あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「鮮血の使い魔‐07」で検索した結果
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鮮血の使い魔
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鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐07
前ページ次ページ鮮血の使い魔 泥まみれになったおかげか、ルイズは泥のように眠った。 夜中に言葉と一緒にお風呂に入って泥を落とし身体を温め、 それから着替えて部屋に戻るとすぐベッドの上に倒れるようにして意識を手放した。 朝になって気がついたら、ちゃんと布団の中に入っていて、 けれど右手だけは布団から出ていて言葉が握っていた。 床に腰を下ろし、ベッドに寄りかかりながら、ルイズの手を。 そして、ベッドの端っこに頭を乗せて穏やかな寝顔を見せている。 続いてルイズは誠を探した。ちゃんと泥の中から掘り返して、言葉に渡したはず。 浴場から帰った時、言葉はちゃんと誠を持っていた。だから部屋の中にあるはず。 言葉の隣に鞄、空いているそこから黒い頭髪が見えた。中にちゃんと居るみたい。 (何でマコトの首があるって解って安心してんのよ、私) ルイズは嬉しそうに己が身... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐01
前ページ次ページ鮮血の使い魔 最初に起こったのは、人を馬鹿にした笑い。 続いて起こったのは、アレが何なのかとささやき合う声。 春の使い魔召喚の儀式を監督していたコルベールは、 嗅ぎ慣れたその匂いに気づき恐る恐る呼び出された少女へと近づく。 そしてソレが何であるかを理解するや、すぐさま生徒達に寮へ戻るよう指示した。 けれど。 少女が、目覚めて。 見慣れない服装、トリステインでは珍しい黒髪の美少女。豊満な胸。 その容姿に心惹かれ、あるいは嫉妬した次の瞬間、疑問が湧く。 起き上がって、胸に抱いていたソレがあらわになったから。 彼女を見る角度によっては、ソレの表情を確認する事も、できた。 悲鳴が上がる。 悲鳴の中ルイズは、ソレを抱く少女を召喚したルイズは、呆然としていた。 コ レ は な に ? 理解、できなくて、震えるルイズに気... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐02
前ページ次ページ鮮血の使い魔 こんな笑い声、聞いた事がなかった。 「あはははははははは」 単調で、けれど深い闇を内包し、聞くだけで心が蝕まれるような。 ルイズは逃げ出したい衝動に駆られながらも、恐る恐るコルベールへと視線を向ける。 右腕の肘から上を失い、そこから多量の血をこぼしながら、悲鳴ひとつ上げぬコルベール。 そんな彼に、言葉は再び、ノコギリを。 「――駄目ッ」 だからルイズは、咄嗟に言葉とコルベールの間に割り込む。 言葉の黒く黒く深く深く暗く暗く淀んだ淀んだ瞳にルイズが映る唇が弧を描く。 「あなたも、私から誠君を奪おうっていうんですか?」 「ち、違う。そうじゃ、ないの」 「大丈夫ですよ。私は寛容ですから、誠君が他の女の子に目を向けても構いません。 でも、誠君は言ってくれたんです。これからは私だけを見てくれるって。 けれど西園寺さ... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐09
前ページ次ページ鮮血の使い魔 酷薄な笑みを浮かべる言葉。 腰の後ろには、尖った枝を隠し持っている。 殺傷力は神殺し――チェーンソーより格段に劣るが、 森の中に吹っ飛ばされたコルベールを殺すには絶好の得物だ。 枝で刺し殺せば、コルベールが森に吹っ飛ばされた際、 木々の枝が偶然刺さってしまったが故の事故死を偽装できる。 殺すため、言葉は一歩、コルベールに近寄った。 「待ちなさい」 これから何をされるのか解っているかのような発言に、言葉はわずかに双眸を細め警戒した。 もし目論見が見抜かれているのだとしたら、炎の魔法で返り討ちに遭うかもしれない。 「どこか怪我をしていらっしゃるなら、早く手当てした方がいいですよ」 「まあ、聞きなさい。愚かな罪人なりに、学んだ事もあるのだ」 「罪人?」 「私は人殺しだ。国の命令で、罪も無い村を焼き払った事もある。... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐05
前ページ次ページ鮮血の使い魔 モンモランシーは不機嫌だった。 先日、言葉からギーシュが自分をかばってくれた時、本当に嬉しかった。 でも、その後、言葉に言われた。 「恋人を、誰かに盗られたりしないよう、注意した方がいいですよ」 一年生にケティという可愛らしい女の子がいる。 そして、ギーシュがケティと仲良くしているという噂を、モンモランシーは聞いた。 不安がつのる。 「誠君みたいに、なっちゃいますから」 あれはどういう意味だったのだろう? 「誠君みたいに、なっちゃいますから」 ギーシュが首だけに? 悪い冗談はやめて欲しい。 「誠君みたいに、なっちゃいますから」 だいたい誰がギーシュの首を刎ねるというのか。 「誠君みたいに、なっちゃいますから」 そうする理由が万が一生まれるとしたら、いったい? 「誠君みたいに、なっちゃいますから」 大丈夫... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐03
