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  • ウルトラ5番目の使い魔、第三部-31

あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ウルトラ5番目の使い魔、第三部-31

最終更新:2015年08月24日 19:29

匿名ユーザー

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 第31話
 ひとりぼっちの世界女王

 吸血魔獣 キュラノス 登場!


「わたしにも、力が欲しい……」
 遠見の鏡から溢れ出す紅い光が頬を照らし出し、炎をまとってモルフォを切り倒していくミシェルを見て、ティファニアはぽつりとつぶやいた。
 今、世界は危機に瀕している。強大な闇の勢力が暴れまわり、毎日のようにどこかでなにかが破壊され、犠牲者の悲鳴がこだましては消える。
 しかし、今のわたしには何もできないと、ティファニアは心の片隅で悩み続けていた。
 それは自虐ではない。以前、自分たちは誰もが行くのは不可能と信じていたエルフの都へと到達し、エルフとのあいだに平和の架け橋の第一歩を築くことを成し遂げた。その達成感と誇りは、今でも忘れてはいない。
 だが、エルフたちとの信頼を築くために、始祖の祈祷書はアディールに残され、ティファニア自身も無理なエクスプロージョンの行使によって魔法の力を失った。
 もちろん、そのことに後悔はない。引き換えに成し遂げたことの大きさに比べれば、むしろ安すぎる取引だったと言ってもいいくらいだ。しかし……

”見ているだけしかできないのが、こんなにつらいとは思わなかった”

 戦いは続いている。アディールでの決戦で勝った後も、ヤプールは滅びたわけではないし、ガリア王ジョゼフをはじめとして平和を乱そうとしている勢力に対して、時に激しく、時に静かに戦いは繰り返された。
 魔法を使える者は魔法で、剣を振るえる者は剣で、知恵を働かせられる者は知恵で。
 でも……今のわたしにはそのどれもないと、ティファニアは悩んでいた。魔法は失われ、非力で、世間知らずな自分は、みんなの戦いを見ていることしかできない。わたしにも何か、みんなのために役立てる新しい力が欲しい。
 サイトさんとルイズさんが亡くなったときも、わたしは遠くで無事を祈っているしかできなかった。今もこうしてたやすくさらわれて、身動きを封じられてなにもできない。目の前で人の命が奪われようとしたときも、助けるつもりが結局その人に助けられてしまった。
 悔しいけど、今のわたしは足手まとい。わたしにはない力を、みんなは持っている。サイトさんやルイズさん、ギーシュさん、モンモランシーさん、ルクシャナさん、落ち込んでいたミシェルさんも、やっぱり強い人だった。
 わたしにも力が欲しい。戦う力でなくともいい、みんなを守れる力が……
 お母さん、お母さんならこんなとき、どうしますか? ティファニアは心の中で、幼い頃に生き別れた母に呼びかけた。たった一人でサハラからやってきて、一人で自分を育ててくれた強い母なら、いったいどうするだろうか。
 今のティファニアには考えることしかできない。しかしそうした葛藤の中で、力を得るために本当に必要なものがなにかということを、ティファニアは知らないうちに気づき始めていた。
 あまねく命を守る、優しさと強さを併せ持った者。その答えにティファニアがたどり着くのを待っているかのように、彼女の胸の中で輝石は青く静かに輝き続ける。

 だが、時間はティファニアを待ってはくれない。モルフォを撃破されたエルザは怒り狂い、人質の生命と引き換えにティファニアの仲間たちをこの村へと呼び寄せた。
 これから素敵なパーティがはじまるよ、と、笑いながら告げ、エルザは一行を自ら出迎えるべく踵を返す。ティファニアはその後姿を、じっと見つめていることしかできなかった。


