あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「ゼロのロリカード-26」で検索した結果
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ゼロのロリカード
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ゼロのロリカード-26
前ページ次ページゼロのロリカード 学院の中庭に、剣戟の音が響き渡っていた。 殆どの女生徒が銃士隊の面々の指導の下、軍事教練に励んでいる中で、銃士隊の隊長との鬩ぎ合いをしている者がいるのである。 女性が持つにはやや大振りなアニエスの剣を、その攻撃を、サーベル片手にいなし、的確に攻撃を加えていく。 アニエスもその攻撃にきちんと対応し、傍から眺めていると互角にも見えないことはない攻防である。 しかし暫くすると、体力の違いが互いの動きにあらわれてくる。 アニエスはギアを一段階上げ、苛烈に攻め立てる。 保たれていた均衡は崩れ始め、いなしきれずアニエスの重い一撃を受ける度に手の痺れが大きくなる。 限界を感じて体勢を崩す。そんな隙を見逃す筈もなく、アニエスはサーベルを叩き落とすべく一際大きく振りかぶった。 だがその隙はつくられた隙。... -
ゼロのロリカード-20
前ページ次ページゼロのロリカード アーカードが例によって、銀縁メガネで棺桶に腰掛けて足を組みつつ本を読んでいる。 『イーヴァルディの勇者』。学術書などではなく、たまたま目にとまっただけの本。 特筆すべき点はない、よくある物語だがそれも暇潰しであった。 ノックなしに扉が開く、入ってきたのは部屋の主であるルイズである。 しかしルイズはその場から動かなかった、何かにとり憑かれたように虚ろな瞳でアーカードを見つめていた。 「どうした?ルイズ、ボーッと突っ立って・・・」 「ん・・・・・・うん・・・なんかアーカードを見たら、よく・・わかんないけど・・・・・・」 そう言ってルイズは立ったまま俯く。 アーカードは疑問符を浮かべた、ルイズが何を言ってるのか意味がわからない。 「んんっ・・・」 ルイズが艶っぽい声をあげ、体を震えさせた。下... -
ゼロのロリカード-28
前ページ次ページゼロのロリカード アンリエッタの到着に、痺れを切らせた敵がコンタクトを取ってきたところで作戦スタート。 十中八九人質に危害を加える旨を言ってくるだろうから、無手のアーカードが身代わりとして敵陣へと赴く。 敵首魁にエロ光線で以て魅了をかけ、とりあえず撤退の指示を出させる。万が一それで終われば無事解決。 と言っても素直に従う可能性はまずない。他の連中の反抗の意思が見えたところで、首魁に人質の縄をはずさせる。 同時に機を窺っていたタバサが、準備しておいた紙風船スタングレネードを風で食堂まで送る。 アーカードが浮遊してきた紙風船に注目するよう仕向け、敵の視線が集中したところでキュルケが紙風船を発火させ爆発。 然る後、一斉に突入を敢行する。 人質の救出を最優先事項とし、爆発で壁を破壊できるルイズと、デルフリンガーで魔法を吸収できるアーカー... -
ゼロのロリカード-27
前ページ次ページゼロのロリカード 太陽がまだ昇っていない朝方。月も雲に隠れ暗闇が広がっていた。 そんな中、学院全体に漂う不穏な空気に鋭敏に反応したのは、僅かに3人だけであった。 アーカードはムクッと起き上がり首をコキコキと鳴らすと、横で寝息を立てているルイズを起こした。 タバサはすぐに着替えて杖を取ると、階下のキュルケの元へと向かった。 アニエスは剣を抜き、扉の前で奇襲をかけるべく静かに息を殺した。 「一体なんなの?」 ルイズはわけもわからず促され、手早く着替えながらアーカードに問い掛ける。 「感じんか?」 アーカードに言われ、ルイズは疑問符を浮かべながら神経を集中させる。 なんとなくだが・・・ピリピリしているような気がした。 「なんだか変な緊張感がある・・・・・・のかな?」 「んむ、それが分かれば充分だ」 その瞬間、怒声と叫び声... -
ゼロのロリカード-24
前ページ次ページゼロのロリカード 夜が明ける。劇場前でルイズはじっと待っていた。 睡眠不足と疲労で今すぐにでも眠りたかったが、姫さまの無事な姿を確認するまでは、という意思がそれを支えていた。 暫くして、アンリエッタとアーカードの姿が見える。ルイズは立ち上がり、足がもつれて転びそうになりながらも走り出す。 「姫さま!」 「あぁ、ルイズ!」 そう言ってアンリエッタはルイズを抱きしめる。 「ごめんなさい、貴方に何も言わずアーカードさんをお借りしていました。黙っていたことは許してちょうだい。 その・・・あなたには知られたくない任務だったのです。アニエスと一緒にいると聞いて本当に驚いたわ。 ルイズ、やっぱりあなたと私はどこにいても駆けつけてしまう、そんな星の下に、運命にあるのかもしれませんね」 「用意万端、整いましてございます」 ... -
ゼロのロリカード-23
前ページ次ページゼロのロリカード その日情報収集の為にアーカードが夜の街を歩いていると、様子がいつもと違っていた。 何人もの兵士が街中にいて、ただならぬ様相を呈している。なにやら誰か人物を探しているようであった。 誰を探しているのかは一向に聞き取れない。迂闊に名前を出してはいけない者なのか。 名家の貴族でもいなくなったのか、などと思いつつアーカードが歩いていると路地の方から走ってくる音が聞こえた。 丁度曲がり角でぶつかりそうになるが、予め来るのがわかっていたので難なく避ける。 しかし走ってきた人影は、驚いたのか「あっ」と声を上げた。 「申し訳ありません、急いでいたもので」 「気にするな」 アーカードは現れた人物に向かって一言だけ言った。その女の声に何か引っ掛かりを感じたところで、女は続ける。 「あの、この辺りに『魅惑の妖精亭... -
