無題:part1 > 768(オールキャラ) 1

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part1>>768


俺の名はサワダ・ユウジ。どこにでもいる普通の高校生だ。
趣味は兵器収集。好きなミサイルはSS-N-22サンバーン艦対艦ミサイル。
ま、クラスの奴からはちょっと危ない奴と思われてるようだが、恋やエッチなことに
興味がある至って正常な青春真っ盛りの日本男児だ。
今日は学校が休みでヒマだったから、北関東の餃子の聖地、宇都宮まで足を
伸ばして、陸上自衛隊宇都宮駐屯地の軍事演習にこっそり忍び込むことにしたんだ。
目的はもちろん、第6地対艦ミサイル連隊に配備されている88式地対艦誘導弾
(SSM-1シーバスター)の奪取だ。
首尾は順調だった。俺は警備の隙を突いてまんまと駐屯地内部に潜入。
弾幕の中をかいくぐって88式地対艦誘導弾を搭載した74式特大型トラックを発見。
草むらに身を隠しながら、トラックに接近した。トラックの運転をしている隊員は
俺の接近に気付いていない。当然さ。奴らは戦争のプロとはいえ、これは軍事演習。
外部の敵がいるなんて想定していない。
俺はまずトラックの死角に回って、いきなりドアを開けた。
驚いた運転隊員は当然抵抗しようとするが、俺の行動は早かった。奴が右手で銃を抜こうと
するのを見て、俺は反射的に奴の右腕に跳び付き腕ひしぎ逆十字固めを極めた。奴の顔が
痛みで歪む。そして間髪入れずに、そのまま両足で奴の首を挟み三角絞めに移る。
しばらくすると、頸動脈を絞めつけられたことで脳への血流が止まり、奴の意識が飛ぶ。

勝った。

俺は気絶した運転隊員を運転席から放り出した。こうしてトラックと88式地対艦誘導弾の強奪に成功した。
だが、問題はここからだった。俺はこのトラックを運転して自宅まで持ち帰ろうとした。
俺は俺の兵器コレクションが増えることが嬉しくて、有頂天になって運転していたんだ。
その時……。

バリバリバリッ!! 
という激しい音と共に、宇都宮名物の雷が俺のトラックに直撃。その瞬間俺は気を失ってしまったんだ。

目が覚めると、俺は見たこともない世界にいた。

人々の服装や街並みは中世ヨーロッパ風。パッと見、電気や自動車は無く、文明的には
相当遅れているようだ。今だに街中を馬だのロバだのが闊歩しており、一見して先進国ではない。
さらに驚いたのは、街全体をぐるりと取り囲む高さ50メートルはあろうかという巨大な壁だ。
こんな大きな壁で何から身を守っているか知らないが、壁など破城鎚や遠投投石器ですぐに
破壊されてしまうことが大昔に明らかになっている。
この国の指導者は馬鹿なんだなあと思うと同時に、こんな壁が残っていることからして平和なんだ
ろうなあと感じられた。

「まあ、これは夢なんだからどうでもいいが……」

俺はそう呟くと、夢なら夢で、この嫌にリアルな夢をエンジョイしてやろうと、トラックから飛び下り、深呼吸を
した。気付けば、この俺様のトラックとミサイルの精巧なフォルムに驚いたのかギャラリーが集まってきていた。
俺はこの見るからに未開の住人である田舎者どもに、この超兵器のすごさをレクチャーしてやることにした。

