒すには至らなかったが、怪獣はたまらず地中に逃げていった。巨人は追おうとしていたが、
胸の辺りで赤い光が点滅し出すと足を止め、私に『青い石』を授けたのじゃ。そしてこう語りかけてきた。
『残念ながら、アントラーを倒すことは出来なかった。しかしその石を持っていれば、
石がアントラーの再出現を防いでくれる。そしていずれ、何らかの形でアントラーを倒す力となるはずだ。
その時まで、大切に持っていてほしい』と。私は恩人の持っていた杖を形見として『破壊の杖』と名づけ、
『青い石』とともに宝物庫にしまいこんだのじゃ。これが話の顛末。だから私は、『青い石』だけは
取り返してほしいと頼んだのじゃよ」
「その巨人って、ウルトラマン……!?」
オスマンの話した特徴は、明らかにウルトラマンのそれだった。ルイズも才人も、ゼロすらも驚嘆する。
『俺の前に、この世界にやってきてたウルトラ戦士がいたのか……!』
「命の恩人は事切れる瞬間、巨人の姿をひと目見て「ウルトラマン」とつぶやいた。その時は何のことか分からなかったが、
ウルトラマンゼロが初めて姿を見せて、その名前を知った時に、ようやく理解したのじゃ。そして最後までわからんかった、
恩人と巨人がどこから来たのかも、今わかった」
語り終えたオスマンは、才人に視線を向ける。
「彼らは、サイト君、君の世界から来たのだね」
「……はい。そうだと思います」
才人が肯定すると、オスマンはその左手を取って、手の甲のルーンに目を落とした。
「もう一つ教えておこう。このルーンはガンダールヴの印じゃ」
「ガンダールヴって、あの伝説の使い魔!? 始祖ブリミルに仕えたという!」
ルイズは先ほどよりも強く驚いた。
「そうじゃ。ガンダールヴはありとあらゆる『武器』を使いこなしたそうじゃ。『破壊の杖』を使えたのも、
そのおかげじゃろう」
「じゃあ……そのガンダールヴの今の主人の私は、もしかして、伝説の虚無……? あの爆発は、虚無の魔法……?」
虚無の魔法とは、現在のハルケギニアのメイジが広く用いる系統魔法を築き上げた偉大なる始祖ブリミルが使っていたという、
この世の何よりも強力だという魔法。しかしその存在が確認されたことはなく、今では単なる伝説だと思われているのだが……。
ルイズは自分の正体を考えて震えるが、オスマンはそんな彼女に言い聞かせる。
「決めつけるのはまだ早いじゃろう。『青い石』は巨人、ウルトラマンのくれた神秘の石。
どのような効能が隠されているのかはさっぱりわからん。これだけの材料がそろって、
ミス・ヴァリエールがガンダールヴと虚無に無関係とも思えんが、だからといって早計は禁物じゃ。
虚無の実際を、今の人間は誰も知らんのだから」
「そ、そうですよね。このことは、一旦忘れることにします」
ルイズは落ち着きを取り戻すと、そう宣言した。
「その方がいいじゃろう。私からも余計な詮索はせんし、誰にもさせん。君たちは、壊されたとはいえ恩人の杖と、
ウルトラマンが授けた石を取り返してくれたのじゃからな。改めて礼を言おう」
聞きたいことを全て聞くと、オスマンは二人に再度感謝の言葉を述べた。
アントラーが倒された後、ルイズたちはフーケをそのまま捕らえ、魔法学院へ帰っていた。
そして今、学院長室でオスマンに報告をした。
「ふむ……。まさか、ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな……。して、
『破壊の杖』と『青い石』は無事に取り戻せたのかの?」
「それが……『青い石』はここにあるんですが、『破壊の杖』は怪獣にバラバラにされてしまいまして……」
ルイズが差し出したのは、『青い石』のみ。スパイダーショットは見つけた時には、
アントラーに修復不可能なほどに壊されてしまっていた。
「そうか……。まぁ、仕方ないことじゃろうな。諸君が生還したのと、フーケを見事捕らえ、
更に言いつけ通り『青い石』を取り戻しただけでも奇跡的なのじゃ」
オスマンはいささか気落ちしたようだったが、咎めはしなかった。
「フーケは、城の衛士に引き渡した。君たちの働きは実に見事じゃ。故に『シュヴァリエ』の爵位申請を、
宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。といっても、ミス・タバサはすでに『シュヴァリエ』の
爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」
「ほんとうですか? 嬉しいわぁ! ウルトラマンゼロに危ないところを助けてもらっただけじゃなく、
そんなご褒美まで頂けるなんて!」
キュルケはアントラーに致命傷を与えた爆発を、ゼロが起こしたものだとすっかり思い込んでいた。
だがタバサの方は、無言でルイズをじっと見つめた。
そのルイズはタバサの視線に気づかず、オスマンに尋ねかける。
「……オールド・オスマン。サイトには、何もないんですか?」
「残念ながら、彼は貴族ではない」
「何もいらないですよ」
ルイズの気遣いに、才人は自分から遠慮した。
ここでオスマンは話を切り替える。
「さてと、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。『青い石』も戻ってきたし、予定どおり執り行う。
今日の主役は君たちじゃぞ」
「そうでしたわ! フーケの騒ぎで忘れておりました!」
キュルケははしゃぐが、タバサはその彼女に告げる。
「先に行ってて。シルフィードの具合、診てから行くから」
「あッ……そうだったわね」
大怪我をしたシルフィードのことを思い出したキュルケは、タバサに返す。
「待って。私も行くわ。シルフィードには、頑張ってくれたお礼を言わなくちゃいけないし」
「……いいの?」
「もちろんよ。元気いっぱいな男たちより、怪我人を優先するべきでしょ?」
才人はキュルケの友情に厚い面を垣間見て、少々意外に思った。
キュルケとタバサは退室していったが、才人と、そしてルイズはオスマンに控え目に視線を向けながら残った。
「二人はなにか、私に聞きたいことがおありのようじゃな」
オスマンが興味津々なコルベールを学院長権限で退出させると、ルイズから質問を切り出した。
「オールド・オスマン……『青い石』は、一体何なのでしょうか?」
「ふむ? 貴重なマジックアイテム……では、納得がいかんのかね?」
「とてもそれだけとは思えません。こんなことを言うと頭がおかしくなったと思われるかもしれませんが……
怪獣を襲った爆発は、私が起こしたものなんです!」
ルイズは、帰ってくるまでずっと胸に抱えていたことを吐き出した。
「『青い石』を持ってたら、自然と頭の中に聞いたこともない不思議な短い呪文が浮かんできて……
無我夢中で唱えたら、あの爆発が起きたんです。私の、今までの失敗魔法の威力の比ではありませんでした。
それだけのことが出来るマジックアイテムが存在するとは思えません」
「なるほど……サイト君の方は何かね?」
オスマンはまだルイズの問いかけには答えず、才人の質問を促した。すると才人は、まずはっきりと告げる。
「あの『破壊の杖』は、俺が元いた世界の武器です」
ルイズが声もなく驚愕し、オスマンの目が光った。
「ふむ。元いた世界とは?」
「俺は、こっちの世界の人間じゃない」
「本当かね?」
「本当です。俺はルイズの『召喚』で、こっちの世界に呼ばれたんです」
「私も保証します。サイトの話は真実です」
ルイズもそう言うと、オスマンはおもむろにうなずいた。
「なるほど。そうじゃったか……。では私からは、『破壊の杖』と『青い石』を入手した経緯を、
君たちへの回答としよう。二つの話は、つながっているのじゃ」
そのひと言で、才人もルイズのオスマンの話すことに集中し出した。
「今から三十年も昔の話じゃ。ある夜、森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。
突然のことになす術がなかった私を、『破壊の杖』の持ち主が救ってくれたのじゃ。
彼は『破壊の杖』でワイバーンを吹き飛ばすと、ばったりと倒れおった。深い怪我をしていたのじゃ」
「そ、その人はどんな格好をしてましたか?」
「見たこともない格好じゃった。ただ、オレンジ色が大部分を占めておったな」
その特徴と、スパイダーを持っていることから、才人はその人が科学特捜隊員だろうと推測した。
ただ、疑問が一つある。科学特捜隊が活躍していたのは三十年どころではないはるか昔のこと。