ゼロのロリカード-29
前ページ次ページゼロのロリカード 「ッッ・・・・・・はぁ・・・はァ・・っ!!」 アニエスは大きく酸素を取り込み、吐き出す。煙が肺に入り何度か咳き込むもそれを繰り返した。 (運が良かった・・・・・・ただそれだけだ) 突入した直後に飛んできた炎球。しかし自分に怪我はない。 たまたま飛んでくるのが一番最後だったこと、突入したすぐ近くに敵メイジがいたこと、それが幸いした。 自分より先にやられたであろう仲間達の叫ぶ声と、複数聞こえた火薬の破裂音があったからこそすぐに違和感に気付けた。 だからこそ体が反応した。 (もしも最初に火球が飛んできていたら・・・・・・?もしも近くに敵がいなくて、咄嗟に盾にできなかったら・・・・・・?) 今のアニエスには目前で炎上する襲撃者すら、その視界には入っていない。 ただ目を見開いて大きく呼吸をし続ける。 「クソッ・・... -
ゼロのロリカード-22
前ページ次ページゼロのロリカード 「なかなかいい部屋だな」 梁にぶら下がった蝙蝠を撫でながらアーカードは呟いた。 そんなアーカードの反応とは裏腹に、ルイズは絶句していた。 『魅惑の妖精亭』、酒場と宿を兼ねているこの店の屋根裏部屋にルイズ達は通された。 薄暗く、埃にまみれ、蜘蛛の巣が張り、雑多にモノが積み上げられ、年季の入ったベッドが置かれた、物置としか形容できない部屋。 だけど四の五の言っていられない。ルイズはアンリエッタからの要請で、平民に扮して情報を集め報告するという任務を受けていた。 諸事情によってここで働くことになり、贅沢は言えない状況なのであった。 「そうそう、私は明日から外で情報を集める。それと、長丁場になりそうだから棺桶も持ってこんとな」 「え?なんで!私だけがここで働くの!?」 アーカードは蝙蝠を自分の腕に移動させ、穏やかな笑... -
ゼロのロリカード-34
前ページ次ページゼロのロリカード トリステイン・ゲルマニア連合軍は、驚くべきスピードでシティオブサウスゴータを制圧した。 勢いも士気も十分な上に、ルイズの虚無魔法『イリュージョン』の効果も相まって、被害も軽微。 しかしこのまま進撃を続けるかと思いきや、約二週間の足止めを食うこととなる。 理由の一つ目が、アルビオン軍がシティオブサウスゴータの備蓄食料を奪ったこと。 当然サウスゴータの人々を無視するわけにはいかず、軍の兵糧を分けることになる。 よって、早急な補給を必要とした。 理由の二つ目が、アルビオン軍側から降臨祭の期間と前一週間に限る休戦の申し出である。 補給の為の時間と慣例からこれを受け、降臨祭が終わるまでの約二週間を休戦することになったのである。 亜人相手に大暴れしたアーカードであったが、未だに血が滾っているようで、戦争が再開さ... -
ゼロのロリカード-14
前ページ次ページゼロのロリカード シカゴタイプライターなどとニックネームがつけられるその連射音は独特だった。 ドラムマガジンが装着されたトンプソンM1928を、片手で振り回しトリガーを引く。 本来ならばストックを肩につけるか脇に抱えて撃つものであるが、吸血鬼の膂力ならば片手でもその反動を簡単に抑えきれる。 しかしトミーガンの.45ACP弾ではオーク鬼の分厚い皮と脂肪に覆われた筋肉の体には何発撃とうとも致命傷足りえない。 尤も目的は別のところにある、弾幕を張り怯ませて足止めさえ出来ればそれでよかった。 トミーガンをしまいつつアーカードは怯んだオーク鬼を無視して、自分に襲い掛からんとする正面のオーク鬼の水月に向かって右足で蹴りを放つ。 蹴りこんだ水月を踏み台にしてオーク鬼の肩に駆け上り、右膝をその顔面にぶち込む。 さらに後ろに倒れん... -
ゼロのロリカード-15
前ページ次ページゼロのロリカード 「あれがそうですよ」 「あ~あ、安置されてるんじゃお宝もくそもないわね~」 キュルケら一行はシエスタの家から寺院が目視で確認できるところまで歩いていた。 タルブの村に到着し、シエスタを訪ね事情を話す。すると『竜の羽衣』は呆気なく見つかることとなった。 『竜の羽衣』はシエスタの曾祖父の物だそうで、村の近くに立てられた寺院に飾られているらしい。 そのまま帰るのも難だったので、とりあえず見るだけ見て帰るという話になった。 寺院の中に入ると竜とは似ても似つかない金属の塊があった。大きさはかなりのもので固定化の魔法がかかっている。 「なにこれ?」 キュルケが浮かび上がった疑問の言葉をそのまま呟く。キュルケだけではなくただの一人を除いて全員が疑問に思った。 そのただの一人であるアーカードだけは驚きの... -
ゼロのロリカード-25
前ページ次ページゼロのロリカード 学院を出て早馬を飛ばし、ラ・ヴァリエールの土地に到着する頃には、既に夜になっていた。 アンリエッタ女王陛下からの任務も、無事終了。夏休みももうすぐ終わる頃、ルイズは実家へと帰ることにしたのである。 道中休みながらきつつも、学院からラ・ヴァリエールの領地までは相当な距離であり、乗っていた馬が潰れるのも当然であった。 故にその日の夜は領地内の旅籠に宿泊し、次の日の早朝から新たな馬で行くことにした。 乗ってきた馬を預けると、とある宿屋へと案内される。中へ入ると、ルイズにとって嬉しい迎えがきていた。 「・・・!?ちいねえさま!!?」 「おかえりなさい、わたしの小さいルイズ。会いたかったわ」 そう言って、同じ髪の色をした麗しき姉妹は抱き合う。 「あぁ・・・私もです、ちいねえさま。でも・・・・・・何故ここに... -
