ラファエル
| <タイプ> |
<大天霊> |
タイプ |
エンジェル |
| 種族 |
神族 |
ジョブ |
アタッカー |
| HP |
650 |
ATK |
110 |
| DEF |
110 |
コスト |
80 |
| アビリティ |
| 召喚 |
なし |
| 覚醒 |
サクリユニットヒールD |
| 超覚醒 |
そして、神は癒される |
舞い散る白い羽、破れ落ちる黒い翼、吹き荒れる火の粉――
天使と悪魔と人が争う戦場の中を、黒い翼をもつ天使と巨大な神の車鎧が進んでいた。
突然、ギュゥゥゥゥンと鈍い停止音を響かせて車鎧が立ち止まり、
長い三本の足を折って崩れ落ちる。
その体はあちこち傷つき、ここにたどり着くまでにいかに激しい戦いがあったかを連想させた。
「…フン、ここまでか。まぁ、ソロネにしては根性あったんじゃないか?
キサマはそこで休んでりゃいいさ――ありがとな…」
黒き天使はその場で飛び上がると、眼前に広がる光景を見下ろした。
「これが、キサマが私に見せたかった光景か… クソみたいな有様だね」
黒き天使――フィオが目にしたのは、地上の果てまで続く殺戮の世界であった。
「主の御名のもとに!」そう口々に叫ぶ天使たちによる一方的な侵攻……
逃げ惑い、許しを請う人間や悪魔が次々と無作為に殺され、
果ては手負いの天使でさえも巻き添えに貫かれて死んでいく。
尋常ではないこの惨状に、フィオは苦々しげに舌を打った。
――自らの意志も無く、疑問も抱かず、ただ命じられるがままに動く豚どもめ。
何よりも、神――キサマはこんなバカげたことがしたかったのか!?
フィオは言い知れぬ怒りに顔を歪ませながら、漆黒の翼を広げた。
そして殺戮を続ける軍勢に向かっていこうとした瞬間――
天が割れ、二つの巨大な光がもつれあいながら、轟音を立て地上に落下する。
「…なんだ…!?」
フィオは目を見張った。
ミカエルとマステマ――激しく争う光の中にいたのは、フィオのよく知る者達だった。
何故に一軍を率いる天使同士までもが――
そしてフィオは、そのすぐそばで、戦うでも逃げるでもなく、
膝をつき祈るようにその戦いを見つめる一人の天使を見つけた。
フィオは天使のそばに降り立ち、その無防備な背中に向かって乱暴に声をかけた。
「おい、お前はこのくだらない騒ぎに参加しないのか?」
ゆっくりと振り向いた天使は、憔悴し、
その美しい青い瞳から、はらはらと止めどなく涙を流していた。
その顔を見た瞬間、胸に妙なざわつきを感じ、フィオは息を飲んだ。
――この感じ…こいつはなんだ…
妙に懐かしいような、愛しいような感覚……
動揺するフィオと同じく、その青い瞳の天使もまた、戸惑いの表情を浮かべていた。
「……黒い…翼の天使…あなたは…」
フィオを見つめ、青い瞳の天使がそう呟く――同時に、前方で強烈な強い光が走った。
二人のすぐそばで、巨大な白き翼を広げた者と悪魔の翼を広げた者が、
再度激しくぶつかり合ったのだ。
凄まじい轟音と強い風が吹きあれる。
爆風を腕でよけながら、神に仕える強大な力を持った者同士のなりふり構わぬ争いに、
フィオはたっぷりと皮肉を込めて笑った。
「ハッ!
神の豚どもは、虐殺だけじゃ飽き足らずに、味方の大将同士の殺し合いまで始めたのかい?」
「…どうして…このようなことになったのか… 信ずるものは同じはずなのに…」
「フン、何を信じてるって? こんなくだらない大騒ぎを地上に持ち込みやがった神様をかい?
