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  • ウルトラ5番目の使い魔、第三部-53

あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ウルトラ5番目の使い魔、第三部-53

最終更新:2017年02月01日 22:49

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  • ウルトラ5番目の使い魔


 第53話
 始祖という人

 未来怪獣アラドス 登場!


 長い、本当に長かった夜が明けようとしていた。

『メタリウム光線!』
『ガルネイトボンバー!』

 ウルトラマンAとウルトラマンダイナの必殺技が、ゼブブとビゾームに炸裂する。
 陽光取り戻したトリスタニアにあって、二大怪獣の最期が、そして破滅招来体の陰謀の終幕がやってきたのだ。
 まずはビゾームがガルネイトボンバーの灼熱の奔流に焼かれ、微塵の破片に爆裂しながら焼き尽くされた。
 そしてゼブブもメタリウム光線に貫かれ、断末魔の叫びをあげながら最期を迎えていた。
「ぐわあぁっ! ま、まさかぁっ。で、ですが覚えておきなさい。我らはただの使いに過ぎないということを。人間たちが愚かな行為を続ける限り、いずれ主がこの星をーっ!」
 捨て台詞を残し、ゼブブもまた大爆発を起こし、微塵の破片になってトリスタニアの地に舞い散った。
 破滅招来体の二大怪獣の最期。それと同時に、残っていたドビシやカイザードビシもすべて活動を停止した。
 構えを解くふたりのウルトラマン。爆発の轟音が収まると、辺りは静寂に包まれ、ふたりのカラータイマーの音だけが規則的に流れる。
 終わったのか……? 人々は、長く続いた悪夢のような戦いがこれでやっと終わったのかということがすぐには納得できず、押し黙った。しかし、ドビシの黒雲が取り払われて青さを取り戻した空からさんさんと降り注いでくる陽光に肌を温められ、穏やかな風がすっとほおをなでていったのを感じると、困惑は一転して歓喜の叫び声に変わった。
「やった、ついに、ついに、これで、これで」
「トリステインに、ハルケギニアに朝が戻ってきたんだ。ばんざーい!」
「これで戦争も終わる。生きて帰れるのか、夢のようだ」
 ドビシに空が覆われてから今日まで、何ヶ月もの間人々は二度と朝が来ない恐怖に耐えてきたが、それがついに終わりを告げたのだ。
 太陽は再び空に輝き、雲は白く空は青い。そんな当たり前のことがこんなにうれしいとは、多くの人々にとって想像したこともなかった。太陽とは、まさに自然が与えてくれる最高の恵みであり、光とは人間にとってなくてはならない支えだったのだ。
 失ってみて初めて人はそのものの価値を知ることが出来る。今度の戦いでは、多くの人がそれを実感したに違いない。太陽しかり、大切な人しかり、国や信仰しかり、なにげなくあるそんなものでも、まさに『タダより高いものはない』のだ。
 そして、これで俺たちの役割も終わったと、エースとダイナはうなづき合うと、共に青空を見上げて飛び立った。
「ショワッチ!」
「デュワッ!」
 自然の輝きを取り戻した空へ飛んでいく、銀色の巨人と赤い巨人。それが真に戦いの終幕を告げ、人々は太陽に向かって消えていく平和の使者を見送った。