ゼロのロリカード-37
前ページ次ページゼロのロリカード 「ぶはッ・・・・・・ゲホッゲボ、ゴボッ」 一人の男が姿を現した。 「な・・・・・・何だこれは・・・!!」 状況が理解できない。 「何が起きたんだ、何が起きてるんだ。何なんだこれは!!」 明るかった筈の空は夜のように暗く、気圧も大きく違う。 自分は風のスクウェア。その微細な感覚から、ここがアルビオン大陸であると認識する。 己はどうしていただろう。そうだ・・・・・・少女と戦っていた。 レキシントン号に何かが落ちてきて、そこからあの・・・・・・化物が、アーカードが現れた。 それで・・・・・・そう、犬だ。巨大な犬が、その大きな口で――――――。 そこで気付く、目の前にある巨大な黒い塊に。よく見ればそれは犬、自分を喰った犬。 「ひっ・・・・・・」 思わず小さな悲鳴が出る。体に刻み付けられた臨死の体... -
ゼロのロリカード-21
前ページ次ページゼロのロリカード タバサとキュルケが湖の前に立つと、何か異様な気配を感じた。辺りを探ると、湖と平行して自分達の直線状に人影を発見する。 いつからいたのか、いつの間に現れたのかわからない。二つの月は濃い雲に遮られ、何者なのかは確認できない。 だが地元の者でも観光者でもないことだけは確かだ、敵意が伝わってくる。 「何者ッ!」 キュルケがそう叫んだ瞬間"敵"は長い得物を振りかぶり、真っ直ぐ最短距離を進んできた。 タバサはいち早く反応し、呪文を唱えてエア・ハンマーを放つ。空気の槌は目前まで迫った"敵"を叩き、湖と反対側の森まで吹き飛ばす。 その間にキュルケはファイヤー・ボールの詠唱を完成させ、火球は"敵"目掛けて真っ直ぐに飛んだ。 着弾すると思われた瞬間キュルケは目... -
ゼロのロリカード-10
前ページ次ページゼロのロリカード 『土くれ』のフーケがおこした破壊の杖盗難事件と、その奪還任務が終わってから1週間ほど。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、つつがなく学院生活を送っていた。 以前と変わったことと言えば、使い魔召喚の儀から己の従者となった規格外の吸血鬼の存在。 アーカード。殆ど彼女のおかげで、先のフーケ関連の事件も解決したようなものであった。 件の少女は棺に腰掛けながら、手に持った小瓶をゆったりと眺めていた。 「なにそれ?」 アーカードは光が当たって、キラキラと輝く小瓶の中身を見つめながら答える。 「モンモランシーから貰ったポーションだ、試作品らしいがの。ちなみに中身は・・・・・・秘密だ」 秘密と言われ、妙な疎外感にルイズは眉を顰めた。 「そう・・・・・・主人である私にも秘密なの?」 アーカード... -
ゼロのロリカード-60
前ページ次ページゼロのロリカード ビダーシャルが風石を発動させようとした一瞬――――――。 眼前にルイズの姿が飛び込んでいた。まるでまばたきの合間に割り込んできたかのように。 雪風の領域から一歩踏み出したと思ったら、ジョゼフの加速が如き速度で。 ルイズはその右手で握った剣の間合いに置いている。 間断なくサーベルの刃が抜き打たれ、反射の障壁を切り裂く。 同時に風石によってビダーシャルは空へと飛び上がった。 「ッッ・・・・・・!?」 冷や汗が全身に流れる感覚を覚え、一人空中から見下ろす。 ルイズの放ったサーベルは、ビダーシャルの首があった位置でピタリと止められていた。 一撃で決めるつもりだった攻撃を回避されたことに、ルイズは肩を竦める。 「少し話したいことがあるんだけど?」 ビダーシャルの目が細まる。 サーベルを寸止めたことから見る限... -
ゼロのロリカード-63
前ページ次ページゼロのロリカード タバサとシルフィードと別れ、アーカードは森の中を歩いていた。 アルビオン、ウエストウッドの森。そこが決着の地。 そこに現れる老齢の男。 否・・・・・・最初から既にそこにいて、ずっと待っていたのだろう。 老いさらばえた肉体とは対照的に、その射抜くような眼光は少しも衰えを見せていない。 アーカードは仇敵と視線を交わすと、少女姿から青年姿へと姿を変える。 この男と・・・・・・アレクサンド・アンデルセンと戦うに、最も相応しい姿。 かつては共闘もした宿敵。 しかし間違いなく、アーカードにとってアンデルセンは敵であり、アンデルセンにとってアーカードは敵。 その厳然たる事実は決して変わりようがない。 「我は神の代理人」 アンデルセンは両手に持った銃剣で十字を描き、聖句が如くに言葉を紡ぐ。 「神罰の地上代行者」 ... -
ゼロのロリカード-04
前ページ次ページゼロのロリカード 「気にすることはない」 講義が中止となり、爆発で滅茶苦茶になった教室の後片付けをし、煤だらけだったローブと服を着替えた後。 アーカードとルイズは食堂へと向かっていた。 「慰めなんて不要よ」 「・・・・・・他意はないぞ」 「変に気を回さなくていいわ。この程度のこと、慣れてるもの」 ルイズは淡々と答える。 (これは何を言っても無駄のようだな) そもルイズはきちんと自己分析はしているようだし、現状を把握して今を見据えてるようだった。 多少なりと意地になっているのも、次こそは成功させるといった気持ちの裏返しなのかも知れない。 失敗を糧に、後悔をバネに努力し、いずれはその想いを成就させる日もくるだろう・・・・・・恐らく。 なにかしら助言をするのは主が重圧に耐え切れなくなり、落ち込んだ時にで十分と判断する。 少なくとも、今は... -
ゼロのロリカード-36