今の自分との年代が合わない。しかし、話をややこしくするのも気が引けるので、このことは黙っておくことにした。
「私はすぐに彼を学院に運び込もうとしたのだが、その時、空から隕石が降ってきた。その直後に、
あの虫のような怪物……怪獣が現れたのじゃよ」
オスマンの言葉に、ルイズが驚愕した。
「三十年前に、怪獣が出現してたんですか!?」
「うむ。夜だったため、そのことを知るのは私しかいなかったようだがね。怪獣は私たちに襲い掛かろうとし、
命の恩人は最期の力を振り絞って『破壊の杖』をもう一度使ったのだが、ワイバーンを粉砕したそれも
怪獣には通じなかった。そしてもう駄目かと思われた、その時……」
どうやってオスマンは助かったのだろうか。才人は、まさか、と思う。
そして推測は当たっていた。
「空から突然、光り輝く巨人が現れて私たちをかばうと、格闘の末に怪獣に光線を食らわせたのじゃ。
倒すには至らなかったが、怪獣はたまらず地中に逃げていった。巨人は追おうとしていたが、
胸の辺りで赤い光が点滅し出すと足を止め、私に『青い石』を授けたのじゃ。そしてこう語りかけてきた。
『残念ながら、アントラーを倒すことは出来なかった。しかしその石を持っていれば、
石がアントラーの再出現を防いでくれる。そしていずれ、何らかの形でアントラーを倒す力となるはずだ。
その時まで、大切に持っていてほしい』と。私は恩人の持っていた杖を形見として『破壊の杖』と名づけ、
『青い石』とともに宝物庫にしまいこんだのじゃ。これが話の顛末。だから私は、『青い石』だけは
取り返してほしいと頼んだのじゃよ」
「その巨人って、ウルトラマン……!?」
オスマンの話した特徴は、明らかにウルトラマンのそれだった。ルイズも才人も、ゼロすらも驚嘆する。
『俺の前に、この世界にやってきてたウルトラ戦士がいたのか……!』
「命の恩人は事切れる瞬間、巨人の姿をひと目見て「ウルトラマン」とつぶやいた。その時は何のことか分からなかったが、
ウルトラマンゼロが初めて姿を見せて、その名前を知った時に、ようやく理解したのじゃ。そして最後までわからんかった、
恩人と巨人がどこから来たのかも、今わかった」
語り終えたオスマンは、才人に視線を向ける。
「彼らは、サイト君、君の世界から来たのだね」
「……はい。そうだと思います」
才人が肯定すると、オスマンはその左手を取って、手の甲のルーンに目を落とした。
「もう一つ教えておこう。このルーンはガンダールヴの印じゃ」
「ガンダールヴって、あの伝説の使い魔!? 始祖ブリミルに仕えたという!」
ルイズは先ほどよりも強く驚いた。
「そうじゃ。ガンダールヴはありとあらゆる『武器』を使いこなしたそうじゃ。『破壊の杖』を使えたのも、
そのおかげじゃろう」
「じゃあ……そのガンダールヴの今の主人の私は、もしかして、伝説の虚無……? あの爆発は、虚無の魔法……?」
虚無の魔法とは、現在のハルケギニアのメイジが広く用いる系統魔法を築き上げた偉大なる始祖ブリミルが使っていたという、
この世の何よりも強力だという魔法。しかしその存在が確認されたことはなく、今では単なる伝説だと思われているのだが……。
ルイズは自分の正体を考えて震えるが、オスマンはそんな彼女に言い聞かせる。
「決めつけるのはまだ早いじゃろう。『青い石』は巨人、ウルトラマンのくれた神秘の石。
どのような効能が隠されているのかはさっぱりわからん。これだけの材料がそろって、
ミス・ヴァリエールがガンダールヴと虚無に無関係とも思えんが、だからといって早計は禁物じゃ。
虚無の実際を、今の人間は誰も知らんのだから」
「そ、そうですよね。このことは、一旦忘れることにします」
ルイズは落ち着きを取り戻すと、そう宣言した。
「その方がいいじゃろう。私からも余計な詮索はせんし、誰にもさせん。君たちは、壊されたとはいえ恩人の杖と、
ウルトラマンが授けた石を取り返してくれたのじゃからな。改めて礼を言おう」
聞きたいことを全て聞くと、オスマンは二人に再度感謝の言葉を述べた。
そして、『フリッグの舞踏会』。
「いやー! 一時はどうなるかと思ったぜ! あの怪獣、このデルフリンガー様を吸い寄せるなんてふてえ野郎だ!
