あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「ナイトメイジ-05」で検索した結果
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ナイトメイジ
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ナイトメイジ-05
前ページ次ページナイトメイジ 宝物庫に集まった教師達を見て学院長のオールドオスマンは軽く頭痛に襲われていた。 学院の宝物庫が破壊され、あまつさえ秘宝「破壊の杖」が奪われるという非常事態において、彼らが何をしているかと言えば責任の追及である。 責任という意味においてはオールドオスマンも同じだが、このまま不毛な言い争いを続けるままにしておいても問題の解決にはまったくつながらない。 オールドオスマンがため息をついて、渇を入れるために杖で床を叩こうとしたとき、教師達の後ろのから言い争いとは別のざわめきが起こった。 「はいはい。ちょっとどいてくださいね」 教師達の間をかき分けかき分け、も一つかき分けて出てきた、おそらくは外国人であろう見たことのない女性は宝物庫の中を見ると、誰もが耳を押さえたくなるような大きな声で叫んだ。 「な、な、な、何ですか!!!これは!」 叫んだ後は... -
ナイトメイジ-01
前ページ次ページナイトメイジ 「あんた誰?」 ルイズが使い魔として召喚した少女に言った第一声がそれだった。 ルイズが召喚した少女は年はルイズより少し下くらいだろう。 銀髪を首のあたりで切りそろえ両端を一房ずつ編んでリボンをつけている。 服はこのあたりではあまり見ないものだ。 どことなく水兵服に似ているが、それが水兵服かと聞かれたら違うと答えるだろう。 特に肩掛けが全然違う。と言っても、それが似合っていないわけではない。むしろ、少女にはぴったりの服に見える。 少女は召喚された後、 「あら?」 とか言った後、ルイズを無視してその場できょろきょろ周りを見ている。 それがルイズの癇に障った。 この少女、何者かは知らないが少なくとも貴族ではあるまい。 貴族の象徴のマントも無ければ、メイジに必須の杖も持ってない。 ──平民に間違いない。... -
ナイトメイジ-02
前ページ次ページナイトメイジ うっすらと開けたまぶたの隙間から光が目に飛び込んで来る。 ルイズは光に刺されて少し痛みを感じる目を擦りながら体を起こした。 石造りの部屋の中を窓から差し込む光が照らしている。 太陽の角度から考えて、今は朝のはずだ。 だから、ベッドに寝ているのは問題ない。 問題はその前だ。 ルイズには昨夜、ベッドに入って寝た記憶がなかった。 目頭を押さえ昨日のことを思い出す。 「確か昨日は、使い魔召喚の儀式をしたはずよね。で、私もサモン・サーヴァントを唱えて……それから」 どうもそこら辺から記憶が曖昧だ。 召喚が成功したのはおぼろげに覚えている。 だが、 「何を召喚したんだっけ」 それがどうしても思い出せない。 何かこう、嫌なことを思い出そうとしているような、そんな予感がする。 とりあえずベッドから出ようと、ルイズは片手をついた。 ... -
ナイトメイジ-03
前ページ次ページナイトメイジ 少々、いやかなり不機嫌なルイズは大股でのしのしと食堂に向けて歩いていた。 歩きながらルイズは考える。 どうしてこんなにいらついているのだろう、と。 まず最初は朝食に部屋を出た時だった。 キュルケとばったり出くわして使い魔自慢につきあわされてしまった。 それだけならまだいい。ほんとは良くないけど。 キュルケはこう言ったのだ。 「あなた、使い魔の召喚に失敗したの?」 召喚した使い魔がかなりアレなのは認めざるを得ないが、失敗したわけではない。 今いないだけなのだ。 朝に使用人を雇ってくると言って部屋を飛び出して以来戻ってきていないだけなのだ。 だからルイズは腹にイライラを溜めてここはぐっと我慢した。 次は、朝食の時だ。 使い魔といってもご飯を食べなければならない。 朝ご飯くらい食べに来るだろうと考えたルイズは、躾... -
ナイトメイジ-06
前ページ次ページナイトメイジ ルイズの乗る馬車ががたりと揺れた。 この辺りの道は舗装なんかされていないので、時折車輪が壊れるんじゃないかと心配になるくらい大きく揺れる。 と言っても、はまり込んでしまうほど深い凸凹がないところを見ると一応の整備はされているらしい。 馬車にはルイズの他に2人乗っていた。 1人はルイズの使い魔のベール・ゼファー。 肩や膝にとまる小鳥と戯れるルイズの向かいに座った少女は今なら汚れ無き乙女のようにも見えるが、ベルの本性が汚れ無きと言う言葉とは全く無縁であることを知るルイズにはその誰もが微笑ましく思える様子に嘘くささしか感じなかった。 「ねえ、ベル」 「なに?」 「さっきのフジンキシャの格好はもう止めたの?」 「ええ。もうあの格好はいいのよ。役にたちそうにないし」 やたら大きいため息をついて、ベルは肩をすくめる。 ──ああ、なんて残... -
ナイトメイジ-04
前ページ次ページナイトメイジ 今はすでに夜。 周りに遊ぶ場所のない学院では外に出るには遅い時間だが、寝るにはまだ早い時間だ。 そんな時間をキュルケは今夜の用意のために使っていた。 照明は魔法やランプを使わず窓から差し込む二つの月明かりのみ。 その明かりが自分を最も美しく照らす場所に座り、手首に香水を少しだけ振りかけた。 この香りが月光と相まって、部屋の中をロマンチックな物にする。 これで準備は全部終わり。 後は最初の彼が来るのを待つだけ。 キュルケはその瞳に微熱をたたえ、今の夜の静けさが窓の開く音で破られるのを待った。 夜の静けさを破ったのはキュルケの期待した窓をそっと開く音ではなく、突如響く爆音5つ。 あ、今6つめの爆音がした。 「飽きないわねえ」 近頃魔法学院には「ルイズによる使い魔の躾大爆発」と呼ばれる新たな名物が増えた。 読んで字のご... -
