あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「ルイズと無重力巫女さん-69」で検索した結果
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ルイズと無重力巫女さん
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ルイズと無重力巫女さん-09
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 今まで大地を照らしてきた太陽は傾きはじめ、待っていたと言わんばかりに二つの月が天へと登り始めてから約数時間。 漆黒と月明かりが、そして一部の世界では人外が支配する様な時間、人っ子一人おらず冷たい風が吹いている中庭の片隅で灰色のローブを纏った女性が息を潜めていた。 スクッと立ち上がると辺りを見回し、ここら辺を巡回しにくる守衛がいないことを確認した。 そして次に懐から魔法を使役するメイジの証しでもあり貴族の命でもある杖を取り出すと軽くルーンを唱え宙に浮き、すぐ後ろの城壁の上に降り立った。 日中にはここに何人かの守衛が背中に弓と鉄製の槍を背負い警備に就いている夕方になれば全員が学院内の見回りをする。 それが済めば学院長や各教師、男子寮塔と女子寮塔に各四人ずつ交代制で警備を行う。後に残った教室や食堂には一人だけ。 昼は常時警備、夜に... -
ルイズと無重力巫女さん-06
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「無礼な!私の足を踏んだのは貴君であろう!」 「なにを…!?罪を着せるのはやめていただきたい!」 大量の人が行き来する狭い道の真ん中で二人の貴族が喧嘩をしている。 そのせいでまわりにいる平民達や他のメイジ達が足止めを喰らっていた。 貴族は平民とは違いプライドも高く、止めさせようにも二人より格下のメイジや平民ではどうしようもない。 とばっちりをくらうだけだ。 二人が言い争い始めてから数分が経過した時、杖を持ったピンクヘアーの少女と小瓶をたくさん持っている黒髪の少女が前から歩いてきた。 右側にいる大量の小瓶を両手で大事そうに持っている少女が無垢な笑顔を当たりに振りまきながら。 「そもそも貴君がそうやって堂々と道の真ん中を歩いているから……ん?……ぉぁ!?」 「なにをいうか!貴君が私の横を通った... -
ルイズと無重力巫女さん-02
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん ここは何処だろうか?真っ暗だ… 何にもわからないし、考えたくても頭が痛い。 確かなんだっけ?使い魔がなんたら神聖な儀式がこうだらで呼ばれて… とりあえず一刻も早く幻想郷に帰らないと焦って…なんか一人で暴れてた様な気がするわね。 でも苦労して手に入れたお茶も飲みたいし、なにより私がいなくなった代わりにあの八雲紫が頑張っているだろう。 急いで帰らないと何を要求されるかわからない。 良くて酒宴、悪くて家の食べ物だ… 今家にはあまり食べ物がない、これ以上減らされたらお茶と水で生活しなければならない。 あぁでも、ここは何処だろう。 せめて光があればわかるのに。 「うくっ……ひくっ……………ひくっ……。」 ふと、何処からかすすり泣く声が聞こえてきて、前から光がさした。 私、博麗霊夢がこのハルケギ... -
ルイズと無重力巫女さん-05
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 一週間後―― 虚無の曜日の朝。 ほんの少し開けられた窓の外から小鳥の声が聞こえてくる。 朝日が窓の側に設置されているベッドを照らし、そこで寝ている少女の自慢であるピンクブロンドを輝かせる。 そして後一人、色々とワケがありこの部屋で一緒に暮らしている黒髪の少女は椅子に座り頭に付けた大きな赤いリボンを両手で弄くっていた。 「うぅーん…これで良いか。」 黒髪の少女――霊夢はリボンの上部を掴んでいた両手を離してそう言った。 綺麗に整えられたソレを見て満足そうに頷くと『この世界』に自分を呼んだピンクブロンドの少女、ルイズの方を見る。 相変わらずルイズは気持ちよさそうに寝ている、多分昨日飲み過ぎたワインが原因だろう。 自分が起きるのはもう少し遅くても良かったかしら? と霊夢がそんな事を考えているとふと... -
ルイズと無重力巫女さん-08
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 先ほどの授業でシャツがボロボロになったルイズは自分の部屋を目指しとぼとぼ歩いていた。 事は数十分前…。 今回行われる「練金」の授業では霊夢が一緒にいなかったので先生にそれを聞かれ少し恥ずかしかった。 最初の時は霊夢もほかの使い魔たちとともに教室の後ろで聞いていたのだが…。 もしかするとおさらいとしてそのとき授業を担当していた教師が言っていた属性のこととかメイジにもクラスはあるとか…そんなのを知りたかっただけなのかも。 それともただ単に飽きただけとか、そんな風に考えていると当然授業が頭に入らず、ルイズは先生に注意された。 「ミス・ヴァリエール。罰としてこの石くれを真鍮に変えてください。」 そういって担当教師のミセス・シュヴルーズが教壇の上にあいてある石くれを指さすと、ほかの生徒たちがいつもの様に... -
ルイズと無重力巫女さん-28
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「やっぱり紫様の言う事は何でも当たるねぇ。すぐに紅白と【虚無】の少女を見つけちゃった」 ようやく捜していた二人を見つけ出した橙が嬉しそうに呟いた。 瞬間、霊夢は目の前にいる猫がいつぞやのマヨヒガで出会った八雲紫の式、八雲藍の式である橙だと気づいた。 それと同時に、ようやく迎えがやってきたのだと悟り、溜め息をついた。 「全く、いつかは来ると思ってたけど。まさか式の式をよこして来るなんてね」 聞き慣れない言葉を聞いたルイズは首を傾げた。 自分の横をかいくぐって部屋に入ってきた尻尾が二本もある黒猫に疑問の目を向ける。 「シキノシキ?…というよりその黒猫はなによ、知り合い?随分とアンタの事を知ってそうな感じだけど」 ルイズの声を聞いた橙はピクンと耳を動かすと彼女の方へと顔を向けた。 「どっちかというと、アタシの主人と... -