「よく来たわね、トリステインの勇敢な騎士の皆さん。歓迎するわ、ようこそ、私の王国へ」
 サビエラ村の村長の家。その三階のベランダから身を乗り出して、エルザの声が見下ろす庭に響き渡った。
 聞くのは、ミシェルをはじめとする銃士隊と、ギーシュたち水精霊騎士隊他数名。彼女たちは、怒りを込めた眼差しでエルザのあいさつに答える。
「それがお前の城と玉座か、ずいぶんとしみったれた女王様だな、吸血鬼。ティファニアを返してもらおうか」
「あら? 恐怖に震えて来たかと思ったけど、さすがに度胸が据わってるのね。それともやせ我慢というやつかしら? まあ、三百体の屍人鬼に囲まれて死刑を待つともなると、馬鹿にでもならなきゃやってられないでしょうしねぇ」
 エルザのせせら笑いが、生暖かい風となって一行の肌をなめていった。
 そう、今このサビエラ村において、一行のいる村長宅の庭の周囲すべては元村人の屍人鬼で埋め尽くされていた。その数は実に三百体。エルザが食用に適さないと判断した男性や高齢の女性のすべてが吸血鬼エルザの操り人形である屍人鬼となり、手に手に武器を持って、一行を取り囲んでいたのだ。
 まさに、最初から四面楚歌の絶体絶命。エルザの言うとおり、普通の人間ならば発狂してもおかしくはない状況。しかもその化け物どもの大群を指揮しているのが、見た目五歳くらいの幼女だからというのがさらに異様さを増させている。吸血鬼の実物を見たことがないギーシュたち水精霊騎士隊の面々は、覚悟はしていたものの、改めて我が目を疑った。
「あ、あれが吸血鬼? アリスよりもずっと小さいじゃないか、う、嘘だろ」
 ギーシュやギムリ、頭脳派のレイナールにしても眼鏡の奥の目を白黒させていた。しかし、銃士隊にかばわれていたアリスは必死に訴えかけた。
「騙されないで! 村の人たちもみんな、あいつに騙されてたんだよ。あいつのせいで、おとうさんもおかあさんもみんな!」
「あらあらアリスおねえちゃん、何度もいっしょに遊んだのにつれないわね。本当なら、おねえちゃんを真っ先に食べてあげるつもりだったんだよ。そうだねぇ、森にイチゴ狩りに行こうなんて言ったら、おねえちゃんは喜ぶでしょう? おねえちゃんはイチゴを食べて幸せになる、私はイチゴを食べたおねえちゃんを食べて幸せになる。きっと楽しいよぉ?」
 無邪気な笑顔で残忍な想像を語るエルザに、アリスはひっと言って身を隠した。エルザはそんなアリスの様子を楽しげに見下ろしていて、ギーシュたちももはやエルザが見た目どおりの年齢の持ち主ではないことを認めざるを得なかった。
「吸血鬼の寿命は人間よりずっと長いって聞いたけど、どうやら本当のようだね。レディに年齢を聞くのは失礼ながら、伺ってもよろしいかな?」
「あらあ、勇気あるおにいちゃんね。けど、私はそんなに長生きしてきたほうじゃないよ。ざっと、おにいちゃんたちの倍くらいの齢かな? そこの、エルフのおねえちゃんとだいたい同じと思ってくれればいいよ」
 ギーシュたちは、エルザがルクシャナとほぼ同じ年齢だと告げられてさらに仰天した。エルフの寿命は人間の約二倍で、成長速度もそれに比例するから十八歳前後に見えるルクシャナの実年齢と、五歳ばかりの見た目のエルザの実年齢がほぼ同じということは、吸血鬼というのはどれだけ長命だというんだ? 驚く彼らは、銃士隊に忠告された、吸血鬼を見た目で判断するなということの本当の恐ろしさを理解した。
 そしてエルザは、そんなギーシュたちの間抜面を楽しそうに一瞥すると、幼女の容姿にはとても似つかわない尊大な身振りをともなってしゃべりだした。
「さて、前置きはこれぐらいにしておきましょう。とりあえずは、私の可愛いモルフォたちを倒したことはほめてあげる。けど、今度のしもべはどうかしら? 私の忠実な三百人の兵隊たち。素敵でしょう?」
「ふん、こんなでく人形どもを自慢したくてわざわざ連れてきたのか。悪趣味め」
 ミシェルはつまらなげに吐き捨てた。
 沼地でのモルフォとの戦いが終わった後、ほっとする暇もなく、一行は多数の屍人鬼に囲まれた。しかし、襲い掛かってくるものと思った屍人鬼たちは取り囲むだけで動かず、怪訝に思っていると、屍人鬼の口を通してエルザのメッセージが送られてきたのだった。
「ティファニアおねえちゃんのお友達の皆さん、見事な戦いぶりだったわ。あなたたちにはそこで死んでもらうつもりだったけど、特別に敬意を表して私のもとへ招待してあげる。来てくれるわよね? もし断るんだったら、ティファニアおねえちゃん以外の村の女の人たちを皆殺しにするから、そのつもりでね」
 選択の余地など最初からなかった。一行はやむを得ず、屍人鬼に案内される形でサビエラ村にたどり着き、エルザが指定した処刑場であるここまでやってきたのだった。
