あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「るろうに使い魔-16」で検索した結果
-
るろうに使い魔-16
前ページ次ページるろうに使い魔 その晩、ラ・ロシェール最後の見納めということで、ギーシュ達は酒場で大盛り上がりをしていた。明日はいよいよアルビオン。そこに乗り込む前祝いというわけだ。 キュルケやギーシュは、美味しそうにその店一番の美酒を堪能しており、タバサはこれまた豪勢な料理と格闘中。 剣心は、デルフの未だに続くボヤきを聞きながら、そんな様子を眺めていた。 「なあ相棒…俺は寂しいんだよ…艱難辛苦…手に取る奴ばっかが口だけ達者な馬鹿ばかりでよ…やっと相棒と巡り合えたかと思いきや…そいつはコブつきと来たもんだ…」 酒を飲んでるわけではないのに、誰よりも酔っ払った様子で、デルフは言った。 ギーシュやキュルケも、そんなデルフの話を。面白そうに聞いていた。 「へ~え、あんたも苦労してんのねぇ」 「何ということだ! 君も一緒に乾杯しようじゃないか!」 そうし... -
るろうに使い魔-01
前ページ次ページるろうに使い魔 時は幕末―――――。 黒船来航から端を発した一つの時代。明治維新が訪れるまでの十五年間。 尊王、佐幕、攘夷、開国―――様々な理想野望が渦巻く最中。 徳川幕府と維新志士――剣を持つものは二つに別れて戦いを繰り広げた。 その幕末の動乱期、その渦中であり激戦区となった土地、京都にて、『人斬り抜刀斎』と呼ばれる志士がいた。 修羅さながらに人を斬り、その血刀を以って新時代『明治』を切り拓いたその男は、動乱の終結と共に人々の前から姿を消し去り、時の流れと共に『最強』という名の伝説と化していった。 そして時代が進み、今や刀や侍は過去のものへとなっていった明治の東京にて、その男は人知れず姿を現した。新しい『信念』と『刀』を携えて。 数々の出会いと死闘に身を投じながらも、男はその信念を持って剣を振るい、明治の時代... -
るろうに使い魔-18
前ページ次ページるろうに使い魔 「お前たちには、ここで死んでもらおう」 男はそう言うと、杖を向け、ルーンを唱え始める。刹那、轟音のようなうねりを持つ風が、辺りを包み込んだ。 剣心とタバサは、咄嗟の反応でそれを躱した。その後ろを男は取った。 「もらった!!」 杖を槍のように纏わせる『エア・ニードル』が、剣心の背中を貫こうとしたとき、それより早く風の槌『エア・ハンマー』が男に襲いかかった。 男は距離を取り、間を開ける。 「かたじけないでござる」 剣心は、そう言ってタバサの方を見た。彼女は、頷く仕草でそれに応える。 この男、出来る――剣心はそう思った。だが、どこか疑問が残る。この動き、どこかで見たような…。 タバサも、腑に落ちないような目で男を見やる。しかし、男のその表情は仮面に隠されていて全く悟らせない。 「――行くぞ」 そう呟き、男は杖を... -
るろうに使い魔-13
前ページ次ページるろうに使い魔 ルイズ達がアンリエッタの勅命を受けて、アルビオンへと向かう決心をする、その前の晩のこと。 トリステインの城下町に存在する、チェルノボーグの監獄にて、盗賊、土くれのフーケが牢屋越しに自身の処遇について聞いている最中だった。 「…という訳で、裁判は来週中に行われる。何か異論はあるか?」 ある訳ないじゃないの、とフーケは何も言わずに手を振った。どうせ死刑確定だろう。良くて島流し。弁護なんてものは存在しないだろうと思っていた。 「まあいい、あと脱獄なんて考えるんじゃないぞ」 監視員の男は、そう告げると厳重に鍵をかけて、その場を去っていた。コツコツと、足音はだんだんと小さくなる。 脱獄かあ…とぼんやり考えこみながら、フーケは寝そべった。どの道杖を取られている身の上に、強力な『固定化』の掛かった壁、おまけに手に入る食器は全て木製とい... -
るろうに使い魔-19
前ページ次ページるろうに使い魔 空賊の頭が、アルビオン皇子ウェールズだと知ると、ルイズ達も慌てて姿勢を正した。 ウェールズは和かな笑みを崩さずに、それを止めてくれるように言った。 「それにしても、君は随分強くて頼れる使い魔を持っているね。彼みたいな人間が一人でもいれば、このような惨めな今日を迎えることもなかったろうに」 そう言って、逆刃刀を納める剣心を見ると、ウェールズは残念そうなため息をついた。 それを聞いて、ルイズは少し顔を赤くすると、思い出したように懐から一通の手紙を差し出した。 「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」 ウェールズはそれを受け取り、手紙を広げて読み始めると…最後の一行を呼んで一瞬だけ悲しそうな顔をすると、再び微笑みを作った。 「了解した。しかしながら今、目的の手紙は手元には無いのだよ。済まないが、ニューカッスルまで... -
るろうに使い魔-17
前ページ次ページるろうに使い魔 風を切る音で唸らせながら、ゴーレムは腕を振り上げる。様子見のあの時とは違い、本気で殺す気でいるフーケは、遠慮容赦一切なしにその拳を剣心達目掛け放った。 タバサも少し気後れするぐらいの圧倒的な、柱のような腕による一撃は、容易にその地面を陥没させた。 巻き上がる土砂に気を付けながら、タバサは無意識に剣心の方を向いて…彼の姿がないことに気付いた。 第十七幕 『戦闘』 フーケもそれを視認し、恐らく反応すらできずに吹き飛ばされたのだろう――と思い、高らかに笑った。 「あっはっは!! もう終わりかい、意外とあっけないものだねぇ―――」 「確かに、滑稽な人形劇はもう見飽きたでござるよ」 あれぇ…とフーケから笑みが消える。代わりに顔が真っ青になり、冷や汗が溢れ出す。 フーケは、恐る恐る後ろを振り向いた... -
るろうに使い魔-14
