あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「虚無と狼の牙-09」で検索した結果
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虚無と狼の牙
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虚無と狼の牙-09
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第九話 ウルフウッドとルイズはトリステインへと戻る馬車の中で揺られていた。その幌の中でルイズは小さな唇をきゅっと結び、何かを考えるようにして黙り込んでいる。 ウルフウッドはだらしなく両足を投げ出しながら、そんなルイズの姿を眺めていた。 魅惑の妖精亭で諜報任務に当たっていたルイズが、その任務半ばでトリステインへ戻っているのには理由があった。 外の世界からやって来たウルフウッドにはこの世界の情勢はわからない。 しかし、あの時手紙を受け取ったルイズの表情と、彼女の口から出た言葉からおおよその事態は察することが出来た。 「アルビオンでクーデターが起きたわ」 昨晩、ふくろうから手紙を受け取ったルイズは震える唇でそう言った。その手紙は彼女に任務を与えた王女から送られたものだった。 ルイズによる手紙... -
虚無と狼の牙-08
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第八話 厨房で皿洗いを再開しようとしたウルフウッドの耳に人の怒鳴り声が聞こえた。 「この馬鹿娘ー! 僕ちんのラブリーなお顔にカカトをくれるとは何事だー!」 その声にウルフウッドは一つ大きなため息を付き、厨房からホールへと顔を出した。 「なぁ、なんやあれ?」 ウルフウッドは梁に軽く手を突きながら、上半身を前のめりに覗き込むようにして隣にいたジェシカに尋ねた。 「税務官のナイトウよ。まったく、あのルイズの馬鹿、とんでもないのにケンカ売っちゃって……」 ジェシカが顔に手を当てて嘆いた。 「税務官、役人か?」 「そう。この辺りの飲食店の税を取り立てている役人よ。 あいつに下手に逆らうと重い税をふっかけられるから、この辺りの飲食店はどこもあいつに逆らえないわけ。 それで、あいつはそれをいいことにあちこちで好... -
虚無と狼の牙-05
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第五話 揺れる馬車の振動の中でフーケは目を覚ました。もう、随分と陽は傾き始めている。例の小屋にたどり着いたのが真昼だったから、自分は三時間くらい気を失っていたのか。 体をもぞもぞとうごかしてみた。両腕が縛られている。杖は近くにはないようだ。当たり前か。 「やられちゃったわねぇ……」 小さくひとり言を呟く。気が付いたことがばれたら色々とうっとおしそうなので、誰にも聞こえないような小さな声で。 これから自分はどうなるのだろうか。まぁ、よくても悪くても死刑には変わりはないだろうが。 それにしても、まさかメイジでもなんでもない男にやられてしまうとは思わなかった。 ゴーレムの動きから正確に自分の位置を見つけ出すとは。 フーケは職業柄そういった敵に回したらやばい人物に鼻が効くつもりだったのだが、今回だけは失敗した... -
虚無と狼の牙-01
前ページ次ページ虚無と狼の牙 「虚無と狼の牙」1-1 彼は満足していた。守りたかったものは無事守りぬけた。 取り戻したかったもの――救いたかった人物は無事救い出せた。 志半ばで倒れることが無念でなかったかと言えば、それは嘘になる。 しかし、それでも彼は満足していた。自分が命がけで未来を託した人々に。 二度と帰る事は出来ないと思っていた故郷。そこに彼は帰ってこれた。 その幸福と歓喜に包まれて、そして無二の親友の傍で旅立てる自分は ――おかしいかもしれないが、そのとき世界で一番幸せな人間なのだと心の底から思っていた。 一つの世界で狼は眠りについた。その牙を墓碑として。そして、もう一つの世界で狼は再び目覚める。 * ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは呆然と立ち尽くしていた。 彼女の目の前には、爆風が巻き上げた砂埃... -
虚無と狼の牙-06
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第六話 ウルフウッドとルイズは部屋の中央でにらみ合っていた。お互い一歩も譲らない殺気を放っている。 「ほんま話の通じひんじょうちゃんやの……」 「あんたこそ、いい加減折れなさいよ……」 ウルフウッドはベッド代わりの藁の上で、ルイズは部屋の中央のベッドに座り込んだままぶつかり合った視線をお互い譲らない。 「やから、別に問題ないやろ? おじょうちゃんにとっても」 「何を言っているのかしら? あんた使い魔としての立場がわかっていないようね……」 にらみ合う視線に今にも火花が飛び散りそうだ。 「あーもう、やからもう藁の上で寝るのはこりごりや言うてるやないけー! 数日やったらかまわんけど、毎日やといい加減背中も痛いし、うんざりやて!」 「だ、だからって、勝手にこの部屋を出て行って、よ、よそで寝るなんて認められない... -
虚無と狼の牙-02