まったく胸糞悪いよ。そんな野郎を妄信するお前らが、私は心底愚かでしょうがないね」
「………」
フィオの言葉に、天使は口を噤み、厳しい表情で目を閉じる。
――神への冒涜は聞くに堪えないか…
こいつもあいつらと同じ天使、神を妄信する豚どもと同じだ…
やはり、“さっきの感じ”は勘違いだったか…
フィオが、何故そう思うのか、自分でもよく理解できない“失望”を感じかけたその時――
「ええ…」
天使は、はっきりと言った。
「このようなことが本当に主の御心だというならば、
私は主に抗わなければならない――そう思います」
天使が再び開いた目に映る、強い信念の輝きを見たフィオは、胸を高鳴らせた。
――やはりこいつは何か違う…私に近い… この共にいるだけで満たされるような感覚…
ずっと…こいつを求め…探していたような…
無意識に、フィオは天使に触れようと手を伸ばした――
その時、フィオを見上げていた天使は、勢いよく立ち上がりフィオの両肩をつかむと、
そのまま覆いかぶさるように地面に組み敷いた。
「――キサマ何を…!!」
覆いかぶさる天使に強い衝撃が走り、短く息を飲む声が響く。
見ると、その背には、天兵の剣が深々と突き刺さっていた。
「おい、お前…おい!」
フィオは、自分に体を預けたまま、ぐったりと動かない天使に呼びかけた。
天使は苦しげな表情を浮かべ、震える手で腹部を押さえる。
剣先が突き出た腹は白く発光し、そこから絶えず光が霧散していた。
「フン…狙ったのは黒き片割れのほうであったが、まあいい…
我が耳はあらゆる神への讒言を逃さん。
聞こえていたぞキュオよ、一度ならず二度までも、神を冒涜したな。これもしかるべき神罰よ」
静かだが地に響く冷たい声。
傷ついた天使の体を抱えたフィオの前で羽ばたくは、巨大な白き翼――
大天使ミカエルが、片手に傷ついたマステマをつかみ上げ、冷たい瞳でこちらを見下ろしていた。
「堕天の黒き羽をもつ者よ、やはり現れたな。
だが、もはやお前達が“真の姿”に戻ることはかなわぬぞ。
お前の半身はじきに消滅する。無論お前にも同じように、この私直々に神罰を下してやろう」
「…私の…半身だと…?」
「気づいておらぬのか…? まぁ良い…喜ばしく思うぞ。
よもや“キサマ”をこの手で消し去れる日が来ようとはな…
神に最も近しいような面をして、いつもどこか己は特別だとでも言いたげな気に食わぬ奴よ――
キサマもこうなるのだ!」
そう笑うミカエルは、手につかんだマステマを、二人の天使めがけて無造作に投げつける――
しかし、傷ついた天兵の体は、フィオたちのところまで届くことなく、ふわりと空中で静止した。
「んん? …フン、色々と湧いて出る」
「ミカエル様…そのような日はやって来ません。私達が、そうはさせません」
声とともに、白く柔らかな羽が舞う。
マステマは、新たに現れた天使に優しく抱きとめられていた。
それは、かつて能天使と呼ばれた者――
彼女はミカエルとフィオの間に降り立ち、そっと傷ついたマステマを地に降ろした。
「……“奴”に仕えておった“断罪の天使”か。
だがキサマは、アケローンにて天を追われた身のはず。
もはや理から外れた罪天使風情が何をしにまいった」
「恐れながら、今の私には主より賜ったエクシエルという名があります。
…ミカエル様、あなたはかつての私と同じ……道を違え、大罪を犯してしまった。
ですが、ご安心を…もうこれ以上、あなたが罪を重ねることはありません。
なぜなら今ここで私たちがあの方をお呼びし、あなたをお止めするからです」
「“奴”を呼ぶだと…?
何を血迷いそうなったかは知らぬが、二つに分かたれた“奴”が再び復活するというのか?
ありえぬな…「復活」とは主のみに可能な御業――
現に、ここにその片割れ同士が揃っておるが、ひとつになる気配などまるでないではないか」
ミカエルはそう言って、じっと事態の推移を見守るキュオ、フィオを冷たく見やる。
しかしその目の奥には、どこか嬉しそうに、何かを期待する光が揺れているようにも見える。
「ええ、それにはこの方の協力が必要ですから」
能天使――エクシエルがそう言うと、
その背中にしがみついていた幼い少女が、肩口からひょこっと顔を出した。
「ふわぁ…天使さま、もう着きましたか…?