ルイズと無重力巫女さん-01
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 青い青い地球にある島国、日本――― そこは他とは少し違う、『幻想郷』という一つの世界があった。 『外の世界』にはない力、結界で覆われ既に過去の遺物となったモノ達でひしめいている。 そこには青く茂る木々と、悠々とした山々、キラキラと光る清流、澄み渡る雲ひとつ無い青空。 伐採やダム建設の影響で残酷にも失われた日本の原風景が見渡す限りに広がっていた。 その他にも既に絶滅してしまった朱鷺やリョコウバト、ニホンオオカミなどの動物たちも暮らしている。 幻想郷には人間達も住んでいる、元からここに住んでいる者達や外の世界からの流れ者もいる。 しかし、外の世界の人間達は大抵人が住んでいる所へたどり着く前にのたれ死ぬか…あるいは『妖怪』に食べられてしまう。 妖怪――彼らもまた外の世界からこの幻想郷へ転がり込んできたモノ達…。... -
ルイズと無重力巫女さん-11
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 午前11時 ――学院長室 普段ここは午前の時間帯なら学院長と秘書だけしかおらず非常に静かな場所だ。 しかし今はここの学院で勤めている教師達が全員部屋に集まっていた。 それぞれの手にはメイジとしての証とプライドである杖ではなく、ただの紙切れが握られていた。 それは椅子にドッシリと構えている学院長が前に出している右手で握っている紙の束である。 少し頭の髪が死にかけている中年の男性教師が前に出、老いているとはとても思えないガッシリとした学院長の手が握っている紙の束から一枚だけ引き抜く。 それを終えると彼は一歩下がり手に取った紙を確認する。紙の先端には赤いインクで「アタリ」と書かれていた。 それはいわゆる「くじ引き」というものである。 縁日やお祭りの時、一回三百円程度で箱の中に手を入れて紙を一枚取... -
ルイズと無重力巫女さん-13
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん ――何ぼーっとしてるのよ。さっさと逃げてくれない?じゃないとアンタも巻き込むわよ?」 霊夢のその言葉を聞き、逃げようとしたルイズはふと顔を上げ、思わず目を見開いて叫んだ。 「え?…あ…レイム!う、上、上!?」 「だからさっさと逃げろって―――わぁ…。」 一体何事かと思い頭上を見上げた霊夢も思わず唖然とした。 何故ならゴーレムの足裏がゆっくりとした速度でルイズと霊夢を踏みつぶそうと迫っていた。 霊夢は本日二度目になるルイズの腕を掴むと『破壊の杖』をその場に放置し、ゴーレムが足を振り下ろす前に素早く後ろへと下がった。 振り下ろされた足は砂塵を巻き上げながら地面をえぐるだけで終わった。 攻撃を避けた霊夢はコルベールの所まで下がるとルイズを掴んでいた手を離し、コルベールの方へ顔を向けた。 「あん... -
ルイズと無重力巫女さん-63
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 初夏の陽が暮れるまで後もう少しという時間帯のトリスタニア。 その王都にある旧市街地で、霊夢とルイズたちの戦いが始まっていた。 得体の知れぬ怒りだけで自分を殺そうとする薄気味悪い自分の偽者との、通算三回目となる戦いが… 「クッ…!」 振り下ろしたナイフを結界で弾かれたもう一人の゛レイム゛―――偽レイムは、その体を大きく怯ませる。 一度跳び上がってからの攻撃だったおかげか二メイル程吹き飛び、背中から地面に倒れてしまう。 「悪いけどそろそろ夕食時だし疲れてるから、速攻で片付けるわよ」 当然それを見逃す彼女ではなく、右手に持つ二本あるナイフの内一本を、左手で握り締めながら呟く。 錆が目立つソレを持った左手の甲には、ルイズとの契約で刻まれた使い魔のルーンが懸命に光り続けている。 そのルーンは、始祖ブリ... -
ルイズと無重力巫女さん-04
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「失礼しますオールドオスマン、大変なことが起こりました。」 オスマンがパイプを吸っているとドアをノックして秘書のミス・ロングビルが入ってきた。 「何なんじゃミス・ロングビル。その大変なこととは?」 「決闘です。」 その言葉を聞いたオールド・オスマンは口にくわえていたパイプを口から出し、大きくため息を吐いた。 「ふぅむ、どうしてこう最近の若者は血気盛んなのかのぉ…?して一体誰が?」 「はい、あのグラモン元帥の息子ギーシュ・ド・グラモンが……ミス・ヴァリエールの召喚した変わった服を着た少女に…。」 「何?」 【ミス・ヴァリエールの召喚した変わった服を着た少女】という言葉を聞いたオスマンは目を丸くした。 「ヴェストリの広場で決闘が行われるようですがどうします?」 「……わかった。とりあえずミス・ロングビルは広場の方に向かっ... -
ルイズと無重力巫女さん-52
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリステイン魔法学院の女子寮塔にあるルイズの部屋―― 今日は珍しくも、午前から来客者がいた。部屋の主が不在にもかかわらず。 「…久しぶりに顔を合わせた、って言ったほうがいいのかしら?」 部屋の主の使い魔である霊夢の言葉に、来客者であるタバサはコクリとうなずく。 それを見た霊夢は、相変わらず口数の少ないやつだと心の中で呟いた。 以前春のフーケ騒ぎで助けてもらったこともあるが、それを差し置いて少しだけ不気味に感じていた。 まるで人形のように色を浮かべぬ表情に、ボー…っと宙でもみているかのような虚ろな瞳。 普通の人間ならばまず、彼女に対して距離を置こうとするだろう。 それほどまでにタバサの体から出ている雰囲気は異様なほど不気味なものであった。 しかし、霊夢だけはまた違った気配をタバサの体から感じ取... -