 三百の屍人鬼に対して、一行の戦力は剣士とメイジ合わせて二十人ばかり。まさに狼の群れに囲まれる羊たちも同然の一行に向かって、エルザは楽しそうに笑う。
「悪趣味かぁ、そうだねぇ、こんな奥地の田舎者ばっかりじゃあ見栄えもさえないよねえ。今度屍人鬼を増やすなら、もっとおしゃれできれいな町にしたいなあ。人間は見た目で人を判断するから、着飾ったきれいな屍人鬼をたくさん作れば、きっと王国だってあっという間にできちゃうよね」
「貴様、屍人鬼をひとりで無数に作り出せるとは聞いていたが、いったい何者だ? ただの吸血鬼ではあるまい」
 するとエルザは、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりにうれしそうに答えた。
「やっぱり気になる? 気になっちゃう? うふふ、いいよ、モルフォを倒したご褒美に、冥土の土産に教えてあげる。私たち吸血鬼はね、遠い遠い昔には今よりずっと強い力を持って、夜の世界に君臨していたわ。けど、大きな戦いに敗れた後、ほんのわずかに生き残った私たちの先祖は、人の世の影に隠れ潜むうちに能力のほとんどを失っていったの。でもね、何代かに一度は、先祖がえりって言うらしいけど、私のように吸血鬼本来の力を持って生まれてくる者がいるのよ」
 エルザが手を振ると、三百の屍人鬼がまるで呼応するかのようにうなり声をあげはじめた。おーおーおー、と、まるで女王をあがめる兵士のようだ。そしてエルザが手を下に向けるとうなり声はぴたりとやみ、エルザの得意げな声が再び流れた。
「どう? これが私たち美しき夜の種族、吸血鬼の本当の力よ。もっとも私も最初は、あなたたちを襲わせたアレキサンドルって男ひとりしか屍人鬼にできなかったんだけどね」
「ロマリアが、お前に力を貸しているというわけか」
「そういうこと。ロマリアのおにいちゃんが言うには、私の遺伝子の中にあるリミッターを外したとかなんとか? わかりやすく言えば、私の血の中に眠っていた本当の力を引き出してくれたのよ。実際、この力はすばらしいわ! 私のような、原初の吸血鬼はしもべを無制限に持つことができるの。そして、私の屍人鬼に襲われた人間もまた屍人鬼になるの。わかる? 今は村ひとつだけど、いずれハルケギニアすべてを私のしもべで埋め尽くすこともできるのよ!」
 エルザの宣言した吸血王国の建国の夢は、一行の魂を戦慄させた。屍人鬼にできる人間の数に、本当に制限がないのだとすれば、屍人鬼の数はねずみ算式に爆発的に増えていく。それこそ、わずかな期間に何万・何十万という軍勢を作り出すことも簡単であろう。
 ハルケギニアが吸血鬼と屍人鬼で埋め尽くされる。おとぎ話や黙示録どころではない恐怖が、今目の前にあった。
 しかし、その恐るべき狂気の計画がどうであろうと、皆の目的はそんなことではなかった。勝ち誇った笑いを続けるエルザに、モンモランシーが怒鳴った。
「あんたの妄想なんかどうでもいいわ! それよりテファは、テファは無事なんでしょうね!」
「あら? そういえばうっかり忘れてたわ。ええ、もちろん無事よ、会うくらい会わせてあげるわ」
 そう言うと、エルザはぱちりと指を鳴らした。すると、エルザの後ろの部屋の中から屍人鬼に後ろ手をとられて、ティファニアが連れ出されてきた。
「みんな!」
「テファ! 無事だったのね」
 ベランダから姿を見せたティファニアを見て、皆はほっとした様子を見せた。しかし、ティファニアの顔がさらわれたときとは明らかに違って衰弱しているのに気づくと、ギーシュが激しい怒気を交えて叫んだ。
「吸血鬼! 彼女になにをした!」
「うるさいわね、少しだけ血をいただいただけよ。心配しなくても、屍人鬼にするような真似はしてないわ……そうだ、がんばったアリスおねえちゃんにもご褒美をあげないとね」
 エルザが再度指を鳴らすと、村長の屋敷の一階の窓が開け放たれた。すると窓に、閉じ込められていたと見える村の若い娘たちが駆け寄ってきて、口々に叫んだ。
「アリスちゃん!」
「アリス! よかった、無事だったんだ」
「アレキサンドルの奴が追っかけていったから、もうだめかと思ってた」
「ごめんなさいアリス、吸血鬼の奴にだまされて、私たちがあなたをひどい目に会わせてしまって」
 村の娘たちは、少しやつれた様子はあるものの、皆元気そうだった。彼女たちにもすでに、アリスだけが逃げ出すことができたのは吸血鬼の差し金だったことは伝わっていたようで、皆アリスを心配していた様子が伝わってくる。
 だが、喜びはつかの間であった。エルザには、アリスたちも村娘たちも一人も生かしておくつもりはない。再会を許したのはほんのたわむれにすぎず、面倒そうな表情から一転して、エルザは牙をむき出した凶暴な素顔をあらわにして言い放った。