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第二話 ウルフウッドはなぜか学院の講義に出ていた。目の前で教師の説明する話は全くわからない。けれども、学校というものへ通った事のない彼は、自分が授業を受けているというだけで、どこか歯がゆく嬉しい気持ちになるのだった。 なぜ彼が授業を受けているのか。その説明をするには例のギーシュとの決闘騒動までさかのぼらなくてはならない。 例の決闘のあと良くも悪くも彼は有名人になってしまった。平民が貴族を打ち負かしたことが気に食わない生徒に絡まれるようになった。もっともこの場合大半はウルフウッドに睨まれるだけで、なにやら適当に理由をつけて逃げ出すのだが。 そしてもう一つの困ったことは、なぜか彼が女子生徒にもてはじめたことである。ルイズの同級生であるキュルケに言い寄られたり、例のギーシュが二股をかけていたケティという女の子からラブ... -
虚無と狼の牙-03
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第三話 夜、コルベールはいつものように自分の研究室にて、研究に没頭していた。現在の彼のテーマは竜の血、その成分の解析と複製である。最近の熱心な研究のおかげで、ある程度の成分の解析にも成功したし、それに近いものなら複製できるようになってきた。竜の血独特のにおいを嗅いだ彼は満足そうに鼻を鳴らす。 そのとき、誰かがドアをノックする音がした。コルベールはただでさえ普段人が寄り付かないこんな場所に、夜に人が訪問してくるという事態に首をかしげながらも、それでも人がやってくるということは何かの緊急事態かもしれないと重い、ドアを開けた。そこに立っていたのは十字架を背中に担いだ、彼よりも背の高い黒髪の男だった。 「えーと、コルベールせんせ、でええんかな?」 その男はコルベールの顔を見ると少し遠慮がちにそう言った。 「いかにも、私... -
虚無と狼の牙-19
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十九話 トリステイン城下町にある酒場魅惑の妖精亭は、シンと静まり返っていた。タルブがアルビオンの侵攻を受けたというニュースを聞いて、タルブ出身の店長スカロンはどうしても店を開ける気持ちになどなれなかったのだ。 「大丈夫よ、父さん。あそこの人たち、ほんとうにしぶといから平気だって」 ジェシカが椅子に座って頭を抱えるスカロンの肩をポンと叩く。 「わたしだって、そう思っているわよ。けれども、やっぱり心配で心配で」 そう言ってスカロンが頭をフルフルと振った時だった。カランとベルの鳴る音がして、店の扉が開いた。 「あ、悪いんだけれども、今日は店は閉めてるんだ――って、あんた、ウルフウッド?」 「え?」 ジェシカの素っ頓狂な声に、スカロンも顔を上げる。そこにはつい先日アルバイトでこの店にいた男の姿。 「よう、店... -
虚無と狼の牙-07
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第七話 例のウルフウッドのタルブ行きに関してルイズは何をしていたか。その話は数日前までにさかのぼる。 その日ルイズはウルフウッドが日中いないことに気が付いた。 が、その前の日の晩に派手にけんかをした後なので、むしろ顔を合わせないほうが都合がいいとばかりに、大して気にも留めなかった。 ただ、それでも一日中顔を合わせないとなれば気になってしまうものである。 時間が経つにつれてそわそわしながらも、それでもなんとなく気まずい空気を感じてルイズは夜、寝る前になるまで部屋に戻らなかった。 悪いのは誰がどう考えてもウルフウッドのほうなのだが、これで機嫌を損ねて出て行ったりしたらどうしようなどと不安になりながら部屋に戻ると、誰もいなかった。 悪い予感を感じたルイズは部屋の真ん中に置手紙があることに気が付いた。 『... -
虚無と狼の牙-21
前ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第二十一話 夕日を浴びて高らかに笑う謎の貴婦人、その正体とは―― 「何やってるんですか、先生?」 モンモランシーが気の抜けた声を出した。 「な、ち、違いますよ。断じて私はシュヴルーズなどという者ではありません!」 いや、シュヴルーズのシュの字も出してねーよ。 と、モンモランシーは思った。 「なんで、魔法学院におったはずのシュブルーズ先生がこんなところにおんねん?」 「あ、違いますよ、ウルフウッド君。シュブルーズ、じゃなくてシュヴルーズ。下唇を噛んで、ヴ。よくある間違いなんで気をつけてください」 「……」 一同、言葉が出ないまま、ぽかーんと自称シュヴルーズではない人を見つめる。 「……というのが、シュヴルーズの発音に対する一般論です」 なわけねーだろ。 と、モンモランシーは思った。 「で、そのセ... -
虚無と狼の牙-04
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第四話 幌のない馬車が街道を行く。ウルフウッドたちはその荷台のような場所で馬車に揺られていた。急に襲撃されたときのために見晴らしがいいほうがいい、ということでこのような馬車になったのである。御者はロングビルが買って出ていた。 ウルフウッドは荷台の壁に腰を付け、だらんと大きく足を流して座っている。 「ねぇ、あんた」 「なんや?」 ウルフウッドの前で体育座りをしていたルイズがウルフウッドに話しかけた。 「どうしてメイジでもなんでもないのにこんなのに参加しようと思ったの?」 「ただのおのれの尻拭いや。別に正義感でもなんでもあらへん。そんなことより、じょうちゃんはなんで参加しようと思ったんや?」 「そ、それは……」 そこでルイズは口ごもった。なぜ参加したのか、なんて余りよく考えてもいなかった。いわばその場の勢... -