ルイズと無重力巫女さん-03
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「ふぅむ…つまり君はミス・ヴァリエールが召喚したのは伝説の『ガンダールヴ』だと言いたいのかな?」 双月が濃くなり始める時間に学院長のオールド・オスマンはコルベールとある話し合いをしていた。 「はい。何回も何回も調べ直しましたが、あれは間違いなくガンダールヴのルーンです!」 興奮したコルベールがつまりそうな早口で言った。 『ガンダールヴ』とは…伝説の系統である『虚無』の使い魔で、ありとあらゆる兵器や武器を使いこなせるという。 コルベールや長寿のオールド・オスマンでさえ見たこともない伝説の使い魔が召喚されたのだ。 探求心豊富なコルベールが興奮するのは仕方がない。 「まぁまぁ落ち着きたまえミスタ・コルベール。興奮するのは仕方がないがちと声が大きすぎるぞ?」 オールド・オスマンは人差し指で口を押さえてコルベールに静かにするよ... -
ルイズと無重力巫女さん-35
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 太陽が沈み、赤い月と青い月が空高く昇り始める時間帯。 朝と昼は活気で溢れていたブルドンネ街は驚くほど静かになっていた。 明るい時間を好んで外を出歩く人達に向いている店などは戸締まりをし、従業員たちは自宅へと帰っている。 街の住民たちもそれぞれの寝床へと足を進め、大通りから段々と人の姿が消えていく。 まるでこれからやってくる夜に恐れおののくかのように。 一方で、夜と共にやってくる闇を打ち払うかのようにチクトンネ街は活気に溢れている。 チクトンネ街は酒場やカジノ、ダンスクラブなど夜型の人間が客の大多数を含む店が密集しているのだ。 その為か朝や昼よりも夜中の方が活気があり、それは朝が来るまで終わりを見せてくれない。 古き伝統を持つトリステイン王国の首都は、朝の街と夜の街がある。 そして夜の街には、朝の街で決して戸を... -
ルイズと無重力巫女さん-07
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「ヴァリエール家やトリステインの貴族様ってのはどうしてこう見栄を張るのかしらねぇ~?」 「あ、アアンタたちとは違ってこちらには貴族として、てのプププププライドドドドがあ、あるのよ!!」 安易な挑発に乗りまくってどもりまくっているルイズに対しキュルケは顔に微笑を浮かべながら挑発している。 置いてけぼりにされたタバサは活字に目を通しながらもちらちらとその光景を眺めていた。 詳しいことは知らないが代々ツェルプストー家とヴァリエール家は犬猿の仲らしい。 お互い戦争の時には殺し殺され、ヴァリエール家はツェルプストー家に愛人を寝取られまくったりと、色々と凄まじい。 ふとタバサは肩を振るわせ顔を真っ赤にして怒鳴っているルイズを見て、彼女が召喚した変わった服を着た少女の事を思い出した。 あの時自分はキュルケと一緒にギーシュ... -
ルイズと無重力巫女さん-69
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん あぁ、これは夢にしてはちょっとリアル過ぎないかしら? 物心を持った霊夢が何年かした後にそんな事を思うようになったのは、数にして役二桁程度だろうか。 例えば今食べたいモノを口にしている食感とか、賽銭箱に入った貨幣を勢いよく掴みとった時の感触等々…。 起きる直前まで夢と思えぬ程の現実感に酔いしれて、手に取れぬ幸せに浸れる時間こそ夢の醍醐味なのではと彼女は思っている。 だが、ふとした拍子に目が覚めて初めて夢だと気づいた直後…今見ていた現実がそっくりそのまま幻に置き換わったかのような虚無感がその身を襲う。 上半身だけを起こして重たい瞼を瞬かせた後に、落胆のため息と共に訪れるどうしようもない空しさ。 そんな「リアルな夢」を、彼女はこれまで幾度となく見てきた。そして、これからも睡眠の時にそういうモノを見る機会が増... -
ルイズと無重力巫女さん-26
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 平日ならば王宮で仕事をしている貴族や上流階級の商人をよく見かけるトリステインの王宮はいつもと違っていた。 王宮の門の前には当直の魔法衛士隊の隊員達が幻獣に跨り闊歩しており、いつもはこれ程厳重な警備ではない。 数日前からトリスタニアに住む人々の間ではこれは戦争の前兆かも知れないと囁き合っていた。 その話は三日前に隣国であるアルビオンを制圧した貴族派『レコン・キスタ』の存在もあって、現実味を帯びている。 王宮の上空を幻獣、船を問わず飛行禁止命令が出されたり、検問のチェックも激しくなったりすれば尚更である。 トリステイン軍のこの様な異常な行動に市民は恐怖し、いずれ来る戦火に今から怯えていた。 そんな状況であったから、王宮の上に立派な竜籠が現れたとき、警備の魔法衛士隊の隊員達は色めきたった。 三隊ある魔法衛士隊の内一... -
ルイズと無重力巫女さん-41
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「誰も名乗り上げないのなら、私が動かしてみても良いんだろ?」 コルベールの失言(?)によって沈黙しようとしていた教室に、魔理沙の声が響いた。 物怖じせずハッキリとしたその言い方には、好奇心という名の香辛料が多目に入っている。 その香辛料は困ったことに一部の人間に対しては非常に厄介な代物で、一度嗅げば虜になってしまう。 魔理沙もまたその香辛料の魅惑に夢中な種の人間であり、コルベールもまたその種の人間であった。 一方の生徒達は、重く冷たい沈黙を薄い紙切れのように容易く千切った突然の干渉者に呆然としていた。 ある者は声の主に目を丸くし、またある者はその姿を見て頬を赤らめている。 ◆ 魔理沙が食堂で゛ルイズの命を助けた恩人゛として学院長に紹介されてから、五日が経つ。 それからというものの、魔理沙は給... -
ルイズと無重力巫女さん-47