ナイトメイジ-08
前ページ次ページナイトメイジ 「ふぅううううむ」 破壊の杖を前にうなるオールドオスマンに、この事件の顛末を報告をしたルイズは始終びくびくしていた。 フーケを取り逃がした上に破壊の杖を原型がかろうじてでしか分からないようににしてしまったのだ。 どんなお叱りが来るのだろうか。 謹慎?それとも……退学!? 「あ、あの……オールドオスマン……」 ついにルイズは耐えきれなくなる。 この張り詰めた空気がどうにかなるのなら、もうどうにでもなれ!そんな気までしていた。 「あ?ああ、わかっておる。2人ともよくやってくれた」 「え?」 未だ眉間にしわを寄せているが、オールドオスマンはぎこちなく笑ってルイズの予想外の言葉を返す。 「そんなに緊張せずともよい。学院の誰もが尻込みしていたというのに、2人はあの土くれのフーケから破壊の杖を取り返したのだぞ?これ以上望みようもあるまい... -
ナイトメイジ-09
前ページ次ページナイトメイジ さて 女三人寄れば姦しい、などという言い方がある。 これが真実かどうかはともかく、今のルイズの部屋はまさに女三人で姦しくしていた。 「へえ、ルイズって小さい頃はそんなだったのね」 「ええ、そうなんです。屋根の上までするすると」 「ちょっと姫様。そんなことベルに教えないでください!」 魔法の光の中でおしゃべりに花を咲かせているのは、一応この部屋の主のルイズ、それに使い魔のベール=ゼファー、そして3人目は誰であろう、この国の王女アンリエッタである。 なぜ、王女ともあろう人が夜の魔法学院、しかも学生寮にいるのか。 ゲルマニア訪問の帰りにこの学院に行幸されたのである。 さらに、彼女の目当ては昔アンリエッタの遊び相手を務めていたルイズ。 それなら、昔話や武勇伝もいろいろあろうというもので、話題に尽きることはない。 「いいじゃない。ルイ... -
ナイトメイジ-16
前ページ次ページナイトメイジ 「空賊だ!」 誰が発したのだろう。 その声と共に甲板は急速に慌ただしくなる。 ある者は帆にとりつき、ある者はロープを持ち、またある者は風石をため込んだ船内に駆け下りていく。 たたまれていた帆が音を立てて広がった。 途端にフネの速度が慣れていないルイズにもわかるほどに上がる。 今までの風石を節約する飛びかたから風石の消費を覚悟してでも速度を重視する飛び方に変えたのだ。 だが、それでも安心はできなかった。 空賊船で舵を握る男はマリー・ガラント号の帆が急速に広げられていく様を見ていた。 「やはりそう来るだろうな」 海賊に襲われた輸送船が取り得る逃走方法は限られている。 その一つが比較的大きな雲に隠れてしまうことだ。 通常ならアルビオンへの衝突防ぐためにそんな目をふさぐようなことはしないのだが、空賊に襲われたのならしかたが... -
ナイトメイジ-07
前ページ次ページナイトメイジ 森の中の空き地に建てられた廃屋の中で、1人の女性が疲れた体を休めていた。 普段は人が通らないような獣道を突き抜けてここまで来た彼女の服のあちこちには小枝が突き刺さり、マントにはかぎ裂きがいくつもできていた。 「な、な、なんでこんなことに」 息をきらせながら呟く彼女は、こう人々から呼ばれていた。 土くれのフーケ、と。 ここまで来るのにだいたい半日。 この場所にフーケがいることを知るものはいないだろうが、それでもぐずぐずはしていられない。 フーケの正体はすでに知られてしまっているのだ。 ただし、その知られた正体は仮の物だ。 経歴や過去は全て嘘っぱち。 ひとまずどこかに身を隠し、ほとぼりが冷めた頃に動き出せば誰にも見つからない。 なんならトリステインから離れてもいい。 なんにしても今はとにかく学院から一歩でも離れた方がいい。 ... -
ナイトメイジ-28
前ページ次ページナイトメイジ ルイズが絶望と悲嘆に暮れ、頭を抱えて床に跪き、おまけにごろごろ転がって、やけ食いもちょっとばかりした何日か後のこと。 この日もルイズは自室で始祖の祈祷書を広げて 「うーん、うーん」 唸っていた。 別に何回も見ていれば読めるページが増加してくれるんじゃないかと期待しているわけではない。 とゆーか、それはもう済ませて無駄だとわかった。 では、何をしているかというと詔を作ろうとしているのだ。 トリステインの王室には結婚式の際、1人の巫女を選出し、その巫女に始祖の祈祷書を手に詔を唱えさせるという伝統がある。 そのためアンリエッタの結婚が迫った今の時期、祈祷書は誰にでも貸してよいというものではない。 そこでルイズを巫女に指名した上で、彼女に祈祷書を貸与したのである。 さて、この祈祷書、ルイズ以外の誰が見ても白紙である。 なら詔はどうす... -
ナイトメイジ-15
前ページ次ページナイトメイジ 風をはらむ帆を広げ船は行く。 舷側にもたれかかる銀髪少女は金の両目を空に浮かぶ大地に向けていた。 それこそが浮遊大陸アルビオンである。 少女はフネの外に出した手でアルビオンを隠し、かすかかに笑う。 それを見た者たちは少女が旅に心躍らせていると思っていた。 銀髪金眼の少女ベール・ゼファーの手に光が灯る。 その光は彼女は手に合わせて、フネのそばで踊っていた。 それを見る者はいない。 当然だ。ベルはそれをここにいる者には見せていないのだから。 見ているのか見ていないのかもわからない誰かに見せているのだ。 光はこの先に起こるかもしれない何かを想像するベルの心のままに、飽きもせず踊り続けていた。 「あーーーっ、いた。こんなところにいた!」 小さい体とは不釣り合いに、風にも負けず雨にも負けそうにない声でルイズは自分の使... -