虚無と狼の牙-11
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十一話 デルフリンガーの愚痴に付き合ったウルフウッドが宿に戻ると、ギーシュはまだ気持ちよさそうに眠っていた。 「ほんまに気楽な奴やの、お前は」 あきれ返るように呟くと、ウルフウッドはベッドに腰を下ろした。 出発は明日の朝。それまで時間はたっぷりとある。 「け、あのクソアホンダラ。ワイの一張羅が泥だらけやないけ」 そうぼやくと、乱暴に身体をベッドに投げ出した。 その日の夜、ウルフウッドたちは宿の一階の酒場にいた。 「あら、ダーリン、ルイズは?」 「知らん。お前らがてっきり呼びに行ってるもんやと思たんやけどな」 ウルフウッドはギーシュと共に二階から降りてくる途中でキュルケに声を掛けられた。キュルケの横ではタバサがあいかわらず本を読んでいる。 「まぁ、別にいいわ。あつーい二人の時間を邪魔しち... -
虚無と狼の牙-17
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十七話 ジョンストンはレキシントン号の真下に竜騎士部隊を展開させた。先行した巡洋艦四隻撃墜の原因が、下からの狙撃であったことを踏まえての策である。 「例のトリステイン貴族といい、艦長といい、全くの腰抜けどもめ。この私自らが戦い方を教えてくれるわ!」 鼻息を荒くしてジョンストンは威勢よく啖呵を切った。ボーウッドは苦笑いを浮かべながら、ジョンストンの後姿を見つめる。その二人の傍らで、ワルドはどこか冷ややかな笑いを浮かべている。 「事実上更迭された割には、随分と余裕ですな、ワルド子爵?」 平然とした様子のワルドに、ボーウッドは訝しげな様子で話しかけた。 「なに、面白いものがみれそうですからな」 「面白い?」 「……まずは相手の手の内を知る、これは戦いの基本でしょう」 ワルドは目の前のジョ... -
虚無と狼の牙-20
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第二十話 魔法学院の庭ははもはや庭ではない。辺りは火と煙がもうもうと立込め、一寸先も見えない。炎に照らし出された巨大な炉のようだ。 それは焼けつくように熱く、殺伐として耐えられないので、その場にいた使い魔たちでさえへ壁にしがみつき、必死にそこから逃げようとした。まともな人間はこの地獄から逃げ出す。 どんなに硬い意思でも、いつまでも我慢していられない。今、目の前で生まれた悪魔はGACHIHOMOと名づけられた。神よ、なぜ我等を見捨てたもうたのか―― ――モンモランシーの日記より。 「って、モンモランシーあんたなにぶつぶつ言っているのよ。 っていうか、ちょっと、これは一体どういう騒ぎなのよ!」 モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシは目の前の惨状にただ呆然と立ち尽くしていた。 ... -
虚無と狼の牙-18
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十八話 ワルドはゆっくりと空を旋回しながら、眼下のウルフウッドとコルベールをにらみつけ、右手の杖を大きく掲げた。 「貴様らが二人になったところで、だからそれがどうしたというのだ!」 確実にウルフウッドを殺せたはずの戦況で、彼を助けるためにこの戦いに乱有してきた闖入者。 苛立ちを隠しきれない声でワルドは叫んだ。 再び風の魔法を放つ。竜巻が再び沈没しようとしているレキシントン号の窓ガラスを破った。 「確かに、君はなかなかに優秀な炎のメイジのようだ。それは認めよう。だが――」 ワルドがゆっくりと右腕を下ろした。船内に消えた竜巻が再びその姿を現す。 「矢は燃やせても、果たしてこれは燃やせるかな?」 コルベールはゆっくりと体を沈めるようにして、身構えた。目の前の竜巻の中で舞っているもの――それは剣。 「... -
虚無と狼の牙-14
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十四話 ルイズは、ぼんやりと、夢の中にいた。 故郷のラ・ヴァリエール。忘れ去られた中庭の池……。 そこに浮かぶ小船の上で、ルイズは寝転んでいた。つらいことがあると、ルイズはいつもここで隠れて寝ていたのであった。自分の世界。誰にも邪魔されない、秘密の場所……。 何もかも忘れ去りたかった。何も考えたくなかった。 目の前で人が殺された。 殺したのは、自分も良く知っている人。自分の元婚約者。 そして、その男から自分を守るために傷ついた自分の使い魔。 彼の身体を引きずった重さがずっと手に残っている。 魔法で焼け爛れた肌の熱い感触も。そして、地面に広がっていった赤い血も。 ルイズは小船の上で、泣いていた。 何もかもから逃げ出したかった。このままずっと一人ぼっちの世界にいた... -
虚無と狼の牙-10