「ふふふ、これはな88式地対艦誘導弾、略称はSSM-1もしくはシーバスターといって、射程は150km~200km、飛翔速度は時速1150km……」
「おい、こりゃ武器なのか? すげえな、こんなん見たことねえよ」
なんだ、日本語が通じるのか。まあ、俺の夢なんだから当たり前か。
「おい、こいつ東洋人じゃないか?」
ギャラリーの中の一人が突然俺のことを指差して言う。このような辺境では東洋人も珍しいのだろう。俺は得意な顔でそいつに言ってやった。
「いかにも。俺は優秀な東洋人である」
そして、えへんと咳払いをした。
「やっぱり。おい、兄ちゃん。ミカサっていうお前さんと同じ東洋人を呼んでくるからちょっと待っててくれよ。
あいつ、あんたに会ったら喜ぶぜ。なんてったって、自分と親以外の東洋人なんて見たこと無いだろうからな」
一方的にそう言って、そいつは急いで走り去って行った。おそらく、そのミカサとやらを呼びにいったのだろう。
ほう、どうやらこんな辺境にも俺と同じ東洋人がいるらしい。しかし、その東洋人が他の東洋人を見たことが無いなんて。
よほどの辺境なんだな。ここは。
まあ、いい。
それにしても、ミカサだなんて。名前からして、きっと日本人に違いない。
三笠といえば大日本帝国海軍の戦艦で、日露戦争では東郷平八郎らが座乗し、連合艦隊旗艦を務めた名艦だ。
なかなかセンスがある苗字だなあと思うと同時に、やっぱりこれは夢なんだなという思いを強くした。

「おーい兄ちゃん、ミカサを連れて来たぜ」
早いな、もう戻ってきたのか。
男の呼ぶ方を見ると、意外にも若い、美しい女性が男に連れられて来ていた。
「おじさん、何なのこの騒ぎは?」
その女が大勢のギャラリーが集まっている様子をぐるりと見回して問う。
「いやー、俺もよくわかんねえんだが、変な東洋人がものすげえ鉄の固まりと一緒に突然広場に現れたんだ……」
「東洋人……? 鉄の固まり……?」
興奮して訳の分からないことを喋っている親父の説明を聞いて、女は困惑しているようだった。俺はみかねて
声をかけてやることにした。

「おーい、あんたがミカサか?」
「えっ……?」
ミカサという女は俺のことを見て、キョトンとしている。
「何キョトンとしてんだよ? あんた日本人だろ?」
「えっ……? えっ……?」
そう言って俺が最大限分かりやすくシンプルに話しかけてやってるのに、この女は目をパチクリさせるばかりで何も言いやがらない。
なんて礼儀知らずな奴だ。俺はこの礼儀知らずなコミュ障女に、多分年上の男としてビシッと一発かましてやろうかと思った。
こういうことは最初が肝心だからだ。ちょっと可愛い先進国の女の子だからといって普段余程ちやほやされているんだろう。
こういう娘が最近日本でも増えているという。ここは舐められないように、強く出ないと……。
「ほ……、本当に東洋人……?」
おっと、やっと言葉を話したぞ。と思ったら、「本当に東洋人か?」ときやがった。疑り深い女だ。
「そうだよ。見ての通り俺は東洋人。東洋の日本人だ。あんたもそうなんだろう?」
「信じられない……、東洋人は絶滅したはずなのに……」
おいおい、こいつはコミュ障なんて甘いもんじゃねぇ。こりゃ、とんだメンヘラちゃんだぜ。こういうタイプの人間にはあまり関わり
たくはないが、こいつ以外に日本人はいなさそうだしな。これも何かの縁だし、ちょっと相手してやるか。
「あのな、東洋人がなんで絶滅するんだよ? アメリカがトチ狂って東アジア地域に保有する全核兵器を撃ち込みでもしたのか?」
「アメリカ……? 核兵器……? 何それ?」
「なんだよ、アメリカも核兵器も知らないのか?」
「巨人……、巨人のせいで私達東洋人は絶滅したのよ!」
こいつは想像以上だ。早くこの女から離れないとやばいかもしれない。とりあえず俺は話題を変えることにした。
「そうだ、そんなことより……」
「そうそう、そういえばさっきから腹がペコペコなんだ。どっかに飯が食えるところはないか?」
「ああ、それなら……」
とりあえず話に乗ってきてくれたようでホッとする。あのまま絶滅がどうとか、巨人がどうとか話してきたら、俺は全速力で逃げ出して
いたかもしれない。
「それなら、ここから少し行ったところに食堂がある。私も一緒に行くから。あなたと少し話もしてみたいし」