相棒もそう思うだろ?」
アルヴィーズの食堂のバルコニーで、枠に立て掛けられたデルフリンガーが騒いだ。
それに目をやった才人が苦笑する。
「無事で良かったよ、デルフ。スパイダーはバラバラになったから、お前も駄目かと思ったから」
「馬鹿にすんなよ、相棒! こちとらもうどれだけ生きてたのかも忘れるくらい生きてんだ!
あんな虫にバラされてたまるかってんだ!」
興奮したようにまくし立てるデルフリンガーの相手をして笑った才人は、ゼロに話しかける。
「なぁ、ゼロ。科特隊の隊員と、校長先生の話してたウルトラマン、アントラーも……どうやってこっちの世界に来たのかな?」
『分からねぇ。ウルトラ戦士はともかく、その時代の地球人が別の宇宙に移動するなんてな……。
だが、可能性がないって訳でもない。宇宙には時々、ウルトラゾーンっていう空間の歪みが観測されることがあるからな。
それに巻き込まれた奴が、結局帰ってこなかったって話も聞いたことがある。もしかしたらそいつらは、
別の宇宙に行ったのかもな』
「そっか。じゃあ、他にもこの世界に来た人間や生き物がいるのかもしれないな……」
才人には、ゼロのウルティメイトイージスという地球に帰還する手段がある。今はゼロと離れる訳にはいかないので、
彼と一緒にハルケギニアに留まらないといけないのだが。
しかし、今日オスマンの話してくれた科特隊員のような人間は違う。もし他に彼と同じ立場の人間がいたとして、
彼らは別世界に放り出されて、どんな気持ちになるのだろうか。
そんな物思いに耽っていると、ホールから様々な男たちのダンスの誘いを断ったルイズが近寄ってきた。
才人は彼女を一瞥すると、思い切り息を呑んだ。パーティドレスで身を飾ったルイズの艶姿は、
想像以上に眩しかったのだ。
「楽しんでるみたいね」
「別に……」
思わず目を逸らした才人は、ごまかしまぎれにルイズに問いかける。
「お前は、踊らないのか?」
すると、ルイズはすっと手を差し伸べてきた。
「はぁ?」
「踊ってあげても、よくってよ」
少し照れているルイズの台詞に、才人も照れくさくなった。
「踊ってください、じゃねえのか」
ついついそんなことを言うと、意外にもルイズが折れた。
「今日だけだからね」
ドレスの裾を恭しく両手で持ち上げると、膝を突いて才人に一礼した。
「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと。ジェントルマン」
そう言って顔を赤らめるルイズは激しく可愛くて、綺麗で、清楚であった。才人はふらふらとルイズの手を取ると、
二人並んでホールへと向かった。
「いやー! 一時はどうなるかと思ったぜ! あの怪獣、このデルフリンガー様を吸い寄せるなんてふてえ野郎だ!
相棒もそう思うだろ?」
アルヴィーズの食堂のバルコニーで、枠に立て掛けられたデルフリンガーが騒いだ。
それに目をやった才人が苦笑する。
「無事で良かったよ、デルフ。スパイダーはバラバラになったから、お前も駄目かと思ったから」
「馬鹿にすんなよ、相棒! こちとらもうどれだけ生きてたのかも忘れるくらい生きてんだ!