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十話 トリステイン魔法学園の門の前で二人の男がにらみ合っていた。 一人はハルケギニアでは珍しいくらいの長身で、羽根付き帽子をかぶった男で、整った口ひげが彼の精悍な印象を強めている。 そして、にらみ合う男のほうも彼に負けず劣らずの長身で、黒い服を身にまとい、その傍らには巨大な十字架があった。 羽根帽子の男のほうが、彼をなだめるように笑って言った。 「そんな怖い顔をしないでくれよ。僕は敵じゃない。女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。 姫殿下より、キミ達に同行することを命じられてね。そこで僕が指名されたってワケさ」 そしてワルドは「弱ったなぁ」と呟きながら、苦笑いを浮かべて両手を広げた。 「う、ウルフウッド、相手が悪いよ」 ワルドの正体を聞いて、ギーシュが青ざめた顔になった。 「魔法衛... -
虚無と狼の牙-15
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十五話 ラ・ロシェールにある図書館。 断崖の町にふさわしく、崖を魔法で削りだして作った図書館であり、乾燥した空気と鍾乳洞のように低い気温のおかげで、書物の保管には適した図書館である。 その図書館のテーブルの一角に、はげた男と背の高い男の二人が真剣な表情で一冊の本を広げていた。 本来貴族でもなんでもないウルフウッドはこの図書館に入ることは出来なかったが、コルベールの付き添いという形で入館していた。 「ありました、ウルフウッド君。この病気がそうですね」 コルベールが一冊の大きな本をテーブルに広げた。開いた本のページに目を落としながら、コルベールが重々しく呟く。 「センセ。ワイ字い読めへんから、何が書いてあるのか読んでくれへんか」 コルベールはゆっくりと頷いた。 「これは精神病の一種... -
虚無と狼の牙-01b
前ページ次ページ虚無と狼の牙 * 翌朝、ルイズは目を覚ましてから、いつものように着替えを取りに行こうとして、床にある何かにつまずいた。 「いたーい!」 つま先を打ち付けて、涙目でその場に倒れこむ。 何か硬くて大きなものが床に置いてある。 憎憎しげな目でその物体を見た。 そこには見慣れない布にくるまれた巨大な物体が置いてあった。 「……十字架?」 ふとそんなことを思わず口走る。 「よう、じょうちゃん。おはようさん」 いきなりそんなふうに声を掛けられて、ルイズは慌ててその声の方角に目をやる。 部屋の隅に黒い服を着た男が、こちらに背を向けて寝転がっていた。 そのまま右手を軽く挙げて挨拶をしている、つもりらしい。 ここにきて半分寝ぼけていたルイズはようやく昨日の出来事を思い出した。 使い魔、である。彼が、ルイズの呼び出した使い魔なのである。... -
虚無と狼の牙-12
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十二話 ラ・ロシェールからアルビオンへと続く空、そこに浮かぶ船の上で一人のおっさんが頭を抱えていた。 「ちくしょー、破産だ。あぁ、もう破産だ。こんちくしょう……」 どんよりとした空気の漂う甲板で一人両手を付いてうなだれる。 なんでこんなことになったのだろうか。やっぱり人の不幸を当てにして一儲けしようとしたのが間違っていたのだろうか。神様、これは私への天罰でしょうか? あぁ、ならば懺悔いたします。というか、懺悔させてください。それでなんとかなるならいくらでも懺悔させてください。 おっさんが一通り身勝手な反省をしたとき、何か鈍い音が目の前でして、おっさんは顔を上げた。 そこには彼の願いを聞き入れたのか、牧師が一人立っていた。 なんという天からの使い! あぁ、俺の願いは天に聞き入れられたのか! あぁ、... -
虚無と狼の牙-16
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十六話 ラ・ロシェールの町は混乱を極めていた。辺りを逃げ惑う人々の悲鳴と、それを掻き分けるように進む兵隊の怒号が響く。我先にと、断崖の外へと走り出す人の波。 先行きの見えない不安を怒号で掻き消すように叫ぶ兵士たち。ついさっきまで穏やかなこの町の光景は一変していた。 タルブと程近いこの町。もしもアルビオンのタルブ侵攻が真実ならば、間違いなく次の侵略先はこの町だ。コルベールが慌てて戻ってから十分も経たないうちに、町は大混乱の中にあった。 「そ、そんな馬鹿なことが……。アルビオンは不可侵を表明していたはずよ?」 ルイズが青い顔でコルベールにつめよる。 「状況は、どないなっとんねん?」 ウルフウッドは遠くの、これから艦隊が現れるであろう方角をにらみつけ、低い声で呟いた。 「姫殿下の婚約の祝いにやって来たアルビ... -
虚無と狼の牙-13
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十三話 空が白んでいく。 ウルフウッドは夜明けのアルビオンを一人、城のバルコニーから眺めていた。あの晩餐の後、また部屋の戻る気分ではなかった彼は、こうして朝までずっと空を眺めていた。 「長い――今日が始まるな」 ぼそりと独り言をつぶやく。今日これから起こるべき事がまるで夢のように感じられる。しかし、そのポケットにはしっかりと、ウェールズから託された指輪の感触がした。 「相棒」 一人目を閉じたまま何かを考え込むウルフウッドにデルフリンガーが話しかける。 「なんや」 「馬鹿なことは、考えるなよ」 「馬鹿なこと?」 デルフリンガーは少し間を置いた。 「連中のために一緒に戦おうとか、そういう類のこった」 「悪いけど、ワイはそんなお人好しちゃう。いつでも、自分のことだけでいっぱいいっぱいや」 ウル... -