前ページ次ページるろうに使い魔 港町ラ・ロシェール。 アルビオンの玄関と呼ばれるこの場所は、トリステインから馬で二日は要すると言われており、その為剣心達は馬で走らせっぱなしだった。 しかし、幻獣グリフォンに乗るワルドは、それを気にする様子もなく先へ先へと突き進む。 隣にいるルイズは、気が気でないように後ろを向いては、心配そうに剣心達の見た。 ギーシュは、既にへばった様子を見せていたが、剣心は相変わらず何でもなさそうにルイズに目を合わせる。 しかし、馬とグリフォンではその差が埋められるはずも無く、どんどんとその姿は小さくなっていった。 「ねえ、ちょっとペースが速くない?」 「へばったなら、置いていけばいい」 そんな様子を見かねたルイズだったが、ワルドの答えは淡々としたものだった。確かに急を要する任務なのはそうだが、だからといって仲間や自分の使い魔... -
るろうに使い魔-15
前ページ次ページるろうに使い魔 ラ・ロシェールでの一夜が明け、朝日が昇る前の頃、剣心は目が覚めた。 昔からの習慣なのか、どうにもベットは寝付けない。向かい側のギーシュは、まだ熟睡中だった。 明日まで足止めされるとはいえ、起きてしまった以上はしょうがない。とりあえず、あまり音を立てないように、剣心は普段の着物に着替え始めた。 そんな折、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。こんな早朝に誰かと思い、ドアを開けると、そこには爽やかな顔をしたワルドがいた。 「おはよう。使い魔くん」 「どうもおはようでござる。拙者に何か?」 ただ挨拶をしに来たわけでは無いだろう。何か用でもあるのだろうか。 すると、ワルドは変わらぬ笑顔でこう言った。 「君は、伝説の使い魔『ガンダールヴ』だそうだね?」 「―――おろ?」 剣心は不思議そうな表情でワルドを見た。そのことを... -
るろうに使い魔-02
前ページ次ページるろうに使い魔 あれからの夜――剣心はルイズに案内されて彼女の部屋へあがった。 途中、自分は別の国からやって来た、という言葉もルイズはさして取り合おうともしなかった。 確かに、身なりや風貌は見たこともないが、言葉がこうして通じる以上彼女からして見れば、この国のしきたりや習わしを知らないこの男こそがおかしいのだった。 剣心自身も、最初はまだこの国が地球上のどこか、つまり日本から遠く離れた地であることを信じていたし、それを疑わなかった。 あの月を見るまでは―――。 「月が…二つ…?」 「当たり前じゃない、何驚いてんのよ」 かつて日本に居たとき、時々何度と仰いでみたそれとは根本的に違う、青い月と赤い月。 その瞬間、剣心は自分が住まう場所とは何かが絶対的に違う、完全に隔絶された世界だということを、頭ではなく心がそう理解した。 ... -
るろうに使い魔-12
前ページ次ページるろうに使い魔 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな~~~り~~!」 その声と共に、門が開かれて歓声が巻き起こった。 敷かれた絨毯の上を、優雅に歩きながらアンリエッタはその声に応える。手を振って返せば、ただでさえ大きな歓声が、より大きく響きわたった。 すごい人気だな……と思う剣心は、ふと隣のルイズを見た。 相変わらず、気の抜けた顔でボーっと、王女を見つめるように立っていた。 と、ふと剣心の先に、アンリエッタの側を護衛する一人の男に目が行った。 見事な羽帽子と、逞しい顔つきの壮年の貴族。鷲の頭と獅子の体を合わせた、見たこともない野獣に跨り、隣を付いていく。 (ルイズ殿が見ているのは、あの男か―――) 結局、姫が学院に招き入れられる、その始終まで、ルイズは惚けた表情のままだった。 第十二話 『密約... -
るろうに使い魔-10
前ページ次ページるろうに使い魔 「それで、さっきの技は何なのよ?」 乗ってきた馬車の中で帰る途中、ルイズは出し抜けにそう言った。 土くれのフーケを捕まえ、秘宝を取り返したルイズ一行は、悠々と今魔法学院へと帰る途中だった。 フーケはまだ気絶していたが、念のためにと縄でグルグル巻きに縛り上げている。そんな中発したルイズの言葉にキュルケとタバサも興味深気に剣心を見た。 「そういえば、ケンシン言ってたわよね。ヒテン……なんちゃらって、もしかして、ケンシンの戦い方ってその流派?」 「是非教えて欲しい」 好奇心を抑えない三人組が、目をキラキラさせて剣心を見つめた。余程知りたいのだろう。 隠すのも何だな、と思った剣心は、簡単に説明することにした。 第十話 『飛天の剣』 『飛天御剣流』。 それは戦国時代に端を発する、日本より古... -
るろうに使い魔-11
前ページ次ページるろうに使い魔 その夜、ルイズは夢を見た。 ずっと昔、まだ家で貴族の教育を受けていた頃。 良く出来た二人の姉に比べられるのが嫌で、いつも何か言われれば、逃げるようにそこへ行き、今では嫌なことが起きると、自然とそこに足が向くようになった。 誰もいない、池のほとりで、小舟の上に乗っては、自分はそこでよく泣いていた。今日も、母からのお叱りと使用人の小言から隠れるために、一人そこで蹲っていると、上から優しい声が聞こえた。 「泣いているのかい? ルイズ」 フードを纏い、帽子を被った青年、目深で顔はよく見えないが、ルイズには誰か直ぐわかった。 「子爵さま、いらしてたの?」 最近、近所の領地にやってきた、自分にとって憧れの貴族。優しく、強そうで、尊敬にも似たような感情を持っていた。 「今日は君のお父上に呼ばれてきたのさ、あのお話のことでね」 ... -
るろうに使い魔-03