ナイトメイジ-26
前ページ次ページナイトメイジ 既に夜も更け、酔漢たちももう眠りに落ちている頃だろうか。 青臭い下生え茂る野原で男は息をする音すらも消し、身を潜めていた。 「副隊長、総員配置につきました」 「よし。合図を待て」 男はトリステイン魔法衛士隊の一つ、グリフォン隊の副隊長。 そして、この隊の指揮官でもある。 副隊長は前日までこの隊の指揮官ではなかった。 副隊長の上には当然ながら隊長がいたのだ。 隊長の名はワルド。 人品兼ね備えたスクエアメイジであり、忠信篤い貴族。 副隊長を含む全ての隊員達に尊敬される、まさに理想を体現したような男であった。 しかしそれも既に過去の話である。 数日前、王女に呼び出され、聞かされた内容がそれを物語っていた。 「ワルドはレコン・キスタに与する裏切り者です」 副隊長は我が耳を疑った。 ──そんな馬鹿な それを口に出さずにいれた... -
ナイトメイジ-12
前ページ次ページナイトメイジ 王都を出て二日目 ラ・ロシェールに到着した馬車はこの町で一番の宿である「女神の杵」亭の前で止まり、ルイズ達はここを一夜の宿と決めた。 荷物を持って部屋に入り、一息ついたところでルイズが唐突に切り出す。 「ずっと思っていたんですけど……いくらお忍びで秘密の計画でも姫様に平民、しかもメイドの格好をさせておくわけにはいかないと思わうんです」 「そうですか?わたしはこれでもいいですけど」 「そうはいきません!それに、この宿の者達はみんな変な顔をしていましたよ」 理由は簡単だ。 まず馬車から降りるときのギーシュの行動。 「どうぞ、お手を」 「ええ、お願いします」 貴族に手を取られ、馬車から降りる世にも不思議なメイドが出現していた。 次に「女神の杵」亭に入ろうとしたとき 「いらっしゃい……ま……せ」... -
ナイトメイジ-23
前ページ次ページナイトメイジ 見えはするが見えていることすらわからない。 聞こえはするが何が聞こえていことすらわからない。 ならばそれはなにも見えず、聞こえずとなんの変わりがあるのだろうか。 ありはしない。 色と音のある闇の中でただそこにいるだけ。 その闇の中にどれほどルイズはいたか。 時間すらも無意味なら、どれほどという言い方もまた無意味。 ではあるが、他に言い方もない。 いつ頃からかルイズの耳に響く音があった。 その音に闇に溶けていたルイズの心が次第に集まっていく。 どんな音も色も、ただ溶けた心の中を通り過ぎていくだけだった。 だが、この音は違う。 溶けた心を集め、意味を成していく。 神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右につかんだ長槍で、導きし我を守りきる。 それは音ではなく言葉。 神の右... -
ナイトメイジ-33
前ページ次ページナイトメイジ Gホーネットを退けたルイズ達は通路のさらに奥へと足を進める。 途中には落とし穴を主力としたいくつものトラップ ──底に剣山がある落とし穴とか、底で火が燃えている落とし穴とか、底でGスネークが口を開けて待ち構えている落とし穴とか── が仕掛けられていたものの、それらは全てギーシュの尽力により探知され、ルイズ達は怪我を負うこともなかった。 彼がどんなすばらしい貢献を果たしたかはここでは割愛させていただく。とにかく大変活躍していたのは確かだ。 この通路も見かけ自体はなんの変わりもない普通の通路だった。 だからルイズ達はそれまでと同じように進んでいたし、ギーシュの注意も足下にばかり向いていた。もっとも、その注意が役に立っていたかどうかは別だが。 何がきっかけだったのか。 たぶん、この一角に踏み込んだのがきっかけだったのだろ... -
ナイトメイジ-27
前ページ次ページナイトメイジ うららかな昼下がり、ルイズは自室にて机の上を見下ろしていた。 「これね」 その隣にいるベルもまた腕組みをして机の上を見下ろしている。 「これよ」 もちろん机が珍しいわけではない。 2人が視線を注いでいるのは机の上に置かれた300ページほどの古びた一冊の本。 皮で装丁はされているが、時の経過には勝てず表紙はぼろぼろで茶色く変色しているといった有様だ。 「でも、これが本当の始祖の祈祷書なの?聞いてた以上に偽物っぽいわね」 ベルは祈祷書を摘んでぴらぴら振り回す。 「乱暴に扱わないでよ!」 それをルイズが奪い取って机の上にバンとたたきつける。 強く叩きすぎて天井からホコリがぱらぱら落ちてきた。 「何か、こうドキドキするわね。これに私が使える魔法が書かれているかも知れないのよね」 「多分ね」 「どんな魔法が使えるようになるのかし... -
ナイトメイジ-17
前ページ次ページナイトメイジ 帆を失ったマリー・ガラント号は急速に速度を落とし、やがて風の向くままにゆったり進むだけになってしまう。 そうなればもう空賊船から逃げる術はない。 おまけに空賊船に据え付けられた大砲に加え船縁にずらりと並んだ空賊たちが銃でマリー・ガラント号を狙っている。 船員達には抵抗する術もなく、あとは空賊の気まぐれにすがるしかない。 鍵のついたロープが空賊船とマリー・ガラント号は繋ぎ、そのロープを伝って数十人もの空賊たちが乗り込んできた。 マリー・ガラント号の乗員たちはただ震えてその命令に従うだけである。 その中にあって微塵も不安を見せない二人がいた。 ワルドとベルがそれである。 「ねえ、あの空賊たちを見てどう思う?」 「そうだな……」 ワルドは剣や銃を手に甲板を歩き回る空賊たちにざっと見渡し、次いで空賊船の甲板に並んでいる空賊たちをこれま... -
ナイトメイジ-10