あんな虫にバラされてたまるかってんだ!」
興奮したようにまくし立てるデルフリンガーの相手をして笑った才人は、ゼロに話しかける。
「なぁ、ゼロ。科特隊の隊員と、校長先生の話してたウルトラマン、アントラーも……どうやってこっちの世界に来たのかな?」
『分からねぇ。ウルトラ戦士はともかく、その時代の地球人が別の宇宙に移動するなんてな……。
だが、可能性がないって訳でもない。宇宙には時々、ウルトラゾーンっていう空間の歪みが観測されることがあるからな。
それに巻き込まれた奴が、結局帰ってこなかったって話も聞いたことがある。もしかしたらそいつらは、
別の宇宙に行ったのかもな』
「そっか。じゃあ、他にもこの世界に来た人間や生き物がいるのかもしれないな……」
才人には、ゼロのウルティメイトイージスという地球に帰還する手段がある。今はゼロと離れる訳にはいかないので、
彼と一緒にハルケギニアに留まらないといけないのだが。
しかし、今日オスマンの話してくれた科特隊員のような人間は違う。もし他に彼と同じ立場の人間がいたとして、
彼らは別世界に放り出されて、どんな気持ちになるのだろうか。
そんな物思いに耽っていると、ホールから様々な男たちのダンスの誘いを断ったルイズが近寄ってきた。
才人は彼女を一瞥すると、思い切り息を呑んだ。パーティドレスで身を飾ったルイズの艶姿は、
想像以上に眩しかったのだ。
「楽しんでるみたいね」
「別に……」
思わず目を逸らした才人は、ごまかしまぎれにルイズに問いかける。
「お前は、踊らないのか?」
すると、ルイズはすっと手を差し伸べてきた。
「はぁ?」
「踊ってあげても、よくってよ」
少し照れているルイズの台詞に、才人も照れくさくなった。
「踊ってください、じゃねえのか」
ついついそんなことを言うと、意外にもルイズが折れた。
「今日だけだからね」
ドレスの裾を恭しく両手で持ち上げると、膝を突いて才人に一礼した。
「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと。ジェントルマン」
そう言って顔を赤らめるルイズは激しく可愛くて、綺麗で、清楚であった。才人はふらふらとルイズの手を取ると、
二人並んでホールへと向かった。
才人はルイズに合わせて、ぎこちなく踊る。ルイズはそれに文句をつけるでなく、澄ました顔でステップを踏んでいる。
その中で、ルイズが思い切ったように口を開く。
「その……ありがとう。フーケのゴーレムに潰されそうになったとき、助けてくれて」
「……何だかお礼言ってばっかだな、お前」
「し、仕方ないじゃないッ。事実なんだからッ」
苦笑した才人のひと言で、ルイズが照れ隠しに顔をそむけた。しかしすぐに向き直ると、こんなことを言う。
「それと……ゼロとも、踊りたいんだけど」
『え? 俺と? けど俺はこんな場に出る訳には……』
「ううん。そういうことじゃなくて……一つ、お願いがあって……」
ルイズはそっと、才人の中のゼロに頼み込む。
「……ということなんだけど、出来る?」
『なるほど。そういうことなら、やってやるぜ。ちょっと、外に出な……』
ゼロの指示で、才人とルイズは休憩を挟む振りをして、バルコニーへと出た。そしてデルフリンガー以外の
誰もこちらを見ていないのを確認すると、バルコニーの陰から青い光が焚かれた。
直後にはるか夜空へと昇っていく青い輝きを見送ったデルフリンガーが、おでれーた!
と小さく叫んだ。
「相棒! てーしたもんだ! 主人の相手をつとめる使い魔だけでも初めて見たのに、
こんな大スケールなダンスを踊る奴は世界でお前ただ一人だけだろうぜ!」
その中で、ルイズが思い切ったように口を開く。
「その……ありがとう。フーケのゴーレムに潰されそうになったとき、助けてくれて」
「……何だかお礼言ってばっかだな、お前」
「し、仕方ないじゃないッ。事実なんだからッ」
苦笑した才人のひと言で、ルイズが照れ隠しに顔をそむけた。しかしすぐに向き直ると、こんなことを言う。
「それと……ゼロとも、踊りたいんだけど」
『え? 俺と? けど俺はこんな場に出る訳には……』
「ううん。そういうことじゃなくて……一つ、お願いがあって……」
ルイズはそっと、才人の中のゼロに頼み込む。
「……ということなんだけど、出来る?」
『なるほど。そういうことなら、やってやるぜ。ちょっと、外に出な……』
ゼロの指示で、才人とルイズは休憩を挟む振りをして、バルコニーへと出た。そしてデルフリンガー以外の
誰もこちらを見ていないのを確認すると、バルコニーの陰から青い光が焚かれた。
直後にはるか夜空へと昇っていく青い輝きを見送ったデルフリンガーが、おでれーた!