前ページ次ページるろうに使い魔 その日、ミセス・シュヴルーズの錬金についての授業は、ルイズの失敗というアクシデントのおかげで中止となり、しぶしぶその場で解散することになった。 当事者であるルイズは、その責任として教室の片付けを命じられ、剣心と共に教室に残ることとなった。 こういう時こそ魔法を使えば…と一瞬頭をよぎったが、そういえば召喚されたとき、基礎魔法もできないようなことを生徒が言っていたことを思い出した。 体中煤だらけで、あくせくと片付けるルイズを見て、剣心は優しく肩に手を置いた。 「ルイズ殿、少し休むでござるよ」 「え、……でも」 ルイズはまだ散らかった周りを見た。まだ三分の一も済んでいない。まだまだひどい有様だ。 その惨状を見て、ルイズは何か言いたげに口を開くが、一旦気を取り直すと改めて呟くような声で言った。 「そうね…それし... -
るろうに使い魔-06
前ページ次ページるろうに使い魔 「剣心、今日はあんたに『剣』を買ってあげるわ」 ある日の朝、剣心に起こされたルイズが、出し抜けにそう言った。 ここに召喚されてからもう、それなりの数日がたっていた。 使い魔の仕事にも大体慣れ、安定した時間を過ごしていた剣心は、これを聞いて今日はそうはいかないだろうなぁ、と心中そう思った。 別にルイズが突飛なことを言うのは、珍しいことじゃない。言ってることがコロコロ変わったり、論破されると真っ赤になって怒ったりと、それに比べればまだ優しい方だ。 しかし、街に行くのはいいとして…何故武器を? そう思った剣心は、自分の腰の逆刃刀を手に当ててルイズに見せた。 「拙者にはこれがある、無理して買ってもらう程、困ってはござらんよ」 「前から思ってたけど、こんなナマクラのどこがいいのよ?」 ルイズは、勝手に剣心から刀を引っこ抜くと... -
るろうに使い魔-07
前ページ次ページるろうに使い魔 ここ最近、トリステインの貴族の間では『ある問題』を抱えていた。 『土くれのフーケ』と呼ばれる、神出鬼没な盗賊のことだ。 性別年齢出身、その全てが謎に包まれているその盗人は、高価な宝石や陶芸があるところ必ず現れ、その巧みなテクニックで華麗に盗み出している。 分かっていることは、そのフーケが、かなりレベルの高い『土』系統のメイジであることだけ。時に堅固な壁を文字通り『土くれ』に変えて侵入したり、巨大なゴーレムを使役して力任せに強行突破したりと、その時その時で応変に対応して攻めてくるのだ。 おかげで、今のトリステインの噂ではフーケで持ち切りとなり、貴族達は下僕に剣を持たせてみたり、『固定化』などの防御魔法で対策を立てたりするものの、未だにフーケを捕えるどころか、その正体すら掴めないでいた。 そして今、フーケはあるマジックアイテム... -
るろうに使い魔-25
前ページ次ページるろうに使い魔 その日、トリステイン魔法学院は快晴だった。 シエスタは、貴族達の服の洗濯をする傍ら、この晴れやかな日差しを心地よく浴びていた。 「今日もいい天気ねぇ」 そんな事を言いながら、シエスタは小鳥たちと戯れつつ、どこかウキウキした様子で洗濯物を干していた。すると…。 「あれ、ケンシンさん?」 シエスタの遠くで、例の気になる男性、あの緋村剣心が、どこか森の中へと入っていくのをその目で見た。 何だろう? シエスタは持ち前の好奇心で、剣心の後を追った。 しばらくして、剣心はおもむろに草木が生い茂る林の中心に立つと、どこか神妙な顔つきで目を閉じていた。 ひっそりと隠れながらも、シエスタはこの気になる行動に疑問符を浮かべていた。 しばらくして…彼の周りから、ただならぬ雰囲気が立ち込めるのを感じた。 そして次の瞬間――――。... -
るろうに使い魔-22
前ページ次ページるろうに使い魔 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 そのルーンと共に、ワルドは新しく四体の偏在を呼び寄せる。 しかし、陣形を少しだけ変えている。剣心から遠のく形で、広がるように囲んでいた。 「君は接近戦が主のようだからね、卑怯な手と君は言うだろうが、使わせてもらうぞ」 そして、本体の方は囲んだ偏在の中心に、つまり剣心と一対一の状態を作っていた。 (杖で切り結ぶ傍ら、偏在が援護射撃をする気か…) 剣心は素早く思考を張り巡らせる。 ご丁寧に、その内の一体は、それとなくルイズ達に近づいている。彼女たちが妙なマネをしたら、素早く撃ち抜く気なのだろう。 「構わんさ、卑怯な手だろうが何だろうが、好きに使うがいい。たが―――」 しかし剣心は、悠然と逆刃刀を構える。これほどの陣形を前にしても、不安や恐怖などない、ただ、目の前の敵を倒す怒りで燃えて... -
るろうに使い魔-05
前ページ次ページるろうに使い魔 「しかし、まさかこんな結末になるとは……」 「本当…そうですよね…」 ここは、トリステイン学院校長室。 その部屋で、ここの学院長でもあるオールド・オスマンが、深刻な顔つきで顎髭を撫でていた。 隣には、ルイズ達のサモン・サーヴァントを務めたコルベールが、これまた愕然とした表情をしている。 「お主は見えたかの、あの剣と最後の動き」 「いえ全く。正直言って、私があの場でも反応できたかどうか…」 二人が話し合っているのは、先程のギーシュとの決闘の件だ。 数分程前、秘書のミス・ロングビルが、慌てた様子で扉を叩いてきた。 何でも、生徒達が決闘と騒ぎ立てており、どうにも止められる状況では無いらしい。そのため、『眠りの鐘』の使用許可を求めてのことだったが、それをオスマンは制止した。 ただ単に、そんなことのために秘宝を引... -
るろうに使い魔-30
前ページ次ページるろうに使い魔 「うおおおおおおっ!! トリステインがアルビオン軍を追い払ったぞ!!」 「夢を見ているようだ…まさかこんな日が起こるなんて…」 タルブにて勃発した、トリステインとアルビオンによる抗争。 誰が見てもアルビオン側が圧倒的優位だったにも関わらず、結果は…突如として起こった『謎の光』による現象で、艦隊は全滅。何もしていないトリステイン勢の勝利と相成った。 兵の大半は捕縛され、おまけにこちら側の被害は、全くではなかったがこの戦果を鑑みれば贅沢と言えるほどに少なかった。 「此度の勝利をもたらした我らが女王、アンリエッタ陛下に祝福を!!」 「万歳!! アンリエッタ女王陛下!!」 まさに完璧な『勝利』。人々はアンリエッタを『聖女』と称え、騒ぎ立てた。 第三十幕 『人斬り』 ここトリステイン魔法学院は、... -