前ページ次ページナイトメイジ アンリエッタ王女の学院訪問はわずか一日で終わる。 この後の王女の予定は王都トリスタニアに帰るとなっているのだが、それも口で言うほどに簡単なことではない。 王女ともなれば護衛の近衛騎士団をはじめとして、供となる人間はそれこそ両手両足では数え切れないほどになる。 それだけの人間が移動するのだ。 王女の訪問と同様に、学院は朝から慌ただしい喧噪に包まれていた。 その喧噪の中、二人の学生とその使い魔、そしてメイドが一人学園から姿を消したのではあるが、 それを気にとめるものは彼らの野外学習届けと休暇届を受け取り、それにサインを記したオールドオスマンの他はいなかった。 時は進み同日深夜 「ほんとに……来れちゃった」 ここまで来るのはそう難しくなかった。 ホントは難しかったのかもしれないが、ベルの言うとおりに街の中... -
ナイトメイジ-13
前ページ次ページナイトメイジ 「金の酒樽」亭 ラ・ロシェールにある酒場の一つである。 金とは誇大もいいところで実のところただの廃屋にしか見えないような小汚い酒場である。 しかし客はそれなりにいる。 その客の一人として角の席で土くれのフーケはカップを傾け、久しぶりにまともと思えるような酒を楽しんでいた。 実のところかなり質が悪い酒ではあるが、野宿で飲む革袋に入れた酒に比べれば何倍もましだ。 「まったく、やってらんないよ」 誰に聞かせるでもない独り言をつぶやき、何杯目かをあける。 フーケがここにいるのはアルビオンに上がるためである。 ベール・ゼファーの命令を渋々ながら引き受けて既に2週間そこそこ。 成果は上々と言ってもいい。 「こっちのほうでもやっていけるかもねえ」 盗賊をやっていた頃、あるいはそれより前のツテを頼りにちょっとつつい... -
ナイトメイジ-22
前ページ次ページナイトメイジ 「呼んだ?」 まさに突如としか言いようがない様で少女──ベール・ゼファー──はそこにいた。 扉から入ってきたのではない。 その前にはクロムウェル達がいるからだ。 窓は? それも違う。 クロムウェル達の向かいの壁には窓があるが、そこから入ってくればわからないはずがない。 「さて、と」 なにをしたのかクロムウェルにはわかるはずもなく、突然の闖入者に驚き、ルイズにかけようとした魔法を中断してしまっていた。 「えーと……あなたが」 目を半分閉じ、代わりに口を開けてぼうっとしているルイズの側に立つと、ベルは白い人差し指で 「クロムウェルね」 クロムウェルの隣に立つ冷たい雰囲気の女性を指した。 「女装じゃないわよね。クロムウェルなんて名前だから男と思ってたけど女だったのね」 うんうんと何か納得している... -
ナイトメイジ-11
前ページ次ページナイトメイジ 時は少しさかのぼりルイズ達がアンリエッタを城外へ連れ出した日の夕刻のこと。 グリフォン隊隊長ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは詰め所の机に組んだ両手をつき、思考を巡らせていた。 「ふむ」 今晩の城の警備はグリフォン隊である。 その当番となっている隊員達に隊長たるワルドとは別系統で命令を下した者がいるのだ。 いや、命令というには少しおかしいかもしれない。 隊員達は口を濁していたが、どうやらアンリエッタ王女に命令……というかお願いをされたようなのだ。 そのお願いの内容はまちまちではあるが、総合してみると夜のある時間帯に警備の穴を作っておくということになる。 「さて」 なぜ王女が警備に穴を開けるのか。 おそらくは何者かを引き入れるためだろう。 では、だれを城内に引き入れるのか。 ワルドの持つ情報で... -
ナイトメイジ-25
前ページ次ページナイトメイジ 洞窟の中は静かに、ただひたすらに静かだった。 死者はなにも語らず、死者と語らう姫君はなにも口にせず、それを見下ろす少女もまた沈黙を守っていた。 それを破るのはベール・ゼファー。 全てを知っているような声がルイズとアンリエッタの耳に滑り込む。 「終わったみたいね」 「どこ行ってたのよ」 「ちょっと、ね」 戻ってきたベルは1人でない。 「なんで、王党派の王子が?この方は本当にトリステインの王女様なんですか?いったい何が起こってたんですか?」 と、うろたえる竜騎士の少年を連れていた。 ベルはその少年を下から──少年の背はベルより頭2つ弱ほど高い──小突いて黙らせる。 「足を調達して来たのよ。空の上からトリステインに帰るには必要でしょ」 「そうだけど……」 「それなら帰りましょう。行き先はトリスタニアでいいわよね?」 何か言い... -
ナイトメイジ-30
前ページ次ページナイトメイジ ひんやりとした洞窟の空気を首筋に感じ、ルイズは背筋をぶるっと振るわせた。 一方、隣のキュルケはというと全然寒さを感じている様子はない。 火のメイジは体温が高くて寒さに強いという噂を聞いたことがあるけど、それは案外本当かも知れない。 そんなことを考えながら目を懲らすと、闇の向こうには赤い松明の光が揺れていた。 それは先にこの洞窟に入っている盗掘団の灯りだ。 「二人はここで待っていてください。私は先に行って盗掘団を脅かしてきます。その後、私が合図をしたら動いてください。それまでは決して動かず、静かにしていてください。いいですね」 声を潜めるコルベールにルイズは首だけを動かして答えた。 「あれから洞窟には誰も入って来てませんわ」 キュルケは使い魔を連れていない。 彼女の使い魔のサラマンダーは絶えず尻尾で炎が燃えており... -
ナイトメイジ-31