わたし、高いところが苦手で…それに天使さまは飛ぶのがお速いので…
すごく…目が…くるくるしました…」
「それは申し訳ありませんでした――ソロモン王」
ソロモンと呼ばれた少女がすとんとエクシエルの背より地に降り立つ。
少女はぱしぱしする目をこすり、ぷるぷると首を振った後、凛と姿勢を正して言った。
「…ですが、地上で大変なことが起きているのはちゃんと見ていましたよ。
王様として…こんなことは見過ごすわけにいきません!」
その少女が抱えた魔導書を見て――ミカエルは目を見開いた。
「それは…ラジエルの書…!
あれほど探しても見つからなかった書を、なぜキサマが持っておる…!?」
ミカエルの剣幕に、幼き王がぴゃっと肩を強張らせ、それを庇うようにエクシエルが前に進み出る。
「この書は、最高の叡智を持つ、さる人の王――この方のお父上に託され、守られていたのです」
エクシエルは少し寂しそうに目を伏せて言った。
「…あなた様もすでに気付いておいででしょう? ある日、主は姿を隠された――
宇宙の真理が記されたこの書には、そのことも記されている…それを、あなたに…
いいえ、この世に存在する全ての者に知られるわけにはいかなかった…」
「なぜだ…主はなぜ身を隠された! なぜそれを私に知られてはならない? …それが…」
ミカエルは、苛立ちを押さえ込むように震える拳を力いっぱい握りこむと、
一度押し黙り、そして搾り出すように言った。
「それがあの者と…なんの関係がある…!」
「ラジエルの書が私に語ってくれました… 主は――『混沌』に蝕まれておいでだったのです」
ミカエルの目が開かれる。
「絶対なる主が完全に『混沌』に取り込まれてしまえば、
主に連なる正義の軍勢はすべて『混沌』のものとなり、世界は一瞬のうちに滅んでしまうでしょう…
だから主は、そうなる前に、この世界のどこに潜んでいても、
誰と通じていてもおかしくない『混沌』の目も届かぬ地へとひとり身を隠し、
自らを浄化されようとお考えになったのです。誰にも、何にも知らせることなく…」
「…“奴”を除いて、か…」
「はい… あの方は天界で唯一、主がお創りになられなかった異邦の天使――
ただ一人、主に異を唱えることを是とする方。
万が一のことがあったとき、唯一自らをお止めできる者として、主がお知らせになったのです。
しかし、秘密を知ってしまったあの方もまた、身を隠さねばならなくなりました。
自分と同じく秘密を抱えた、ラジエルの書と一緒に…」
「…それで…その方は、この魔導書をとう様に託されたのですね…」
幼き王が、ぎゅっと魔導書を抱え込む。
「ええ… しかし、問題がありました」
「…問題…だと?」
「…はい、それは大天使ミカエル様――あなたです。
“神の耳”たるあなたは、神の声だけでなく、すべての天使の存在を感じ、
その所在を把握することができる…あの方といえど、例外ではない。
あの方が完全に姿を隠す方法はひとつしかなかった――」
エクシエルは言葉を止め、横たわるキュオ、それを抱えるフィオを見た。
「キュオ、フィオ、あなたたちです。あの方は、自らの半身を天使『キュオ』、
そしてもう半身を、ミカエル様が存在を感じることのできない堕天使『フィオ』として分かち、
そして、魂をラジエルの書に封じたのです。
もしもの災厄が起きた際に、書の力を扱える者に、あの方――
『大天使ラファエル様』の復活を託して」
その言葉に、フィオは驚愕の表情を浮かべた。
「大天使…ラファエル……私と、こいつが…?」
「フィオ…混乱するのも無理はありません。
あの方は秘密を守るために、あなたがたに“記憶”をあたえることはしませんでしたから…」
「記憶……混乱…混乱だって…? そんなもの…」
フィオは腕の中のキュオを見つめた。
自分は気づくと記憶なくこの世界に存在し、自身の存在にどうしようもない違和感を感じていた。
そして、そのありどころを求め、世界を彷徨い続けた。きっと、こいつも――
しかし、今、その心のうちは意外にも静かだった。混乱ももちろんある。
しかしそれよりも強くフィオの心を覆ったのは、不思議なほどの安心感だった。
――ああ、どおりで、こいつを見たとき…
「…ハハハ…そうか…そうだったか…ハハハハハ…!!」
ふいに、沈黙を守っていたミカエルが笑い出した。
下を向きながら笑うその声に刻まれた表情は、長い髪に隠れて伺い知れない。
だが、白き翼の羽々はざわめき、纏う空気は禍々しさに満ちていた。
身を震わせてひとしきり笑った後、ミカエルは、ぎろりと二人の天使を見据えた。
「キュオ、フィオ――いや、ラファエルよ…やはりキサマはどこまでも気に食わん。
己だけは主の真の理解者だと…己は主にとって特別な存在だと…そう思い上がっているな…?」
そして、屈強な片腕を天に掲げたかと思うと、轟音と共にその掌から眩い光を発した。
「何故主をおひとりにする!