「さて、これでもう思い残すこともなくなったでしょう? そろそろ、まとめて死体になってもらおうかしら!」

 エルザの合図とともに、屍人鬼の群れがいっせいに動き出した。血走った目を見開き、吸血鬼同様の鋭い牙を振りかざして吼えるように叫んでくる。
「みんな!」
「円陣を組め、来るぞ!」
 ティファニアの悲鳴に続いて、ミシェルが指示を出したことで一行はさっと戦闘態勢をとった。銃士隊は当然、ギーシュたち水精霊騎士隊も訓練で体に叩き込んだとおりに動いて、互いに背中を預けあう形の円陣を組む。これならば死角はなくなり、少数でも戦うことが出来るが、相手のほうが圧倒的に有利であることには違いない。
 屍人鬼たちも攻撃態勢を整え、あとはエルザの命令ひとつで一斉に襲い掛かってくるだろう。しかしその前に、エルザに向かって疑問を呈した者がいた。それまでずっと黙って様子を見ていたルクシャナだ。彼女はきっとエルザを睨み付けると、どうせ冥土の土産なら、ついでにわたしの質問にも答えなさいとたんかを切って言った。
「吸血鬼が生き物を屍人鬼にする仕組みはすでに研究されて解明されてるわ。死体の水の流れを無理矢理動かして、あたかも生きてるように動かす、水の精霊の持つアンドバリの指輪と似たようなものね。けど、こいつらは違う! さっき連れてこられる最中に触って調べてみたけど、水の流れは人間そのものだったわ」
「へー? それってつまり、どういうこと?」
「つまりこの村人たちは、”生きたまま”屍人鬼にされて操られてるってことよ! 死体を操る吸血鬼の手管とはまったく違うわ。いったいどんなトリックを使ってるの!」
 するとエルザは、またも愉快そうに笑った。
「すごいね、さすがエルフの学者さんだ。確かに、こいつらは普通の屍人鬼とは違うわ。まあ、私もあまり難しいことはわからないんだけどね、教えてもらった話だと、私の体の中には人間を屍人鬼に変えるういるす? 要は毒みたいなものを造る内臓があって、血を吸うのと同時に牙からその毒を注入するの」
 牙を見せびらかすようにエルザが説明すると、ルクシャナは冷や汗をかきながらもなるほどとうなづいた。
「まるでヘビね。でもこれで納得がいったわ、魔力で操っているんじゃなくて毒を注入してるんだとすれば、屍人鬼に噛まれた人間までが屍人鬼になる説明がつく。わかったわ、これは言うなれば伝染病と同じもの。吸血病とでも名づけるべきかしら? あなたがその宿主だってことね!」
「あっはっはっは、そうなんだあ、さすが頭のいい人は違うね。わたしはロマリアのおにいちゃんから説明を聞いてもさっぱりだったんだけど、わかりやすい解説をどうもありがとう。伝染病とはひどい言い草だけども、この力は一匹しか屍人鬼を作れない魔力だのみの能力なんかとは比べ物にならないほどすごいよ。さっきも言ったけど、私がこの村にやってきて、自力で屍人鬼にできたのはあなたたちが倒したアレキサンドルって男ひとりだけなのよね。最初はアレキサンドルを使って、ひとりずつ獲物を狩っていこうと思ってたんだけど、この力に目覚めた今はこのとおりよ! 村ひとつなんてつまらないことは言わないわ。ハルケギニア、いえ全世界が私にひれ伏すことも今や夢じゃない!」
「狂ってる……子供の妄想ね」
「それはどうかしらぁ? 吸血鬼にとって唯一怖かった太陽も闇の中に消え去って、もう私に怖いものはないわ。吸血鬼がこそこそ隠れて人間を狙う時代は過ぎて、これからは吸血鬼が人間を家畜として飼う時代が来るのよ。人間よりすべてにおいて優れた力を持っていながら、ただ太陽を恐れて闇に隠れ潜まなくてはならなかった私たち吸血鬼の怒りと屈辱をすべての人間たちに思い知らせてやる。まずはお前たちからよ!」
 エルザが手を振り下ろすと同時に、屍人鬼たちが襲いかかってきた。逃げ場はない、一行はこれを全力を持って迎え撃った。