前ページ次ページナイトメイジ 洞窟の奥。行き止まりで足を止め、ルイズ達はコルベールの持つ地図をのぞき込んだ。 「ここのはずなのですが」 それによると、この突き当たりに何かがあるはずなのだが、左右と正面の壁で魔法の光に照らされた自分たちの歪んだ影が踊っているものの特に変わったものは見あたらない。 「では、これならどうでしょう」 コルベールが自分の杖の先にある魔法の明かりを消す。 それでも周りが真っ暗になることはない。 キュルケとタバサもまた自分たちの杖の先に明かりを灯しているからだ。 魔法の明かりの代わりにコルベールはディティクトマジックを唱える。 杖を振り、やや右の前で止めた。 「このあたりに何かあるようですな」 と言われてもルイズには変わったものは見えない。 ただの岩壁が行く手をふさいでいるだけだ。 「ふむ、これは困りましたな... -
ナイトメイジ-24
前ページ次ページナイトメイジ なにも起こらなかった。 アンリエッタ姫にかけられた魔法は心を操る魔法。 解いても何かが目に見えるはずがない。 でも、いつも起こる爆発も起こらない だからそれでいいはず。 ──それなら、きっと…… ──成功しているはず ルイズはアンリエッタ姫の頬の上に手をかざした。 アンリエッタ姫の呼吸は穏やかに続いている。 この手で触れればきっと目覚める。 ──起きたら姫様はどうするだろう 喜んでくれるだろうか。 それとも、怒る? もしかして虚無の魔法が解けていなかったら、操られた心のままに私を殺そうとするかも知れない。 ──きっと、大丈夫。 期待と少しの不安を胸にルイズはかざした手で頬にそっと触れた。 触れた手の中でアンリエッタの頬が動く。 次に瞼が細かく揺れ、薄くそれから大きく開かれた。 「え……?」 そこから流れるのは... -
ナイトメイジ-34
前ページ次ページナイトメイジ 上等のテーブルの上には雲のように白く、若草の縁取りが描かれた皿。 それに盛られているのは焼き菓子、砂糖菓子。 ベルは一つ摘むと口の中にひょいと入れた。 上等な砂糖と小麦で作られた菓子はさして噛まなくても口の中でさらりと溶け、喉の奥にするする落ちていく。 「だいたい傾向がわかってきたわね」 「傾向ですか?」 原色に染められた飴を口の中で転がすコルベールに、ベルはクッションの効いたソファーに体重をあずけて応えた。 「そう、フォートレスはね、作った者の精神、趣味、嗜好が強く反映されるの。それが傾向として現れるのよね。まずは罠の傾向、それはどうだったかしら」 指先に付いた砂糖をぺろりとなめたベルは視線をギーシュに向ける。 「それは……もちろん落とし穴だね。まさにこのフォートレスは落とし穴だらけさ。違うのもあったけど、落... -
ナイトメイジ-29
前ページ次ページナイトメイジ 「でてってよーーーっ!」 とは言ったものの別に永遠に出て行けと言ったつもりは全くない。 なのに、なのに、なのに あいつは、使い魔は、ベルは全然戻ってこない。 お腹がすけば戻ってくると思って食堂で待っていてもベルは戻ってこなかった。 ──あれで拗ねるなんて可愛いところもあるじゃない とか思っていつ帰ってきても良いように、部屋に食事を運んで待っていたけど戻ってこない。 寝ようかと思ったけど、部屋の前まで帰ってきて鍵がかかって入れないのもかわいそうだと思ってずっと起きていた。 だけど途中で力尽きてしまった。 「まだ戻ってこない」 というわけで机を枕に代わりにしたまま朝を迎えてしまった。 空は晴れているし、鳥がチュンチュン鳴いているがちっとも爽やかじゃない。 おまけに鏡を見たら顔に机の跡がついて、それがルイ... -
ナイトメイジ-14
前ページ次ページナイトメイジ きらめく朝日を受け、影を落とす巨木が一つ。 それこそが桟橋と呼ばれる物である。 ラ・ロシェールに停泊するフネは水に浮かぶことなく、この巨木に果実のようにぶら下がることで帆を休めるのだ。 木の根元にはいくつもの階段があり、それぞれが別々の枝に通じている。 ルイズ達はその階段に据え付けられたプレートを一枚一枚確認していた。 「えっと……どのフネに乗ればいいのかしら」 とはいうもののルイズにはどのフネに乗ったらいいかはよくわからない。 こういう事は使用人の仕事。 自分で乗るフネを見つけるなんて初めてなのだ。 「32番の桟橋。マリー・ガラント号に乗りましょう」 首を上げて木の天辺を睨むベルがルイズの隣に並んだ。 「え、なんで?」 「それがアルビオンに行くのにちょうどいいからに決まってるでしょ」 ベルはや... -
ナイトメイジ-20
前ページ次ページナイトメイジ 「どうしよう、じゃないわよどうしようじゃ。何とかしないと。ルイズは生きているんだし、それに力を失ったわけじゃないんだから全部ダメになったわけじゃないのよね。何とか巻き返さないと。えーとえーとえーと、まずは……。うん、そうしましょう」 遠くで戦いの音がする。 それが徐々に近づいてきていてもルイズは泣いていた。 悔しくて泣いていた。 つらくて泣いていた。 悲しくて泣いていた。 そして扉のきしむ音がした。 ルイズはワルドが戻ってきたのかもしれないという期待と恐れを混ぜたまなざしでそれを見たが、その先にいたのはベルだった。 「どうしたの?ルイズ」 ルイズの使い魔はこの礼拝堂に立ちこめる血のにおいなど気にならないのか奥に向かって歩き、ルイズのそばに来ると手を差し伸べた。 「ワルドが、ウェールズ王子が……姫様が……あ、ああああああ... -
ナイトメイジ-32
前ページ次ページナイトメイジ 新しく姿を現した通路はそれまでの自然にできた洞窟とは違い、明らかに人の手が加わっていた。 左右の壁、それに天井と床は切り出した石で隙間無く組まれているし、それを照らし出す等間隔に設置された魔法の光源まであって明かりに困ることはない。 空気は幾分湿っているが、不快と言うほどではない。むしろさっきまでいた肌寒い洞窟よりも過ごしやすいくらいだ。 最後に通路に入ったベルはギーシュの背中を見つけると 「ほら、もっと前に行って」 とか言いながら、ぐいぐい前へ押していく。 ベルはどんどんせっつくが、その度にギーシュはどんどん不安になってしまう。 「な、なあ。何で僕が前に出なければいけないんだい?」 「それはね、ギーシュ。あなたが……」 振り向いたギーシュの眉間にベルの指がびしぃっと空気がうなりそうな勢いで突きつけられた。 ... -