 だが、戦いは終わっても、まだ戦争は閉幕ではない。後始末が残っている。むしろ、そちらのほうが難題かもしれない。
 ロマリア教皇が侵略者であり怪物だったという事実は、人々の拠り所であった信仰心を根底からひっくり返すものだった。ブリミル教はハルケギニアの人間の精神の根幹を成す土台であり、簡単に代替の効くものではない。想像してみるといい、あなたにとって長年尊敬してきた親や教師が本当は悪人だったとしたら、はたしてあなたは平静でいられるだろうか?
 ブリミル教は正しいのか? それとも悪魔の造形物なのか? その答えを教えてくれる人は、この世界にひとりしかいない。人々の眼差しは自然と、トリスタニアの城壁の上で立っているブリミルその人に向けられ、やがてブリミルのところにアンリエッタとウェールズが飛竜に運ばれて駆けつけ、その前にひざまづいた。
「始祖ブリミル、お目にかかることができ、心から光栄であります」
「いやいや、よしてくれ。僕はそんな、人に頭を下げられるような立派な人間じゃないよ。まあ、君たちの立場じゃ対面上仕方ないかな。なら、せめて顔くらいは上げてもらえるかい?」
「は、はい……」
 ブリミルの穏やかというか、暢気ささえ感じられる声に、アンリエッタとウェールズは緊張しつつも顔を上げてブリミルの姿を見た。
 そこにいたのは、どこにでもいるような普通の青年だった。教皇のような聖人のオーラなどは微塵も無く、美男子でもなければたくましくもない。衣服も何度も繕い直された跡が見えて、どちらかといえばみすぼらしいとさえ言えた。
 しかし、この平凡な青年こそがハルケギニアの基礎を築いた偉大な男なのだ。声も以前始祖の首飾りから聞こえてきたものとまったく同じ。とてもそうは見えなくても、先ほどの戦いで見せた、人知を超えた虚無の力がなによりの証拠。だが始祖ブリミルといえば六千年も昔の人物だ、それがどうして今の時代に降臨なされたのか、ウェールズが畏れながらそれを尋ねると、ブリミルは複雑な表情をしつつ答えた。
「うーん、説明は難しいけど……一言で言えば、僕は時を越えてやってきたんだ」
「時を、でありますか?」
「そう、僕は昨日まで、今から六千年前の世界を旅していたんだ。けど、未来で子孫たちが大変なことになってるってお告げを受けてね。神様の奇跡でこの時代にやってきたってわけさ」
 これはブリミルがとっさに思いついた方便であった。聡明な彼は、本当のことを話すのはなにかと面倒だと判断し、奇跡という名目で、そのあたりのお茶を濁したのだった。要は、大切なところが伝わればいい。
「すると、あなたは我々の知っている始祖ブリミルとは……」
「察しが早くて助かるね。正確に言えば、僕は君たちが信仰してる始祖ブリミルであって、そうではない。君たちの知っている始祖ブリミルというのは、なにもかもを終えて亡くなった後のものだろう? 僕はまだ、このとおりの若造さ。君たちが子孫なのはなんとなくわかるけど、僕自身はまだ子供のひとりもいないよ」
 若かりしころの始祖ブリミル……ウェールズとアンリエッタは、目の前のブリミルが自分たちと同じくらいの年齢である理由がまたとんでもないことを知って驚いた。このブリミルは化身でもなければ幽霊でもない。生前の始祖ブリミル、ご本人なのだ。
 だが、まさかブリミルがこんな平凡な容姿の人間だったなどとは誰が想像しただろうか? ブリミルの素性に関してはロマリアが独占していたので、ハルケギニアの基礎を築いた偉大なメイジということ以外はほとんど知られておらず、その素顔についても、始祖の姿を偶像化することは不敬だということで、始祖像は意図的に形が崩されているために伝わっていない。地球で、ブッダがパンチパーマみたいな頭をしていたり、イエスが某有名ミュージシャンみたいな顔していたりみたいなイメージがあるのと違って何も無いのだ。
 これが素の始祖ブリミル……アンリエッタは、すがるように尋ねかけた。
「始祖ブリミルよ、どうか、お教えください」
「どう、とは、どういうことかな?」
「わたしたち、この時代の民は、ハルケギニアを築いたとされるあなたの教えを心のよりどころとして今日まで生きてきました。けれど、その教えを伝えてきた教皇は悪魔の使いで、わたしたちは何が真実なのかわからなくなってしまったのです。どうか、始祖ブリミルご本人の口からお教えください。我々は、いったいなにを信じればよいのでしょう?」
 それは、全ハルケギニア人の懇願の代表であった。教皇の作った幻影の魔法の効力はまだ残り、世界中の人々がこの場を注視している。
 崩れてしまったブリミル教の信頼。しかし人は心になんの支えも無く生きていけるほど強くは無い。何百万もの人々が答えを待ち望み、そしてブリミルは口を開いた。
「うーん……僕にはもう、君たちに教えることは残ってないと思うよ」