 まずは、とにかく接近を許してはダメだ。屍人鬼たちの突進を防ごうと、メイジたちがいっせいに魔法を放った。
『ウィンド・ブレイク!』
『ファイヤー・ボール』
 風の弾丸が飛び、炎の弾が宙を舞って襲い掛かる。狙いをつける必要さえない、周りは三百六十度すべてが敵なのだ。
 しかし、撃てば当たるほど多い敵は、数だけ多い雑魚の群れではなかった。風の弾丸で派手にぶっ飛ばされたはずの屍人鬼は何事もなかったように起き上がり、炎を浴びせられた者も火傷を無視して牙を振りかざしてくる。
「奴ら、痛みを感じてないのか! そういうとこは本物の屍人鬼と同じかよ」
 相手が蘇った死体ではなく、操られた生身の人間ならば、ダメージを与えてやれば止まるのではという淡い期待は裏切られた。屍人鬼化した村人たちは、少々の傷などは感じないとばかりに包囲を詰めてくる。ドット、ないしラインクラスの使い手しかいない少年たちの魔法では、直接攻撃で進撃を食い止めることはできない。ならばと、ミシェルは即座に作戦を変える指示を飛ばした。
「魔法を当てて倒そうとするな! 奴らの足元を打て」
 その指示に、水精霊騎士隊は俊敏に反応した。炎、風、水に土を操る魔法が村人の屍人鬼たちの足場を吹き飛ばし、転倒した屍人鬼にさらにつまづいて転倒する様が続出し、一時的であるが屍人鬼の突進は止まった。
 貴族にあるまじき姑息な戦い方だが、いまさら文句を言う奴はいない。これは最低限のルールのある戦争とすら違う、異種の生物同士による生存競争なのだ。殺すか殺されるか、あるのはそれだけだ。
 ただ、一時的に足を止めても、それは一分にも満たない時間稼ぎに過ぎない。この包囲陣の中にいる限りは、いずれ物量で圧殺されるのは火を見るより明らかだ。ミシェルは、なんとか包囲網を突破する隙がどこかにないかと必死に探した。
 だが、その考えはエルザも見抜いていた。三階のベランダから楽しそうに見下ろしながら、冷たくささやきかけてくる。
「ああ、おねえちゃんにおにいちゃんたち? 言い忘れてたけど、もしこの庭から出て行ったら、人質の女の人たちを殺すよ」
「なっ!」
 一行は揃って愕然とした。見ると、屍人鬼にされた村人たちが人質の娘たちの首に手をかけている様が見える。
 なんて悪知恵の働く奴だ! と、一行は憤慨した。屍人鬼と化した人間の力なら、人間の細い首くらい簡単にへし折られてしまう。これでは包囲網からの脱出は無理だ。
「そうそう、それでいいのよ。せっかくの楽しいパーティを、途中で出て行くなんて許さない」
「この、悪魔め!」
「あら、ひどいなあ。あなたたち人間だって、牛や豚を殺して食べるくせに、どうして人間を食べる吸血鬼だけが悪者にされなきゃいけないの? いっしょのことをしてるだけじゃない」
 ほおを歪めながらエルザの言った言葉に、水精霊騎士隊も銃士隊も返す言葉がなかった。生まれてこの方、肉を食べたことのない人間はいない。吸血鬼と人間は、ただ食べるものが違うだけなのだ。なら、吸血鬼が人間を食うこともまた正当であってしかるべきであろう。それが自然の摂理なのだとエルザは嘲り笑う。
 だが、皆が言葉に詰まる中で、ミシェルだけが毅然として言い返した。
「そうか、ならお前が人間を食らうのが正当ならば、いずれお前より強い奴が現れてお前を食い殺しても、お前はそれで本望だということだな?」
「なんですって?」
「強さなんて空しいものだ。どんなに上げても自分より強い奴はいる。どんなに勝ち続けても、いつかは負けるときが来る。お前はそうなったとき、強者に自分の命を差し出して笑ってられるのか?」
「ははっ、なにかと思えば負け犬の遠吠えね」
 その瞬間、ついに魔法の防衛網を破って屍人鬼たちが攻め込んできた。腕を振り上げ、牙をむき出しにして血を吸おうと飛び掛ってくる。
 ここからは肉弾戦しかない! 銃士隊は剣をかまえ、水精霊騎士隊も杖を魔法で剣に変えて迎え撃つ。
「でやぁぁぁっ!」
 ミシェルの剣が横なぎに屍人鬼の胴を打った。強烈な一撃を受けて、屍人鬼の体が揺らいでのけぞる。だが、今の一撃はミシェルにとって不満足なものだった。
「くそっ、切れない!」
 本来なら、今の攻撃で屍人鬼を真っ二つにするつもりだったのに、斬撃は打撃同然の威力しか持たなかった。アレキサンドルの屍人鬼は切れたのだが、その後にモルフォを全滅させたときの無茶な使い方が原因で剣に焼きが回って使い物にならなくなっていた。
 ほかの銃士隊員たちも似たようなものだ。トリステインを旅立ってこの方、まともに剣を手入れする機会がなく、それぞれの剣は切れ味が相当に鈍っていたのだ。これでは剣としてではなく鈍器としてしか使い物にならない。
 ならば魔法の剣を振るうギーシュたちはどうかといえばこちらも微妙だ。いくら訓練を受けているとはいえ、剣の腕が銃士隊に遠く及ばないことと、剣を振ることに必要な腕力がそれに追いついていない。これでは、山仕事や野良仕事で鍛えた村人の体には浅い傷しかつけることはできず、半端な傷では吸血ウィルスの作用ですぐに復活してしまう。今はなんとか持ちこたえられてはいるが、これではすぐに限界に達する。
「皆、こいつらの体をいくら切っても無駄だ。頭を狙え!」
 ミシェルはとっさに作戦を切り替えた。屍人鬼の体をいくら切っても倒れはしない、だが頭をつぶしてしまえば行動を封じることはできる。ミシェルはそれを示すために、目の前に来た屍人鬼の男の頭を叩き潰そうと剣を振り上げた。だが。
「待ってぇ! アリスのおとうさんを殺さないで!」
「なにっ!?」