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 声が聞こえた。それが声だと誰かが言うのなら。 ――…ン…――イ…――イィン… まるで黒板を爪で引っ掻いたようなその声は、何を表しているのだろうか。 ただ相手を脅かすための威嚇か殺人音波か――もしくは嘆きの叫び声なのかもしれない。 しかしその声は結局の所、一時の眠りと共に暗い闇に沈んでいた霊夢の意識を無理やりすくい上げることとなった。 「んぅ…?」 約数十分近くの睡眠から起こされた霊夢は重い瞼をゆっくり上げ、右手でゴシゴシと目を擦る。 まず最初に目に入ったのは当然の如く、青い空と白い雲であった。 もう何百何千と見てきた空模様に見入る事なく、霊夢はゆっくりと上半身を起こす。 眠気が完全にとれていないような顔で辺りを見回し、ある事に気づく。 「あの竜…どこいったのかしら」 霊夢は眠る前にグルグルと自分... -
ルイズと無重力巫女さん-25
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん レコン・キスタの奇襲にニューカッスル城は混乱の渦中に叩き落とされた。 容赦ない砲撃に城壁はおろかその周囲にいた者達が巻き込まれた。 破壊された城壁の下敷きになる者や吹き飛ばされ壁に叩き付けられた者までいる。 もはやニューカッスル城には安全な場所と無傷な場所は存在しない。 レコン・キスタからの砲撃はまるで積み木の城を一気に崩すかのようにニューカッスル城を破壊していく。 その内大砲から発射された砲弾の一つが掘っ立て小屋の火薬貯蔵庫に直撃し、貯め込んでいた黒色火薬が大爆発を起こした。 明日の決戦にと急ごしらえで作られた貯蔵庫は、皮肉にもその火薬を持っていた王族派の者達に牙をむいた。 たちまちニューカッスル城の各所から煙と炎が上がり、遠慮無くニューカッスル城を赤色に染め上げていく。 時を見計らって城内に入ってきたレコン・... -
ルイズと無重力巫女さん-64-a
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 閉じられていた記憶の奥深くから゛何か゛が這い出てこようとしている。 それはまるで、巨大な人食いミミズが獲物を求めて出てくるように、おぞましい゛恐怖゛を伴ってやってくる。 何故こんな時にそんな事が起こるのかは知らないが、予想だにしていなかった事に彼女はその体を止めてしまう。 自分が誰なのか知らない今でさえ大変だというのに、自分の体に起った異変に彼女が最初に感じたものは二つ。 前述した゛恐怖゛と―――――手の届きようがない゛不快感゛であった。 まるで無数のテントウムシが体の中を這い回っているかのような、吐き気を催すむず痒さ。 その虫たちが、何時か自分の体を滅茶苦茶に食いつぶすのではないかという終わりのない恐怖。 脳の奥深くからせり上がってくる゛何か゛に対し、最悪とも言える二重の気持ちを抱いている。 ... -
ルイズと無重力巫女さん-50
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 夕闇にそまりつつあるトリステイン王国のとある山中――――― 太陽が真っ赤な夕日となり人気のない森の中を照らしている。 木々の間から漏れる赤い木漏れ日は幻想的で、この世の光景とは思えない程綺麗であった。 もしその場に画家か旅の絵描きでもいれば、その光景を写そうと鞄の中から急いで画材を取り出すに違いない。 人の手が一切加えられていないその森は、悠久の時を経て自然が生み出した一つの芸術。 とある世界の人々が、自らの手で破壊の限りを尽くした原生林そのものであった。 だが――今日に限って、その森の中で戦いのゴングを鳴らした者達がいた。 ある者達は自然の摂理から外れた異形から受けた突然の奇襲により危機に立たされ、またある者は正体の掴めない者から攻撃を受けた。 血肉に飢えた獣たちと、人の常識では計り知れないモノ達が集い... -
ルイズと無重力巫女さん-42
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリステイン魔法学院。 朝の始まりとも言える一限目の授業が始まってまだ数十分しか経っていない程度の時間帯… 教室から少し離れた階段の踊り場に、痛い目にあっている黒白の魔法使いと不機嫌な桃色ブロンドのメイジがやってきた。 「全く、どうしてこう…アンタってヤツはすぐ目立とうとするのよ」 「そ…その前にまず私の耳を引っ張ってる手を離してくれよ。変な病気にでもなったらどうする」 耳を引っ張られて教室の外に連れ出された魔理沙に、ルイズは開口一番にそう言った。 しかしそんな事を言われた魔理沙はというと、ルイズの言葉を聞くよりも先に耳の痛みに気が向いていた。 ルイズはその言葉に従い、耳を掴んでいた手を放す。 ようやく耳を解放された魔理沙はヒリヒリと痛む耳をさすりながら苦々しい表情を浮かべた。 「イタタ…何... -
ルイズと無重力巫女さん-16
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 昼頃から始まったアンリエッタ王女によるトリステイン魔法学院の視察は予定通りというか、順調に進んだ。 宝物庫や中庭、食堂や生徒達が暮らす寮塔等を見回っている内に、すっかり日も沈んでしまった。 今回アンリエッタ王女は一晩泊まってから翌日王宮に帰るので、今夜は魔法学院で夜を明かすことになったのである。 その為、警備もかなり強化されている。前に土くれのフーケに忍びは居られたので尚更だ。 今夜の衛士達の警備はいつにも増してかなり厳しいがそれは本塔や生徒達が暮らす寮塔――そして城壁部分だけである。 逆に給士やコックとして働いている平民達の宿舎の警備はほぼゼロである。 金で雇われている学院の衛士達はこんな事を言っていた。 「平民をさらう者が居るとすれば、それは単なる人さらいか、ただの変わり者さ。」 その為今日の仕... -
ルイズと無重力巫女さん-45