前ページ次ページ鮮血の使い魔 とてもチャカす気分にはなれなかった。 『ゼロ』の二つ名の通り、何も召喚できなかったのなら、 思いっきり挑発して、落ち込む暇なんて与えず彼女を怒らせてやろうと思っていた。 もし万が一、偶然にも、あるいは奇跡、天運が味方をして、使い魔を召喚できたら。 その時は「やるじゃない」と言ってやるつもりだった。 言った後で「でも私の使い魔に比べるとねー」とチャカす。うん、いつも通り。 でも、キュルケはそれができなかった。 ルイズが召喚したのは平民の美少女。 それだけなら、まだ、チャカしようはあったけれど。 後から聞いた、あの平民の名前、コトノハ。 彼女があんな物を持っていなければ。 コルベールの腕を切り落とすなんて真似をしなければ。 軍人の家系として、人を殺めるすべも、殺める時の心構えも、学んでいた。 でもそれ... -
凄絶な使い魔
戦国無双2猛将伝より、長曾我部元親(クリア後)を召喚 凄絶な使い魔‐01 凄絶な使い魔‐02 凄絶な使い魔‐03 凄絶な使い魔‐04 凄絶な使い魔‐05 凄絶な使い魔‐06 凄絶な使い魔‐07 凄絶な使い魔‐08 凄絶な使い魔‐09 -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐06
前ページ次ページ鮮血の使い魔 夢だったらいいな。そう思った。 でも、どこから、どこまで? 魔法を失敗ばかりして『ゼロ』と呼ばれた事が? サモン・サーヴァントで平民を召喚してしまった事が? 言葉と誠に慣れていく自分が? あるいは。 もしくは。 「おはようございます、ルイズさん」 「……おはよー」 ひとつのベッドに言葉と並んで眠っていたルイズは、起床と同時に嘆いた。 嗚呼、夢じゃなかった。 Nice Real. 理由は解らないが昨晩突然言葉がルイズに愛をささやき、ベッドにまで突入してきた。 ヤる気満々の言葉を必死に説得し、貞操を死守したルイズ。 でも流れで同じベッドで眠る事になってしまった。 このままいくと数日後にはヤられかねない、とルイズは頭を抱える。 その日、言葉は誠の入った鞄を一度も開けぬままルイズと朝食に行った。 ... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐08
前ページ次ページ鮮血の使い魔 解除薬を飲んで狂気に戻った言葉は、翌日からさっそく他の生徒に煙たがられた。 でもそんなの関係ないとばかりに言葉は人気の無い場所に行っては誠を取り出す。 そんな日が何日か続いた夜、恒例の夜の散歩に出かける言葉と誠。 「月と星が綺麗ですね。私、誠君に紹介できるよう星座の勉強したんですよ? あれがバイアン座、あれがソレント座、あれがクリシュナ座、あれがイオ座、 あれがカーサ座、あれがアイザック座、あれがカノン座、あれがティティス座。 こっちはラダマンティス座で、あれはミーノス座、あっちはアイアコス座です。 ……誠君はどの星座が好きですか? 私は以前ルイズさんが話してくれたシュラ座です。 何だか……よく……切れそうで……くすくすくすくすくすくすくすくすくす」 首だけの誠は当然無言だが、言葉の感覚ではちゃんと会話が成... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐04
前ページ次ページ鮮血の使い魔 「マコトを捨てて」 「それはもう死んでる」 「埋葬してやった方が彼のためだ」 「正直言って気持ち悪い」 「というか怖い」 などと言えるはずがない。言ったら言葉はノコギリで襲い掛かってきそう。 そうしたら魔法の使えない自分に勝ち目なんて無い。 だからルイズは我慢するしかなかった。 我慢できた理由は、責任。 自分が言葉を召喚してしまったからとか、コルベールの腕切断とか。 そういうものの責任を、使い魔の主として背負っているから、我慢できている。 つまりルイズ以外の人にとっては到底我慢できる問題ではない、という事。 ――ファイヤーボール等で鞄ごと焼却処分すればよくね? ――オールド・オスマンが固定化かけたらしいから無傷じゃね? ――あのジジイ、余計な事しやがって。油かけて燃やせばいけるんじゃ? ――仮に燃や... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐11
前ページ次ページ鮮血の使い魔 アンドバリの指輪を所持する可能性の高いクロムウェルは、西の浮遊大陸アルビオンにいる。 如何にしてそこへ行くか。 異世界であるハルケギニアを一人で旅するほど無謀ではない。 しかし正直に話してルイズが協力してくれるとも思えない。 今度フーケが来た時に協力を強要するか。 だが渡りに船とばかりに、フーケから情報を得た翌日、機が訪れた。 学院を視察しに来たトリステイン王女アンリエッタがその夜、 幼少の頃遊び相手であったルイズの部屋を密かに訪ねてきたのだ。 アンリエッタは唯一信頼できる友人であるルイズに頼み事をする。 アンリエッタは隣国ゲルマニアとトリステインと同盟を結ぶため ゲルマニアの皇帝と婚約をする事になってしまったのだ。 理由は、今アルビオンで反乱を起こしている貴族派が、 王党派を倒しアルビオンの実... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐24
前ページ次ページ鮮血の使い魔 轟音が船体を揺らし、ルイズから上下の感覚を奪った。 一瞬、宙に浮いているかのような錯覚の後、力強く床に叩きつけられる。 「カハッ……!」 痛い、というより苦しかった。 肺の中の空気が全部吐き出され、今にも窒息しそうで、喘ぐのが精いっぱいだった。 視界は真っ暗で、耳の奥で何かが鳴り響いていて他の音が聞こえない。 口の中に血の味が広がり、全身がこわばって動けない。 「――イ――ん、――り!」 どこか、とても遠くから声がする。 肩を誰かがゆすっていた。やめて、痛い、やめて。 「ルイズさん、しっかり! ルイズさん!」 黒の中に、白が現れる。 ああ、黒いのは、髪で、白いのは、顔だ。 「こ、と……は?」 「起きてくださいルイズさん、脱出します」 「あ……あ? だ、しゅつ」 「起きてくだ――きゃっ!?」 再び轟音... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐12