お絵描き掲示板/お絵かき掲示板ログ/234
虚無と狼の牙支援。アカンやん!固いやん!ピンチやん! -- パニッシャーの精 (2009-08-10 13 36 49) 渋いなw……コルベールが。 -- 名無しさん (2009-08-10 16 22 25) ハードボイルドコッパゲw -- 名無しさん (2009-08-10 17 58 09) シュ腐…ゴフンゴフン謎の貴腐人がw -- 名無しさん (2009-08-10 18 43 15) コルベール先生、あごが最遊記っぽいw -- 名無しさん (2009-08-10 18 57 56) 僕との事は遊びだったんだね〜〜〜〜〜〜〜!! -- 愛と平和の赤い人 (2009-08-10 20 28 22) 一瞬、禿げたサイトに見えてしまったorz -- 名無しさん (2009-08-11 01 34 22) 画風の描き分け巧いな。しかし左下、紙袋... -
お絵描き掲示板/お絵かき掲示板ログ/55
虚無と狼の牙の支援。ワルド戦辺りのイメージで描いてみたとかそんな。 -- アーシア (2008-07-15 07 18 23) やべぇwウルフウッドの背中がかっこよ過ぎるwwwwwww -- 名無しさん (2008-07-15 09 13 49) デルフは魔法吸収役という訳ですねw -- 名無しさん (2008-07-15 12 18 43) 背中で魅せる男ですな -- 名無しさん (2008-07-15 20 06 25) なんという背中語り -- 名無しさん (2008-07-15 21 37 34) 俺は牙連載開始時からこの一枚を待っていたッ! 書いてくれた人本当にありがとうッ!! -- 名無しさん (2008-07-15 23 14 29) すばらしい! なんという魅せる背中! でも、パニッシャーが薄っぺらいのが残念…… -- 名無しさん (... -
虚無と賢女
PSのアクションRPG「ベアルファレス」より ラスボス戦直後の「西方の賢女」エレアノールを召喚 ※ネタバレ注意 虚無と賢女-00 虚無と賢女-01 虚無と賢女-02 虚無と賢女-03 虚無と賢女-04 虚無と賢女-05 虚無と賢女-06 虚無と賢女 幕間1 虚無と賢女-07 虚無と賢女-08 虚無と賢女-09 虚無と賢女-10 虚無と賢女 設定集 -
虚無と狂信者
注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 「HELLSING」のアンデルセン、アーカードを召喚 虚無と狂信者-01 虚無と狂信者-02 虚無と狂信者-03 虚無と狂信者-04 虚無と狂信者-05 虚無と狂信者-06 虚無と狂信者-07 虚無と狂信者-08 虚無と狂信者-09 虚無と狂信者-10 虚無と狂信者-11 虚無と狂信者-12 虚無と狂信者-13 虚無と狂信者-14 虚無と狂信者-15 虚無と狂信者-16 虚無と狂信者-17 虚無と狂信者-18 虚無と狂信者-19 虚無と狂信者-20 虚無と狂信者-21 虚無と狂信者-22 虚無と狂信者-23 虚無と狂信者-24 虚無と狂信者-25 虚無と狂信者-26 虚無と狂信者-27 外伝 もう一つの虚無と狂信者-... -
虚無と金の卵
「マルドゥックヴェロシティ」のウフコックを召喚 第一章 使い魔は金の卵 虚無と金の卵-01 虚無と金の卵-02 虚無と金の卵-03 虚無と金の卵-04 虚無と金の卵-05 虚無と金の卵-06 虚無と金の卵-07 虚無と金の卵-08 虚無と金の卵-09 虚無と金の卵-10 第二章 追憶と邂逅 虚無と金の卵-11 虚無と金の卵-12 虚無と金の卵-13 虚無と金の卵-14 虚無と金の卵-15 虚無と金の卵-16 虚無と金の卵-17 虚無と金の卵-18 -
虚無と十七属性
『ポケットモンスターダイヤモンドパール』より、主人公(男)を召喚 虚無と十七属性-01第一節「魔王」 虚無と十七属性-02 虚無と十七属性-03 虚無と十七属性-04 虚無と十七属性-05 虚無と十七属性-06 虚無と十七属性-07 虚無と十七属性-08 虚無と十七属性-09第二節「怯える剣(つるぎ)」 虚無と十七属性-10 虚無と十七属性-11 -
虚無と鬼
「クロノベルト」より「九鬼耀綱」を召喚 虚無と鬼-01 Bサイド 虚無と鬼-02 -
お絵描き掲示板/お絵かき掲示板ログ/161
ハッピーバレンタインデー!!!最近、妙にツボにくるエレノオールと狼のコルベールとウルフウッドが気に入ってます。では、 -- : (2009-02-14 23 47 04) ギュス様がアンディにしか見えねぇw カワイイけど、もうちょとスキマを詰めた方がいいかもだー -- 名無しさん (2009-02-15 00 40 50) キュルケはおかえしに精…じゃない、ホワイトチョコでもかけてもらうつもりですか? -- 名無しさん (2009-02-15 01 30 31) よ -- 名無しさん (2009-02-15 01 31 15) ジョゼフ?と一緒にいるキャラがわからない・・・ -- 名無しさん (2009-02-15 01 52 35) もういいからやめて -- 名無しさん (2009-02-15 01 54 23) なんだこのポップな世界は -- 名無... -
虚無と最後の希望