「えっ、それはどういう」
「君たちはもう、僕らの時代で夢見た世界を実現してくれている。僕らの時代、ハルケギニアには本当になにもなかった。それを、ここまで繁栄した世界にしてくれたんだ。感無量だよ」
「ですがわたくしたちは、まだあの教皇のような悪魔の甘言に乗り、愚かな戦争を繰り返す未熟な者たちです。正義と平和には、ほど遠い世界です」
「そうだね。けど、僕のような過去の人間から見れば、今のこの世界は夢のようなところだ。大切なのは、そこじゃないかな? 君たちは、今の世界で自分の信じるものを信じて、昔の人間から見たらすばらしいと思える世界を作った。つまりそれは、君たちのやってきたことが、全部ではないにせよ正しかったということだと思うよ」
 ブリミルの言葉を受けて、アンリエッタとウェールズの顔に少し赤みが差した。
「もし君たちのやってきたことが間違いなら、世界はとっくに滅んでいてもおかしくないだろう。でも、君たちは今こうして破滅を乗り越えている。それが証拠さ」
「しかし、我々の信じてきたブリミル教の教えは、悪魔の使いたちが広めていたものです」
「それでもさ。例え言い出したのが悪者でも、それで救われて、自分を不幸じゃないと思えるようになれる人がいるなら、それはいい教えだってことだよ。逆に、たとえ僕が言い出したことでも、それで迷惑してる人がいるなら、それは間違った教えだってことだ」
「教えは、誰が言い出すかは問題ではないということですか?」
「僕はそう思うよ。この世には、救う人もいれば救われる人もいる。たとえ救おうとする人に下心があっても、それで救われた人にとってはその人は神様さ。そうだね……ちょっとしたたとえ話をするけど、僕の率いているキャラバンに、小さな子供のいるお母さんがいるんだ。ある日、その子供がお母さんのためにと、ちょっとしたお手伝いをしたことがあった。その子は、お母さんに褒められたいという下心があったかもしれないけど、お母さんはとても喜んだ。だから僕は、その子供のやったことをとても尊いと思っているんだ」
 その言葉に、世界中で神父やシスターが泣いていた。
「教えはしょせん言葉さ。誰が言い出したものでも、正しく使えば人を救えるし、悪用すれば不幸にしてしまう。だから君たちは、無理に考えを変える必要なんてない。これまでに、よいと思ってきたことは続ければいいさ。今日より明日がよい日になるよう、努力し続けながらね」
 これで、ハルケギニア中のブリミル教の関係者たちが救われた。教皇が侵略者であったとしても、世界中のほとんどの神父やシスターは善意で働いていたのだ。ブリミル教の根幹が否定されて、彼らは絶望の淵にいたところを救われた。人のためになるのなら、今の教えを変えなくてもいい。彼らの存在意義は、消えなくてすんだのだ。
 だが、もうひとつ重大な疑問が残っている。
「我々も、子孫がよりよい世界を築けるよう努力します。ですが、我々は始祖のため、神のためとすでに争いを起こしてしまいました。同じ過ちを繰り返さないために、もうひとつお答えください。あなたは、その……そちらのご婦人とはどういうご関係なのですか?」
 非常に言いづらそうながらもアンリエッタが問いかけた先には、話を見守っていたサーシャがいた。
「ああ、僕の使い魔だよ。もっとも、使い魔らしいことはほとんどしてくれないけど」
「なによ、救世主らしくない救世主に言われたくないわね」
 むっとして、サーシャはブリミルの隣に並んだ。すると、平凡な容姿のブリミルに対して、美貌のサーシャの姿が映えて輝くように見えた。
 けれども、サーシャの長い耳は、ハルケギニアの人間が長年畏怖してきたエルフのものである。それが、どうして始祖ブリミルと……? その疑問に対して、ブリミルはアンリエッタたちにこう答えた。
「彼女は、使い魔であると同時に僕のパートナーでもある。僕らの時代に、世界はほとんど破壊されつくして、あらゆる種族はほんの一握りしか生き残れなかった。彼女も、エルフの数少ない生き残りのひとりなんだ」
「そんな……いったい、始祖の時代に何があったというのですか?」
「巨大な侵略さ。僕らの世界を、ある日突然正体不明の悪魔のような敵が襲ってきた。数え切れないほどの怪獣や怪物に蹂躙されて、僕らの築いた文明は一度完全に滅ぼされてしまった。僕らはその攻撃に耐えながら、なんとか世界の復興を目指して旅をしているんだ」
 そんなことが……そういえば、始祖の首飾りにあったメッセージでもそれを知らせていた。ヴァリヤーグと呼ばれる強大な勢力との戦い、人々はそれを思い出した。
 すると、サーシャが「見せたほうが早いわよ」と言うと、ブリミルは杖を振るって『イリュージョン』の魔法を使った。そうすると、空に六千年前のハルケギニアの世界が映し出された。