そのような時にこそ、何故我らが手で主をお守りしようとしなかった!
主を隠し、独占しようとするキサマこそが浄化するべき諸悪の穢れ! 殲滅すべき混乱の種!
どうせ片割れは死にかけている…忌々しい真の姿に戻る前に、神の意志たるこの私が、
ご衰弱なされている主に替わり神罰を下してやろう!
そして今度こそ……ラジエルの書を我が物とし、主をお迎えに上がろう!!」
その咆哮に応えるように、地の果てまでも広がる天使の軍勢が、一斉に集結を始めた。
ミカエルの掌から天へと延びる光の柱、その周囲に無限に集まり続ける白い天使たちの黒い影――
エクシエルはそれらをひたと見据えたまま、剣を抜き放った。
「…やはり、お分かり頂けませんでしたか…
ソロモン王、できるだけ時間は稼ぎますが、あまり長くは持ちません。
ラファエル様を頼みます。 …神の天兵よ、今一度、共に戦ってくれますか?」
その言葉に、傷ついたマステマがゆっくりと身を起こし、ニヤリと牙を見せる。
「…無論です…神を語った大罪人に、罰を与える…それが私という存在なのですから」
「そんな… お二人だけでなんて、とても無茶です…!」
幼き王の制止に笑顔で返し、エクシエルとマステマは武器を構え、
迫り来る軍勢に向かって飛び上がる。
途方もない数の天使達が、紛れもない殺意を持ってこちらにやってくる――
幼き王は、この異様な状況に飲まれかけてしまっていた。
そのとき、軍勢から放たれた矢の一本が、幼き王めがけて飛んだ。
「おい! あぶな――」
フィオが身を起こしかばおうとするが、矢はそれより早く凶刃を刻まんとする。
――ガキィィン!!
火花と共にはじかれる矢――幼き王の前に立つふたつの影。
「も~あっぶないわねぇ! こんなペッタンコ~なちっちゃ~い子に向かって何してくれてんの!?
ていうか、ソロモン! おつかい頼もうと思ったら消えてるし、こんなところで何してんのよ~?」
「…感心しませんね、ソロモン。
遠出をする際は、必ず行き先と帰宅する時刻を言っていくように教えたはずですよ」
「だ…第56公爵さん! 15公爵さん…!!」
王への攻撃を涼しい顔で跳ね除けたのは、二人の美しき悪魔だった。
その姿を見た瞬間、安堵したのか、泣きそうな顔になる幼き王。
悪魔の一人は「はいはい、も~大丈夫よ~、怖かったわね~」と王の頭を撫でると、
驚いたように周囲の様子を伺った。
「…ていうか何よこれ、何の騒ぎなの?
何でもいいけど、ソロモンには危なすぎるんじゃない? さっさと帰りましょ」
「そ…それはだめです! 帰れません!」
「はぁ~? なに言ってんのよ…うわ…とうとう反抗期きちゃった!?」
「ソロモン… グレモリーの言う通りです。これほどの天使の軍勢、危険すぎます」
「す、すみません…今は詳しくお話してる時間がないのです…!