「HALO」より、マスターチーフを召喚 虚無と最後の希望 Level01 虚無と最後の希望 Level02 虚無と最後の希望 Level03 虚無と最後の希望 Level04 虚無と最後の希望 Level05 虚無と最後の希望 Level06 虚無と最後の希望 Level07 虚無と最後の希望 Level08 虚無と最後の希望 Level09 虚無と最後の希望 Level10 虚無と最後の希望 Level11 虚無と最後の希望 Level12 虚無と最後の希望 Level13 虚無と最後の希望 Level14 虚無と最後の希望 Level15 虚無と最後の希望 Level16 虚無と最後の希望 Level17 虚無と最後の希望 Level18 虚無と最後の希望 Level19 虚無と最後の希望 Level20 虚無と最後の希望 Level21... -
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灼眼のシャナよりシャナを召喚 虚無と炎髪灼眼-01 虚無と炎髪灼眼-02 フリアグネ&マリアンヌの なぜなにシャナ!なんでも質問箱! -
長編(話数順)-03
長編(ページ数順15P~) ※総ページ数をカウント(例:第○話が前後編なら2ページ分、外伝や幕間も加算) 長編(話数順01~04P)へ 長編(話数順05~14P)へ 80P~ 60~79P 50~59P 40~49P 35~39P 30~34P 25~29P 20~24P 15~19P 80P~ 作品タイトル 元ネタ 召喚されたキャラ 更新日時 マジシャン ザ ルイズ Magic the Gathering(マジック・ザ・ギャザリング) ウルザ 2010-11-06 23 52 26 (Sat) ソーサリー・ゼロ ゲームブック「ソーサリー」 主人公「君」 2014-01-14 22 18 54 (Tue) ウルトラ5番目の使い魔 ウルトラマンシリーズ ウルトラマンA 2020-08-13 22 58 15 (Thu) ゼロの黒魔道士 ファイナルファンタジー9 ... -
虚無と十七属性-09
前ページ次ページ虚無と十七属性 「……あった」 あの使い魔の青年に刻まれていた、新しい二つのルーン。 もう、模写した時に半ばわかったようなものだったが、再びこの書物を見て、確信へと変わった。 「ウィンダールヴとガンダールヴ……」 『始祖ブリミルと使い魔たち』という書物に記載されているそれと、自分がスケッチしたルーンは一致した。 ルーンの刻まれた位置もまた、狂い無く一致している。 「神の左手ガンダールヴ……あらゆる武器を使い、ブリミルの盾となった……。右手はウィンダールヴ、あらゆる獣を操り、ミョズニトニルンはあらゆるマジックアイテムを使える……そして、記されない四番目……」 独り言を呟き、自分がスケッチした、未だ確認できないルーンをしげしげと眺める。果たして、このハルケギニアの文献で、このルーンが記された書物は存在するのか。 気がつけばもう夜も遅く、... -
長編(五十音順)-04
た行 作品タイトル 元ネタ 召喚されたキャラ 更新日時 T-0 ターミネーター2 T- 800 2009-01-01 17 21 23 (Thu) 悪魔の虹 大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン 冷凍怪獣バルゴン 2010-10-05 18 59 46 (Tue) ルイズ伝・ゼロと竜と世界の話 太公望伝(諸星大二郎) 竜と誰か 2007-10-05 20 51 18 (Fri) THE GUN OF ZERO 第3次スーパーロボット大戦α クォヴレー・ゴードン 2009-05-16 18 58 48 (Sat) 大使い魔17 大鉄人17 17(ワンセブン) 2011-07-06 15 49 15 (Wed) ゼロの平面 大乱闘スマッシュブラザーズDX Mr.ゲーム&ウォッチ 2007-09-02 06 10 01 (Sun) 虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 戦う司書シリーズ モッカニアの本 ... -
虚無と狂信者-03
前ページ次ページ虚無と狂信者 教皇庁生物学研究所より再生能力強化用製剤及び当該研究データの全てが奪われ、研究者 十五名が殺害される。遺体の状況から吸血鬼の犯行であると判断し、13課が捜査開始。 二年間の捜査の後構成員二名が行方不明。その後10年間の捜査の結果、進展が認めら れず捜査の終結を決定する。当製剤唯一の被験者であるアレクサンド・アンデルセン神父 「一体ここどこだ?」 平賀才人は視界に突然現れた森に茫然とする。それもそうだ、今まで東京に居たんだから。 上を見ると月が二つある。彼は笑って言う。 「夢だなこりゃ。」 「「私の使い魔しらない?」」 ルイズとキュルケは二人同時に話しかける 「あなた、リンゴの香水?それ。」 強い匂いにルイズは顔をしかめた。その途端キュルケが震えだす。 常に冷静なゲルマニアの娘の取... -
『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』
ウィザードリィより、アラビク王子を召喚 (設定はベニー松山版) 『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-1 『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-2 『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-3(前編) 『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-3(後編) -