 以前に始祖の首飾りに残されていた『記録』の魔法が見せてくれたものと同じ、完全に滅亡した文明の光景。それは人々を再び戦慄に陥れた。
 だが、そこを旅する一行の姿が映し出されると、人々は別の驚きに目を奪われた。
 ブリミルの率いるキャラバン隊……それは、あらゆる種族が共に生きている姿だった。翼人もいればエルフもいる。獣人や、ほかの亜人、まったく見たことも無い生き物も含めて、むしろ人間のほうが少ないのではと思うくらいに、異種族が混ぜあって助け合いながら旅をしていたのだ。
 今のハルケギニアではとても考えられない姿。あらゆる種族が、始祖ブリミルとともに助け合って生きている。これが、六千年前の真実だというのか。

 ブリミルは杖を振って幻影を消すと、再びアンリエッタとウェールズを見た。
「僕は、君たちのこの時代では伝説扱いみたいだけど、僕自身は僕の仲間たちと平和な世界を取り戻したくて戦っているだけさ。だから僕が君たちに望むのはただひとつ、君たち子孫が平和な世界で仲良く生き続ける。それだけさ」
 それを聞いて、ウェールズやアンリエッタだけでなく、多くの人々が涙を流していた。
「も、申し訳ありません。始祖の時代には、すべての生き物が手を取り合い生きていたというのに、わたくしたちは何千年も人間以外はすべて敵だという歴史を歩んできてしまいました」
 アンリエッタは嗚咽を漏らしながら懺悔した。自分もエルフとの和解を求めて、サハラに使者を差し向けたりもしたが、それはヤプールの攻撃に対抗するためという理由があってのことだ。
 しかしブリミルは咎める様子も無く言った。
「気にすることは無いさ。親子や兄弟だって争うことはあるんだ、ましてや違う種族同士が共存するのは難しいのはわかってる。僕らのときは数十人でも、何千何万と多くなれば軋轢も増えるよね」
 ブリミルはすべてを才人から聞いて知っていた。未来が理想郷などではないことを。けれど、彼はそんな未来を否定してはいなかった。
「人間ってさ、できることよりできないことのほうが多いからこそ素晴らしいんだと僕は思う。誰かと仲良くしたいけどできないってのもそれさ。僕だって、サーシャはすぐ怒るし」
「九割方あんたが原因でしょうが」
 こつんとサーシャにこづかれて、ブリミルは照れたような表情を見せた。
「でもね、できないことがあるからこそ、できることを夢見れるし、できたときにそれを大切にできると思うんだ。今、人間と人間以外が分かれているとしても、だからこそ結ばれたときに強い絆が生まれるかもしれない。それはとてもうれしいことじゃないか」
「では、ではもう我々は、エルフとも誰とも、戦わなくてもよいのですか?」
「それは僕が決めることじゃあない。人間という種族だって善人がいれば悪人もいる。何より僕の子孫だって、君たちのような者もいればさっきの教皇のような連中だっているのは見てきただろう? 今のエルフがどういうものなのかは君たちが見て決めるんだ。それで、友とできるなら手を取り合えばいい。無理だと思うなら離れればいい。ただ、エルフと人間はそんなに遠いものじゃない。君たちは僕の子孫であると同時に、おそらくサーシャの子孫だ」
 えっ? と、ウェールズとアンリエッタだけでなく、話をじっと聞いていた人々も思った。
”自分たちが、エルフの子孫? 自分たちの中に、エルフの血が流れている?”
 すると、ブリミルとサーシャは少し恥ずかしそうに言った。
「まあ、正直に話すと、僕とサーシャはその……もう、付き合ってるんだ。実は」
「し、しょうがないじゃない。こんなマイペースで能天気な男、私が守ってあげなきゃどうなるかわかんないもの」
 それは単純に、若いカップルの姿そのものであった。
 だが考えてみれば当然のことだ。始祖ブリミルに子孫がいるということは、当たり前だが伴侶がいないといけない。ただ、それがまさかエルフだったとは、想像を絶していた。
「僕らだけじゃないさ。君らもさっき見たろ? 僕らのキャラバンでは、もう種族を超えた恋仲や夫婦はたくさんいる。遠い時間で、この時代では血が薄れてしまったかもしれないけど、種族そのものが変わりきるなんてことは早々ないよ。無理にとは言わないけど、勇気を持って手を差し伸べてみてほしい。それでダメなら別の誰かに握手を申し込めばいい。そうしてるうちに、いつか君の手を握り返してくれる誰かに巡りあえるだろう。少なくとも僕は、君たち子孫に無駄な血を流してもらいたいなんて思ってないよ」