ナイトメイジ-19
前ページ次ページナイトメイジ 翌朝……。 礼拝堂の前に二人の男女が人目を忍んでそこにいた。 といっても、それほど色気のあることを話しているわけではない。 「すまなかったね。準備を手伝ってもらって」 「あなたもマメな男ね。こんな事までしてあげるなんて」 男はワルド、そして女はベール・ゼファー。 城の地下ではニューカッスルから疎開する人々がイーグル号と拿捕したマリー・ガラント号に乗船を始めている頃だがここまではその音も声も聞こえてこない。 「これからつらい運命を生きる二人のために何かできないか、とは思ってね」 「私はあなたの婚約者の好意を買うためにしているのかと思ってたわ」 ワルドは声をつまらせてしまう。 しかめた顔のワルドを見て、ベルが笑っていた。 「その下心……無いとは言えないな。それはともかく」 ワルドにとってはこの話はあまり愉快ではなかったらしい。... -
ナイトメイジ-18
前ページ次ページナイトメイジ 気がつくとアンリエッタは暗闇の中にいた。 正確に言うと瞼を閉じ、柔らかいベッドに横になっていた。 何か夢を見ていたような気がする。 城から抜け出してラ・ロシェールに行き、そこでフネに乗って遙かアルビオンまで行く途中で空賊に襲われ、その空賊の中にウェールズ王子がいて……。 再会が嬉しくて彼の胸に飛び込んでいったところで記憶が途切れていた。 とても良い夢だった もう一度寝て続きを見たいとも思ったが、頬に光が当たる感触がする。 なら、きっと朝なのだ。 起きなければならない。 「……え?」 アンリエッタの目に入ってきたのは自分の部屋にある見慣れたベッドの天蓋ではなかった。 そこにあるのは粗末な天井と壁紙も貼られていない壁。 部屋も自分の部屋ではない。 質素な椅子とテーブル、そして自分が寝ているベッドがあるだけだ。 でも、このベ... -
ナイトメイジ-21
前ページ次ページナイトメイジ ワルドの妻、そう名乗ったルイズがどこかに閉じ込められることもなく案内されたのはワルドと婚姻を誓い、そしてウェールズが殺されたあの礼拝堂だった場所だ。今はそれも崩れ落ち、残骸となりはてている。 城からは略奪の分け前にあずかろうとする傭兵達のざわめきがあちこちに響いていた。 その喧噪から切り離されたこの礼拝堂の跡地には、見知らぬ男の他にルイズの見知った顔が3つあった。 一人はワルド。再会したときと同じ優しい笑みを浮かべルイズを迎えている。 二人目はロングビル──いやフーケと言った方がいいだろうか──。口を引き結び、ルイズを睨みつける。 そして三人目。フーケがここにいる理由がどうでも良くなるくらいにルイズが気にかけている人、アンリエッタだ。 「ああ、ルイズ。あなたも捕らわれてしまったのですね」 「いえ……私は」 言いよどん... -
ナイトメイジ-35
前ページナイトメイジ 石で組まれた広い部屋はそれまでとは造りこそ同じであったが、一歩踏み込んだときから今までの通路や部屋とは違うことが知れた。 部屋の壁や床には7つの意味も効果もわからない魔法陣が描かれていた。 といっても、それになんの力もないことは、ベルが魔法陣の中に足を踏み入れてすたすた歩いてもGマンティスのいた部屋の封魔陣のように光らないところから見ても明らかだ。 なんの華やかさもない飾り以下の模様、あるいは落書きでしかない。 ではあるが、 「おお、これが!」 この部屋には、フォートレスの役割の象徴とでも言えるものをが、一つ前の部屋で見たジャイアントパンダとは、また違った異様さを見たせてたたずんでいた。 「これが、これが!竜の羽衣なのですね!」 9メイル強の長さのカヌーにも似た金属の胴体、その片方の端に胴体に比べてやや小さめの風車をもつそれが、竜のように... -
狼と虚無のメイジ-05
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ 狼と虚無のメイジ 第五幕 チチチチ……と小鳥達の唱和の中、先に目を覚ましたのはホロ。 目をしぱしぱとさせながらゆっくりと上体を起こした。 朝の空気をたっぷりと吸い込み、はてここは何処かと頭を動かす前に、ふと尻尾に違和感を覚えた。 長い尻尾に、自分のものではない四肢が絡みついている。 言うまでもなくルイズだ。触り心地のよさに無意識のうちに掴んだのだろうか、抱き枕よろしく幸せそうな寝顔だ。 「む。これ。離さぬか」 華奢な外見とは裏腹に、強力にがっちりと掴み込んでおり、ホロはルイズをひっぺがすの苦労した。 ようやく剥がした頃には、尻尾の毛並みはくしゃくしゃだ。 自慢の尻尾の惨状に、さすがに眉をひそめたが、尾に潜んでいた小さな「跳ねる何か」に気づくと、にまーっと笑ってベットを降りた。 剥がす際にあれこれ動か... -
狼と虚無のメイジ-02
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ 「娘、酒などないかや」 毛皮をめくれば下半身すらも露なその娘だが、異常なこの状況に動じている様子は全くない。 よく見れば脱穀前の小麦にまみれ、場違いなことこの上無かった。 「なんじゃ、酒はないのかや。なら食べ物は……」 「ちょちょちょちょっと待ちなさいよっ!何無視してるのよ!あんた誰よ!」 「わっち?」 「あんた以外に誰がいるのよ」 娘はあたりを見回して一言。 「色々と、たくさんおるのう」 「~~~!」 まさしく、辺りを見回せばクラスメイトが大量にいる。 失笑が漏れる中、ルイズは自らの杖を、娘につきつけた。 「あんたは、誰よ!」 杖をつきつけられて、流石に娘の顔から笑みが消えた。赤い……よく見れば琥珀色に強い赤みのかかった瞳をすっと細める。 「礼儀の知らぬ娘じゃの」 ... -