とにかく、だめなものはだめなんです…!
お友達の天使さまたちが、必死に戦って、時間を稼いでくれていて…
その間に、わたしはやらなきゃならないことがあるんです…! この戦いを、止めるために…
これは、王様としての…いいえ、とう様からこの魔導書を預かったわたしの使命なんです!!」
必死な王を見て、悪魔たちはぱちぱちと目を瞬き、そして、はぁ~、とため息をついた。
「しょ~がないわね~ あんたがこんなにわがまま言うの珍しいし…
要は時間が稼げればいいってことね?」
「…ふぇ…? あ、はい…」
「そうとくればソロモン、私達だけでは心許ありません。
多勢には多勢をもって応じる必要があります。…72柱を統べる王として…わかりますね?」
「…15公爵さん…はい!!」
全身が赤く染まった悪魔はそう言うと、騎蛇を呼び出し、手にした槍を構え乗り込む。
同時にもう一人の悪魔は魔装を呼び出すと、煌びやかな翼をまとい、
共に天使の軍勢の前に躍り出た。
「私を誰と心得る! 第15魔槍公爵、エリゴスである!」
「第56公爵、魔蝶貴婦人グレモリーよ~ 踏まれたい人この指と~まれ♡」
その背中を見て、幼き王は意を決したように魔導書を開き、振り向いた。
見ると、フィオが驚いたような顔をしている。
「…今のは悪魔かい? …それも随分と上級な……お前は一体…」
「わたしは王様ですよ。エヘヘ…そして、あのふたりはわたしの大切なお友達なんです」
幼き王は誇らしげに微笑むと、フィオのそばにしゃがみ込み、真剣な面持ちで、二人を見た。
「…フィオさん…キュオさん…わたし…」
「…ああ、わかってるよ。やってくれ。こんな胸糞悪い戦いはもううんざりさ…
ラファエルってのがどんなにすごいもんか、当の私は知らないけどね。
それに…私たちはきっと、ずっと心に欠けたものを感じてた…
たぶん、ひとつになりたかったのさ」
「…フィオさん…」
この戦いを終わらせたいのは、幼き王も同じだった。
だが、二人をひとつにするということは、キュオとフィオという存在が、
この世から消えること――決心はしたものの、
そうしてしまうことに幼き王はまだ戸惑っているようだった。
その気持ちを察したフィオは、ふっと表情を和らげて言った。
「…あんたは優しいね。
けど、どの道キュオはもう消えかけてる。キュオを…私たちを、助けてくれないか?」
フィオの言葉と共に、キュオもまたうっすらと目を開けて幼き王に微笑みかける。
幼き王は、何かをこらえるように口をきゅっと結んだあと、
ふたりの微笑みに答えるように力強く頷いた。
「任せてください! 絶対成功させますよ!
わたしは、こんな日のために、ず~っと勉強してきたんですから!」
そして、魔導書のページをいくつかめくると、大きく息を吸い、詠唱を始めた。
魔導書――ラジエルの書から呪印の光が広がっていく。
その光に包まれながら、フィオはキュオの頭を膝に乗せ、キュオはフィオの手を握った。
その上空では、ミカエル率いる天使の軍勢と、
エクシエル、マステマ、エリゴス、グレモリーの四人が、激しい戦いを繰り広げていた。
「ゆけ! 罪天使ラファエルの復活を許すな!」
ミカエルの号令に従い、さらに多くの天使たちが押し寄せる。
四人の天使と悪魔は、凄まじい勢いで迫り来る天使たちを撃ち落としていくが、所詮は多勢に無勢、
それらの撃をかいくぐった十数人の天使たちが、儀式を続ける幼き王へと飛ぶ。
「ソロモン!」
エリゴスが、数人の天使をまとめて槍で貫きつつ叫んだ。
「だいじょうぶですよ!」
幼き王はにっこり笑うと、詠唱を唱えながら、おもむろに片手で空中に魔法陣を描く。
「第8公爵さん、第14公爵さんお願いします!」
すると、魔法陣より弓を構えた二柱の悪魔が現れる。
「…あ~らら、天使だってよバルバトス」
「フン、シャーウッドの鷹を狩るよりは楽そうだ」