前ページ次ページゼロのロリカード さくり、さくりと死んでいく。 銃兵やメイジ達は、敵味方関係なく弾や魔法を撃ち放つ。 槍を振り回し、剣を振り回し、生き延びるために、死なない為に、目の前の畏怖から逃れたいが為に。 周囲を顧みずもがく。無我夢中でもがく。祈る暇もなく。覚悟する暇もなく。 フライで逃れようとする者も、有象無象の区別無く撃ち落される。 暴風雨の如きトランプが、一瞬にして空気を、肉を裂く。 槍衾が狼狽する者達を突き貫き、次々と天高く掲げられる。 死を恐れぬ軍団が、死して尚、歩みを止めぬ軍団が、死にながら戦う軍団が。 天を血で染め上げ、地を黒く平らげ、人を造作もなく蹂躙する。 ひたすら一方的な・・・・・・、ただのワンサイドゲーム。 否、これはもう戦いとすら呼べない。 なんというずるだ。生も死も全てがペテン。 何と... -
ゼロのロリカード-35
前ページ次ページゼロのロリカード 「拘束制御術式零号、開放!!」 ルイズの命令が木霊する。 「帰還を果たせ!!幾千幾万となって帰還を果たせ」 高らかに叫ぶ声が、夜明け前の空に残響する。 「謳え!!」 「私は・・・・・・ヘルメスの鳥」 アーカードの謳う詩に呼応するかのように、棺桶に紋様が浮かぶ。 「私は自らの羽を喰らい・・・・・・飼い、慣らされる」 ◇ 「なんだ・・・・・・?これは・・・・・・?」 アルビオン軍の銃兵隊士官が、その異変に最初に気づいた。 使い魔のフクロウから得る視界から見えたのは、二人の少女と棺桶である。 進行方向にただの少女がいるわけがない。もしかしたら敵の虚無かもしれない。 すぐに銃兵に弾込めを命じたものの、兵達の手が震えて思うように上手くいかない。 ... -
ゼロのロリカード-32
前ページ次ページゼロのロリカード その者は眼鏡をかけた大柄な男だった。 くるぶしまで届くコートを羽織り、胸元には十字がぶら下がっている。 金色の短髪。俄かに顎鬚を生やし、顎下左から頬にかけて大きな傷痕が目立っていた。 男は少女エマに先導されてついていく。 なんでも・・・・・・ジャックとジムが喧嘩しているので、それを止めて欲しいということであった。 「コラーーーッ、2人ともやめなさ~~~いッ」 二人の姿を確認し、言葉だけで窘める。 まだ小さい子供なので、叩き叩かれるのもちょっと小突き合いしている程度に過ぎない。 男の言葉に、すぐに二人は喧嘩をやめる。 「いったいどうしたというのです」 男はすぐに仲裁する為にその理由を聞く。 「ジムの奴が先に殴ったんだッ」 「ちがわいッ、ジャックが僕の本を・・・」 木々の隙間から差し込む陽光... -
ゼロのロリカード-03
前ページ次ページゼロのロリカード ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはどっと疲れていた。 夜中に使い魔であるアーカードに起こされ一悶着。 その後は歴史や文化、貴族や支配体系、国の情勢など多様な事を聞かれ、そして一つ一つ答えた。 おかげで二度目の就寝につけたのは、ほぼ夜が明けてからとなったのである。 ルイズはそのまま泥のように眠ってしまい、起床したら授業が始まるギリギリの時間。 昨日の夕食は失神していた所為で食べてなく、その上朝食まで寝過ごして食べられずルイズは心底げんなりしていた。 ルイズが起きた時、アーカードは眠っているようであった。 アーカードは棺桶を寝床にしている。さすがに開けて見る勇気は自分にはなかった。 なんでも日光が大嫌いだそうで、陽が出ている内に起こしてしまったら、それを理由に何をされるかわからない。 触らぬ神... -
ゼロのロリカード-41
前ページ次ページゼロのロリカード 「・・・・・・重畳」 ウォルターはトリステイン魔法学院の遥か上空で呟いた。 タバサから、任務受諾と決行日付及び時間の連絡があり、こうしてやって来た。 多少の下見と下調べをしていたとは言え、ここまでスムーズに来れるとは・・・・・・。 (未だに戦勝気分でボケてんのかな?) 無断でトリステイン国内に侵入し"これ"を運んでいる以上、ラッキーではある。 余計な戦闘をしなくていいのは、素直に助かる。 領内侵入の都合上、夜というのは固定であった。 昼間じゃ簡単に見つかってしまう。あまり派手にやり過ぎると、任務にも支障が出る。 アーカードが最も力を発揮する夜は、正直お断りだったが・・・・・・しょうがない。 ウォルターは魔法学院を鳥瞰する。 タバサはちゃんと任務を遂行しているだろうか。 任務を受... -
ゼロのロリカード-39
前ページ次ページゼロのロリカード トリステイン、ゲルマニア、ガリアの各代表達が一同に会した諸国会議。 不可解な事や多少の波乱こそあれ、当初の予定通り二週間で無事収束した。 アルビオン大陸からの退却を完了した、トリステイン・ゲルマニア連合軍。 その代わりにアルビオンを制圧したのは、突如参戦してきたガリアの艦隊であった。 つまり実質的に戦争を終わらせたのは、ガリアと言える。 しかしガリアが欲したのは港のみ。あまりに不可解であり、真意が測れない。 とはいえ、トリステインとゲルマニアとしても、自国の領土が増えて困る事はない。 何か裏があるとは考えても、それ以上はわからない。 言及しても、のらりくらりと恍けた事しかジョゼフは答えない。 仕方が無いので、目先の利益をトリステインとゲルマニアは優先する。 結果、首都ロンディニウムとその一帯の地域... -
ゼロのロリカード-06