と小さく叫んだ。
「相棒! てーしたもんだ! 主人の相手をつとめる使い魔だけでも初めて見たのに、
こんな大スケールなダンスを踊る奴は世界でお前ただ一人だけだろうぜ!」
「うわぁ! 私、飛んでるわ! それにこれが「ウチュウ」なのね!」
ルイズは今、ゼロの手の平の上にいた。そのゼロは、ハルケギニアの大気圏を飛び出し、
宇宙からルイズたちの星を見下ろしている。
先日ゼロから「宇宙」の概念を簡単に教えられたルイズだが、その宇宙に非常に興味を抱いた彼女は、
ビジョンではなく本物の中に飛び込んでみたいと願うようになったのだ。そこでゼロに頼んで、
こうして連れてきてもらったのである。
「これが、私たちの住んでいる「星」……蒼くて綺麗……ハルケギニア大陸が、あんなに小さい……」
ルイズは、初めて目にする自分の惑星の光景の美しさに、感無量になっていた。彼女だけでなく、
ゼロの中の才人も感動で胸がいっぱいになっている。
そこでふと、自分を取り囲むゼロの手の平の上のバリアーを見つめる。
「このバリアーは、絶対に必要なものなの?」
『ああ。前は言わなかったが、宇宙には空気がないし、有害な宇宙線というものも大量だ。
このバリアーなしには、一秒だって生きてられねぇぜ』
「そうなんだ……。でも、ゼロはその中でも平気なのね。才人の星の「地球」でも、宇宙に出ることが出来るんでしょ?」
感動を味わっていたルイズだが、ウルトラマンと地球と、自分たちの文明を比較して劣等感を覚えた。
「『世界』って、広いのね。今までは、砂漠のエルフ以外にはメイジに敵う存在なんていないと思ってたのに、
本当はたくさんいたなんて……。怪獣やウチュウジンにメイジやトリステインの軍隊が全然歯が立たないところを見て、
それがよく分かったわ……。私たちが、「あなたたち」と比べてどれだけちっぽけだったかが……」
『……ちっぽけだとか、俺はそうは思わないけどな』
ルイズの言葉を、才人が否定した。
「え?」
『ハルケギニアには、魔法っていうすごい力があるじゃないか。人が何の機械もなしに空飛んだり、
個人で石を金属に変えたり、そういうことは地球じゃ不可能だよ。文明は地球が進んでるかもしれないけど、
それは長い年月の積み重ねがあってのことだし。個人単位の能力だったら、ハルケギニアのメイジの方が
断然優れてるんじゃないか? だからちっぽけなんて、そんな卑下する必要はないよ』
『同感だ。どんな命にだって、それぞれに出来ることと大切な役割、そして何より、掛け替えのない価値があると俺は思ってる。
だからどの種族が一番優れてるとかなんてものは存在しない。何でも出来るように見えるウルトラ戦士だって不可能はあるし、
どうしようもない窮地に陥ったことが何度もある。かくいう俺もな』
ゼロはこれまでの苦闘の日々と、強大すぎる敵たちの姿を思い返した。ベリュドラ、ダークロプスゼロ、
アークベリアル、ビートスター、ハイパーゼットン、そして……。
『俺一人の力だけじゃ勝てなかった戦いがいくつもある。そんな時に支えてくれたのが、
仲間たち、たくさんの色んな命だ。今の俺があるのは、彼らのお陰。今日だって、ルイズ、
お前に助けられたしな』
「でもあれは、ほとんど偶然のようなもの……」
『いいや。きっとお前には、すごいことが出来る力が秘められてるはずなんだ。きっと、
それが目覚める機会がまだ来てないだけだぜ。他のハルケギニアの人間だって、
いつかは俺の助けになってくれるかもしれない』
「私たちが、ゼロの助けに……」
『だから胸を張って生きていけ! 侵略者どもはお前たちを見下してるが、お前たちにも、
輝ける命があるんだからな!』
才人とゼロに説得され、ルイズの胸中に貴族の、メイジの、ハルケギニアに住まう人間としての自信と誇りが蘇ってきた。