長編(五十音順)-05
な行 作品タイトル 元ネタ 召喚されたキャラ 更新日時 ナイトメイジ ナイトウィザード ベール・ゼファー 2009-12-17 06 06 37 (Thu) ルイズと夜闇の魔法使い ナイトウィザード 柊蓮司と志宝エリス 2012-10-15 12 48 05 (Mon) KNIGHT-ZERO ナイトライダー ナイト2000(KITT) 2009-06-21 14 04 58 (Sun) ゼロの写輪眼 NARUTO うちはイタチ 2008-08-20 01 39 56 (Wed) 秋山異世界物語 天気晴朗ナレドモ風強シ(仮) 日露戦争物語 秋山真之 2009-10-08 16 50 55 (Thu) ニニンがゼロ伝・音速の使い魔 ニニンがシノブ伝 音速丸と愉快な仲間 2008-10-28 10 32 41 (Tue) 風の使い魔 NINKU―忍空― 風助 2010-07-28 0... -
狼と虚無のメイジ-06
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ 狼と虚無のメイジ 第六幕 「うふふふふふふふふ……ツェルプストーの顔ったら無かったわ!」 喜色満面。派手なリアクションも交えて悦に浸るルイズの後にホロが続く。 「そんなに……はむ……嬉しい……もぐもぐ……ものかのう……朝から……何度目じゃ……むぐ」 「あたりまえよ!何しろあいつは我がヴァリエール家200年来の仇敵だもの!言うなれば仇を獲ったと言うところね!」 「随分と可愛らしい仇討ちじゃの……はむっ」 そこまで言ってようやくルイズは、ホロの言葉に一々挟まる咀嚼音に気がついた。 「……さっきから何食べてるのよ」 「うん?ああ、マルトー、と言ったかや?料理長だそうじゃが気の利く雄じゃ。賄いを豪勢に分けてもらったんじゃ……むぐむぐ」 片手で持てる程度のバスケット。 こんがりと狐色に焼けたパンの... -
狼と虚無のメイジ-04
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ ホロは麦に宿る神として、数百年の間パスロエの村で麦畑を豊かなものにしてきた。 他の村に比べても比較にならない良質な小麦であり、村はよく栄えた。 しかし、土地の実りをよくする為には代償が必要であり、何年かに一度実りを悪くしなければならない。 ところが、村の人間はそれをホロの気まぐれだと言いはじめた。 それがひどくなったここ数年で、ホロは村を出ることを決心したということらしい。 「ちょっと……待った。麦に宿ってた!?それってエルフの先住魔法みたいなものじゃなくて?」 「エルフとか先住云々とかはわからんがの、とにかくわっちは麦に宿って実りを良くすることができる。 じゃが村の者は自分等で実りの良くする方法を見つけて実行しておる。あの村にはもうわっちはいらん」 ホロはぷいとそっぽを向いた。どうやら拗ねているようだ。 実際そ... -
狼と虚無のメイジ-07a
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ 狼と虚無のメイジ 第七幕 前編 アルヴィーズの食堂。 教室の掃除で疲弊したルイズは、出された食事をまるで残さず、綺麗に平らげていた。 しかしそれでも足りないのか、ぷぅんと鼻腔をくすぐる香りにやや不満顔だ。 そんな彼女の前に、ひょいと小皿が差し出される。 「あるじ様、今朝食べていた例の品でありんす。くれぐれも他の方々には内密に……」 「ああ良い匂い……って、いや、その前に。なんであんたメイドの格好してる訳?」 差し出された不出のはずの賄い料理に目を輝かせたものの、目の前にもっと注目すべき物があるのだから黙っていられない。 食堂内で忙しなく働くメイドに混じり、堂に入った手つきで配膳を手伝うホロ。 動きだけ見れば違和感が無いが、その耳はやはり目立つ。 「んう?ああ、シエスタに借りた服を汚して... -
狼と虚無のメイジ-01
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ その村では見事に実った麦穂が風に揺られることを狼が走るという。 風に揺られる様子が、麦畑の中を狼が走っているように見えるからだ。 風が強すぎて麦穂が揺れることを狼に踏まれるとい、不作の時は狼に食われたという。 上手い表現だが、迷惑なものもあるのが玉に瑕だな、と荷馬車の上で「彼女」は思った。 今では少し気取った言いまわしなだけで、昔のように親しみと畏れこめて言うものは少ない。 揺れる麦穂を見下ろす秋空はもう見慣れたものになったと言うのに、その下の様子は実に様変わりしていた。 初めて来た時の村人などとっくにいない。人間は長生きしてもせいぜい70年。100年生きる者も稀だ。 いや、人からすれば何百年も変わらない方がおかしいのだろう。 だからもう、昔の約束を律儀に守ることもないだろうと「彼女」は思った。 村人は、迫... -
UM☆アルティメットメイジ
「UG☆アルティメットガール」より、UFOマンを召還 第1話 【アルティメット召喚第零号】 第2話 【必殺! キュルケ怒りの一撃!】 第3話 【無能王の国大爆発5秒前!】前編/後編 第4話 【さらばアルティメットメイジ】 最終話 【明日の女神は君だ!】 -
狼と虚無のメイジ-03