 アリスの叫びでミシェルの剣筋がそれた。打撃は屍人鬼の肩に当たり、屍人鬼はその衝撃で後退した。しかしまだ生きているために、また何事もなかったかのように向かってくる。その様を見て、エルザは愉快そうに笑うのだった。
「あっはははっ! おねえちゃんって、さすが騎士だけあって頭がいいんだねえ。でも、そいつらが生きたまま私に操られてるってことは忘れてたかなあ。正義の味方きどりのおねえちゃんたちに、子供の見ている前で親を殺すことが、はたしてできるのかなぁ?」
「ぐっ、くぅぅぅっ!」
 歯軋りするしかなかった。騎士として、軍人として、必要とあらば人を殺すことに躊躇はないし、これまでにも敵は殺してきた。しかし、子供の前で親を殺すという真似は、ミシェルのトラウマと合致していて絶対にできなかった。エルザはそこまで知っていたわけではないのだが、偶然にももっとも弱いところを突くことになったのである。
 しかし逆に、親に子供を殺させようとしているのか。アリスの父の屍人鬼はまっすぐにアリスを目指している。そのあまりの非道なやり口に、たまらずティファニアは叫んだ。
「やめてエルザ! あなたも両親を目の前で殺されたんでしょう。なのになんでこんなことをするの!」
「あっはっはっ! わかってないなあおねえちゃんは。自分がやられて悔しかったからこそ、他人にやってやりたいと思うんじゃないの」
 エルザは残忍に笑い、ティファニアは悔しさのあまりに顔を伏せた。
 包囲網から抜け出すことはできず、かといって屍人鬼を倒すこともできない。打開策はことごとくエルザにつぶされて、もはや一行が全滅するのも時間の問題かと思われた。
 そう、時間の問題……少なくともエルザはそう思った。しかし、エルザはすぐに、この人間たちがそんなに物分りのいい連中ではないということを知ることになったのだ。
「水精霊騎士隊、全員気張れ! 女王陛下の御為に! それにこんなところでへばったら、サイトとルイズに笑われるぞ。ぼくらは最後まで、かっこよくありつづけようじゃないか!」
 ギーシュの激に少年たちは奮い立ち、銃士隊も子供なんかには負けていられないと力を振り絞る。その後ろからモンモランシーが治癒魔法をかけ、ルクシャナが精霊魔法で全周囲を援護する。それでなんとかギリギリの線で持ちこたえられていて、彼らのその予想外の粘りに、さしものエルザも感心したように言った。
「へーっ、思ったよりやるんだね。そういえばモルフォをやったときも、けっこうしぶとかったし……ねえ、青い髪のおねえちゃん? さっき私にさんざん聞いたんだから答えてよ。沼地でモルフォに襲われたとき、おねえちゃんの目は死んでるみたいに暗かった。なのに、今はまるで別人みたいに元気じゃない? いったい何があったの」
「わたしには、守らなければならないものがある。それを、思い出しただけだよ」
「ふーん、それって何なの?」
 エルザが顔をにやけさせながら尋ねると、ミシェルは屍人鬼の攻撃をさばきながら、一瞬だけ目を閉じた。そしてそっと振り返ると、自分のすぐ後ろでじっと怖さに耐えているアリスを見守ってから答えた。
「わたしが愛した人が守ろうとした、この世界の未来だ!」
「くふふふはははは! なぁんだ、おねえちゃんって未亡人だったの。よっぽど、そのオスとつがいになりたかったんだねぇ。でも大丈夫、世界はこの私がちゃーんといただいてあげるから、安心してね」
 この下種な物言いと冷酷さこそが、エルザが見た目どおりの精神の持ち主ではないことと、人間を徹底的に蔑視している証であった。しかしミシェルは怒るでもなく、むしろ哀れみを含んだ眼差しをエルザに向けるのだった。
「世界、か。吸血鬼よ、お前はこのハルケギニアに吸血王国を築くつもりだと言ったな。だがそれで、終わると思っているのか?」
「……なにが言いたいの?」
「世界は広い、ハルケギニアの東に広がるサハラ、そして東方、その先も果てしない。ハルケギニアなど、世界からしてみれば、猫の額のような狭い土地だ。お前はそんなちっぽけな世界の女王になれて、それで満足か?」
「フン、何を。ハルケギニアの外なんて知らないわ。私はハルケギニアだけでじゅうぶんよ」
「お前、何も知らないんだな。世界は広い、そこには人間どころかエルフすら及ばないほど強大な力を持ったものがいくらでもいる。お前はそんな奴らと、永遠に戦い続けることになってもいいというんだな?」
「うっ……」
 初めてエルザに動揺の色が見えた。エルザがいくら長い歳月を経た強力な吸血鬼といっても、その知識はハルケギニアの中だけにとどまっている。
「それに、ハルケギニアの中に置いても実力者はまだまだ数多い。なにより、お前も知っているだろう? たった一日でトリステインの都を壊滅させたヤプールという悪魔のことを。そしてお前に力を与えたというロマリアも、用がすめばお前を処分できるからこそ力を与えたとは思わないのか? お前はそんな人知を超えた悪魔たちと、死ぬまでひとりで戦っていけると思っているのか!」
「ぐっ、くぅぅぅっ! だっ、黙れぇ! 数は力、数こそが最強よ。千の屍人鬼で足りなければ万の屍人鬼を、それでも足りなければ十万、百万の軍勢を私は作り上げる。この圧倒的な力に勝てるものなんていないわ」
 エルザは怒鳴り返したが、その声は明らかに震えていた。気づかされたからだ。強大な力を手に入れて舞い上がっていたが、もし自分よりも強い敵が現れたときには、自分を助けてくれるものなどどこにもいないということに。
 挫折感と屈辱で、怒りにエルザは肩を震わせた。だがそこへ、ティファニアが弱弱しい声で語りかけてきた。
「エルザ、もうやめましょう。こんなことをしたって、あなたは幸せになんてなれない。今ならまだやりなおせるわ」