るろうに使い魔-39
前ページ次ページるろうに使い魔 「それじゃあ皆に紹介するわね。ルイズちゃん、どうぞ~~!!」 「ル、ルルル…ルイズです。よよよ…よろしくお願いなのです」 怒りと羞恥でふるふる震えながら、ルイズは皆におじぎをした。その姿は先程の地味なワンピース姿ではなく、きわどく短いキャミソール姿だった。 あの後…、スカロンが経営しているお店『魅惑の妖精』亭に連れてこられたルイズ達は、そこでどんな仕事をさせられるのかを尋ねた。 曰く、この『魅惑の妖精』は、一見はただの居酒屋ではあるが、可愛い女の子が際どい服装で飲み物を運ぶことで人気のお店であるらしかった。 つまり、ルイズの可愛さを見初めたスカロンが、ぜひ給仕にと招き入れたのだ。 「あんな際どい格好で…?」 とルイズは信じられないような眼差しで給仕の女の子達を見ていた。 「…確かにきわどいでござるな…」 幕末時代の感... -
るろうに使い魔-08
前ページ次ページるろうに使い魔 フーケ搜索の任を、仕方なくも受け入れた剣心は、ルイズ、キュルケ、タバサと案内役のミス・ロングビルと共に馬車に乗り、目的地である廃屋に向かっている最中だった。 ゆっくりと、しかし確実に進んでいく馬車の中で途中、キュルケが不思議そうな顔でロングビルに聞いた。 何故面倒な案内役を自らかって出たのか?それを受けて、ロングビルはどこか遠い目をして、こう返した。 「いいのです。私は、貴族の名をなくしたものですから」 しかし、キュルケはますます不思議そうに首をかしげた。彼女はまがりなりにも学院長オールド・オスマンの秘書役である。貴族でないものを何故雇ったのか。 「…オスマン氏は、貴族とか平民とかに余り拘らない御方なんですよ」 それに一度は納得したのだろうが、しかしキュルケの好奇心はもう止まらない。今度はどうして貴族の名をな... -
るろうに使い魔-09
前ページ次ページるろうに使い魔 剣心達を見下ろす、三十メイルほどはあるだろう巨大なゴーレムは、ゆっくりとその手を大きく挙げた。 そして次の瞬間、目にも止まらぬ速さで、剣心達に向かって振り下ろした。 轟音と共に屋根はガラガラと崩れ、音を立てて小屋は壊されていく。 それを見て呆気に取られていたキュルケは、皆は大丈夫なのかとふと不安になった。 「ルイズ! タバサ! ケンシン!」 するとそれに応えるように、もうもうと立ち込める煙の中から、一つの影が飛び出した。 ルイズとタバサを両脇に抱えながら、剣心が外へと脱出していたのだ。ルイズはその手に、黒い箱をちゃんと大事に持って来ていた。 「とりあえず、みんな無事でござるな」 彼女達に怪我がないことを確かめると、剣心は改めてゴーレムの方を向いた。 そして逆刃刀を構えながら、鋭い眼で睨んだ。 ... -
るろうに使い魔-27
前ページ次ページるろうに使い魔 剣心は今、シエスタに誘われて、草が生い茂る壮大な平原へとやって来た。 視界一辺を、見渡せるほどの雄大さと、陽の光が照りつける美しさが、そこにはあった。 隣では、私服姿のシエスタが、思いを馳せるような目で平原を見ていた。 「それにしても驚きました。ケンシンさんとうちのひいおじいちゃんが、同じ国から来たなんて…」 あの後、剣心はタルブの墓標跡地へと赴き、そしてシエスタの曽祖父の墓を見た。 刻まれている文字は、ハルケギニアではさっぱりわからない字体だったが、剣心は何とかそれが読めた。 「海軍少尉佐々木武雄 異界ニ眠ル」 ここでもう、剣心は確信した。彼は間違いなく、自分と同じ日本から来た人間なのだ。それも遠い未来から。 何故未来の遺産がこんなところに置いてあるのか、その理由は知る由もなかったが、こうして今、その実物が安置... -
るろうに使い魔-20
前ページ次ページるろうに使い魔 「ここは、どこ?」 気付けば、ルイズは闇の中にいた。辺り一面真っ黒な世界。何も見えない、何も聞こえない。そんな場所。 いきなりそのような所に放り込まれたルイズは、一瞬戸惑いながらも歩き始めた。 このまま真っ直ぐに行けば、ここから抜け出せる、何となくだったがそう直感で思ったのだ。 事実、ルイズの目の前に、小さな光が見え始める。それは段々大きくなり始め、今度は眩い光が、ルイズの視界を覆った。 その先にあったのは、夢の続き。あの使い魔の、始まりとも言える過去。 「…これは……」 次にルイズが見たものは、紅く染まる太陽と、幾多にも並ぶ木の墓標。 枝を折って作り上げた簡単な十字架は、日に当たって大きな影を作っていた。 その中心には……子供の頃の剣心…心太が後ろ姿で立っていた。 「驚いた、親だけでなく、野盗共... -
るろうに使い魔-26
前ページ次ページるろうに使い魔 トリステインのどこか、生い茂る森が立ち並び、その中にひっそりと隠れる廃墟の近く。ここには、オーク鬼なる生物が、廃墟を根城にして住みついていた。 人間のように立った豚。その言葉がしっくりと来るその怪物は、今、一人の人間を前に大勢で取り囲んでいた。 人間の肉が大好物な、野生の本能のままに動くオーク鬼共は、もしこれが『普通』の人間だったら、即座に襲いかかり、その血肉を喰らっていたことだろう。こんな堂々と人と対峙する機会は、滅多にないからである。 では、何故襲いかからず、様子を見守っているのか。その理由は簡単だった。 その人間は『普通』じゃないからだ。 「ウグ…ウグルル…」 周りを数十ものオーク鬼が、取り囲んだこの状況。 例えメイジであろうと、この数相手に立ち向かえるほどではない。それはオーク鬼も経験から知っている。少... -