前ページ次ページ鮮血の使い魔 風の国アルビオンにある寂れた教会。 人気は無く、薄暗くて寒い、しかしそこがアンリエッタから知らされた場所。 ルイズ達はこの教会に行くよう指示されていた。 恐らく王党派と連絡を取れる場所なのだろうと推測しながらも、 同行するワルドはいつでも杖を抜けるよう警戒し、 言葉もまた鞄を開けっぱなしにしいつでもチェーンソーを取り出せるようにしている。 そんな三人が部屋の真ん中まで来ると、柱の影から甲冑を着たメイジが現れた。 四方を囲んで四人。全員が杖を三人に向けてくる。 言葉は双眸を細めると、頭の中でメイジ達を皆殺すシミュレートを開始する。 ガンダールヴのパワーとスピードなら、あんな甲冑など問題にならない。 「私はルイズ・フランソワーズ! トリステイン王国、アンリエッタ姫殿下の使者でございます。 ウェールズ皇太子... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐15
前ページ次ページ鮮血の使い魔 武器を失ったガンダールヴなど平民の小娘でしかない。 嗜虐の笑みを浮かべるワルドと、残りひとつとなった遍在。 一方、ウェールズとルイズはまだ杖を持っている。 先に言葉を始末し、遍在と二人がかりでルイズ達を殺すか? 雑魚を適当にあしらい、反撃する能力を持つルイズとウェールズを殺すか? ワルドの選択は、ルイズが決めさせた。 「ワルド!」 チェーンソーを破壊されたため言葉が無力化してしまったと理解しているルイズは、 言葉を守るため、注意を引くべく、ワルドに杖を向け詠唱を始めた。 失敗でも何でもいい、爆発を起こして、起死回生のチャンスを生み出さねば。 そんな動きを見せるルイズを、先に始末しようとワルドは決めた。 「エア・ハンマー!」 空気の塊を叩きつけられ、ルイズは石造りの壁に向かって吹っ飛ばされる。 ... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐13
前ページ次ページ鮮血の使い魔 気分が滅入る。 任務も折り返し地点まで見事に果たしたというのに。 憧れの婚約者から求婚されたというのに。 気分が滅入る。 理由は解っている。 ウェールズに亡命する気は無く、ここで死ぬつもりで、説得しても無理だった。 だからアンリエッタは悲しむだろう。彼の死を聞いて悲しむだろう。 手紙を持ち帰るという任務を果たせても、姫殿下の幸福は果たせない。 なぜ、死ぬと解っていて、逃げようとしないのか。 決まっている、貴族の名誉を守るためだ。 もし自分が同じ状況に立たされたらどうするか? 決まっている、貴族の名誉を守るために戦って死ぬ。 当たり前だと思っていた事を、いざ目の当たりにする事で、ルイズは涙があふれそうになった。 でも、仕方ない、自分には何もできない。 気分が滅入る。 理由が解らない。 「結... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐19
前ページ次ページ鮮血の使い魔 時はわずかにさかのぼる。 言葉がルイズと再会し、まばたきの眠りについた間の出来事。 ティファニアは疲れていた。肉体的にも、精神的にも。 昨晩、もう子供達が寝静まって、ティファニアもぐっすり眠っていた時間に、 姉と慕うマチルダが怪我人を連れてやって来た。 ウェールズという男性と、ルイズという女の子。 ルイズは最初、ティファニアを見て怯えたけれど、ウェールズは怖がらなかった。 それが嬉しくて、ティファニアは母から譲り受けた指輪でウェールズを治療した。 傷はふさがったが出血が多く、体力の回復にはまだ時間がかかる。 もう一人のルイズはマチルダに傷の手当てをされると、ウェールズの看護を手伝ってくれた。 マチルダはそんなルイズに鞄を預けると、ティファニアに絶対に鞄に手を出さないよう注意した。 子供達にも手出しさせては... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐17
前ページ次ページ鮮血の使い魔 クロムウェルの天幕を訪れると、見張りの兵士が留守を告げた。 こんな夜遅くにどこに行っているのか? 兵士も行き先を知らないようだった。 不審に思い、彼女はクロムウェルを探して歩き回る。 そして。 「こと……のは……?」 「ええ。奇妙な名前と服装の平民で、ワルド様にお仕えしていらしたとか」 「……その女はどこに?」 「あちらの天幕をご使用していらっしゃいますが」 「そう」 その会話が成されている頃、言葉は? 「こんな時間に、どちらへ?」 巡回中の兵士に捕まっていた。 すぐ後ろ、天幕の出入り口を潜ればクロムウェルの死体がある。 一歩でも踏み入られたら最後、兵士から武器を奪って力ずくで逃亡するしかない。 どう殺すかを考えている言葉に無用心に近づいた兵士は、 衣服の乱れと火照った身体に気づき、天幕の中で何... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐20