「はい……始祖ブリミル、やはりあなたは偉大なお方です」
 感涙しているウェールズに、ブリミルは照れくさそうにするばかりだった。
「そうかしこまらないでくれよ。僕はむしろ、君たち子孫に大変な役目を押し付けてすまないと思ってる。でも、もしも壁を乗り越えられたときには、君たちの未来はもっと広く羽ばたけるはずさ。もしもくじけそうなときは、遠い昔にあった小さなキャラバンのことを思い出してくれれば、僕は満足だよ」
「お心に添えるよう、ハルケギニアの民を代表して約束します。今は無理かもしれない、百年後でも無理かもしれない。けれど、いつかハルケギニアに、いかなる種族であろうと手を取り合える理想郷を作り上げるために、努力を怠らないことを!」
 ウェールズの言葉に、人々のあいだからわっと歓声があがった。
 もうエルフとの戦争なんかしなくてもいい。意味の無い恐怖に怯える必要はないんだ。
 これからブリミル教の経典から、エルフを敵視する記述は削除されていくだろう。いや、教皇が消えた今、ブリミル教自体が大きな変換を余儀なくされていくに違いない。
 時代は変わる。その中で、人もものも変われなければ生き残ってはいけない。
 トリステイン、アルビオン、そしてロマリアも新たな息吹を得て生まれ変わる。しかし、まだそうはいけない国がある、ガリアだ。
「我々はこれから、いったい誰を王とあおげばいいのだろう?」
 ガリア軍は教皇をあおぎ、教皇の認定したジョゼフを王として戦ってきた。しかし教皇は敵で、ジョゼフの権威も同時になくなった。ガリアの将兵たちは君主を失い、どうしていいかわからなくなってしまったのだ。
 もうジョゼフを王とはあおげない。ならば他国に吸収されるしかないけれど、彼らにもガリア人としての誇りがあった。
 始祖ブリミルよ。我々はいったいどうしたら……? ガリア人の哀願する眼差しが向けられるが、ブリミルにもそれはどうしようもなかった。
 ところがである。竜騎士たちも全員地に降りてひざまずいているところへ、かなたの空から一頭の竜がすごい速さでこちらへ近づいてくる羽音が聞こえてきたのだ。
「風竜? こんなときに一体誰だ?」
「まさか、始祖に仇なさんと無能王が送り込んできた刺客では」
 場が騒然となり始める。しかし、飛んでくる竜の姿が鮮明になってくると、アンリエッタははっとして迎撃態勢に入っていた者たちに命じた。
「待ちなさい! あれは敵ではありません。どうやらこちらに降りてくるようです。そのままで、手を出してはいけません」
 メイジたちが杖を下ろすと、こちらに撃ち落す意思がないことを確認したのか、竜はまっすぐに彼らのいる城壁の上へと降りてきた。
 それはアンリエッタの思い出したとおり、青い風竜シルフィード。その背からはキュルケと、アンリエッタも行方を心配していた青い髪の少女が降りてきたのだ。
「ミス・タバサ。いえ、ミス・シャルロット殿、あなたもご無事でしたか」
「アンリエッタ女王陛下、お久しぶりです。わたしも、つい先ほどハルケギニアに舞い戻ってきました。事情は理解しています、失礼ながら話は後で」
 タバサはアンリエッタに対して、彼女らしからぬほどの早口であいさつを済ませると、ブリミルのもとにひざまづいた。
「始祖ブリミル、お初にお目にかかります。わたしは……」
「いいよ、僕に気を使わなくても。君は君の役割があって来たんだろう? 僕の権威が役に立つなら好きにしなさい。今のうちだよ」
 後半部分を小声で告げたブリミルに、タバサは思わずびくりとした。やはりこの人はただのお人よしではない、自分と同様に、数多くの修羅場をくぐってきた洞察力を持っている。
 しかし、味方だ。タバサは後ろめたさを感じながらも、ブリミルの言葉に全面的に甘えさせてもらうことを決めた。自分には似つかわしくない仕事かもしれないが、父と母の愛した祖国であるガリアを滅亡から救えるのは自分しかいないのだ。
「ここに集まったガリアの民よ、わたしの話を聞いて欲しい」
 城壁の上からタバサはガリア軍に呼びかけた。すると、ガリア軍の視線がタバサに集まる。今のタバサはこの世界に戻ってきたときのXIGの制服ではなく、ベアトリスに貸してもらった社交用のドレスを身にまとっている。急いでいたが、幸いサイズが近くて助かった。
 その身をさらしたタバサの姿を、ガリアの将兵たちはまじまじと見つめた。