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリステイン魔法学院の敷地から外は、広大な森が広がっている。 首都トリスタニアへと続く街道の外は、どこまでも広がっているかのように感じてしまう巨大な森林地帯がある。 最寄りの街であるトリスタニアに行こうとしても、馬を使わなければちょっとした旅になってしまう。 一応ちゃんとした道はあるのだが、いかんせん森の中を突っ切るように出来ているので凶暴な肉食動物が襲ってくることもある。 その為、魔法学院かトリスタニアに行く者は馬に乗るか馬車に乗るか、あるいは空を飛べる幻獣に乗るしかない。 しかし、今日に限ってはそのどれにも当て嵌まらない゛物゛で学院の敷地を出た者がいた。 「相も変わらず、デッケー森だなぁ。地平線まで続いてるんじゃないのか?」 愛用の箒に腰掛けるかのような姿勢で乗って空を飛ぶ魔理沙は、眼下に見えるトリステ... -
ルイズと無重力巫女さん-39
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 霊夢が正体不明のキメラと戦ってから早三日目―― トリステイン魔法学院にある食堂の朝は早い。 日が昇る二時間前に食堂の厨房で働いているコック達が起床し、朝食の支度を始める。 魔法学院に在学している生徒や教鞭を取っている教師たちは勿論、学院の警備を担当している衛士隊の分もあるのだ。 給士達もそれに見習うかのように起きてテーブルクロスを敷いたり、パンやフルーツを入れる為のバスケットを用意する。 ハルケギニアでも一、二を争う名門校と言われているだけあってかその動きは洗練され、そして無駄がない。 一部の給士達は仕事の合間に軽い会話を交えてはいるものの、手の動きが一切乱れていない程である。 料理を作るコック達もまた一流揃いであり、料理長に至っては自分で店を開いても充分やっていける程の腕を持っている。 他の... -
ルイズと無重力巫女さん-27
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリステイン魔法学院はあいかわらず平和であった。 王都では多くの人々が戦争が起こるとか言ってやいのやいのと騒いではいるがここでは大した騒ぎにはなっていない。 あるとすれば、何人かの男子生徒達が談笑のネタとして話してるぐらいだ。 戦争が起これば自分の父や兄達が手柄をあげるとか、軍には行って敵を倒しやるぞ。といったものである。 トリステインの貴族の男子達は大きくなったら軍に入り、数々の手柄をあげたいという夢を大抵の者が持っている。 そんな事を話している彼らを見て、そのガールフレンドや親しい関係を持っている女子生徒達は顔を曇らせるのだ。 と、まぁ…とりあえずは魔法学院の生徒達は今の状況を充分に楽しんでいるのである。 実際に戦争が起こるかもしれない。というのは別にして。 そして、魔法学院の女子寮塔の部屋で暮らして... -
ルイズと無重力巫女さん-51
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん ルイズ、霊夢、魔理沙の三人がトリステインの森で手痛い体験をしてから暫く後の虚無の曜日―――― その日は朝から用事があると言ってルイズがひとり街へ赴き、魔理沙もキノコ探しにと森へ出かけた。 今ルイズの部屋にいるのはルイズに召喚されて使い魔になってしまった霊夢と、やけにお喋りなデルフだけであった。 ◆ ―――最近、日差しが強くなったような気がする。 霊夢はそんな事を思いながら、開きっぱなしの窓から外の景色を見る。 魔法学院の一室から見える開放的な蒼い空に覆い被さるかのように、巨大な雲が浮かんでいた。 それは俗に「入道雲」とも呼ばれる存在で、夏の訪れを知らせてくれる入道だ。 「そういえば、もうすぐ夏の季節なのよね…」 霊夢は誰に言うとでも無く呟くと、テーブルに置かれた緑茶入りのコップを手に持った。 ... -
ルイズと無重力巫女さん-43-b
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん ドアを開けて部屋に入ってきたのは、この部屋の主であるルイズであった。 彼女は手に先程の授業で使用した教科書を出入り口の側に置いてある小さな台に置き、二人の方へ近づいていく。 「あらマリサ、あんたレイムと一緒にお茶を飲んで……た…」 ルイズの口から出た言葉、魔理沙と霊夢の間にあるテーブルの上に置かれたクッキーを見て、言葉が止まる。 既に何枚かが開かれた箱の中から取り出され、うち一枚の片割れが魔理沙の手の中にあったのも、見逃さなかった。 勘が鋭い霊夢はルイズの様子が豹変したことに怪訝な表情を浮かべたが、魔理沙はそれに気づかないでいる。 「おぉルイズ!もう次の授業か?次は耳を引っ張ったり殴ったりしないでくれよな」 ペチャクチャと喋りながら体が止まったルイズの側へと近づき、新たに箱から取り出したクッキーを一枚差し出す。 ルイ... -
ルイズと無重力巫女さん-62
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 少し離れた所から人々の喧騒が聞こえてくる、旧市街地へと続く入り口周辺。 閉館時間を過ぎた劇場のように静かで陽の当たらぬ場所で、ルイズと魔理沙は行方不明になっていた゛レイム゛と再会していた。 だが、1時間ぶりにその姿を間近で見たルイズは、彼女の身体に何か異変が起こったのだとすぐに察知する。 姿形こそ彼女らが見知っている゛レイム゛そのままの姿であるが、不思議な事に彼女の両目は不気味に光り輝いていた。 それに気づいたルイズは目を丸くし、再会できたのにも関わらず一向にその足を動かせなくなってしまう。 お化け屋敷の飾りでつけるようなカンテラみたいにおぼろげで、血の如き赤色の光。 今いる場所が暗ければ、間違いなくその身を震わせていただろうと思えるくらいに、゛レイム゛の目は不気味だった。 目の光に気づく前は名... -
ルイズと無重力巫女さん-64-b
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 例えばの話だが、ある所に命を懸けた戦いをしている戦士がいるとしよう。 限られた武器と足手纏いとも言える者たちが周りにいる中、戦士の相手は凶悪な怪物。 明確な殺意をもって戦士の命を仕留めようとする、無慈悲な殺人マシーンだ。 戦士は足手纏いな者たちを守りつつ怪物を倒すことになるが、それはとても大変な事である。 戦う必要のない者たちは自分たちも戦える豪語しつつ、各々が勝手に行動しようとするからだ。 そうすれば戦士はいつものペースで動くことができないが、一方の怪物は戦いを有利に進めることができる。 例え向こうが多人数であっても、足並みを揃える事が出来なけれ文字通り単なる烏合の衆と化す。 結果向かってくる奴だけを順々に片付ければ良いし、運が良ければ思い通りの戦いができない戦士をも殺せる。 し... -