「ちぃっ、まだ減らず口を叩く余裕があったの。私の半分も生きていないくせに、生意気なのよ」
「聞いて、あなたは強いものが弱いものを支配するのが自然の摂理というけど、自然の動物たちだって助け合いながら生きてる。この世界には、翼人と人間が助け合って生きている村もあるわ。なにより、ハーフエルフであるわたしが、人間とエルフが共に生きれるという証よ。強さは、それだけがすべてじゃない」
「だから何? だから人間と吸血鬼も仲良くすべきだと言うの? あいにくだけど、人間は私にとって食べ物なの。人間だって肉を食べるでしょう? 吸血鬼には飢えて死ねと言うの?」
 いらだったエルザは、ティファニアの首に手をかけて締め上げようとしてきた。しかしティファニアは屈さずにエルザに呼びかけ続けた。
「それは、あなたの言うとおり……わたしも、牛や豚のお肉を食べる。生き物はみんなそう。でも、動物は自分が生きるためを超える獲物を狩ったりはしない。エルザ、あなたがやってることは楽しみのためだけに動物を狩る人間や、食べきれもしないごちそうをゴミにする人間と同じ」
「黙れ、黙りなさい……」
「エルザ、あなたは吸血鬼は生きるために人間を狩らなければいけないと言うけど、それはただの言い訳じゃないの? あなたは家族を亡くした恨みを晴らそうとしているうちに、血を吸う楽しみのほうに取り付かれてしまったんじゃないの? 人間を憎むうちに、人間と同じことをやっても許されると自分を甘やかしてきただけじゃないの? 人間の醜いところを真似るのが、あなたの言う高貴な種族の正体なの!?」
「だぁまぁれぇぇぇ!!」
 怒りのままに、エルザはティファニアを床に叩き付けた。頭と体を強く打ち、ティファニアの意識が一瞬遠くなる。
 だが、ティファニアは気合を振り絞って意識を保ち、エルザの顔を睨み上げた。その決して揺らぐことのない強い視線に睨まれて、エルザの心にこれ以上ない屈辱感が燃え上がった。
「いいわ、もういい。あなたたちと話していると頭がおかしくなりそう。もう遊びは終わりだよ。一思いにみんな切り刻んで、残りの村の女の人たちも全員食い尽くす。それで私はこの忌々しい村からおさらばしてあげるわ」
 ついに我慢の限界に来たエルザは、手加減抜きでの虐殺命令を下した。すると、三百体の屍人鬼が圧力を増して突撃してくる。剣で抑えようとすれば剣を噛み砕きかねない勢いで迫り、魔法もまるでものともしない。
 そしてエルザはティファニアの首を掴んで持ち上げると、ベランダのふちに頭を押し付けて言い放った。
「ほら見なさい。ここから、おねえちゃんのお友達が血の池に変わっていくのを見せてあげる。後悔しなさい、お前たちが余計なことをペラペラとしゃべらなければ、まだ痛くない死に方ができたのにね!」
「やめてエルザ……これ以上暴力に身を任せたら、本当に戻れなくなってしまうわ」
「この期に及んでまだ人の心配? なめるのもいい加減にしてよね。私がか弱そうな幼子に見えるからそんなこと言うんでしょ? もし私がオーク鬼みたいに醜かったら、すぐ殺そうとするわよねえ。そうでしょう!」
 エルザは苛立ちに任せてティファニアを責め立てる。しかしティファニアの瞳の光は少しもぶれてはいなかった。
「違うわ。あなたは、わたしと同じ……わたしもあなたも、家族を人間に奪われて、人間から忌み嫌われる種族の血を受けて生まれてきた子。なら、わたしにできたことがあなたにできないはずはないわ」
「くぅっ、混ざり物が偉そうに……」
「だからこそよ! 人間も翼人もエルフも、命の価値に差なんかない。遠くない未来に、種族に関わらずにみんなが手を取り合う世の中がきっと来る! 吸血鬼だけが、闇に隠れて生き続けられるわけはないわ」
「黙れぇぇ!」
 必死に説得を続けるティファニアの言葉も届かず、エルザはティファニアを平手打ちした。だがそれでもティファニアの眼光は緩まず、ついにエルザは終局を彼女に向けて宣告した。
「あっはっは! 見なさいよ。おねえちゃんのお友達が、とうとう屍人鬼たちに捕まっちゃったねぇ。さあ、一番に食い殺されるのは誰かなぁ? そうだ、お友達の首をもぎとっておねえちゃんの前に並べてあげるよ。そうしたらおねえちゃんもわかるはずよ、どんなに饒舌にしゃべろうとも、力がなければ何もできないんだってねぇ!」
 エルザの言うとおり、銃士隊、水精霊騎士隊もすでに屍人鬼の群れに圧倒されて捕らえられてしまっていた。剣を奪われ、魔法を封じられて、誰にももはやなす術はない。みんな必死にもがいているが、もう何秒も持たないだろう。
「アリス、アリス! くそっ、貴様らやめろぉーっ!」
「やめて! やめてぇーっ!」
 ミシェルの首を狙う屍人鬼に飛びついて、アリスの悲鳴がこだまする。そのアリスにも多数の屍人鬼の牙が迫ってきていて、アリスの小さい体など血を吸われるどころか食いちぎられてバラバラにされてしまう。
「アリス、アリスーっ!」
 戦いを見守るしかできない村の娘たちも、涙を流しながら絶叫するが、その声はかつての肉親や友人には届かない。
 もう誰にも戦う力は残っておらず、虐殺の宴は数秒後に迫る。
 そしてエルザは、ティファニアの目の前に気を失ったメイナを連れてきて、その首筋に牙をあてがった。
「エルザ、なにをするの!」
「くふふ、これは罰だよ、おねえちゃん? 少しもったいないけど、あなたの見てる前でメイナおねえちゃんを殺してあげる。そしてたっぷり後悔して泣き喚いて! 自分には何も守れなかったと、血の海の中でね!」
 エルザの牙がメイナの喉元に迫る……その光景を、ティファニアは手足の自由を奪われて、無力感という鉛の空気に包まれながら見ていた。