悪魔たちは狩りにでも来たかのような軽口をたたくと、逆巻く豪雨のような矢を放ち、
迫る天使たちを次々と射落としていく。
しかし後方より、さらなる天使の軍勢が現れ、幼き王の元へと降下を開始する。
「あわわわ、あっちもこっちも…こういうときは落ちついて…
第9王さん、第21総裁さん、第55君主さん、第57総裁さん作戦を立てましょう!」
幼き王は、慌てて地面に魔法陣を描いた。するとそこからさらに四人の悪魔が現れる。
「やぁやぁ、ソロモンちゃんだぁ、ほ~らほら、困ってるみたいだよ~ オロバス君」
「やれやれ…面倒な… オセ、貴様が仕切れ」
4人の悪魔はささっとひとことふたこと言葉を交わすと、ソロモンに伝えた。
「ソロモンちゃん、『7時の方向、仰角40度に水攻め、そしたら炎で焼け、
あとは予知処理でもしとけ』とオロバス君が言ってるよ」
「はい! …では、第30侯爵さん、第41侯爵さん、第42公爵さん、第1王代理さん!
お水おねがいします!」
「ちょっとソロモン! いきなり呼ばないでっていってるでしょ!」
「それにしては準備万端じゃないですか。あなたもだいぶ悪魔が板についてきたと見えますね」
「悪魔!? アイドルよア・イ・ド・ル! あんただってバンドとかで忙しいんじゃないの?」
「私はめんどくさいことが嫌い、かつ完璧主義ですので、
逆にこういった要件で気がかりを残すは嫌なんですよ。
そんなわけで速やかに片付けますよ。今日はしゃんとしてくださいねウェパルさん」
「はぁ~い、じゃあがんばって、お水だすんだよ~ フォルネースくん ゴ~!」
現れた悪魔たちが巨大な魔法陣をかまえると、洪水のような激流が空中に向かって噴き出され、
大量の天使たちの羽を鉛のように重くして墜落させていく。
「おつかれさまです! 続いて第7侯爵さん…と第34伯爵さんはお休みですね、
では第23公爵さん、第35侯爵さん、第58総裁さん、第68王さん、出番です!」
さらに呼び出された悪魔たちは炎を掲げ、次々と地に落ちた天使たちの翼を焼いていった。
「それでは、第3君主さん、第11公爵さん、第17総裁さん、第22伯爵さん、第32王さん、
第49公爵さん、第52公爵さん、第59侯爵さん!
今儀式がちょっとだけ難しいところなので集中したいのです…予知と作戦お願いします!」
すると、4柱の悪魔たちが魔法陣を組みあげ、瞬時に予知を告げる。
そしてそれをもとに、残りの悪魔たちがすぐさま“真理”に基づいた作戦を告げた。
「2分後ニ真上カラクルゾ、天蓋ヲ作レ」
「ありがとうございます!
では、錬金上手な第28侯爵さん、第39総裁さん、第45伯爵さん、第60侯爵さん、第61王さん…
そうだ第38伯爵さんと第48総裁さんも、かたーい屋根をつくってください!」
呼び出された悪魔たちは、何もない宙空に様々な鉱石を生み出し、
瞬く間に巨大なドームを作りだす。
きっかり2分後、見えない高空より奇襲を仕掛けたはずの天使の軍勢は、
すべて突然現れたドームに阻まれ跳ね返されてしまった。
「…な、儀式を執り行いながら、あれほどの悪魔たちを瞬時に…アレは何者なのだ…!」
ミカエルは腕を振り上げ、天使の軍団に怒声を轟かせた。
「我らが正義、天軍は無限なり! 小細工はいらぬ、数で一気に押し潰せ!」
ミカエルの号令と共に、巨大な雲のような天使の群れが、
怒涛の勢いで次々とドームに突撃し、覆いかぶさっていく。
隙間なく、すっかり天使たちに覆われ白一色になったドームは、その荷重に耐えきれず、
地響きを立てて崩れ落ちる。
もうもうと砂煙をあげて崩れ落ちていくドームの様子をじっと見つめるミカエル。
「……!!」
次第に砂煙が晴れていくと、そこには結界が張られ、中には大量の悪魔たちが召喚されていた。
そして、その中心に立つ幼き王が勢いよく手を挙げた。
「さぁ、行きますよ~~!