ルイズと無重力巫女さん-34
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「…なんだか気色悪い奴ねぇ―――…っと!」 霊夢は気味悪そうに呟きつつも、右手に持っているお札をクワガタキメラに向かって勢いよく投げつけた。 投げられたお札は軌道を変えることなく一直線にキメラの方へと飛んでいく。 「ギ…ギィッ!」 キメラは痛みにもだえつつも再度行われる攻撃を視認すると両足に力を込め、勢いよく飛び上がった。 瞬間、先程までキメラが立っていた場所にお札が勢いよく突き刺さり、小さな爆発を起こした。 攻撃を避け、地面へと着地したキメラはもはや自身のダメージを気にすることなく上空にいる霊夢の方へとその頭を向ける。 そして自分の体を傷つけたのが彼女だと判断し、キメラは威嚇するかのように顎を動かしながら金切り声を上げた。 常人なら聞いただけで腰を抜かしそうな金切り声に、霊夢はうんざりするかのように溜め息をついた。... -
ルイズと無重力巫女さん-49
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん ドアを開けようとした矢先、霊夢の耳に魔理沙とルイズの声が入ってきた。 「ちょっ…ま…どうやって来たんだよお前!?」 声の感じからして、恐らく考えてもいなかった事態に直面して焦っているようだ。 それに続いてカンカンに怒っているであろうルイズも聞こえてきた。 「やっぱり霊夢を追ったのは正解だったようね!どうせ二人してしばらく雲隠れでもしようかと企んでたんでしょ!?」 「うぇっ…?おいおいちょっと待てよ、霊夢はともかく私は逃げる気なんてないぜ」 「嘘おっしゃい!下手な嘘付いたらその分痛い目を見る事になるわよ!?」 霊夢はドアの前でふと足を止めた。どうやってルイズがここまで来れたのだろうか? ここは学院から結構離れているし、何よりどうやって追いついてきたのか。 色々と疑問が浮かんでくるがそれを解決する前に、ルイ... -
ルイズと無重力巫女さん-48
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「はっ…!…はっ!」 陽の光が届かぬ薄暗い森の中に、鳥の囀りと共に規則正しい息づかいが響く。 それについで小さな足でトンットンッと地面を蹴る音も続く。 その二つの音を出していたのは、まだ十代そこそこに見える黒髪の少女であった。 まるで軽業師のように地面を蹴って森の中を走り回る少女の顔は全く苦しそうに見えない。 それどころか辺りに目を配るほどの余裕をもっており、ついで背負っている一人の女の子に目をやる。 そこには、少女の背中にしがみついたまま気を失っているニナがいた。 あの時山小屋から逃げた後もずっと気絶したままで、かといって山中に放置することも出来ずこうして数十分も背負い続けて走っている。 少女は、この子を背負ってなければもう少し足を速められるかなと一時は思ったが、すぐに首を横に振った。 仮に連れて行かず、小... -
ルイズと無重力巫女さん-59
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 日暮れの時が迫りつつあるチクトンネ街。 その一角でルイズと魔理沙の二人は、予想だにしていなかった相手と鉢合わせになっていた。 花も恥じらう美女の姿をしたその者は異国情緒漂う白い導師服に身を包んでおり、周囲に場違いな雰囲気を放っている。 彼女の名は八雲紫。霊夢と魔理沙の故郷である幻想郷の創造者で境界を操る程度の大妖怪だ。 「久しぶりね二人とも、元気にしてたかしら?」 まるで故郷で旧友と再会したかのような気軽さでもって、紫は目の前にいる二人へ話しかける。 本来ならこのハルケギニアにいないであろう彼女を前にして、ルイズは恐る恐るといった感じで返事をする。 「ユカリ…一体何の用かしら」 「別にコレといった用事はありませんけど、アレといった用事で少し足を運んでみただけですわ」 まるで... -
ルイズと無重力巫女さん-18
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリステインから丁度馬で二日くらい掛かる距離に、ラ・ロシェールという『港町』がある。 港町でありながら辺りを頑丈な岩山に囲まれ、既に枯れてしまった世界樹の木が生えているだけの寂しいところだ。 何処にも海や川と言ったモノはないが、それでも世間では『白の国』と呼ばれるアルビオンへの入り口の役目も果たしている。 人口三百人と規模は小さい街ではあるがそれでもアルビオンと行き来する人々で常に街は賑わっているのだ。 建物は木造ではなく全て岩から削り出され、それ等は全て『土』系統のスクウェアメイジ達が作り出した努力の結晶なのである。 今の時間は深夜であるがラ・ロシェールの町は賑わっており、特に酒場などでは今も尚灯りがついている。 鎧を着こなし、槍や剣を背負った傭兵達が安そうな酒瓶片手に酔っぱらいながら道の真ん中を堂々と歩いていた。... -
ルイズと無重力巫女さん-60-a
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 数十年ほど前までは人が訪れていたであろう、公園と呼ばれていた広い敷地。 今はベンチすら取り外され、放置された雑木林や雑草がこの地を支配している。 もうすぐ真夏だというのに何処か薄ら寒い何かを漂わせており、人が近寄らないであろう環境を作り上げている。 敷地内に吹く風は市街地と比べれば若干涼しいが、その風に揺らされている林や雑草が不気味な音を奏でていく。 きっと三流劇団が演じるホラー劇よりも怖いと感じてしまうそんな場所のあちこちに、誰かがいた痕跡が色濃く残っていた。 一見すれば良くわからないが、目を凝らしてみれば目が不自由な人以外にはわかる程の痕が付いている。 碌に整備すらされず、好き放題に伸びている林の木々には何本もの針が刺さっている。 放置された自然さが漂う雑木に食い込んだ針は鈍い銀色を放ち、あ... -