前ページ次ページ鮮血の使い魔 時は進み、言葉がまばたきの眠りから覚めて、また眠り、また目覚めた時、 日はとうに沈み空は黒く星がまたたき、 ルイズもティファニアもフーケもウェールズも子供達も夕食を終えて、 宵の静かな時間をすごす中、ようやく桂言葉は目覚める。 「おはよう」 隣から。 ぼんやりとしながらも言葉は「おはようございます」と返して、顔を向けた。 ルイズが、鞄を膝に乗せて椅子に座っている。ちょっと怒っているような表情で。 「コトノハ。ご主人様に何か、言う事があるんじゃない?」 「鞄を……誠君を……」 「それ以外に、あるはずでしょ?」 何を言えばいいのか。 しばし目を閉じ、考える。少しずつ頭がはっきりしてきた。 「レコン・キスタはおしまいです。総司令のクロムウェルを殺してきました」 「……そう、それは朗報ね。でも自分に関... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐10
前ページ次ページ鮮血の使い魔 フリッグの舞踏会も終わり皆が寝静まった夜分。 押し殺した足音が近づいてくるのに気づいた彼女はまぶたを開けた。 こんな時間、こんな場所に、いったい誰が、何の用なのか。 「こんばんは」 暗闇の中語りかけてくる人影に視線を向け、彼女は息を呑んだ。 予感が無かった訳ではない。 そいつは、自分に用があるような言動を取っていた。 鉄格子の向こうにいるそいつに、彼女は応じる。 「コトノハとかいったっけ。何の用だい?」 「土くれのフーケさん。お願いがあって来ました」 そう言って、言葉は右手に持っている物を見せる。 フーケの杖だ。 「そのお願いとやらを聞けば、杖を返してくれるって訳かい」 「ええ。そうすればここから逃げ出せるでしょう?」 「……誰かに見られてないだろうね」 「大丈夫です。あなたもご存知の通り、この学院の警... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐23
前ページ次ページ鮮血の使い魔 マチルダの声がして、ルイズは慌てて手綱を引いて馬を止め、目を凝らし声の主を探す。 宵闇の下、木立や岩など、人が隠れる場所はいくつかあった。 月明かりだけでその姿を探すのは難しい。 表情を硬くしてルイズは呟く。 「マコト、死んだフリしてて」 「……誠君、お願いします」 「解った」 言葉はルイズの言う事を素直に聞き、誠は言葉の言う事を素直に聞く。 まだ話し合わなければならない事が残っているが、ある意味調和は取れている。 「……マチルダ、いるの?」 「……『外』でその名前を使うんじゃないよ、お嬢ちゃん」 声の出所を探す。左前方の、月光をさえぎる木立の中か? (どうしよう……どうすればいいかなんて、解んない) マチルダは命の恩人であり、ウェールズと言葉の恩人でもあり、 ティファニアにとってかけがえのない人物だ。 ... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐18
前ページ次ページ鮮血の使い魔 クロムウェルの死体が発見され、ロサイスは蜂の巣を突いたような騒ぎになった。 夜中だからなどと言ってられない、早急に追いかけねばならない。 森の中に入っていく灯りを見つけた小隊は、上に連絡を入れ増援を呼ぶ。 着実に、レコン・キスタの追っ手は言葉に迫っていた。 だがただの兵士など物の数ではない。 追いつかれ囲まれても、アンドバリの指輪で兵の意識を奪い、帰ってもらえば事はすんだ。 そうして言葉がフーケとの約束の場所にたどり着く頃には、 木々の隙間から見える空は白みつつあった。 そろそろ夜が明ける。 待ち合わせ場所は間違っていない、目印として木の幹に小さなサインを彫ってある。 さらにもしここにいられない状況なら石を三つ並べる手筈だが、指輪があればその必要はない。 地面が揺れて木の葉が散った。 その振動に覚えがあった言... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐14
前ページ次ページ鮮血の使い魔 「では式を始める」 教会にて、ウェールズは始祖ブリミル像の前で宣言した。 彼の前に立つワルドはあごを引いて口を真一文字に結ぶ。 その隣でルイズはうつむいていた。 「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、そして妻とする事を誓いますか」 「誓います」 「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン……」 どこか遠い所で声がしていると、ルイズは思った。 ワルドとの結婚。夢見た光景ではある、しかし、心だけ置いてきぼりされているような気分。 後ろの席に座っている言葉は、どんな表情をしているだろうか。 隣に立つワルドは、どんな表情をしているだろうか。 ワルドは本当に自分を愛しているのだろうか? いや、そうではなく、自分は本当にワ... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐16
前ページ次ページ鮮血の使い魔 夕暮れの森の中、言葉は鞄を差し出した。 「誠君をお願いします」 げんなりした顔でフーケは受け取り、ため息をひとつ。 鞄の中身が何なのか、ロングビルとして魔法学院で働いていた時に聞いている。 オールド・オスマン直々に固定化の魔法をかけた生首。 あのエロ爺、余計な事を。 「これを持ってろってのかい? 正直、御免こうむりたいんだけどねぇ」 「危険ですから、誠君を連れて行く訳にはいきません。 それに……世界を裏切った私に手を差し伸べてくれたあなたなら、 一時的に誠君を保護してもらう程度は信用してもいいです」 「世界を裏切ったぁ? あはは。ご主人様だけじゃなく、世界までかい。 あんたの言う『世界』に、私は含まれていないのかい? ずいぶんと都合のいい『世界』だねぇ」 ――もっとも、心を病んだ人間じゃ正常な思考... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐21