前ページ次ページゼロのロリカード 「乗馬、上手いのね」 「乗るのは久方振りだが・・・・・・な」 人間だった頃は、己の手足のように扱って戦場を駆けていたものだった。 しかし近現代になってからは、移動手段は専ら自動車や鉄道、船舶や航空機である。 元の世界で馬で移動するなど、それこそ数十年以上前の話であった。 「町に出掛けるわよ」と、アーカードの主であるルイズの第一声。 なんでも虚無の曜日で講義はないらしい。 「なるほど、それはとても素晴らしい提案だ我が主」 正直、学院内の散策だけでは些か飽きてきたところであった。 「それに町並と人の生活を見てこそ・・・・・・その国の、ひいてはこの世界の文化を知れるというものだ」 そう返してアーカードは、学院の外の世界を堪能することにした。 馬で片道およそ三時間ほどの距離。 ルイズとの他愛ない話も途切れ... -
ゼロのロリカード-07
前ページ次ページゼロのロリカード 「ぎぃやぁぁぁあああああああああああああ」 先の本屋とは違い、乱雑に並べ立てられた武器の数々。手入れされているのかも疑わしい品々。 店内の明かりの少なさもそれを目立たなくする為なのか、かなり薄暗い。 そんな武具屋に一人の男の慟哭が響き渡った。 「なんだ、折れてしまったではないか」 小柄な体躯にキリッと鋭い紅い瞳、黒い髪を腰より長く伸ばした少女は悪びれず言い放った。 その手には大剣があった。宝石に彩られ装飾された黄金色の大剣、誰の目から見ても高そうなシロモノである。 尤も、真っ二つに折れているので武器としては当然もう扱えない。 「なんてことしてくれやがんだ、このガキッ!」 悲鳴を上げていた店主の親父は、一転して少女アーカードを怒鳴りつけた。 もう一人の少女ルイズはその光景に呆れた表情で眺めていた。 ... -
ゼロのロリカード-31
前ページ次ページゼロのロリカード 「不確かな"兵器"か・・・・・・」 ルイズは一人ごちた。確かにその通りだ。強力ではあるが不安定。 虚無の系統が使えると言っても、自分が使用可能な魔法は一つだけ。 その唯一使える"エクスプロージョン"は、実際に放ってみない事にはその威力を計り知ることはできない。 己に課せられた陽動の任務の為にも、明日までに新しい呪文を覚えないとまずい。 ルイズはパラパラと始祖の祈祷書を眺める。 デルフリンガー曰く、必要な時がくれば読めるらしいが・・・・・・。 「何も書いてないじゃない」 白紙だらけの祈祷書に、ルイズは唇を尖らせる。 どうにも行き詰まり、書を閉じてアーカードの方へと顔を向ける。 「・・・・・・デルフ」 すぐに視線に気付いたアーカードは、ルイズの表情から察してデルフリンガ... -
ゼロのロリカード-19
前ページ次ページゼロのロリカード アルビオンとトリステインの決戦から三日。 学院では授業も再開され、つつがない日常が戻りつつあった。 「いやあ~スゴかったね!まさに奇蹟の光だったよアレはッ!!さすがはアンリエッタ女王陛下、聖女万歳!」 「ふゥ~ん、そんなに凄かったんだ?まあ奇蹟でも起きない限り、トリステインが勝てるわけないわよね~。ルイズとアーカードも見たんでしょ?」 キュルケの言葉にルイズはしどろもどろに頷く。 「へ?・・・ぁ・・・う・・うん。凄かったわよ・・・・・・うん」 「私は敵旗艦で暴れてたからなぁ・・・直接は見ていない。というか聞いている限りだと、件の光のド真ん中にいたことになるな。んむ、確かにアレは眩しかった」 広場に集まっているのは、ギーシュ、キュルケ、ルイズ、アーカード、そしてタバサである。 「敵旗艦で暴れてたって・・・何... -
ゼロのロリカード-52
前ページ次ページゼロのロリカード 敢えて例えるなら――――――陽光届かぬ、深海のそれに似ている。 上下左右の感覚は無く、ただただ無限に広がるかのような暗黒の空間。星の無い宇宙。 それでも踏みしめる地はあるし、終わりの見えない空もあった。 息を潜める獣達の気配を感じる、自我を失った獣達。 隙を見せれば、瞬く間に襲い掛かって来るだろう。 油断すれば、喰い尽くされるやも知れぬ。 そんな黒い地平を進む者がいた。 もう一体どれほど、ここへ足を運んだのだろう。 そしてどれほど歩き、どれほど走り、どれほど飛んだのだろう。 そこは地獄。亡者の国。憎悪と怨恨に塗れた死の世界。 常人ならば容易に狂ってしまう。正気を保ってなどいられない。 すぐにでも自己を見失い飲み込まれそうな・・・・・・在り方が滅してしまいそうなその地を。 何度も赴き、何度でも疾駆... -
ゼロのロリカード-01
前ページ次ページゼロのロリカード 時の止まった世界――――――。 ――――――否、時の流れぬ・・・・・・時の存在しない世界。 実数ではなく、虚数のみで構成された世界。 虚無の空間。そこには何も無い。空間すらも無い空間。 生物と非生物を問わず。物質と非物質を問わず。 あらゆる存在が"無"と同義となる世界。 ――――――だが、それでも確かに"いる"。 侵入することも脱出することも不可能である存在しない筈の世界。存在の許されぬ空間。 拒絶され、隔絶された宇宙に、全てが融けている。 有意識と無意識の境界もなく、ただただ凍った中空を漂い続ける。 光も闇もない、白でも黒でもない・・・・・・ただ"無色"の空間に――――――何かが浮かび上がる。 それは・・・・・・ソレ自体が発... -
ゼロのロリカード-64
前ページゼロのロリカード ウォルターは夜の明けた空に照らされるアーカードを仰ぐ。 大の字に倒れ、決着を噛み締めていた。 「強い・・・・・・な」 勝てると思っていた。 今までのアーカードとの戦闘経験から、おおよその強さは把握していたつもりだった。 30年もの間、常にアーカードと戦うことを頭でシミュレートし、戦術を練り続けてきた。 杭などの弱点も用意し、大尉にも勝った今の自分ならば、勝てる・・・・・・と。 しかし充分な勝算で以て挑んだ筈であったが、完膚なきまでに叩きのめされ敗北した。 「そりゃ30年間遊んでいたわけじゃないしの。今まで吸ってきた者達とひたすら戦ってきたのだ。 膨大過ぎる数と充分過ぎる時間、嫌でも錬磨されるというものよ。少々長くなり過ぎたが・・・・・・な」 ウォルターは「ふふっ」と子供っぽく笑った。本当に敵わないと、素直にそ... -