”誰だ? あれは”
”可憐な令嬢だ。どこぞの姫君か? いや、まてよ、あの青い髪は……まさか!”
”思い出した! あのお顔、若かりしころのオルレアン夫人とそっくりだ”
”いいや、俺はヴィルサルテイル宮殿で何度も見た。イザベラ様から口止めされていたが、あのお方は”

 ざわざわと、ガリアの将兵たちに動揺が広がっていく。
 そしてその波がある一点に達したところで、タバサは意を決して口を開いた。
「わたしは、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。現ガリア王ジョゼフ一世の弟、故シャルル大公の一子です」
 どよめきが驚愕に変わり、その機を逃さずにタバサは一気に畳み掛けた。
「わたしは今日までジョゼフの手により幽閉されていましたが、心ある人々の手で解放されてここに来ました。そして今ここで、始祖の命を受けてわたしは宣言します。ガリア王国を凶王の手から解放し、正当なる持ち主の手に取り返すことを」
 地を揺るがすほどの歓呼の叫びがガリア軍からあげられた。
 故・オルレアン公の子女がまだ生きていた! かつて神童と呼ばれたオルレアン公の名声を覚えていない者はガリアにはいない。先王が亡くなった時に、オルレアン公が跡継ぎになればと願ったのはガリア国民のほとんどであったろう。しかしオルレアン公は不慮の死を遂げられ、あの無能王ジョゼフの治世になってしまった。
 だが、神はガリアを見捨ててはいなかった。オルレアン公の子ならば、きっとガリアを正しい方向に導いてくださるに違いない。シャルロット姫万歳という叫びが次々とあがる。
 けれども、タバサはその歓呼のうねりを冷めた目で見ていた。我ながらなんとらしくない台詞を言っているのだろうとという気恥ずかしさもあるが、これはガリア王国が本当にギリギリまで追い込まれてしまっているという証拠の光景でもあるのだ。もし誰かがまとめなければ、ジョゼフに従わないガリアの貴族や軍人は互いに主導権を争って分裂し、ガリア王国はいくつかの小国に分裂した後に周辺国に吸収されて消滅するのはタバサなら容易に予想できた。
 だからこそ、不本意でもやるしかない。イザベラがいない今、ガリアの正当な血統を主張できるのは自分のほかにいない。
「ガリアの民たちよ。これまでの理不尽な仕打ちに耐えて、よく今日まで生き残ってくれました。申し訳ありませんが、もう少しの辛抱をお願いします。ですがこれよりは、わたしがあなた方と苦難を分かち合います。そして遠からぬ日に、平和なガリアを取り戻しましょう」
 ガリアの将兵たちは涙を流しながら喜びに打ち震えた。いまやタバサの姿は彼らには女王そのものに見え、その凛々しい姿を街の一角からジルも頼もしそうに見ていた。
 もちろん、タバサの姿はイリュージョンのビジョンを通して世界中、むろんガリアにも映し出されており、グラン・トロワではジョゼフがシェフィールドを前に呵呵大笑していた。
「シャルロットめ、やはり生きておったか。まったく、なんという強運、いやなんという才能か。シャルルよ、見ているか? お前の娘はすごいぞ。俺の姑息な策略で始末するのはやはり無理だったようだ。そして今、すべての運命が俺に死ねと言って迫ってきているようだ。その上無い愉快だと思わんか、なあミューズよ」
「はい、ジョゼフ様。これは聖戦などよりも、よほど楽しみがいのあるゲームになってきたようですわね。それだけでも、教皇と組んだのは正解だったでありましょう」
「まったくだ。この世は俺などの乏しい想像力では計りしれん理不尽で満ちている。さあミューズよ、シャルロットのために舞台を整えようではないか。次が正真正銘、俺とシャルロットの最後のゲームになることだろう」
「はい、御心のままに」
 シャルロットが来る。亡き弟の忘れ形見が、かつてない力で自分の首を取りに来る。素晴らしい、さあいつでも来るがいい。俺は逃げも隠れもしない。俺とお前の死、どちらでもいい。すべてを失ったその先に、俺の欲するあれを見せてくれ。
 ジョゼフの形無き挑戦状。タバサはここに立ったときから、それを受ける決意を固めていた。
 どのみち遅かれ早かれ、あの男とは決着をつけねばならないのだ。父の仇を取るためにも、もうこれ以上、ガリア王家のために運命を狂わされる人を作ってはいけないためにも。
 そのためには何でもしてやる。タバサは、アンリエッタとウェールズに向かい合うと、軽くだが頭を垂れて言った。
「お聞きのとおりです。ウェールズ国王陛下、アンリエッタ女王陛下。わたくしはガリア王家の正統後継者として、ガリア王国を凶王より奪還する使命を負いました。つきましては、両陛下にお願いしたきことが」
「わかっている。ガリア王国に秩序と平和を取り戻すためならば、我らは協力を惜しむものではない。ただし」
「援助は、資金および食料医薬品などの物資に限っておこないます。兵力、武器の提供は一切いたしません。それでよろしいですね?」
「アルビオンとトリステインの友情に、ガリア国民を代表して感謝いたします」
 三人とも、国政に触れたことのある身ならばわかっていた。ハルケギニアの安定のためにガリア王国の奪還が急務だとしても、ガリアの内戦に他国が直接的に介入しては後に遺恨を残すであろう。もしトリステインやアルビオン軍がガリアに入れば、抜け目ないゲルマニアが干渉してきて戦後の政治的にもガリアが不利になる。ガリアはなんとしてでも、ガリア人のみの手で奪還しなくてはならない。
 それでも、トリステインとアルビオンの後ろ盾が得られるのはありがたい。あのジョゼフに対して、正攻法の戦力がどれほどあてになるのかはわからないが、少なくとも将兵や国民たちの安心感は増すだろう。
 もちろん、トリステインとアルビオンにとってもガリアが安定して友好国になるのは望ましいことだ。ここに、暫定的、簡易的ながらも三国の同盟が結ばれ、アンリエッタ、ウェールズ、タバサの三者が手を取り合うと、今度はトリスタニア中から歓声があがった。
 人々は戦争の終結と、新たな秩序の到来の予感に沸き、希望という光が世に満ち満ちていく。
 そして、それを見届けると、ブリミルはサーシャを促して、三人の王族に告げた。
「さて、それじゃ僕の役目もこれまでのようだね。そろそろ僕らは、ここらでお暇することにするよ」
「えっ? お、お待ちください始祖ブリミル! わたしたちは、まだあなたはお教えいただきたいことがあるのです」
「僕が全部言って、君たちはそれを守るだけで、君たちはそれを子孫に誇れるのかい? 僕らはしょせん、大昔の人間さ。この時代の行く先は、この時代の君たちが考えて作るんだ。わかるだろ?」
 ブリミルが杖を振ると、彼の前に光る鏡のようなゲートが現れた。始祖の奇跡はここまで……三人はそれを認め、ひざまずいて最上級の礼をとると、ウェールズが代表して最後のあいさつをした。
「わかりました。始祖ブリミル、わたしたちは、あなたの残してくださったハルケギニアを、未来永劫守り続けていくことを誓います」
「がんばってくれよ、子孫たち。まあ僕は、人を傷つけたり、奪ったり、騙したり、そうした悪いことはしないで生きてくれれば大体なにやっても気にしないよ。じゃあね、僕らは過去でがんばるからさ」
「こいつの面倒は私たちでちゃんと見るから気にしなくていいわよ。それじゃ、期待してるからね。さよならっ」
 ブリミルとサーシャが鏡をくぐると、鏡はすっと消えうせて、あとには三人の王族のみが残された。
 まるですべてが長い夢であったかのようだ。だが、夢ではない。その証拠に、今の彼らは白い陽光をその全身に受け、誰と争う必要もない平和の穏やかさの中に包まれている。
 そう、目を開けたまま見る夢。長い悪夢がようやく終結したのだ。もはや太陽をさえぎるものはなにもなく、冷え切っていたハルケギニアに暖かさが帰ってきた。
 しかし、これはエピローグではない。むしろプロローグなのだ。アンリエッタは立ち上がると、空で消えかけているイリュージョンのビジョンにも届くように、あらん限りの声で叫んだ。

「トリステインの、アルビオンの、ゲルマニアの、ガリアの、ロマリアの、ハルケギニアのすべての人々に告げます。長く続いた偽りの夜は、今ここに終わりました。我らの頭上に、再び朝が帰ってきたのです。ですが、これは終わりではありません。偽のブリミル教によって狂わされた流れを正し、本当の始祖の御心に答えられる世界を作り上げるための戦いがこれから始まるのです。恐れることはありません。始祖は道を示してくれました。しかし道を歩まねばならないのは我々です。全世界の皆さん、皆で歩きましょう、共に汗を流し、苦労しましょう。六千年前に無人の荒野を歩んだ始祖ブリミルに習い、始祖の夢見た恐怖と破壊なき世界を、わたくしたちの子孫に残すための旅路を始めようではありませんか!」