前ページ次ページ鮮血の使い魔 ルイズは困っていた。 「皿洗いくらい手伝いな」 とマチルダに言われた。 そんな下々の仕事をと思ったが、自分はこの家に厄介になってる身。 言葉に任せようかとも思った、指輪を取られて不機嫌そうなので頼みにくい。 だから仕方なく皿洗いを始めたのだが……。 「ルイズ、そんなに強くこすっちゃお皿に傷がついちゃうわ」 右隣にティファニアも立っていた。家事は自分の仕事だから一緒にやろうと言ってきた。 それはいい。 「ずいぶんお皿が多いですね。子供達の分……ですか?」 左隣に言葉も立っていた。ルイズがやるなら自分もやりますと言ってきた。 それはいい。 しかし「じゃあ二人に任せていいかしら」と言ったら、 言葉は「ルイズさんがやらないなら私もやりません」と言うし、 そんな風にティファニア一人に皿洗いを押しつけたら悪役に... -
鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐22
前ページ次ページ鮮血の使い魔 沈黙が流れていた。 膝の上で拳を握り、唇は時折何か話そうと開きかけるが、すぐに閉じてしまう。 目線は泳ぎ、すぐ前のベッドに横たわるウェールズの顔をチラチラと見ている。 これではいつまで待っていても進展がないと見たウェールズは、優しい微笑を作る。 「ミス・ヴァリエール。どう話していいか解らないのなら、ありのままを話せばいい。 いざ口に出してみれば、ちぐはぐでも少しずつ話せるものさ」 「殿下……」 しばしルイズは目を伏せると、唇を震わせてから顔を上げる。 「しかし、これは私個人の問題ではないのです。 テファの事で……でも、話していいのか……話すべきなのか……」 「テファの? エルフとの混血である以上に、何か……?」 もしや彼女の父親が何者であるかバレてしまったのかとウェールズは思った。 それなら自分に相談に来... -
暗の使い魔‐07
前ページ次ページ暗の使い魔 「ちょっと、何してるのよ。さっさとしなさい!」 「五月蝿いな、こんな人ごみじゃ仕方ないだろう」 細い路地にいるルイズからの催促に、官兵衛が答える。 ごった返す人ごみを掻き分けながら、ずた袋を引っさげた官兵衛がようやっとルイズの元にたどり着いた。 路地に入り込んだ二人は、元来た道を見返す。と、そこには見渡す限りの人の波。 幅5メイル程の街道に所狭しと人が並んでいた。 ここは首都トリスタニアのブルドンネ街、その大通り。 虚無の曜日――魔法学院の生徒にとって休日にあたるこの日。 官兵衛とルイズはある買い物をするために、ここ首都トリスタニアまで出てきていた。 事の始まりは、昨晩の会話である。 「この野良犬―――っ!よりにもよってツェルプストー相手に尻尾を振るなんて!」 あの後、ルイズに部屋まで連れ戻された官兵衛は、いきなり犬呼ば... -
鮮血の使い魔‐Another Days
前ページ鮮血の使い魔 【もしもルイズが召喚したのが永遠だったら】 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし"使い魔"を召喚せよ!」 ルイズはサモン・サーヴァントの詠唱を完成させた。 すると、銀の円盤がルイズの前方の空間に現れる。 成功した? ゼロのルイズが使い魔召喚の儀式を? 一瞬、ルイズの胸に喜びが広がったが、すぐ疑問に首をかしげる。 普通召喚のゲートは縦に現れる。使い魔が前に進む事でゲートに入るからだ。 しかしルイズの前にあるゲートは横向きだった。 あの形では、使い魔はゲートから上、あるいは下方向に出てくる。 空を飛ぶ動物や幻獣が、空に向かって上昇中なのか、地面に向けて下降中なのか。 正解は後者だった。 ゲートの下面から、黒い物が現れる。 しかし... -
カラッポの使い魔
「真・女神転生III-NOCTURNE」の主人公、通称 人修羅 エンディング後より召喚 参考リンク:ウィキペディア (Wikipedia) フリー百科事典 真・女神転生III-NOCTURNE マニアクス の項より :公式HP カラッポの使い魔/カラッポの使い魔‐1 カラッポの使い魔/カラッポの使い魔‐2 -
暗の使い魔‐04
前ページ次ページ暗の使い魔 「みなさん。授業を始めますよ」 教室の扉を開き、中年の女性が姿をあらわす。紫のローブに身を包み、帽子をかぶったふくよかな女性である。 昨晩、官兵衛達の騒ぎを聞きつけて現れた教師だった。 「みなさん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、 こうやって春の新学期に様々な使い魔をみるのがとても楽しみなのですよ」 どうやらこの教師が、昨晩気絶していた官兵衛を発見した、ミセス・シュヴルーズらしかった。 シュヴルーズがニコニコしながら教室を見渡す。と、ふいに教室の片隅にて腰掛ける官兵衛と目が合った。 「おや?」 慌ててシュヴルーズから目を逸らす官兵衛。 しばらくこちらを見つめていたシュヴルーズだが、ふとルイズの方を見ると、とぼけた声で言った。 「ミス・ヴァリエールは、随分変わった使い魔を召喚したようですね。」 教室中がど... -
凄絶な使い魔‐07
前ページ次ページ凄絶な使い魔 第七話 「凄絶なルイズ」 自分の部屋のドアをたたき壊す勢いで開け放つと、ルイズの目に飛び込んできたのは、 先日使い魔となった元親、そしてキュルケの姿だった。 元親は使用人から借り受けたシャツとズボンを身につけているが、シャツのボタンが止められていない。 その開いたシャツのボタンをキュルケが留めてあげている時にルイズが現れたのだ。 「あらルイズおかえり」 「ななな何がおかえりよ、キュルケあんた、一体なにやってるのよ!!」 烈火の如く怒鳴り散らすルイズに、キュルケはやれやれと言った風に肩をすくめる。 「別にぃ、彼がボタンの止め方を知らなかったから、教えてあげただけよ、ねぇ」 「ああ……、こちらの服の着方を俺は知らん」 「そんな事、私が教えてあげるわよ!、そんな事よりなんで私の部屋にツェル... -