るろうに使い魔-04
前ページ次ページるろうに使い魔 「諸君、決闘だ!」 ギーシュの宣言と同時に、周りの貴族たちが歓声を上げる。 場所はヴェストリ広場。そこにはギーシュ達を取り囲むように貴族で満たされていた。 「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの平民だ!」 その歓声な中に剣心はいた。この様子に少し驚いたようだが、まだ呑気な表情だ。 「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」 薔薇の杖をかざすと、ギーシュは気障ったらしくそれを剣心に向けた。 「では早速始めようか?」 「あー、いやいや、拙者闘いに来たのではござらんよ」 この言葉に、周囲は一瞬、時間が止まったかのように空気が固まった。それに遅れて、ギーシュが口を開いた。 「ほう、怖気付いて今更、自分の愚かさを認める気になったかい?」 「まあ、あれは拙者にも非がある、そこでこうはどうでござる?」 ... -
るろうに使い魔-24
前ページ次ページるろうに使い魔 ルイズは、部屋のベットで目を覚ました。 見慣れた部屋…トリステイン学院の、女子寮の一室。 横を見れば、既に起きていた剣心が、今まさにルイズを起こそうとしている所だった。 「おはようでござる、ルイズ殿」 「…うん…おはよう…」 急に目が覚めたものだから、どこか頭の回転がボンヤリだったのかもしれない。ルイズは、どこか寝ぼけたようにそう言うと、剣心が予め畳んでくれた制服に手をやった。 そして着替えようとして…ルイズは剣心を見て、ハッとするように叫んだ。 「ちょ…見ないでよ!!! どっか行ってて!!!」 「お、おろろ!!?」 その声に、慌てて剣心は部屋を出る。どうせまた着替えを手伝わされると、軽く準備をしていたため、少しびっくりしたのだ。 余りの出来事に驚きを隠せない剣心であったが…。 「ルイズ殿も、ようやく女子と... -
るろうに使い魔-28
前ページ次ページるろうに使い魔 アルビオンによる宣戦布告、トリステイン軍の壊滅の報が王国に届いたのは、それからすぐ後だった。 上層部による、終わりを見せない話し合いの末、トリステイン側も徹底抗戦すべく、アンリエッタを筆頭に出陣。根城にすべくアルビオン側が侵入を始めたタルブへと殺到した。 そして、少し遅れてその報告は、トリステイン学院にも入ってきた。 その頃、剣心は丁度燃料がノルマまで達成できたとの事をコルベールから聞いて、それにルイズと共に向かう途中だった。 「ホントにあれが飛ぶの?」 「まあ、今からそれを試しに行くところでござ――――」 そのすれ違い様、オスマンと勅使の会話を聞いて、剣心は顔色を変えた。 「現在の戦況は?」 「敵の竜騎兵によって、タルブの村は炎で焼かれているそうです」 「…その様子だと、見捨てる気のようじゃな」 その瞬間、剣... -
るろうに使い魔-29
前ページ次ページるろうに使い魔 タルブ上空で、未だに鎮座している、『レキシントン』号。 村から離れた森の中で、シエスタは弟達を匿って隠れていた。 あの後、急に竜騎士達が攻め行ったかと思うと、村を根こそぎ焼き払い、目に入るもの全てを消し去っていった。 シエスタ自身、もう駄目だ。と思うような事も何度かあった。それでも可愛い子供たちを守りたい一心で、ここまで逃げ延びたのだ。 (ケンシン…さん…) 子供の前で不安にさせたくない手前、なんとか堪えてはいたが、内心泣きたい感情で一杯だったシエスタは、祈るように彼の名前を口にした。その時だった。 激しい唸り声を上げながら、シエスタ達の上空を何かが駆けていった。ほとんど一瞬のような出来事だったが、シエスタは確かに見た。 あれは間違いなく、家に祀ってあった『竜の羽衣』そのものだったのを。 そして、機敏な動きと速... -
るろうに使い魔-34
前ページ次ページるろうに使い魔 ヴァストリ広場にてタバサと別れた後、剣心はそのまま暫くの間あてもなく彷徨いていたが、やがて日も暮れ夕焼けに差し掛かると、一旦散歩をやめて部屋に戻ることにした。 部屋には、一足先にいたルイズが、膨れっ面をして待っていた。 「…遅かったじゃない」 「ちょっと用があった故、すまないでござる」 とはいっても、元々予定には入れてなかったので、遅いも何もあったものではないが。まあいいわ。とルイズは一人頷くと、今の進行状況を説明した。 「取り敢えず今日モンモランシーに買い物に行かせて、大方の材料は揃ったらしいの。…でもあと一つだけ足りないものがあるのよ」 「どんなものでござる?」 「…『水の精霊の涙』」 それは、この世界に住む『精霊』から取れる身体の一部であり、『惚れ薬』を作るにあたっての重大な要素の一つらしく、これが無ければ解除薬... -
るろうに使い魔-23
前ページ次ページるろうに使い魔 「…そうですか…ワルド子爵が…」 トリステインの城の中、王女の一室で報告を聞いていたアンリエッタが、震える声で言った。 アルビオン脱出の後、ルイズ達はその足で、直接城へと向かい、アンリエッタに報告をしに行ったのだ。 突然の来訪なので、城内の警固兵達は騒然としていたが、直ぐにアンリエッタの使いだとわかると、ルイズ達を城内へと招き入れた。 そして、ルイズと使い魔の剣心は、そのままアンリエッタの部屋へと案内され、この旅についての報告を聞かされていた。 第二十三幕 『これから』 「それで…旅のほうはどうでしたか…? 何か起こったりとかは…」 ルイズは、話を聞かせた。この旅で起こったこと全部、包み隠さず。 手紙の奪還の任務は成功したこと、ワルドは反乱軍の一員だったこと、その戦いの中、ウェールズは... -
るろうに使い魔-37a