 全世界からどっと歓声があがった。心ある者たちは始祖に感謝し、その御心に応えることを誓った。
 だが、その道筋はたいへんに険しい。教皇を失ったロマリアでは大混乱が起こるだろうし、これまで富を独占してきた神官たちも無事ではすまないだろう。
 世界中でもブリミル教の教義の切り替えで論争が起こるであろうし、信者たちに作り直した教義を納得させるのも大変だ。
 しかし、困難が待っているからといって何もしないのでは永遠に迷いから抜け出すことはできない。どんな不幸のどん底でも、自分で自分を助けようとあがきもしない人間は、芽を出さない種に水をやる人がいないように誰からも見放されていく。世界は、優しくはあっても甘くはないのだ。

 アンリエッタに続いてウェールズとタバサからも戦争の終結と未来への抱負が宣言され、続いてガリアとロマリア軍の武装解除が指示された。
「平民は剣を、メイジは氏名明記の上で杖を提出してください。帰国までの期間、トリステインが責任を持って預かります」
 戦争は終わったが、武器を持った人間はそれだけで脅威となる。今日までの戦争で互いに恨みつらみが重なってもいるので、面倒だがこれは必要な処置だった。
 ガリアとロマリアの将軍たちに命令されて、兵たちは続々と装備を捨てていった。始祖の威光がじゅうぶんに効いているので、秩序は保たれて混乱はほとんどない。メイジの命とも言える杖を手放すことについても、食料の配給券と引き換えであるので、ほぼ全員が素直に従った。
 この他にも、細かな指示はいろいろあるが、落ち着いたらロマリア軍は順次帰国、ガリア軍はトリステインの管理下に置かれつつ、いずれ起こるガリア奪還までの間、奉仕活動をしつつ再編に励むことになるだろう。
 平和の足音は聞こえてきた。しかしまだドアの先までやってきただけで、もてなしの準備を怠ればノックすることなく去っていってしまうだろう。
 本当に、すべてはこれからだ。我々が努力すれば、始祖はきっと見守っていてくださる。逆に努力を怠り愚行を繰り返せば、ゼブブが言い残したように破滅招来体によって今度こそハルケギニアは滅亡させられてしまうだろう。


 偉大なる聖人、始祖ブリミルへの信仰は消えるどころか強まってハルケギニアに広まっていった。
 六千年前の過去へと帰られた始祖ブリミルに誓って……と思われた始祖ブリミルだったが……実は、まだ帰っていなかった。
 あれからざっと半日後。ブリミルとサーシャは王宮の一室で夕食のもてなしを受けていた。
「うまいうまいうまい、こんなご馳走何年ぶりだろう。ああ、もう手が止まらない。涙が出てきたよ」
「ちょっと、もっと品よく食べなさいよ。私まで恥ずかしくなるじゃない。あ、おかわりお願いね、もう面倒だから鍋ごと持ってきてーっ」
「あ、あの。料理はまだありますから、どうか落ち着いて落ち着いて」
 普段は王族の食事で使われるホールで、ブリミルとサーシャは大量の料理をかきこんでいた。
 あっという間に、テーブルいっぱいの料理の皿が次々と空になっていく。その傍らでは、アンリエッタがルイズといっしょにそれをなかば呆然と見守っていた。
「す、すごい食欲ですわね。あのルイズ、ものすごく不敬に当たるとは思うのですが、あの方々はわたくしたちのご先祖様で間違いないのですよね?」
「は、はあ……なんとなくそんな感じはするんですけれども。自信なくなってきました」
 ふたりとも、始祖ブリミルが自分たちのイメージする聖人の形とはかなり懸け離れた人物なのは飲み込んだつもりでいたが、やっぱり身近でまじまじと見ると信仰が揺らぎそうになるのを感じていた。
 なお、食客はこの二人だけではない。
「てかサイト! あんたもいっしょになっていつまでバクバク食べてるのよ」
「モグモグ……仕方ねえだろ。あっちの時代じゃまともな料理なんて滅多に手に入らねえんだから、食えるときに食いだめする習慣がついちまってるんだよ」
 もう何ヶ月もいっしょにいたせいで才人もすっかりブリミルたちと同じ習慣に染まってしまっていた。行儀が悪いとは思っても、六千年前では本当にわずかな食料も無駄にできなかったし、食べ物を残すなどはもってのほかであったのだ。
 戦中の城であったので、あまり豪勢にとはいかなかったものの、それでも三人で十人前くらいはたいらげてやっと食事は終わった。
「ふぅ、食べた食べた。満腹で苦しいなんて、ほんともう何年ぶりかなあ。こんないい時代に連れてきてくれて、サイトくんには感謝しなくちゃねえ」
「なに言ってるんですか? てっきり帰ったのかと思ったら、物影から出てきて「サイトくん、ちょっとちょっと」って声かけられたときはびっくりしたぜ。そんで「おなかすいた」だもん。みんなに説明したおれの身にもなってくれよ」
 才人が、苦労したんだからなとばかりに肩をすくめると、ブリミルもすまなそうに頭をかいた。
「いやあごめんごめん。でもいくら僕でもタイムスリップする魔法なんかないもの。でもあの場にい続けたら確実に面倒なことになるじゃないか。なんとかいい具合で場をまとめた僕の努力も評価してくれよ」
 実は、あのときブリミルとサーシャが消えたのは小型の『世界扉』で、ふたりは城壁の上から街の路地に移動しただけだったのだ。
 タイムスリップしてきたのは、あくまで未来怪獣アラドスの力で、ふたりが帰るにはやはりアラドスに乗っていくしかない。そのアラドスはまだ眠り続けており、ブリミルはサーシャに目覚めるまであとどのくらいかかるのかを尋ねた。
「そうね、生命力の回復のきざしは見えるから、あの大きさの個体だと、あと半日から……遅くても一日くらいだと思うわ」
「よかった、そのくらいで済むのか……帰れなかったらさすがにまずいもんね」
 ブリミルはほっと胸をなでおろした。あっちの時代には多くの仲間を残している。万一戻れなかったり戻るのが遅れたらえらいことになるところだった。