暗の使い魔‐02
前ページ次ページ暗の使い魔 今日この日、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは最も混沌とした時間を過ごしていた。 2年生の使い魔召喚の儀式、それはメイジとしての資質を見る重要な機会。 そして、メイジの生涯のパートナーを呼び出す、神聖なる儀式であった。 彼女のこの儀式に掛ける思いは、半端な物ではなかった。 この機会に誰よりも、賢く、立派な使い魔を召喚し、学園の皆を見返してやるのだ。 そうすればきっと、自分のこれまでの努力は報われる。ルイズはそう信じた。 だがしかし、蓋を開けてみればどうであろう。そこに現れたのは人間の男。 それも、両腕に鉄球をくくりつけた、みすぼらしい囚人のような平民だった。 今日のこの時ほど、彼女が落胆した瞬間はなかったであろう。 オマケにコントラクトサーヴァントでは、自分のファーストキスを不本意な形で奪われる... -
暗の使い魔‐03
前ページ次ページ暗の使い魔 日の光が差し込み、室内を明るく照らした。 澄んだ青空が窓から覗き、小鳥のさえずりが聞こえる。 なんとも爽やかな目覚めである、はずであった。 「なぜじゃああああああああああああっ!!」 「ああもう五月蝿いっ!!」 この喧しい、耳をつんざくほどのわめき声さえなければ。 暗の使い魔 第三話 『トリステイン魔法学院』 「こ、ここはどこじゃ!?」 「私の部屋よ」 眠い目を擦りながら、ルイズは答えた。 「な、なんで小生はここに居るんじゃ!?」 「だれが、あんたをここに運んであげたと思ってるの?」 「なんで小生は簀巻きにされてるんじゃ!」 「あんたが逃げたからでしょ?」 「状況がわからん!」 「あーもー!あとで説明してあげるから待ってなさい!」 ミイラの如く、ぐるぐるに巻かれ、床に転がされたままの官兵衛... -
暗の使い魔‐01
前ページ次ページ暗の使い魔 「あんた、誰?」 暗く閉ざされた意識の中、ふと聞きなれない声が耳に届いた。 「あん?」 唐突に聞こえた問いかけに、間の抜けた声で返しながら、男は目を覚ました。 目蓋に眩しさを感じる、そして微かなそよ風が頬をくすぐる。 その時点で、男は違和感に急激に意識を覚醒させた。 「(外、外か?)」 上体を起こし、目覚めたばかりの為か、ふらつく頭を抑え辺りを見回す。 ここは一体何処であろう。青く澄んだ空から差す日差しが眩しい。 爽やかな、すこし肌寒い空気。そして耳を澄ませば、鳥のさえずりさえ聞こえてくる。 普通なら、ごく有り触れた平和な光景である。しかし彼は困惑していた。 この状況が、彼が目覚める直前にいた場とはあまりにかけ離れていたから。 幸いな事に、先の戦いで負った傷はそれ程深くなく、ほぼ塞がりかけていた。 地面についた手に、... -
暗の使い魔‐00
前ページ次ページ暗の使い魔 薄暗い洞窟内を、壁に備え付けられた僅かな松明の明かりが照らしていた。 湿った岩壁からシトシトと、わずかに水が滴り落ちる。 その音を聞くものは、岩の亀裂に潜む蝙蝠のみであろうか、いや。 「見つけたぞ!」 「ぐっ……畜生!」 無数の足音が洞窟内にこだました。 そして同じ数の荒い息遣いとともに、甲冑に身を包んだ大勢の兵が、狭い通路内に押し寄せる。 「逃がすな!追え!」 無数の兵士は、皆一様に長槍を携え、背には赤地に黒色であしらわれた桐花紋の旗印。 今この日本において、最も強大な力を誇る勢力。 豊臣の軍勢である。 時は戦国時代の日本。そしてここは九州・石垣原の洞窟。 その屈強な軍勢に追われるのは一人の男。 薄暗い洞窟の中、その男は迷路のように入り組んだ洞窟内を、己の足で必死に逃げ回っていた。 ズルズルと、重いなにかを... -
瀟洒な使い魔‐07
前ページ次ページ瀟洒な使い魔 フリッグの舞踏会が行われている頃、トリステイン魔法学院本塔、会議室。 そこには学院長であるオールド・オスマンをはじめとして、数名の人間が円卓の席についていた。 オールド・オスマンの秘書にして大泥棒、ミス・ロングビルことマチルダ・オブ・サウスゴータ。 学院の有るこのトリステインの王家、その傍流に当たる公爵家の令嬢、『ゼロ』のルイズ。 そして、その使い魔、『ガンダールヴ』こと十六夜咲夜。 それらの人物の視線を一点に集めるのは、円卓の上座に座る2人の女性。 1人は緑を基調とした見慣れない衣服に『龍』という字の刻まれた飾りがついた同色の帽子を被った赤髪の女性。 少し前、空から落ちてきて咲夜に激突した女性である。 もう1人は、黒を基調とした衣服に赤い髪、そして耳に当たる部分と腰の辺りから羽を生やした亜人の女性だった。 ... -
暗の使い魔‐06
前ページ次ページ暗の使い魔 藁の感触が背中をくすぐる。 がさごそと音を立てながら、官兵衛は敷き詰められた藁のベットで目を覚ました。 ぼんやりと頭を掻きながら、上半身を起こす。 相も変わらず足元に転がる、黒金の相棒によう、と挨拶をすると、官兵衛はのそのそ立ち上がり。 「おい、起きろ」 ベットの上で眠ったままのルイズに声を掛けた。しかし。 「う~ん……」 「オイッ」 官兵衛が声をより一層大きくするも、ルイズは未だ夢の中。 シーツを引っぺがし、肩を揺するも―― 「あと5分だけ……」 起き上がる気配は一切ない。 「いいんだな?このまま起きなくて本当にいいんだな?」 官兵衛の唇の端が怪しく持ち上がる。のしのしと部屋の中央に移動し、鉄球にむかって枷を構えると官兵衛は。 「おりゃああああっ!」 ガシンガシン、と枷を鉄球に叩き付けた。 鉄球を通じて振動が屋内に... -
暗の使い魔‐09