ゼロのロリカード-05
前ページ次ページゼロのロリカード 「待て」 不穏な空気を感じたアーカードは、シエスタを庇うように金髪の少年の前へと割って立つ。 「なんだ、君は。給仕同士庇い合いかね?」 「そうだな、そういうことで構わん。確か・・・・・・ギーシュと言ったか」 不意に己の名前を呼ばれ、ギーシュがまともに目をアーカードへと向ける。 「君みたいな平民に名を名乗った覚えはないが・・・・・・」 と、そこで気付く。妙なメイド服を着ていてわかりづらい。 が、よくよく見ると召喚の儀と午前の講義とで二度も見ている顔であった。 「ああ、ルイズの使い魔か。まったく、いよいよ以て平民じみているようだねぇ」 「フッ」 アーカードは鼻で笑った。 貴族だの平民だの、自分にもそうやって区別していた時期があったことに。 今思えば狭量であった。そういう風に生まれ、そういう風に育ったから仕方の... -
ゼロのロリカード-46
前ページ次ページゼロのロリカード 当然ながら、戦闘は呆気ないほどに終わった。 銃剣を使うまでもなく・・・・・・無手で佇むアンデルセン、周囲には倒れ伏す傭兵達。 顎を砕かれた男、肋骨が折れ肺に刺さる男、内臓が破裂しかけてる男、両腕が逆方向に折れ曲がっている男。 怪我一つなく、仮にあったとしても再生するアンデルセンとは、対照的な様相を呈していた。 「誰に雇われた?何が目的だ?」 アンデルセンはリーダー格らしい男の襟を掴んで持ち上げ、問い詰める。 男は「ひっ」と怯えた声を上げると、すぐに堰を切ったように喋りだす。 アンデルセンの恐怖が、心の髄まで染み込んでいた。 「も・・・・・・目的は知らねえ!」 アンデルセンは一切の嘘を見逃さず、且つ嘘をつかせぬよう、睨み付ける。 「本当なんだ!!い・・・・・・依頼人もよくわからねえ、ただあんたを足止めするように... -
ゼロのロリカード-17
前ページ次ページゼロのロリカード 学院から早馬を飛ばしてルイズとアーカードは王宮へときていた。 アンリエッタ姫殿下直々の出陣という報を聞いたので、ルイズはいてもたってもいられなかったのである。 既に戦の準備は始められており、王宮内もそれに呼応するかのように張り詰めていた。 いよいよもってアンリエッタ直々の出陣もありえないことではないとルイズは思う。ならばせめて傍に控え、 お支えするのが自分の務めと考えていた。 前回の強引に通行した一件からか、話は通してあったようで、名を名乗るとあっさりと門を通された。 戦の準備が進められてる中、ルイズとアーカードは中庭を歩いていると見知った顔を見つける。 アーカードは爽やかに笑いその人物に手を振った。 視界の端に少女を捉えたマンティコア隊隊長、ド・ゼッサールは苦い顔をする。マザリーニ枢機卿に説明... -
ゼロのロリカード-11
前ページ次ページゼロのロリカード ワルドは歯噛みした。 得物持ちの空賊が数十人。こちらへ向けられている二十数門に及ぶ船の大砲。そしてグリフォンを眠らせたメイジ。 彼我の戦力差は明らかであった。だが幸い精神力はほぼ満タンと言って良い、『遍在』を使い攪乱しつつで戦えばなんとかなるかも知れないが・・・・・・。 しかし相手のメイジが何人いるのかもわからない、いくらかの被るダメージは覚悟しなくてはならないだろう。 そして他を・・・・・・少なくともルイズを守りながら戦うというのは、かなり難しいと判断する。 ラ・ロシェールから順調に行程を消化し、既にアルビオンは目と鼻の先だと言うのに・・・・・・。 ここに来て面倒なトラブルに見舞われた。まさか空賊なんぞに襲われるなどは予想していなかった。 完全な想定外、とはいえ自分たちは貴族。 拘束し交渉すれば、身代金を得... -
ゼロのロリカード-50
前ページ次ページゼロのロリカード ガリアとの戦争は・・・・・・そう遠くない。 そういうことに関して鋭敏なアーカードだけでなく、ルイズも所謂匂いというものを感じていた。 アーカードと共に過ごし、手解きなどを受けている所為もあるのかも知れない。 危機に関しての独特な嗅覚というものが、自分にも備わり始めたのだろう。 さらに予感を補強する材料があった。 アーハンブラ城で、ジョゼフを近くで観察していたことが起因する。 地獄を見たいと言っていたあの男。ガリアの狂王には躊躇いというものがない。 あの男は・・・・・・確実に、何かをしでかす。 その最もわかりやすい形こそが戦争であった。 「う~ん・・・・・・」 ルイズは悩む。 ガリアとの戦が意味するところ、客観的に見ればトリステインの敗北以外に他ならない。 彼我の戦力差は、今更論じるまでもないほど圧倒的。 ... -
ゼロのロリカード-33
前ページ次ページゼロのロリカード ティファニアの家の中では、およそ見る者が見れば戦慄するほどの状況になっていた。 本来は村の子供たちと共に食事をとる、大きめのテーブル。そのそれぞれの椅子に座る面々。 ルイズとアーカード、ティファニアとアンデルセン、シュレディンガーと大尉。そして大剣が一本、デルフリンガー。 アーカードとアンデルセンと大尉。 この三者が顔をつきあわせて同じテーブルに座ることなど、通常考えられない。 しかし少女二人と、自分達が身を置くこの世界、そして何も知らない今の状況がそれを実現させていた。 簡単な自己紹介を終えたところで、ようやくルイズは少しモジモジとしながら俯くくらいには落ち着いた。 尚、第二竜騎士中隊の面々は全員が死んだそうだ。アーカードが全員確認済みだと言った。 中には半死半生の状態の者もいたらしいが、その場で回復させる... -