「そうよね! 卑屈になってないで、立派に生きてかないと! この星の美しさに恥じないように!」
どこまでも青く、輝かしい星をながめて、ルイズは堂々と宣言した。
ルイズは今、ゼロの手の平の上にいた。そのゼロは、ハルケギニアの大気圏を飛び出し、
宇宙からルイズたちの星を見下ろしている。
先日ゼロから「宇宙」の概念を簡単に教えられたルイズだが、その宇宙に非常に興味を抱いた彼女は、
ビジョンではなく本物の中に飛び込んでみたいと願うようになったのだ。そこでゼロに頼んで、
こうして連れてきてもらったのである。
「これが、私たちの住んでいる「星」……蒼くて綺麗……ハルケギニア大陸が、あんなに小さい……」
ルイズは、初めて目にする自分の惑星の光景の美しさに、感無量になっていた。彼女だけでなく、
ゼロの中の才人も感動で胸がいっぱいになっている。
そこでふと、自分を取り囲むゼロの手の平の上のバリアーを見つめる。
「このバリアーは、絶対に必要なものなの?」
『ああ。前は言わなかったが、宇宙には空気がないし、有害な宇宙線というものも大量だ。
このバリアーなしには、一秒だって生きてられねぇぜ』
「そうなんだ……。でも、ゼロはその中でも平気なのね。才人の星の「地球」でも、宇宙に出ることが出来るんでしょ?」
感動を味わっていたルイズだが、ウルトラマンと地球と、自分たちの文明を比較して劣等感を覚えた。
「『世界』って、広いのね。今までは、砂漠のエルフ以外にはメイジに敵う存在なんていないと思ってたのに、
本当はたくさんいたなんて……。怪獣やウチュウジンにメイジやトリステインの軍隊が全然歯が立たないところを見て、
それがよく分かったわ……。私たちが、「あなたたち」と比べてどれだけちっぽけだったかが……」
『……ちっぽけだとか、俺はそうは思わないけどな』
ルイズの言葉を、才人が否定した。
「え?」
『ハルケギニアには、魔法っていうすごい力があるじゃないか。人が何の機械もなしに空飛んだり、
個人で石を金属に変えたり、そういうことは地球じゃ不可能だよ。文明は地球が進んでるかもしれないけど、
それは長い年月の積み重ねがあってのことだし。個人単位の能力だったら、ハルケギニアのメイジの方が
断然優れてるんじゃないか? だからちっぽけなんて、そんな卑下する必要はないよ』
『同感だ。どんな命にだって、それぞれに出来ることと大切な役割、そして何より、掛け替えのない価値があると俺は思ってる。
だからどの種族が一番優れてるとかなんてものは存在しない。何でも出来るように見えるウルトラ戦士だって不可能はあるし、
どうしようもない窮地に陥ったことが何度もある。かくいう俺もな』
ゼロはこれまでの苦闘の日々と、強大すぎる敵たちの姿を思い返した。ベリュドラ、ダークロプスゼロ、
アークベリアル、ビートスター、ハイパーゼットン、そして……。
『俺一人の力だけじゃ勝てなかった戦いがいくつもある。そんな時に支えてくれたのが、
仲間たち、たくさんの色んな命だ。今の俺があるのは、彼らのお陰。今日だって、ルイズ、
お前に助けられたしな』
「でもあれは、ほとんど偶然のようなもの……」
『いいや。きっとお前には、すごいことが出来る力が秘められてるはずなんだ。きっと、
それが目覚める機会がまだ来てないだけだぜ。他のハルケギニアの人間だって、
いつかは俺の助けになってくれるかもしれない』
「私たちが、ゼロの助けに……」
『だから胸を張って生きていけ! 侵略者どもはお前たちを見下してるが、お前たちにも、
輝ける命があるんだからな!』
才人とゼロに説得され、ルイズの胸中に貴族の、メイジの、ハルケギニアに住まう人間としての自信と誇りが蘇ってきた。
「そうよね! 卑屈になってないで、立派に生きてかないと! この星の美しさに恥じないように!」
どこまでも青く、輝かしい星をながめて、ルイズは堂々と宣言した。