前ページ次ページ暗の使い魔 太陽は西に沈みかけ、空が茜色に美しく染まる。煌く星々がその空に顔を覗かせようとしていた。 そんな刻限、モット伯の屋敷へと続く道を、一つの奇妙な物体が疾走していた。 薄茶色に汚れた球体が、土埃を舞い上げながら高速回転する。この奇妙な物体こそ、黒田官兵衛の変じた姿。 その速度たるや、並みの馬では追いつけぬ程であった。 『災い転じて』。黒田官兵衛が得意とする奥義の一つである。 繋がれた鉄球にしがみ付き、共に転がる事で馬以上の速度と突進力を得る技である。 その猛牛のような突撃を止める手立ては無いが。 「ありゃあっ!」 木や壁に激突すると、即座に身動きが取れなくなってしまう欠点があった。 どしいん、と官兵衛がカーブを曲がりきれず木に激突する。鉄球から投げ出された身体が、激突した木に逆さに貼り付く。 バンザイした状態の、なんとも間抜けな格好... -
暗の使い魔‐08
前ページ次ページ暗の使い魔 深い深い森の中を、双月の明かりが薄っすらと照らす。 月明かり以外に照らす物は存在せず、漆黒の闇が辺りを支配していた。 時折、虫や梟の鳴き声が辺りに響くも、静寂そのもの。 そんな、学園からそう遠くない森の中であった。 森の奥にかまえたボロボロの廃屋内で、置かれた小さな椅子に腰掛けながら笑みを浮かべる人物が一人。 室内を、杖の先から出る明かりが灯し、ぼんやりとその姿が浮かび上がる。 やや青みがかった髪が、目深く被ったフードから覗く。年の程は20代前半程だろうか。 黒いローブに身を包んだ、細身の若い女性がそこに居た。 「フフ、全く運がいいね。こうも容易く『破壊の杖』を手に出来るなんて」 そう、彼女が手にしているのは、学院の宝物庫に眠っていた筈の秘宝『破壊の杖』。 彼女こそ、あの巨大なゴーレムを操り、堅牢な宝物庫から秘法を盗み出した張本... -
凄絶な使い魔‐02
前ページ次ページ凄絶な使い魔 第二話「学院長室」 元親はコルベールとルイズの後をついて、そびえ立つ魔法学院校舎へと向かって行った。 石造りの建物は戦国武将であった元親にとって大変興味深いものであった。 最初、学園内に入る時、前方をいく2人が履物を脱がずに入って行った事に驚いたが、ここではそれが普通なのであろう。 これだけの大量の石材を使用して作った城は元親が知る内では秀吉が建てた大阪城ぐらいである。 あれは元親が知る限り、最も堅牢で難攻不落、そして最も豪奢な城である。 それに比べると、この建物は城として見るより、神社などの形式だった建物のように見える。 元親はあちこち見て回りたい気もしたが、さすがに前の二人を見失うわけにはいかない為先を急いだ。 3人は階段を登りつつ、上の階へと進んでいった。 その事に気づいたルイズがこの先の部屋に... -
瀟洒な使い魔‐01
前ページ次ページ瀟洒な使い魔 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは困っていた。 それはもう実家で粗相をして一番上の姉や母にどう弁明しようか考えていた時と同じくらい困っていた。 何をそんなに困っているのかと言えば、それは先日自身が召喚した使い魔のことである。 火を出そうが、水を出そうが、錬金をしようが、どんな魔法を使ってもロクに発動せず、 爆発と言う失敗でしか魔法を使えたためしのない『ゼロのルイズ』。 そんな自分でも、あの日は(何度も失敗したが)『サモン・サーヴァント』に成功し、 『コントラクト・サーヴァント』をも成功させる事ができた。 コモンマジックすら失敗するいつもの自分からしてみればあの日は絶好調といえただろう。 確かに高望みをしたかもしれない。 どんな使い魔でもいい、召喚されてくれと投げやりに思ったか... -
瀟洒な使い魔‐07b
前ページ次ページ瀟洒な使い魔 所変わって、大浴場。ここは元々学院全ての女生徒や女教師達が一斉に入れるよう、 縦15メイル、横25メイルという、深さを除けばプールのような広さを持つ浴槽を有している。 湯には香水が混ぜられ、貴族の女子が入るに相応しい香りを放っている。 普段は大勢の少女達で賑わっている浴場だが、今この浴場を利用しているのは僅か数人。 各人が思い思いの場所で湯に漬かり、日ごろの疲れを癒している。 「あぁ……このなんかセレブでゴージャスな香りがなんとも…… ここの皆は毎日こんなお風呂なんですねぇ、いいなあ、羨ましいなあ。ああブルジョワジー!」 「紅魔館の品位が疑われるからそれ以上貧乏臭い発言はやめなさい美鈴」 湯に身をゆだね浮かびながら叫ぶ美鈴と、その横ですこんと彼女の頭をはたく咲夜。 「ええと、タバサちゃ... -
瀟洒な使い魔‐02
前ページ次ページ瀟洒な使い魔 翌日ルイズが目を覚ますと、隣で寝ていたはずの咲夜の姿はなかった。 周囲を見回すと、この学院のものではない、スカート丈の短いメイド服が視界に入る。 あれ?こんなメイド学院に居たっけ。ていうかなんで平民が私の部屋に居るのかしら。 ああ、そういえばこの平民は使い魔だっけ。昨日は一緒に寝たのよね、そういえば。 名前は確かサクヤとかいったかしら。平民の癖に魔力があるし、異世界の住人だとかいうよく分からない使い魔。 そう寝ぼけた頭でとりとめもないことを考えていると、あれよあれよと言う間に着替えさせられ、髪を梳かされる。 数分後には一部の隙もないほどに完全な形で身だしなみが整った自分がそこにいた。 「……なんか釈然としないんだけど」 「こういうこともメイドの勤めでしょ? ほら、もたもたしない」 なおもぶつぶ... -
凄絶な使い魔‐06