ルイズと無重力巫女さん-24
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 霊夢が部屋から出て行った後、ウェールズもしばらくしてパーティーに戻ろうと部屋を出て廊下を歩いていた。 こちらを空から睨み付けている「レキシントン号」の砲撃で壁のあちこちにヒビが入っている。 城の中ですらこのような凄惨たる状況なのによく今まで持ち堪えたな、とウェールズは一人思った。 やがてパーティーで騒いでいる者達の声が聞こえてきた時、ふとウェールズは懐にしまっていた手紙を取り出した。 それはつい数時間前にルイズから受け取ったアンリエッタの手紙であった。 ウェールズは白い封筒を暫く見つめ、誰もいないのを確認すると封筒を開けてもう一度読み始めた。 手紙の下の隅にはトリステイン王国の印である百合の花押があり、王家の者が直々に書いたことを証明している。 最初にこの手紙を自室で読んだとき、ウェールズは苦悩したのだ。 それ程にこの... -
ルイズと無重力巫女さん-65
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 蝉達の合唱が聞こえている。鼓膜を少しだけ揺らす程に鳴いている。 お前が再び目を開けた直後に聞いた音は何かと問われれば、間違いなくそう答えているかもしれない。 霊夢はそんな事を一人思いつつも未だに重い瞼をゆっくりと上げ、博麗神社の社務所の中から夏の空を見上げた。 まる巨人がそのまま雲に包まれたかのような入道雲が、清流の様に真っ青な空と同居している。 そして空と雲より近くに見える緑の木々と真っ赤な鳥居が、青と白のモノクロカラーに鮮やかさを足していた。 気温が上がり、幽霊を瓶詰にして昼寝をする季節には必ず見るであろう景色であった。 霊夢本人としては見慣れてしまった光景だが、何処かのスキマ妖怪曰く「失われた日本の原風景」の一つらしい。 ――そんなに珍しいのなら、見物代くらい取れそうね。まぁ、誰も払わないだ... -
ルイズと無重力巫女さん-29
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん ルイズ・フランソワーズにとって、今体験している不可思議な出来事は一生忘れられないだろう。 別の世界で巫女さんをしている霊夢を召喚してからというものの、色々な事があった。 ギーシュの決闘騒ぎやフーケ退治、挙げ句の果てには戦争中の他国にまで行く始末。 しかもその出来事の全てに霊夢も関わり、いつの間にか全部霊夢が片づけてくれた…気がする。 そして全てが終われば霊夢は学院の外へ飛んでいき、気が向けば自分の部屋にいてお茶を飲んでいる。 きっとそんな光景は、いずれ終わるだろうと。ルイズは思っていた。しかし… (だからといって、これは不可思議を通り越して摩訶不思議ね…) ルイズは心の中でそう呟き、大きな溜め息を盛大についた。 今彼女は霊夢の家――――つまりは博麗神社…の外れにある社務所の居間にいた。 先程寝かされていた部屋と... -
ルイズと無重力巫女さん-12
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「貴方達!無断で学院を抜け出すなどして!!駄目ではありませんか!」 ハルケギニア大陸のトリステイン王国。 その一角にある森の真ん中に出来た空き地でコルベールが正座しているルイズ達に説教していた。 右から順にルイズ、キュルケ、タバサと並び顔を地面の方に向けてジッとこらえている。 先ほどコルベールが怒り出して説教を初めてから五分くらい経過していた。 親からの折檻をまともに受けたことがない貴族の子ども達にはかなり辛い物である。 その様子を霊夢とシルフィードは小屋の傍でじっと見ていた。 霊夢は学院の生徒ではないため折檻されることは免れている。タバサの使い魔でもあるシルフィードも同じだ。 彼女は隣にいるシルフィードを背もたれ代わりにし、じっと説教に耐えるルイズ達を見ていた。 やがてコルベールの説教... -
ルイズと無重力巫女さん-36-b
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 夜の闇が段々と深くなってゆくトリステイン魔法学院… その女子寮塔の上階にある部屋の窓から飛んで出てきた霊夢は、塔の出入り口へと降り立った。 持ってきた御幣は紙垂の付いている方を上にして担いでおり、体が動くたびに音を立てて揺れる。 (やっぱりというかなんというか。流石にこうまで暗いと見つけられるモノも見つけられないわね…) 地上へ降り立った霊夢は、外が余りにも暗いという事実に内心溜め息をつく。 既に辺りは闇に包まれており、少し離れたところにある城壁に置かれた燭台から出ている明かりがハッキリと見えている。 しかしそれはここを明るくするには至らず、仕方なく霊夢は自分の両目に神経を集中させて辺りの様子を探り始めた。 いかなる状況でも冷静に判断し、相手の攻撃や弾幕を避ける博麗の巫女にとってこれぐらい朝飯前の事である。 彼女の目... -
ルイズと無重力巫女さん-10
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「……良いですかな皆さん?この様に炎は色が薄くなればなるほど高温になっていくのです。」 ミスタ・コルベールは手にした炎で鉄の棒をあぶりながらそう言った。 そして十秒くらいあぶると鉄の棒から炎を離し、棒の両端を手で掴むと一気にそれを折り曲げた。 あぶられていた鉄の棒は抵抗することなくあっさりとくの字形になってしまった。 「と、この様に火の魔法は魔力の調節によって温度が変わります。その温度をうまく操ることが出来れば様々な金属を加工するときに役立ちます。」 生徒達は彼の言葉を聞きながらも机に置いているノートにメモしていく。 今日の二限目は「火」の魔法の授業である。担当教師はコルベールだ。 火属性の便利さや加工技術などを学ぶ。 しかし本来この属性は攻撃などが主体であり普通ならそれを学ぶための授業だ。 で... -