虚無と金の卵-01
前ページ次ページ虚無と金の卵 プロローグ/???にて―― 自閉し、外部との接触を絶った多次元構造の自己の中で、金の卵と呼ばれた鼠はまどろんでいた。 虚無にあがく良心の存在を夢見ていた。 『“苦痛する価値”がかつて果たした役割は、今も全ての犠牲者に宿っている』 自己が濫用される悪夢を見ていた。 『自分がどんどん小さくなっていく……俺が消えてしまいそうだ……』 自己の存在を訴える夢を見ていた。 『俺もいつか必ず死ぬ。 それがいつかはわからない。 それまでに俺は見つけ出さなければいけないんだ。俺自身の有用性を』 信頼する相棒に裏切られ、忌むべき凶器として操られた悪夢を見ていた。 『何故だ。何故俺を濫用した……ボイルド』 相棒は、良心を振り切って加速し、虚無の権化と化してしまった。 ... -
虚無と狂信者-09
前ページ次ページ虚無と狂信者 「ルイズ、僕と結婚しよう。」 一体なにを言っているのかわからなかった。そもそも彼にはアンデルセンを御せなかったことと、サイトに嫌われたことを相談していた。 それがいきなり求婚されてしまっては訳が分からない。確かアンデルセンが何者かが解らないという話だったか。 「いいかい君の使い魔は凄い!山賊を一撃で薙ぎ払い、吸血鬼とも互角に戦ってのけたじゃないか。」 それはそう思う。しかし、ではその吸血鬼を召喚したキュルケやタバサは一体何者であろうか。 「それに君の失敗魔法!あんな威力僕だって出せやしない!火系統のスクエアメイジに相当する威力じゃないか。」 魔法の話をしていただろうか。でも確かにネガティブなことを言ったかもしれない。 「君は素晴らしい、偉大なメイジとなりうる可能性を持っている。断言しよう。だからお願いだ。 どう... -
虚無と賢女-00
前ページ次ページ虚無と賢女 その日、物質世界と精神世界を融合させ『新しき世界』を創造しようとした神―――ベアルファレスは倒れ、 その身体の中から眩い『光』が異形の表皮を突き破って溢れ、あっという間に始原の地の最深部たる神界を覆いはじめる。 最強の切れ味を秘めた無銘の長剣で斬りかかった青年と、その傍らで強大な炎の魔法を放ち続けた少女を飲み込んで。 「ウェルドー!! ノエルー!!」 ただ一人、辛うじて『光』から逃れることの出来た女性は、死闘で乱れた長く美しい黒髪を整えもせず、 必死になって脈動しつつ膨張する光の塊―――光球に向かって叫び続けた。 「返事を!! 返事をしてくだ―――ッ!?」 何度目かの呼びかけの最中、光球は突如として脈動を止める。膨れようとする箇所、収縮しようとする箇所、 ねじれた円錐状の突起を生み出す箇所、い... -
虚無と金の卵-09
前ページ次ページ虚無と金の卵 時間は、キュルケ達の出発前に遡る。 ロングビルが準備を整えるまでの間、ルイズ、キュルケ、タバサ、ウフコックの三人と一匹は、オスマンの指示で学院のすぐ外の草原で待機することとなった。 まさに快晴。草原は見渡す限り平和そのもの。だが刻一刻と時間は減り行く。 宝物を手に入れたフーケは逃げる算段など当然打っているだろう――ルイズは苛々とロングビルを待つ。 そんな折、ルイズの肩に乗ったウフコックが口を挟んだ。 「ルイズ……いや、キュルケ、タバサもだ。我々だけで話がある」 「何よウフコック、止める気?」 やれやれ、とウフコックは肩をすくめる。 「止められるのならばな。だが聞き入れてはくれないだろう?」 「わかってるじゃないの」と、ルイズは強気に応じる。 「ま、それは俺もわかっている。だから... -
虚無と鬼-01
前ページ次ページ虚無と鬼 虚無と鬼 第一話 ただ歩いていた。 白き靄が立ち込め、果てが見えないほど真っ直ぐに続く道。 その道には霧以外はなにもなく、道の外には深い奈落があるだけである。 傍らには誰もいない。 先ほどまで共に歩いていた息子とは、すでに道を違えた。 後悔や未練はあると言えばあるが、我慢できないほどのものでもなく。 息子の前ではカッコよくいたいと思うぐらいには父親であった。 どちらにしろ、今更息子の行く先へと行けるはずも無く。逆に息子を連れてゆくわけにもいかない。 なぜなら行く先は地獄なのだから。 人を殺しすぎた。 仕事、正当防衛、犯罪者相手――そんな建前が通用するには数が多く。 なにより自分の“強さのために”殺したものだからだ。 犯罪者を殺し、本当は罪のない者を殺し、力ある者を殺し、力ない者を殺し、子供を殺し、老人を殺し、悪人を殺し... -
虚無と賢女-09
前ページ次ページ虚無と賢女 二つの月が重なり、青白く光る一つの月だけが夜空とラ・ロシェールの街を照らす中、エレアノールは一人、部屋のベランダで月を見ていた。一階の酒場ではギーシュたちが酒を飲んで盛り上がっており、エレアノールも最初は参加していたが、途中で退席していたのだった。 月を見上げるエレアノールの背後、部屋の扉がギィと音を立てて開きルイズが入ってきたのは、彼女が宴席から抜け出て十数分後のことだった。 「エレアノール、何をしているの?」 エレアノールはルイズの方を振り向いて、微笑みながらもどこか寂しそうに答える。 「月を見ておりました。私の故郷では、月はいつも一つしか見えていませんでしたから……」 その何気ない呟きに、ルイズは静かな憂いを感じ取る。聞いたこともないような遠い国から彼女を召喚し、仲間から引き離して自分の使い魔にしてい... -
虚無と狂信者-02