 しかし、ということは最低あと半日はこちらの時代にいなければいけないということになる。ならばと、ルイズたちはこれまで謎に包まれてきた数々の事柄をブリミルに直接正していくことに決めた。

「ううん、あまり話したいことではないんだけどなあ。どうしても言わなきゃだめかい?」
「だめです。始祖ブリミル、この時代で起きている異変のほとんどはあなたの時代に端を発しているんです。聖地もヤプールに制圧されて久しいし、あなたが本当に子孫のことを思うのであれば、帰る前に洗いざらい説明していってください」
 ルイズに強い剣幕で押し捲られて、ブリミルはすごく困った様子であった。
 六千年前に、ブリミルが文明崩壊以前になにをしていたのか、何ヶ月もいっしょにいた才人にさえブリミルは何も語ってはくれなかった。それほどまでに語るのははばかられることなのだろうが、ルイズもここで引くわけにはいかなかった。
 聖地、虚無、あらゆる謎の答えを知っている人がここにいる。こんな機会は、逃したら絶対に二度とやってこない。
 そしてブリミルは、悩んだ末にサーシャに了解をとって、一度大きく深呼吸をするとルイズたちに答えた。
「わかった。すべてを話そう。ただ、本当におおっぴらにしては欲しくない話なんだ。聞くのは、本当に重要な人だけにしてほしい」
「わかりました。わたしたちの、信頼できる人だけを集めます。女王陛下、人払いの徹底をお願いします」
 アンリエッタはうなづき、すぐさまアニエスに命じるために室外に出て行き、ホールにはブリミルとサーシャ、才人とルイズだけが残った。
 ブリミルは決断したものの、思い出したくない過去に悩んでいるようにじっと考え込んでいる。いったいどれほどのことが彼らの過去にあったのだろう? 才人とルイズは、これから聞くことがもしかしたら「聞かなければよかった」と思うことになるかもという予感に背筋を寒くした。

 そして一時間後、ホールにはブリミルとサーシャの前に、才人とルイズ、アンリエッタとウェールズにタバサ。それからカリーヌ、アニエス、ミシェル、キュルケ、ティファニア、最後にエレオノールとルクシャナが固唾を呑んで立っていた。
「これはまた、けっこう大勢集まったねえ」
「すみません、これでも絞ったほうなんですが。でも、みんな口の硬さは保障します」
 やれやれと、ブリミルはため息をついた。しかし秘密厳守は徹底していて、盗聴がないように室内は調べ上げたし、入り口はアニエスとミシェルが神経を張って立っている。むろん室外も、銃士隊と魔法衛士隊が蟻の這い出る隙間もないほど固めていた。
 集まった者たちは皆、一様に緊張している。才人やルイズとの再会の喜びも冷めやらぬ間に、始祖から重大な秘密が語られようとしているのだ。
 長い間謎だった伝説が、ここに。ブリミルは集まった面々を見回すと、最後にサーシャに目をやって訪ねた。
「じゃあ、話すけどいいかな?」
「いいわ、私もサイトに未来のことを聞いたときから、いつかこの時が来るんじゃないかと思ってたの。話して、すべての始まりになった、あなたたちの一族の悲劇を」
「わかった」
 ブリミルは短く答えると、椅子から立ち上がり、その口を開いて語り始めた。
「要点から最初に話しておこう。僕は、いや僕の一族は、元々この星に住んでいた種族ではないんだ」

 えっ……?

 場を冷たい空気が包んだ。どういう、意味だ? という色が皆の顔に次々と現れ、ブリミルは沈痛な面持ちでゆっくりと続きを語っていった。
「僕は君たちに謝らなきゃいけない。とても贖罪になるようなことではないが、すべてを話すよ。僕らの一族が犯した罪と、その顛末を。なにもかもは、この時代から六千年前に、この時代では聖地と呼んでいる場所から始まった。ある日、聖地に流れ着いた一隻の船、そこに乗っていたのが僕と僕の一族、マギ族だったんだ」

 ブリミルの昔語り……それは、ひとつの星ならず、宇宙全体をも揺るがす大厄災のプロローグであった。
 すべては六千年前に、ほんの数千人くらいでしかないある種族が犯した罪から始まる。
 物語の暗部、伏線、裏……隠され、忘れられてきた歴史が蘇る。閉ざされた部屋の中で、灯りの炎が揺らめいて、静かにゆっくりと燃え続けていた。


 続く


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