前ページ次ページるろうに使い魔 「流石は伝説の人斬り様だ。噂通り…いや、噂以上だ。僕の思考をこうも的確に読んで、追ってくるなんてね」 月夜が照らす森の中、ウェールズは不気味に笑って剣心にそう言った。 人斬り…そう言われた剣心は、ピクリと眉をつり上げる。 「『人斬り』…?」 「そう言えば、ワルドも言ってたわね…人斬りなんとやらって…」 キュルケとタバサが疑問符を浮かべる中、ルイズはハッとしたような表情をした。 刹那蘇るのは…封印したかったあの夢の記憶。ルイズにとってトラウマにもなった彼のもう一つの顔…。 しかし、剣心は気にする風な様子は見せずに、まず一歩前へ出る。 「姫殿は、どうしたでござる?」 その問いに、ウェールズはガウンを着た人影の方を招き入れた。ガウンを脱いで露わになったその影は、確かにアンリエッタその人だった。 ここでルイズは気が戻... -
るろうに使い魔-31
前ページ次ページるろうに使い魔 「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!」 怖さが極限にまで達した、その叫びでルイズは起き上がった。 そして気がついた。いつの間にか夢の世界から脱し、いつもの学院のベットにいることに。 月夜の照らすベットの中、ルイズは目を覚ましたのだった。 「夢……?」 ルイズは、辺りを見回して呟いた。まだ胸は動悸で高鳴っており、息で激しく上下させていた。 身体は汗でびっしょりで、目からは涙の跡が残っていた。 「ルイズ…殿…?」 そして彼女の隣には、異変を感じた剣心が立っていた。 「ひっ…!!」 一瞬だけ、彼を見て怯えたような目をしたルイズだったが、なおも心配そうな表情をする剣心に、ようやく理性が戻ってきた。 「ケン…シン…?」 「どうしたでござる? 何か悪い夢でも見てたでござるか?」 宥めるよう... -
るろうに使い魔-43a
前ページ次ページるろうに使い魔 その日の夜、チェレンヌ伯の屋敷では、警護のための人員で大わらわだった。 門の前に貴族が何人も立っており、一歩入ればそこには今回、急造で募集した腕利きぞろいのメイジや兵隊で溢れている。これだけでも既にネズミどころかアリ一匹忍び込めないような厳重さだったが、屋敷の中は更に凄かった。 どこもかしこも軍人や兵隊で塗り固められ、入口という入口には必ず数人のメイジが配置についているのだ。 「全く、まるでお祭り騒ぎのようだな」 その屋敷の中心部、自分の部屋に篭もり、数十人の部下に囲まれているチェレンヌは、この様子にやれやれと首を振った。 「所で、チェレンヌ殿は今までどちらに? 部下の者たちが探しておりましたぞ?」 「…貴様に話して何になるというのだ?」 チェレンヌが苦々しげに呻く。アニエスも大体の察しはついた。 (…夜... -
るろうに使い魔-32
前ページ次ページるろうに使い魔 さて、その数日前のことである。 タルブでの侵攻が失敗に終わった、アルビオンのロンディニウム郊外の寺院。その一室。 「…ぐっ……! ここは…」 そこで怪我を負って、今まで寝ていたワルドは目を覚ました。起き上がろうとして、体の節々が痛むことに気付いた。 「そうか…俺は…奴に…」 その瞬間、苦い思い出が頭の中に蘇ってくる。無様な敗北。それも二度目だ。 腕が使えなかったとはいえ、風竜を使っての戦闘だったのに…あの男はそれももろともしなかった。 いや……自分の驕り、油断、それを的確に突かれたからこそああも惨敗したのである。 「――――くそっ!!!」 それを思い出して、ワルドは悔しさと怒りで顔を歪める。今でも鮮明に記憶の中に残っている、奴の憮然とした表情。 自分など、道を阻む敵としてすらも見ていない。それを教え込むかのような眼だっ... -
るろうに使い魔-40
前ページ次ページるろうに使い魔 さて、ルイズのささやかな幸せは、その次の日のうちに見事打ち砕かれたのだった。 翌日の夜、『魅惑の妖精』亭が繁盛する中、ルイズはげんなりしながら昨夜と同じように給仕に勤しんでいた。 この二日で、大体ルイズを見て反応する酔っ払いの客達には大まかに二通りあった。 まず、こんな小さなガキをこの店で使っているのか、と憤る連中。そう言ったお客様には、ワインを『壜』ごと飲ませ、サービスして差し上げる事にしているのだ。 次には、そう言う趣味・趣向がある持ち主のお客達。ルイズはバカみたいに容姿は整っているおかげで、その筋の人達にはウケがいい。 ただ、こういう類の連中も、黙っていれば大人しそうに『見える』ルイズをナめ、決まって尻やら太ももやらを撫でようとしてくる。そのお客様にルイズは、平手、もしくは怪鳥蹴りを無料でご提供することにしたのだ。 ... -
るろうに使い魔-35
前ページ次ページるろうに使い魔 「いやあ、それにしてもまさかあんた達とこんなとこで出会うなんてねぇ、思ってもみなかったわ!」 「笑い事じゃないでしょ! あんなにバンバン撃ち合っててさ!」 その夜、一行は事情をそれぞれ聞こうと、焚き火を付けて周りで話し合うことにした。そこで可笑しいとばかりにキュルケが大笑いしていたのだ。 「…ひどい目にあったでござる…」 剣心は毛布にくるまりながら、焚き火で暖をとっている。それを見て、またキュルケは可笑しそうにクスクスと笑う。 「いやあ、しっかし改めて戦うとやっぱり強いわね。本当に危なかったわ」 「呑気ねアンタ…てか只の平民に二人がかりで挑んでおいて、よくそんなまともな神経をしてられるわね」 襲撃者が知り合いだということで幾許か落ち着いたモンモランシーは、そんなキュルケを見て呆れたような声で言った。 キュルケとタバサは... -
るろうに使い魔-41b