ゼロのロリカード-16
前ページ次ページゼロのロリカード 「ねぇ・・・、強くなるにはどうしたらいいの?」 カスール改造銃といくつかの弾装を棺桶に並べ、床に座りながらそれらを点検してるアーカードにルイズは尋ねた。 「なんだ?いきなり」 銀色下縁眼鏡をかけたアーカードは、銃を弄くり回しながらルイズに理由を聞き返す。 「ワルドの時も、この前の宝探しの一件でも、自分の力不足を切に痛感したわ。あなたに頼りっきりじゃなくて、せめて自分自身を守れるくらいには強くなりたいの」 「・・・ふむ」 「近い内にアルビオンが戦争を仕掛けてくるかもしれないし。贅沢を言うつもりはないけど、できることなら・・・姫さまのお役に立てるくらいに強くなりたい」 ルイズは拳を握り締める、それは努力しても一向に魔法もまともに使えない彼女の悔しさの表れ。 そしてアンリエッタを支えたいという気持ちの表れであ... -
ゼロのロリカード-30
前ページ次ページゼロのロリカード メンヌヴィルを殺すのに力を使い切ったアニエスは、その場にドッと倒れ込む。 そのまま眠ろうかと思った時、自分の名前が呼ばれた気がしてアニエスは閉じかけた瞼を開けた。 「よう、アニエス」 黒髪の少女が、紅い瞳で己を見下ろしていた。 「処女か?」 目の前の少女の口から突然飛び出した質問に、アニエスは眉を顰めて疑問の目を投げかける。 まるで意味がわからない。 「処女かと聞いている、答えろ」 「だっ・・・・・・たら・・・な・・んだ」 わけもわからないまま声を振り絞る。既に思考力は低下し、考えるのもめんどくさい。 アニエスは「どういうことだ?」と視線だけで訴えた。 「致命傷だ、長くはもたん。お前は直に死ぬ。生徒が唱える程度の治癒魔法では、とても間に合わん」 アーカードは一拍置いて口を開いた。 「どうする?... -
ゼロのロリカード-45
前ページ次ページゼロのロリカード アーカードと、――――――そしてアンデルセン。 常人ならば心臓すら止まりそうな・・・・・・。 その殺気の満ち満ちた空間で動けるのは――――――原因となっている、二人だけであった。 底冷えするような空気の中、キュルケやタバサは当然。コルベールも、アニエスですら動けなかった。 アーカードは困惑の色こそ浮かんだが、宿敵の姿にそんな瑣末なことは頭の中から霞のように消えていた。 アンデルセンは大股に歩を進め、アーカードへと近付いていく。 互いの間合いに入り、今にも壮絶で凄惨な殺し合いが始まりそうなその雰囲気。 ・・・・・・しかし、そんな一触即発の状況は一方的に解かれた。 アンデルセンが・・・・・・いきなりそれを抑え込んだのである。 アーカードはそこでようやく、思い出したかのように困惑する。 何故トリステインに、それ... -
ゼロのロリカード-43
前ページ次ページゼロのロリカード 突如平和な魔法学院で起こった襲撃事件。 ただでさえ、メンヌヴィルが率いたメイジ集団に続く、二度目の学院への襲撃。 例えそれを考えずとも、当然ながら大事にならない筈はなく。 とりあえずアーカードは王宮へと赴き、事件のあらましをかいつまんでだけ話す。 「そん・・・・・・な・・・」 ルイズが攫われた。 その事実を目の前にして、アンリエッタの顔が蒼白になる。 そして・・・・・・同時に圧し掛かる選択。 己の取るべき道――――――友を助けるか、それとも国の安全を考えるのか。 「気に病むことはない」 アーカードはそう言うも、アンリエッタの顔は険しくなる一方である。 見通しが甘かったのか?否、こんなことになるなんて誰にも予想なんて出来なかった。 ガリアが・・・・・・このような凶行を行うなど。 「・・・・・・それに、今か... -
ゼロのロリカード-53
前ページ次ページゼロのロリカード 学院敷地内から飛ぶと、正門前の草原に大尉が見えた。 大尉も当然アーカードに気付き、風竜に乗って空中のアーカードのところまでやってくる。 寡黙な大尉は一切喋らず、ただ風竜の背中を指差すと「乗れ」と意思表示をした。 断る理由も無いので、ヴィンダールヴの力で操られた風竜による、快適な空の旅でロマリアへと赴く。 途中ラグドリアン湖に寄ってアンドバリの指輪を返し、いよいよロマリアへと到着した。 「ヴィットーリオは今立て込んでるから、先に武器庫に案内するよ」 そう言ってロマリアで待っていたシュレディンガーに案内される。 シュレディンガーが先行し、アーカードと大尉がそれに続く形で螺旋階段を降りていった。 大聖堂の地下階にある、地下墓地の名残。 一般人ならば忌避するだろう雰囲気も、アーカードにとっては心地の良いものだった。 「... -
ゼロのロリカード-08
前ページ次ページゼロのロリカード 「くっ・・・・・・一体なにしてるのよ」 舞台袖の待機場所、ルイズの順番が着実に近づくものの一向に姿を現さないアーカードに歯噛みした。 迂闊だった、首に縄つけてでも引っ張ってくるんだったと。 一緒に暮らしてみてわかってきたことがある。基本的にアーカードは昼間あまり出歩かない。 日光が大嫌いゆえに燦燦と照りつける真昼は寝る時間帯で、一般人とは逆の生活スタイルなのだ。 主な活動時間帯は黄昏時から黎明時。つまり夕暮れから夜明けとついでに朝方のほんの少しといったところだ。 今の時間帯は真昼日中。 アーカードにとっては寝ていたい時間帯。このまま待っていても来るとは思えない。 この前街に出かけた時は、あんだけ啖呵切るように主に従うとか言ってたくせに。 己にとって些事だと判断すると、ナチュラルに無視するようである。 それと... -