”みんな、みんな殺されてしまう。わたしのせいだ、わたしが、エルザを怒らせてしまったから”

”結局、わたしはエルザの言うとおり、なにも変えることができなかった。わたしの言葉はエルザの心に届かなかった”

”わたしのやったことは間違っていたの? 心だけでは、言葉だけでは誰も助けることはできないの?”

”力がすべて、エルザはそう言った。けど、それが間違いだということはわたしは知っている。なら、心だけでも、力だけでも駄目なら?”

”教えて、お母さん……力と心、力と……ふたつで駄目なら、もうひとつ……? それは何? 教えて、わたしはみんなを助けたい”

”わたしたちがこれまで積み上げてきたものを、無にしたくなんかない! そのためなら、わたしはなんだってやるわ。だって、なんの力もないわたしには、みんなが教えてくれた、最後まであきらめない、この……”

”勇気ならあるから!”


 そのとき、奇跡が起こった。
 すべてが黒と赤に染められようとしたその瞬間、突如白い光が空間を満たした。

「グワァァァッ! 眩しいっ、なっなにがぁ!?」

 光をまともに受けてしまったエルザは、光を嫌う吸血鬼の本性のままに目を焼かれて、メイナを離して苦しんだ。
 それだけではない、光はそのまばゆさのままに村を照らし出し、光を浴びた屍人鬼と化した村人たちもまた、主人と同様に次々に倒れていったのだ。
「こ、これはいったい、どういうことだい?」
「この光は、まるで太陽だ……はっ! アリス、無事か」
「う、うん、大丈夫……この光、すごくきれい……お月様みたい」
 ギーシュも、ミシェルも、アリスも、食い殺される寸前の出来事だっただけに、わけもわからずに目を白黒させるしかなかった。
 しかし、屍人鬼たちを倒し、皆を救ってくれたこの光、この光がとても善いものなのはわかる。太陽のように暖かくて、月のように優しくて……そして、彼らは、この光を自分たちが見たことがあることに気がついた。
「思い出したわ、あれもこんなふうに空が闇に閉ざされたとき……テファが、彼女が奇跡を呼んだ」
 モンモランシーがつぶやくと、ルクシャナも微笑みながらうなづいた。
「ええ、闇に苦しめられてた精霊たちが喜んでる。テファ、またやったのね」
 光は満ち溢れて、吸血鬼の巣食う闇の世界は切り裂かれた。皆の顔に笑顔と希望が蘇って輝く。

 そして、光の根源。それはティファニアの胸元から放たれていた。
「この、光……もしかして」
 いつの間にか腕を縛っていたロープも解かれ、ティファニアは服の中から光の根源を取り出した。
「サハラでもらった、エルフの輝石……」
 そう、あの輝石がまばゆく輝き、この奇跡の光を生んでいた。
 光は明るく強く、しかし少しも眩しくはない。そしてティファニアも思い出した。アディールでのあの奇跡のことを。

 だが、心正しき者に対しては優しい光も、邪悪な吸血鬼に対しては激しく熱かった。
「ぎゃあああっ! 熱いっ、痛いぃぃっ! お前なにをしたあ。やめろ、その光をやめろぉぉっ!」
 エルザは全身から青い炎を吹き出して、もだえ苦しんだ。吸血鬼は光を恐れる、しかし、こんな熱くて強い光はこれまで見たことはなかった。
「イダイ、ガラダガァァァ! ヤゲルゥゥゥ! アァァァァーッ!」
 青い炎に焼かれながら、エルザはベランダの柵を乗り越えて、真っ逆さまに転落していった。
「エルザ!」
 転落していったエルザを追って、ティファニアはベランダの柵に飛びついた。
 しかし、そこにエルザの姿はなかった。それどころか、噴煙のように黒い煙が吹き上がり、その中からコウモリが亜人化したかのような巨大な怪獣が姿を現したのだ。

「うわぁぁっ! 怪獣だぁ! きゅ、吸血コウモリの怪獣だ」
 現れた怪獣を見上げてギーシュが叫んだ。さらに、ミシェルも戦慄を隠せずにつぶやく。
「あれが、あの吸血鬼の正体か」
 そう、これこそ吸血魔獣キュラノス。エルザたち吸血一族の血の中に隠れて、数千年のあいだ眠り続けていた美しき夜の種族の守護神。それが、色濃く先祖の血を受け継いだエルザの肉体を経て、ついに蘇ったのだ。
 キュラノスに変身したエルザはティファニアを見下ろして、その牙だらけの口から聞き苦しい声を放ってきた。
「おねえちゃん、よくもやってくれたねえ。痛い、痛いよ。もう、ロマリアもなにもかもどうでもいい! この力で、ハルケギニアもなにもかも破壊しつくしてやる。まずは、お前からだぁぁっ!」
 怒りにまかせて、キュラノスの翼と一体化した腕がティファニアに迫る。だがティファニアは不思議と、とても落ち着いた心地で居た。
「エルザ、あなたはわたしが歩むかもしれなかった、もう一人のわたし。だからわたしは逃げない、最後まであなたと向き合ってあげる」
 強い決意と揺るがぬ意思を瞳に宿らせ、勇気を胸にしてティファニアはキュラノスを見上げる。そして、その手にはいつの間にか輝石に代わって、スティック状の光のアイテム、『コスモプラック』が握られていた。
「わたしは世界を、みんなを、そしてエルザも救いたい! だから力を貸して、コスモース!」
 コスモプラックを天に掲げ、ティファニアは叫ぶ。その瞬間、コスモプラックの先端が花のように開き、まばゆい光が溢れ出した。
 光はティファニアを包み込み、さらに天空から暗雲を切り裂いて流星のような光が落ちてくる。
 そして、ふたつの光が一つとなったとき、再び青き光の巨人が、このハルケギニアの地へと降り立ったのだ。


 続く


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