前ページ次ページるろうに使い魔 『魅惑の妖精』亭の一室で、キュルケはベットに体を預けた。 貴族を追っ払ったあの後、店内は拍手喝采だった。それに満足しながらワインを煽っていたのだ。 しばらくそうやって盛り上がっていた後、そろそろ夜も更けたということでこの店に泊まることにした。無論ルイズのツケで。 「あああ、あの女、いいい、いつか絶対殺してやるんだから…」 遠巻きにそんなことを呟いていたルイズを思い出しながら、キュルケはふと起き上がった。 夜で暗くなった外は、街の灯りだけが綺麗に映し出されていた。その中に、あの子の姿は見当たらない。 「本当にどうしたのかしら…」 何か事件に巻き込まれたのだろうか、探しに行った方がいいかな。とそんなことを考えているキュルケだった。 しかし今でも不思議に思う。最初に会った頃なんて「本の虫」以外の感想なんて無かった筈の彼女に対... -
るろうに使い魔-44
前ページ次ページるろうに使い魔 チェレンヌ邸襲撃からその後、さらに時間が経過した。 刃衛達による強襲が再度やってこないか剣心達は警戒していたが、結果的にはそういうこともなく無事に事なきを得る運びとなった。 朝日が昇る頃になって、もう厳重警護を解いても良さそうだと判断したアニエスは、そのまま剣心とタバサ、そしてシルフィードを連れ、一度王宮へと戻る事となった。 「ここで待機してくれ」 王宮の応接室の一部屋へ案内された剣心達は、アニエスにそう言われ、そこで待つことになった。剣心は目を閉じて座して待ち、タバサは本を読んで暇を潰す中、それを見かねたシルフィードはきゅいきゅい喚いた。 「ねえ、折角お近づきになれたんだし、もっと話に花を咲かせてもいいんじゃないのね?」 どうやら、全然会話しない二人を見て業を煮やしたらしい。前々から剣心の事は気にかけていたシルフィードに... -
るろうに使い魔-36
前ページ次ページるろうに使い魔 「ふうっ…やっと出来た…しっかし苦労したわ…」 トリステイン魔法学校、その女子寮にて、モンモランシーが精根尽き果てたかのように、大きく椅子の背もたれに体をあずけた。 テーブルの上には、今しがた完成した解除薬が置いてある。 「これでこの悪夢もようやく終わるのね…」 隣のルイズと剣心も、やっと一安心したように胸をなでおろす。勿論、油断は最後まで厳禁だ。まだそうなると決まったわけじゃない。 「とにかく、ホラ、飲みなさいよギーシュ」 そう言って、モンモランシーは解除薬の入った壜をギーシュに渡す。しかしギーシュは不思議そうな顔をして尋ねたのだった。 第三十六幕 『翔ぶが如く』 「…何でそんなもの飲まなくちゃいけないんだい? 得体の知れないものは飲みたくないんだが」 それを聞いて、ビシリ、とモンモ... -
るろうに使い魔-33
前ページ次ページるろうに使い魔 「ケンシーーーーーン!!」 「ギーシューー!! どこ行ったのよぉーーー!!!」 ルイズ達は必死な形相で、剣心達の後を追った。端から見る生徒からは、何事だと思うことだろう。それを気にせず、ルイズは走る。 しばらくして、月夜の照らす中庭の辺りまで来ると、剣心を見失ったギーシュが一人泣き叫んでいた。 「おーーーーいおいおい、どこ行ってしまったんだよぉ。ケンシィィン。おーーーーーーーーいおいおい―――――」 ギーシュの姿を視認したルイズは、何のためらいもなく杖を抜いて呪文を唱えた。ボガァンと、ギーシュの顔面が爆発し、これでもかという程に吹っ飛んでいった。 第三十三幕 『ヴェストリの決闘 第二幕』 「ちょ…ルイズ! いきなり何すんのよ!!?」 「何、文句あんの?」 遅れてやって来たモンモランシーの叫び... -
るろうに使い魔-38
前ページ次ページるろうに使い魔 それは…満月が光り輝く闇夜だった。 流浪の果てに行き着いた街並み、東京の、何処か打ち捨てられた祠。 目まぐるしく移ろぐ時代の中、それを変えられず、剣を捨てられぬ二人の男がいた。 一方は人斬りを否定し続け、また一方は人斬りを快楽とし続けていた…正反対な二人の剣客。 「どうした…抜刀斎、何を躊躇っている」 ここで剣心は、今自分が何をしているのかに気づき、ハッとする。 これは―――この場所は―――。 「小娘にかけた『心の一方』を解くには、俺を殺すしかない。俺を殺さねば小娘が死ぬ。俺を殺せば小娘は助かる…簡単すぎる選択だ」 手には逆刃刀の、刃の部分を前に掲げ、視線は蹲っている一人の男に集中している。 「躊躇うことはない。またその時間もない」 男は、腕を折られ、満身創痍の様相にもかかわらず…その目は未... -
るろうに使い魔-45a
前ページ次ページるろうに使い魔 トリステイン国内、チクトンネ街の中央広場のすぐ近くに『タニアリージュ・ロワイヤル座』はあった。 豪華絢爛、煌びやかな様相を呈していたこの劇場に老若男女が集い、そして一つの劇が始まろうとしていた。 タイトルは『トリスタニアの休日』。別々の国の王子と王女が恋に落ちるという、在り来りなストーリー。しかし若い女の人には人気とのことであり、 なるほど場内を占めるのはほとんどが女性であった。 始まりを告げる音楽が奏でられ、皆が舞台の方を注目する中、それに紛れて二人の客が何やら話し込んでいた。 一人は初老の男性。身なりからして貴族な彼の様子は、周りが女性だらけの部屋で少し浮いているような気がしないでもないが、 今は始まった劇の真っ最中。誰も気に留める人などいなかった。 老人の貴族は、形だけでも劇を見ながら、呟くような声で隣の人物に言っ... -
るろうに使い魔-21
前ページ次ページるろうに使い魔 「遅くなってすまない。話は此奴と、ルイズ殿の目と耳から直に聞いたでござる」 呆気にとられるワルドたちを他所に、剣心は倒れた従者を見下ろし、そして今度は相手方を見る。 その双眸は、首謀者であるワルドを厳しく睨みつけていた。 「貴様…あれほどの数をどうやって…」 若干驚いたように、ワルドが詰問した。その問いに、デルフが愉快そうに答える。 「あれほど、ねえ…今度は三倍近く置いとくことを勧めるぜ。まあそれで相棒に勝てるかは別だけどな」 皮肉を込めた返答に、ワルドは少し顔を顰めた。数による優勢は以前変わってはいないとはいえ、これは少々予定外だった。 剣心は、それに気にせず次にルイズの方を見ると、この雰囲気に合わないような、いつもの優しい笑顔を見せた。 「心配かけたでござるな。ルイズ殿」 第二十一幕 『決戦』... -