ゼロのロリカード-44
前ページ次ページゼロのロリカード 「何も読めんな・・・・・・」 ジョゼフはやや落胆したような声で呟いた。 土のルビーをその指に、始祖の祈祷書をその手に。 何度か祈祷書をパラパラとめくるものの、文字が光り浮かび上がる気配は一向に無い。 「俺にとってまだ必要な時ではない、と言うことか・・・・・・」 尤もジョゼフとしては読めないなら読めないで、それも構わなかった。 今覚えている呪文だけでも、充分過ぎる。新たな魔法を覚えなくても特に不都合はない。 「これで四の指輪と四の秘宝の内、五つが我が手にある・・・・・・か」 指輪が二つ、秘宝が三つ。と言っても、集めたからどうだというものでもない。 少しだけ興味が湧いたから、なんとなく収集している程度に過ぎない。 ジョゼフは、人質である少女達に目を向ける。後ろ手に縛られ、身動きが取れない二人の少女。 「・・・・・・全... -
ゼロのロリカード-38
前ページ次ページゼロのロリカード 「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」 一人の少年が、疲れから深呼吸を繰り返していた。 (クソッ・・・・・・、クソッ!!!また届かなかった・・・・・・僕の糸は・・・また・・また・・・・・・ッッ!!) 悔やんでも悔やみ切れない。少女の後ろ姿を見つめながら、歯噛みする。 「よう、ウォルター」 振り向いた少女が口を開く。 「最後の一人は・・・・・・おまえか」 ウォルターは目を細め、少女アーカードを見つめる。 「残念でした、少しばかり遅かったなあ」 嘲笑するように、アーカードは言う。 ウォルターは空を仰ぐ。 「・・・・・・く・・・はは・・はは!!ははは・・・・・・ははッははははははははははは!!」 哄笑が黎明に木霊する。本ッ当に自分自身に嫌気が差す。 どこか悲しげなその笑いは、少しずつ小さくな... -
ゼロのロリカード-40
前ページ次ページゼロのロリカード 「君が北花壇騎士七号だね?」 トリステインのとある酒場で、タバサはその人物と会う。例の如く任務の通達。 しかしガリアに召還されず、トリステインで任務を受けることなど今までに無かった。 人は普段と違う時、少なからず邪推してしまうもの。 それはタバサも例外ではなく、騎士になってからはより顕著であった。 疑心と考察を常とする。 情報の鵜呑みは己の危険に直結し、何事もまず疑ってかかる。 今までそうやってきたからこそ、こうして生き残ってこれたことに通じる。 いつ如何なる時も頭を回転させる、思考停止はそのまま死に繋がるのだ。 「初めまして、僕はウォルター。シャルロットもといタバサ。なるほど、髪色とかジョゼフの面影も・・・・・・」 他愛なく発したウォルターのその言葉に、タバサの心が氷のように冷え切る。 知らず憎悪と殺気の... -
ゼロのロリカード-55
前ページ次ページゼロのロリカード トリステイン艦隊、『オストラント』号。 ツェルプストー家の財力を使い、コルベールが作り上げた渾身の蒸気船。 飛行機と船を折衷させたような、周囲の艦とは明らかに一線を画した特異なデザイン。 風石をふんだんに使用し、石炭燃焼による蒸気機関を搭載。 そして何よりも特筆すべきは、コルベール謹製のジェットエンジンを積んでいた。 アーカードから教わった知識と、それを体現できるコルベールの技術力。 SR-71『ブラックバード』の特殊な燃料を不完全ながらも錬金した、卓抜したメイジとしての実力。 タルブ戦後も研究をし続け、爆発力は落ちるもののSR-71のそれよりも遥かに扱いやすい燃料を開発。 それらが噛み合い実現させた、世界で唯一にして最速の船。それが『オストラント』号であった。 コルベールは設計から建造まで全てを手掛け、遂にはこのガ... -
ゼロのロリカード-48
前ページ次ページゼロのロリカード アーハンブラ城内部はさながら迷路のようであった。 廃城であるが故に通れない箇所もいくつかあり、城内にいる兵士も少なくない。 そこを探索していくのは、決して容易なことではなかった。 ウォルターが死んだ以上、ルイズ達が生かされる猶予も一抹の保証すらもなくなった。 人質の所在を知っている兵士をようやく見つけ、エロ光線で操り案内させる。 アーカードとタバサが大きめの広間へと出ると、そこにはルイズとティファニアを含めた五人の人物がいた。 「待ってたよ」 「・・・・・・ウォルター」 つい先刻殺した筈の男が、特に何事もなさそうにそこにいた。 アーカードの疑問に先回りするように、ウォルターは説明する。 「あれはスキルニルと言ってね、血を吸った者の姿形を再現する古代のお人形さ。 尤も所詮はコピー商品、オリジナルの力を十... -
ゼロのロリカード-59
前ページ次ページゼロのロリカード ――――――ルイズ達の眼前を包み込んだ炎熱が掻き消える。 否、より強い何かに吹き飛ばされた。 それは火のブレスのみならず、火竜騎兵もろともであった。 熱気の残滓だけが・・・・・・ついさっきまで、確かに迫っていた死の匂いを感じさせた。 ルイズは目をぱちくりさせる。 タバサは中途半端に唱えたジャベリンの詠唱を霧散させる。 「まだまだですね、ルイズ」 自分の名を呼ぶその人は誰だろう・・・・・・? 頭ではすぐにわかったが、「こんなところにいる筈がない」と思考がおっつかない。 魔法衛士隊の服に、隊長職を示す羽飾りのついた帽子。 マンティコアが刺繍された黒いマントに、本物の幻獣マンティコアに乗り立つその人物。 顔下半分を鉄のマスクで覆い、左手に杖を持ち、風をその身に纏うメイジ。 現存するメイジの中でも... - @wiki全体から「ゼロのロリカード-26」で調べる