――第6公爵さん、第12君主さん、第27公爵さん、第37侯爵さん、第44侯爵さん、第47爵さん、
第63侯爵さん、第65侯爵さん、第67公爵さん、第71公爵さんたちは、
天使さんたちの心を操って戦意の喪失を!
第2公爵さん、第5総裁さん、第13王さん、第16公爵さん、第19公爵さん、第20王さん、
第24侯爵さん、第25総裁さん、第29公爵さん、第43侯爵さん、第50騎士さん、第51王さん、
第53総裁さん、第62総裁さん、第64公爵さん、第69侯爵さん、第72伯爵さんは、
それぞれの軍団の皆さんと一緒に、それでも戦いをやめない方々の予知と迎撃をお願いします!
第18公爵さん、第33総裁さん、第40伯爵さん、
第70君主さんは傷ついた方々を瞬間移動させてくださいね!
第10総裁さん、第31総裁さん、第36君主さんは、天使さんも悪魔さんも問わずその方々の治療を!
第54公爵さん、第46伯爵さん、ガミジンさん、第26公爵さん、
第66侯爵さんは死んでしまいそうな方々の魂をつなぎとめてください!
それでは悪魔さんたち、よろしくお願いしま~~~す!!」
幼き王が一気にまくしたて号令を出すとともに、結界が解け、
悪魔の群れが一斉に飛び立ってゆく。
残された地上には、幼き王と、その前で輝く光の繭のみ――
その中には、ふたりの天使が抱き合うように浮かんでいた。
繭の中――フィオは、体がじわりと温かくなっていき…やがて、空間に溶けるように、
自分を構成するものがするすると解きほぐれていくのを感じていた――
目の前が真っ白になり、ただ一人、まばゆい光を放つキュオの姿だけが見える――
――フィオ…堕天した私の半身…私は、ずっと渇望していました。あなたとひとつになることを…
――ああ、わかってるよ。私も同じさ…ずっと何かが足りなかったんだ…
他のどんな存在とも違う自分が、ずっと嫌だった…
フィオとキュオは、どちらからともなく手を握りあい、微笑んだ。
なんて満たされた、穏やかな気分なのだろう――
二人は、薄れゆく意識の中で、ただそれだけを思った。
エクシエルは、悪魔たちの戦いに見入っていた。
「すごい… 知賢王ダビデの遺児…まさかこれほどとは…」
「ふふ、結構すごいでしょ? うちのちびっこ」
「グレモリー、手がお留守ですよ!」
「はいはい、エリゴスはお真面目さんよね~」
そんな中、凄まじい勢いで反撃してくる悪魔たちに応戦しながら、ミカエルは顔を歪めた。
「…むぅぅ…! あやつ…本当に人なのか…!? まるでルシフェルの再来ではないか…!!」
現れた悪魔の大軍勢に埋もれ、
地上の幼き王と片割れたちの姿はすっかり見えなくなってしまっている。
胸騒ぎがする…このままでは、本当に奴が――あのラファエルが――!
ミカエルが苛立ちに任せ、目の前の悪魔を討とうと拳を振りあげたその時――
眩い燐光が瞬き、天が、地が、海が、そのすべてが純白の光に染まった。
そして、光が晴れると、戦いに穢れた大地を清めんとばかりに、
美しく輝く純白の羽が舞い広がっていた――その中心で、声がした。
『…さぁ、世界の傷を癒しましょう』
…to be continued
| 身長 |
神のみぞ知る |
| 体重 |
神のみぞ知る |
| 司るもの |
癒し |
| 過去の名 |
ラビエル |
| 四大天使の同僚① |
ミカエル、ガブリエル |
| 四大天使の同僚② |
ウリエル |
| イラストレーター |
カスカベ アキラ |
最終更新:2017年05月21日 08:53