ルイズと無重力巫女さん-36-a
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリステイン魔法学院の警備を務めている学院衛士隊には幾つかのグループが存在する。 夜間や授業中の時間帯に学院内の警備をするグループと宝物庫などを見張る精鋭グループ。 そして外部からの侵入者を見つけるために学院の出入り口や城壁の上で一日を過ごすグループ。 これらを全て合わせれば約七十人程の規模を持つ学院衛士隊の者達ではあるが、これらを大きく二つに分ける事が出来る。 それは、「朝から夜まで働く者達」と「夜から朝まで働く者達」だ。 魔法学院の一角には、小さな宿と同じ大きさ程度の二階建ての宿舎が二つ存在する。 一つはコックや給士たちが寝泊まりするための場所で、食堂の近くに建てられている。 そして二つめは学院の警備をする衛士の宿泊施設であり、夜中になっても未だに一階の明かりがついていた。 一階には待合室や食堂、不審者を入... -
ルイズと無重力巫女さん-17
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん ルイズは今、もの凄く混乱していた。 嫌な夢から覚め、起きたばっかりに鼻を打ち付けた直後アンリエッタ王女が部屋を尋ねてきたのだ。 この国の者じゃなくても国の頂点に立つ者が自分の部屋を尋ねてきたら誰しもルイズみたいに目を白黒させる。 急いで膝をついたルイズを見たアンリエッタ、申し訳なさそうに口を開いた。 「あぁルイズ、あなたならば私の前で膝をつかなくとも…」 「ひ…姫殿下!こ、今夜は如何なる御用で下賤なる私の部屋へといらしたのですか?」 ルイズのかしこまったような感じの声を聞き、アンリエッタは寂しそうな顔をする。 「顔を上げてルイズ!そんなにかしこまらないで頂戴!私たち二人の仲じゃないの!?」 アンリエッタは悲痛な声でそう言うとルイズを無理矢理立たせた。 ルイズも流石に昔の幼なじみということで観念したのか、緊張して... -
ルイズと無重力巫女さん-15
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリステイン魔法学院で行われたフリッグの舞踏会から約一週間が過ぎた。 勉強もこれからだという時期なのに魔法学院の生徒達はあの時が忘れられず、この教室でも何人かがそのときの思い出を話していた。 ある者は恋人が出来たとか、とても美味しい酒やご馳走を楽しめた等々色々だった。 そんなホンワカとした雰囲気の中、ただ一人ルイズだけが何かを考えているような表情でイスに座っていた。 フリッグの舞踏会があったその日からルイズの頭の中には学院長のある言葉が残っていた。 それは春の使い魔召喚の儀式で喚んでしまい、今では使い魔ではなく居候と化している霊夢へ放たれた言葉であった。 ――――君に記されていたというルーンはこの神の左手と言われた『ガンダールヴ』のルーンじゃ。 ―――そう…『虚無』の使い魔であり、ありとあらゆる武器を... -
ルイズと無重力巫女さん-61-b
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん チクトンネ街から少し出ると旧市街地の入り口があるが、そこから先は殆ど人気が無い。 人々が集う飲食店や酒場も無いここは、既に放棄されて久しいと言っても良いくらいの場所であった。 唯一目につくものと言えば、かつては多くの人を迎えたであろうアーチが立てられた入り口とその真下に作られている一つの台座だ。 旧市街地へ入ろうとするものを拒むかのような古びたアーチにはどんな事が書かれ、台座の上にはどんな像が置かれていたのだろうか。 それを知る者はこの場におらず、知っている者もきっとここへ戻ってくることは無いだろう。 文字通り死した大地とはこの街の事を示すに違いない。今のここは活気を失い、座して滅びを待つ者たちの吹き溜まりだ。 こんな場所へ何の用事も無しに訪れる者は、きっと余程の変わり者ぐらいであろう。 しかし、今日は... -
ルイズと無重力巫女さん-68
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 夏の日差しを遮る森の中を走る川辺の近くに、腰を下ろした女性と少女がいる。 腰まで届く黒い長髪を持つ異国情緒漂う巫女服の女性が、となりにいるピンクブロンドの少女に何かを話している。 貴族らしい身なりをしたピンクブロンドの少女はその話を真剣な面もちで聞いており、時折驚いているのかハッとした表情も浮かべていた。 一種の風景画とも思えるその光景には、女であってもついつい足を止めてみてしまうに違いない。 しかしここは近隣の村人でも滅多に入ってこない秘境の様な場所であり、今の二人を目にする第三者が現れる可能性は低い。 だからこそだろうか、二人は時間を忘れたかのように会話を続けていた。 「成る程…それで、その大女とやらを捜してここまで歩いてきたのね」 数分後、巫女の話を聞き終えたピンクブロンドの少女――カトレ... -
ルイズと無重力巫女さん-67
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 血生臭い匂いと肉片、そしてコボルドの死体が散乱する深夜の川辺に幾つもの小さな影―――生きているコボルド達がうろついていた。 先程まで地上を照らしていた双月が黒雲に覆われた今は、人に原初の恐怖をもたらす闇が支川辺を支配している。 その中で蠢く彼らは焦げたバターの様な色の目玉を光らせ、ギョロリと動かしながら゛何か゛を捜していた。 地面に横たわる同族の死体を避けて動く足には配慮というものがあり、死者に対する敬意があるようにも見える。 もっとも彼らにそれを理解できる程賢く無いかもしれないが、自分たちの仲間゛だった゛モノを踏んではいけないという事は理解しているらしい。 水が流れる清らかな音風で揺れる木々の騒音が合わさり、自然が奏でる音楽にはあまりにも不釣り合いな血祭りが行われた川辺。 その周辺をうろつき回るコボルド... - @wiki全体から「ルイズと無重力巫女さん-69」で調べる