るろうに使い魔
「るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―」より緋村剣心を召喚 第一幕『世界を越えた流浪人』 第二幕『流浪人の一日』 第三幕『流浪人の一日 そのニ』 第四幕『ヴェストリ広場での決闘』 第五幕『微熱のキュルケ』 第六幕『伝説の剣』 第七幕『土くれの盗賊』 第八幕『騒がしき日』 第九幕『土くれvs飛天』 第十幕『飛天の剣』 第十一幕『夢現』 第十二幕『密約』 第十三幕『始動』 第十四幕『道中』 第十五幕『仕合』 第十六幕『襲撃』 第十七幕『戦闘』 第十八幕『願望』 第十九幕『前夜』 第二十幕『結婚』 第二十一幕『決戦』 第二十二幕『決着の刻』 第二十三幕『これから』 第二十四幕『癒えぬ傷心』 第二十五幕『宝探しと冒険』 第二十六幕『タルブと謎の秘宝』 第二十七幕『想いと想い』 第二十八幕『因縁の出会い、虚無の誕生』 第二十九幕『虚無の力、... -
るろうに使い魔-43b
前ページ次ページるろうに使い魔 その昔、幕末の時代…まだ尊王攘夷を掲げ、日々殺し合いが続く渦中に、かつて一人の、凄腕の剣客がいた。 曰く、金で雇われる人斬り。斬る事、それだけに愉悦を感じられる人斬り。 その男は現代に消えた武術『二階堂兵法』の達人でもあった。 男は命じられるがまま……否、己の本能の赴くままに人を斬った。 幕末最強と謳われる剣客集団である壬生の狼『新撰組』に勤めながら、数々の維新志士を討ち取ってきた。 だが、男は余りにも不要な殺人を繰り返してきた。 その振る舞いに、とうとう身内にも危険だと判断された男は、新撰組から粛清という名の襲撃に会いながらも、それを逆に返り討ちにしながら新撰組を去っていった。 そして今度は、敵側だった維新志士の下で、人を斬り続けたのだった。 男に主義思想というものは存在しなかった。あるのはただ、人を斬りたいという... -
るろうに使い魔-42
前ページ次ページるろうに使い魔 その後、遅れてやって来た軍の人々から、ルイズ達は色々と質問を受けた。 この騒ぎは何だとか、この兵達を倒していったのは誰だとか、そんな質問だった。 ルイズ達は、取り敢えずタバサの言ったとおりに話し、事の発端はキュルケが起こしたが、軍を蹴散らしたのは「たまたま通り掛かった」タバサだったということにした。 勿論、彼女との関係も幾つか聞いてきたが、それに関しても知らぬ存ぜぬの一点張りで通した。自分達の身を庇ってくれたタバサに対して、なんとも心が痛む結果になったが、そうでもしないと身の潔白の証明にはならない。 特にキュルケの場合、原因は自分で起こしただけにかなり苦しそうな表情をしていた。 その辛そうな顔は、ルイズですらどこか同情の視線を送ってしまう程だった。 後は、スカロンやジェシカのフォローもあって、取り敢えずこれ以上の追求は... -
るろうに使い魔-41a
前ページ次ページるろうに使い魔 「こんなところで、奇遇でござるな」 可笑しそうな表情をしながら、剣心はタバサに言った。そして自然に、見たことのないシルフィードの方に首を向ける。 シルフィードはシルフィードで、剣心の方を指差して叫んだ。 「あ、あの桃髪ちびすけの使い魔の…赤髪のおちび!!」 「おろ?」 ガツン、とタバサが杖でシルフィードを殴った。見れば、剣心は益々不思議そうな顔をしていた。初対面の人にいきなりそんな事を言われては、誰だって疑問に思う。 「どちら様でござる?」 疑問に思った剣心は、当然シルフィードに尋ねる。 一瞬ドキッとした、シルフィードは、少しあわあわしながらも答える。 「私は………、えぇと。確かお姉さまの妹様の、シルフィ…じゃなかった。イルククゥなのね!!」 思い出すように時々顔を上に向けたりしながら、シルフィードはそう言... -
るろうに使い魔-37b
前ページ次ページるろうに使い魔 唸るような風をその身に受けながらも、剣心はそれを一瞥しながら考察した。 (さて、どうするか…) 流石にあの竜巻は受けきれそうもない。あれを何とか回避したあと、反撃に移るのが無難か。 そう考えて一旦この場は離れようとルイズ達に告げようとすると、キュルケの困ったような声が聞こえてきた。 「ねえ、この子急に固まったまま動かないんだけど!!」 第三十七幕 『人斬り抜刀斎 後編』 「どうしたでござるか!?」 キュルケ達の目の前にも、あの台風は見えている。早く離れようとする気持ちは一緒だろう。 しかし、ルイズにはまるで何も見えていないかのように、『始祖の祈祷書』を持ってブツブツと呟いていた。 「ルイズ殿?」 剣心が足早でルイズの隣に来ると、デルフが何事か閃いたようだった。 「ああ、『解除』か... -
るろうに使い魔外伝-01
前ページ次ページるろうに使い魔 春風が吹く季節も佳境に入り、段々と新緑の夏の匂いが色めき始めるこの頃。 ここトリステイン魔法学院も、遂に一週間後には待ちに待った『夏休み』が来ようとしていた。 殆どの学生たちは、皆久しぶりの実家帰りや企画を持ち込んでの大冒険を模索し賑わせる中、一人の少女は変わらない無表情で廊下を歩いていた。 少女の名はタバサ。その昔、大国ガリアの正統なる王女の血筋を引く者だったのだが、『不慮の事故』で父を亡くし、その上謀殺されたように母親も心を奪われ、自身は過酷な環境に身をおかされて日々生き死にをかける人生を送っていた。 幼い頃は明るかったその顔も、今はすっかり人形のようなものへと変貌してしまい、常に突き放すかな様な雰囲気をその身に纏わせていた。 これは、そんな彼女に起こった、ある一つの物語である。 外伝第一幕 『タバ... - @wiki全体から「るろうに使い魔-16」で調べる