前ページ次ページ虚無と狂信者 アンデルセンは、とりあえずは普通にやってくれていた。キュルケが部屋を私から遠い所 にしたり、あの吸血鬼が昼間寝ていたりなどから2人が出会う絶対数も少なかったし、 出会っても私とキュルケが全力で止めたからだが。彼は普段は温厚な神父の顔を崩さなか ったし、私の雑用を割りとしっかりやった。曰く「孤児院の仕事で慣れている」そうだ。 しかし、隙あらば平民に彼の神の教えを広めようとするのには辟易した。 けれど、あの時の出来事もまた彼なのだろうか。 私が錬金の授業で失敗した時、クラスの皆は私を責め立てた。それは死人がでてもおかし くない規模の爆発だったから無理もないけど。情けない気分になる私の前に彼は立ち、 私の両肩に両手を置き、皆にこう言った。 「この中で生まれて一度も失敗をしたことの無い人だけがこの子を責... -
虚無と十七属性-07
前ページ次ページ虚無と十七属性 「ヴェストリの広場で、ギーシュが決闘してるぞ!」食堂に、二年生の誰かが駆け込んできてそう言った。 「え、本当!? 誰と? 誰と?」 「もしかして、さっきの二股が原因?」周りの生徒が、これはいい肴を見つけた、とばかりに飛びついた。 「ああ。なんでも、原因となった小瓶を拾った、ルイズの使い魔と決闘しているらしい。逆恨みだよなー」 その言葉が食堂に響いた後、一斉に視線がこっちを向いた。思わず吹き出しそうになった口の中のものを、必死に飲み込む。 「あんの……馬鹿!」 虚無と十七属性 第七話 バラおとこのギーシュは ワルキュレをくりだした! (※ポケモンの世界に於いて、固有名詞は5文字までしか入りません) 「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。よって、君の相手は青銅のゴーレム・ワルキューレがお相手す... -
虚無と十七属性-08
前ページ次ページ虚無と十七属性 「何だ!? 一体、どこから現れた!」突如白い巨人が出現し、ギーシュは慌てふためいた。 「どこって……ここだが」それを、青年はさも当たり前といったように、手のひらに収まる大きさの球を答える。 「君が召喚したのかい?」 「そうだ。これは、お前たちメイジが俗に言う……使い魔、という奴だ」 虚無と十七属性 第八話 「魔法の使えない平民の分際で、使い魔だって? ルーンも刻めないから、感覚の共有もできないだろうし、そんな 亜人じゃ、コミュニケーションもとれないじゃないか。変わったペットのようだが、それじゃ、僕は倒せないよ」 その言葉を聞いて、ルイズは歯噛みした。感覚の共有ができないなんて、まさに私の事じゃないか、と。 だが、青年は、ちっとも動じない。 『主人を蔑むか。貴様、貴族と名乗ったが、精々恥を、その身体と... -
虚無と十七属性-01
前ページ次ページ虚無と十七属性 ここはどこだ。周りの人だかりは何だ。そして目の前で、棒を持ち、マントを着たピンクの女は誰だ。 14歳くらいに見えるピンクの少女は、仰向けに倒れている俺を、まるで牛乳を拭いた雑巾を見るような目で見て、 「アンタ誰?」と訊いてきた。 虚無と十七属性 第一節「魔王」 第一話 髪を揺らし、草木を波打たせる風の穏やかな音は、桃色の髪の毛を靡かせる今の少女の対義にあたる存在のようだった。 少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・フラン・ド・ラ・ヴァリエールは不機嫌だった。 彼女はヴァリエール公爵家の三女として生まれたにも関わらず、今まで魔法一つ成功できた事が一度もない。二年に進級 する為に絶対不可欠の存在である、使い魔召喚の儀式だけはなんとしても成功させなければならなかったが、幾度も失敗を繰り返した。 そして、今... -
虚無と十七属性-05
前ページ次ページ虚無と十七属性 教師・コルベールは学院長室へと走っていた。 ヴァリエール嬢の召喚した、平民の使い魔のルーンについて調べていたら、大変な事が分かったのだ。 始祖ブリミルに仕えていたとされる、伝説の使い魔のうちの一人、神の頭脳ミョズニトニルン。そのルーンが、召喚された平民の使い魔の額に刻まれていたものと一致したからだ。しかも、そのルーンは契約時に刻まれたものではなく、恐らく謎の契約のルーンによって、後天的に生まれたものと来ている。 何たる異常事態だ。一刻も早く報告せねば。 「オールド・オスマン!」学院長室の扉を、ノックもせずに力一杯こじ開けた ――が、 「すまん、申し訳ない、本当に申し訳ないと思っとる、もうしないから、ああっ、やめてっ、そこはっ、いたいっ…………んむ?」 中にいたのは、到底この学院の長とは思えない行動(おそらくセクハラ)... -
虚無と狂信者-01
前ページ次ページ虚無と狂信者 私の好敵手である「微熱」のキュルケの召喚した使い魔は恐ろしいものだった。 赤いコートに防止にサングラス、見かけは只の平民である。しかし私たちは声がでない。 誰も彼も固まったままである。皆一様に彼をみる。彼は私たちを見回し、目があう生徒は皆脅えた。 コルベール先生は杖を向けるがキュルケは左手で制止する。彼女は使い魔に説明をし、契約を要求した。 「私に従僕になれと?」 彼はキュルケに訪ねた。 「ええ、そうよ」 彼女は髪をかきあげながら言い放つ。彼は肩を震わせ笑った。一歩も退かないキュルケに私は改めて感嘆する。 「その前に教えて、あなた何者?」 彼は答えた。 「吸血鬼だ」 その瞬間言いようもない感情が私たちをつつんだ。しかし、私たちは声も上げることができない。キュルケは嬉しそうに手を叩いてい... - @wiki全体から「虚無と狼の牙-09」で調べる