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ そのトリステイン魔法学院学生寮。 一室から「くしゅん」と可愛らしいくしゃみが聞こえた。 「うう、この姿は嫌いではないが、いかんせん寒い。毛が少なすぎる」 「マント羽織っただけじゃ当たり前じゃないの!あ~、しょうがないわね!」 頭を抱えながら、ルイズはクローゼットを漁る。下着の他、プラウスやスカートを手に取ると、ホロに向かって押し付けた。 よくよく見ればルイズのものと同じ、魔法学院の制服だ。おそらく予備のものだろう。 「とりあえず、これ着てて。勘違いしないでよね。心配してる訳じゃなくて、使い魔に風邪なんか引かれたら主人の沽券に関わるのよ」 「ふふ。そういうことにしておくかの」 「んなっ!?」 顔をまた赤くするルイズを横目に、ホロはぱぱっと着替えを終えた。 「うむ、さすが貴族と言う程のことはある。... -
狼と虚無のメイジ-08c
前ページ狼と虚無のメイジ 狼と虚無のメイジ八幕 後編 「聞いてないわよ……」 キュルケは頭を抱えていた。 その目の前にふよふよと浮かぶ巨大な目玉。 紛う事なきバグベアーである。 変な予感はしていたのだ。 現在付き合っている男性陣にも声をかけ、三日目までは滞りなく進んでいた実験。布陣は完璧の筈であった。 ところが四日目になって目の前に現れたのは、以前振った事のある男子生徒だった。 過去の柵がここになって響いてこようとは。常であれば、未練がましいと追い返すところであるが、この場は決闘の場。取り繕ってでもポイントを稼がねばならない。 男女関係には定評があると自負する以上、ここで引いては女が廃る。 口八丁でどうにか丸め込めたとは思うが、終始ボーっとしていたのは何だったのだろうか。いや、自分の手合いに陶酔していたのだろう。改めて罪な女だと思... -
狼と虚無のメイジ-08b
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ 狼と虚無のメイジ八幕 中編 思い思いに生徒が集うヴェストリ広場。 その片隅に存在する、昨日までは無かった木組みのそれは、恐らく寮の部屋程度の面積だろうか。 割と小奇麗な布で囲われており、その中身は見えない。所謂簡易のテントで、組み立ても解体も簡単そうだ。 上から見ると正方形の作りで、便宜上の底辺の左右に出入り口がある。 そこには片手で数えられる程の生徒が椅子に座って並んでおり、右側から入って左側から出ていく構造になっている。 出てきた生徒は何処か嬉しそうに、しかし思案しながら、その横に設置された台で何かを記入していた。 「うぅむ。これは一体?」 「実験と言うのは解るのですが……」 物見の鏡からでは結局何をしているのか解らない。 ロングビルの「実際行って見るのが一番解り易いかと」と言う言葉に促され、オスマ... -
狼と虚無のメイジ-08a
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ 狼と虚無のメイジ八幕 前編 「失礼します」 全校生徒には遥かに満たない人数の前とは言え、食堂であれだけ派手にやった訳であるから当事者の五人が説明の為に学院長室に呼ばれるのは必然だった。 実際に傷ついたのはギーシュ一人だが、周りから見れば彼女達が被害者である。 ところが、入ってきたのは悲痛な面持ちなど欠片も無い、むしろ意気揚々とした五人の顔だった。 気丈に振舞っているのかとも思ったが、どうにも違う様である。学院長であるオールド・オスマン氏は大いに困惑した。 「芝居……とな?」 ルイズの話を聞けば、使い魔が世話になったメイドを助ける為、咄嗟に小芝居を打ったとのことだ。 遠見の魔法で一部始終を見ていたオスマンであるが、仔細までは解らなかったのも無理は無い。 まあ、グラモン家の三男の所業を見てい... -
狼と虚無のメイジ-07b
前ページ次ページ狼と虚無のメイジ 狼と虚無のメイジ 第七幕 後編 「待ちなさいな」 蟲惑的な声色でギーシュの行く手を阻んだのは、褐色の肌の魅力も艶やかなキュルケだった。 再びのどよめき。 群がる男を虜にし、微熱の浮名を馳せているゲルマニアからの留学生。 彼女が一体ギーシュに何用だと言うのか。 「や、やあキュルケ君。相変わらず美し」 バシィ! 「ぶがっ!?」 言葉も言い終わらぬ内に、有無を言わせぬキュルケの平手打ちが炸裂した。 「まさかとは思ったけど、まだ続いてたのね……」 「へ?」 「忘れたって言うの!?」 即座に反対側の頬にも平手打ち。ビシとばかりに一度目よりも大きな音が轟く。 「二つ前のスヴェルの月の夜……あの屈辱を私は決して忘れない……!」 瞳に燃える炎を揺らめかせ、ギーシュを真... -
UM☆アルティメットメイジ 第4話
前ページUM☆アルティメットメイジ UM☆アルティメットメイジ 第四話 【さらばアルティメットメイジ】 「・・・やれやれ それにしたって夜勤ってのは退屈ですね 隊長」 「お仕事だよ お仕事! 無駄口叩いてないでしっかり見張れ!」 「へーい」 アルビオン大陸-ニューカッスル城。 かつて、アルビオン王家が一時的な滅亡を迎える事となった古城で、ゲルマニア兵達の暢気な声が響く。 旧主を滅ぼし、この城の主となった神聖アルビオン共和国皇帝 オリヴァー・クロムウェルも、既にこの世の者ではない。 トリステイン・ゲルマニア両国の侵攻と、大国ガリアの突然の軍事介入により、彼等の母体であった【レコン・キスタ】は、瞬く間に壊滅、 アルビオン大陸は列国に分轄統治される事となり、現在では、この城はゲルマニアの治めるところとなっていた。 近年のガリアの怪しげな... - @wiki全体から「ナイトメイジ-05」で調べる