前ページ次ページ凄絶な使い魔 第六話 「噂の使い魔」 ルイズが出て行ってすぐ、入れ違いになるように入ってきた女に元親は見覚えがあった。 先日、初めてこの世界に呼び込まれた時に目が合った少女。 燃えるような髪の色と、小麦色の肌が印象的で覚えている。 「はぁい、私はキュルケ、微熱のキュルケよ、……それにしても随分と刺激的な格好ね」 キュルケはじろじろと物珍しげに元親を見つめながら自分の名を名乗った。 別に裸だからと動じる元親ではないが、こうもあからさまにジロジロと見物されるとさすがにうんざりする。 「……目の毒ならさっさと部屋から出て行く事だ」 「あら、目の毒なんて言ってないわ、むしろ楽しんでるし」 元親は三味線の調子を合わせる作業をしながら、ちらりとキュルケの方を向くと、半ば呆れたような声を出す。 「... -
瀟洒な使い魔‐03
前ページ次ページ瀟洒な使い魔 「トリスタニアに買い物に行くわよ!」 あれから少し経った虚無の曜日。 現代で言う日曜日に当たるこの日は、トリステイン魔法学院も当然のことながらお休みである。 咲夜の部屋でたむろしていた咲夜・タバサ・キュルケの3人は、ルイズのそんな一言に首を傾げた。 「買い物って……何を買うのよルイズ。必要なものは大体揃ってるから今の所欲しいものは無いけど?」 愛用のナイフの手入れをしながら、咲夜が言う。 「……虚無の曜日」 手に持った本から視線を外さず、ぽつりと呟くタバサ。 「買い物って言うけど、お金は大丈夫なの? いっつも失敗魔法で物を壊してぴぃぴぃ言ってるくせに」 マニキュアを塗りながら、溜息混じりにキュルケも口を出す。 「ああもう、ツェルプストーに心配される筋合いはない... -
凄絶な使い魔‐04
前ページ次ページ凄絶な使い魔 第四話「ルイズの使い魔」 ルイズの目はまっすぐに元親を見据えていた。 眼前には半透明の球が漂っているが、既にそれはルイズにとって恐怖の対象ではない。 今、相対する二人は、元親が剛とするなら、ルイズは勇である。 決して引かない心、諦めない心、それがトリスティン貴族の誇りだ。 幼少より叩き込まれた彼女の根底にある貴族の矜持、それがいまの彼女からは溢れ出ているようだった。 前に向かうという其の姿勢は美しさとなって、彼女を内面から輝かせを、元親も一瞬、目奪われるほど神々しく見えた。 私が、どうしたいか? そんな事は決まっている、誰からも後ろ指を指される事のない立派なメイジに成る事よ。 そして、その為には…、 チョーソカベ、貴方には私のそばに居てもらうわ! ルイズは優雅に貴族の子... -
瀟洒な使い魔‐04
前ページ次ページ瀟洒な使い魔 「メイド長! 火の塔の清掃終わりました!」 「メイド長! マルトーさんが昼食の味見お願いしたいそうです!」 「メイド長! ミスタ・クリストフとミスタ・フィオールの使い魔達が喧嘩を始めて手がつけられません!」 ――――あれ? 何でこんな事になっているのかしら? ふと、咲夜はそんな事を考えた。あれからメイドに混じって働きつつルイズの世話を焼くと言う生活を続けていたのだが、 いつの間にか同僚のメイドたちが『メイド長』と呼ぶようになっていた。 マルトーですら『我らがメイド長』などと言うようになり、気がつけばメイド長という呼称が定着してしまった。 普通に仕事してただけなんだけどなぁ、と思いつつ首を捻るも、答えが見つかるわけでもなく。 実の所、紅魔館におけるあらゆる仕事をほぼ一人でこなしてきた咲夜... -
凄絶な使い魔‐03
前ページ次ページ凄絶な使い魔 第三話「ルイズの試練」 元親はやや怪訝な顔をして、左手に握る蝙蝠髑髏を見た。 彼の操る三味線はただの楽器にあらず、奏でる音は衝撃となり敵を討つ、また、その衝撃を不可視の音の球にかえて、 宙を漂わせ、衝撃を解放させる事もできる。 いま、この部屋に解き放ったものがその音の球だが、明らかに大量発生したソレに元親自身が戸惑いを覚えたのだった。 違う、今までとまるで違う、手のひらに吸いつくような楽器との一体感を元親は感じていた。 「な、なに……、この丸いの……、貴方、魔法を使ったの!」 部屋を覆い尽くさんばかりに吐き出された音の玉を、目で追うルイズに、元親の方も驚いた顔をする。 「ほう…、お前も見えるか、音の球が…上等……、だがそっちの二人には見えてないようだがな」 ルイズは振り返って、オスマ... -
凄絶な使い魔‐08
前ページ次ページ凄絶な使い魔 昨日の晩は、部屋に夕食を運んでもらった。 その時はミートパイと、チーズとワインといった軽いものだったので、元親と一緒に食べる、ちゃんとした食事というものは、 この昼食が初めてだった。 二人がアルヴィーズの食堂へ入ると、教室と同様、生徒と教師の視線が元親へと向けられる。 例によって、注がれるメイジ達の視線を全く気にした様子のない元親の振る舞いは、使用人たちからも異質に映り、 とても同じ平民とは思えなかった。 途中、二人の姿を見たメイド達が好奇の視線を向けていたが、原因についてなど元親は知る由もない。 彼愛用の三味線をそばに立て掛けると、ルイズの隣の席に座る。 席に着くと、ルイズはモンモランシーと目が会った。 「モンモランシー、……今朝はごめん、ギーシュの事からかうつもりは無かったの、ただ……」 「…... -
凄絶な使い魔‐09
学院長室に包帯を巻いた老人が座っていた。 彼の名はオールドオスマン、トリスティンの生ける伝説とまで呼ばれる老メイジである。 ちょうど、先日の今頃、とある事故により全身打撲の重傷を負い、只今療養中である。 と言っても、この程度の傷は、毎日秘書から受ける暴行と同程度あり、彼にしてみれば日常茶飯事の出来事だ。 コンコンとドアのノッカーが鳴らされる。 今、秘書のロングビルはいない為、オスマンが大声を張り上げて、入室を許可する。 扉を開けて入ってきたのは頭に包帯を巻いた中年メイジだ。 「学院長、身体のご加減はいかがでしょうか?」 「おお、コルカタコシニ・フェイタス君、君も災難じゃったな」 「あの……私の名はジャン、姓がコルベールですぞ、……ところで、ミス・ロングビルが見えませんが?」 「ああ、今は宝物庫の目録作りに行っとる」 あ、そうですかと、... - @wiki全体から「鮮血の使い魔‐07」で調べる