そう言われて俺は少し後悔した。この女から離れるどころか、思いっきり接近する方向に話が進んでるじゃねーか。だが、こいつもメンヘラ
とはいえ現地の人間だからな。少しは役に立つかもしれない。そういえば俺、この世界の金持ってねーぞ。いざとなったらこのメンヘラ女に
金を出させてやる。俺が先に店を出てしまえば、こいつが払うしかなくなるだろうからな。うむ、俺って天才。
とにかく腹が減った。さっさと食い物屋に向けて出発だ。
俺はトラックのドアを開けて中に乗り込んだ。そして、外にいるミカサとかいう女に呼びかける。
「ふっ、乗れよ」
「な……、なにこれ!?」
ミカサとかいう女は大袈裟に驚いている。まあ、一般人のしかも女なら見たことが無くて当たり前だろうな。なんせ対艦ミサイル搭載の軍用車両だ。
「驚く気持ちは分かるが、俺は今非常に腹が減っていてな。一刻も早く食にありつけたいんだ。説明は後でゆっくりしてやるから、早く乗れよ」
「わ……わかったわ……」
そう言って、恐る恐るトラックに乗り込むミカサ。
ミカサが座席に着いたのを確認すると、俺は勢いよくキーを回して、トラックのエンジンをかけた。
「きゃあっ……!」
それだけのことで大きな悲鳴を上げるミカサ。
そんなことに構わず、俺はアクセルを踏み込み、トラックを動かす。
「おい、どう行けばいいんだ?」
「あっ……、ああ……」
ミカサは相当動揺しながら、行き先を誘導する。
「あそこの角を右……、そこを左……、そう、ここを右……、着いたわ、ここよ」
トラックを止めて、ミカサが指差す方を見ると、それなりに大きな建物に、レストラン・ワグナーと書かれた看板が見えた。
「ふむ、ドイツ料理か。悪くない」
俺がそう言うと、ミカサは不思議そうな目を俺に向けて言った。
「あなたがさっきから何を言っているのかよく解らないわ」
まあ、俺もメンヘラに解ってもらおうとは思っちゃいないが。とにかく早く飯を食ってしまおう。腹が減っては戦は出来ぬ、だからな。

「いらっしゃい」
店内に入ると、店主の威勢の良い声が響いた。
「どうぞ、こちらへ」
ウェイトレスに導かれ、窓際の一番良い席に案内される。
「ふう」
俺は案内された椅子に座り、一息入れる。
豪華な絨毯にシャンデリア……、のようなものはないが、カントリーチックななかなか洒落たレストランだ。
値段もきっとそれなりに高いに違いない。ふふふ、自分が金を出すとも知らずに、馬鹿な女だ。
いや、しかし、店内の人間の反応を見るに、実はこの女、意外と皆から一目置かれているようだ。
挨拶する者、遠目に見ているだけの者、皆一様にこの女に対して何らかの反応を示すが、無視する者は一人もいない。
「よう、ミカサ、今日はいつものメンバーじゃないんだな」
驚いたことに、店主が自ら注文を聞きに来た。
「うん、マスター、紹介するわ。彼は……」
と言って、ミカサは言葉に詰まる。そういえばまだ名前を教えてなかった。
「サワダ ユウジだ」
「そうそう、サワダ ユウジ。私と同じ東洋人なの」
それを聞いて、気前の良さそうな店主は少し驚いた顔をした。
「なんだって? 東洋人? お前さん以外は絶滅したんじゃなかったのか?」
絶滅……、今絶滅と言ったか?
「そうなんだけど……彼は確かに東洋人よ。もしかしたら私と同じ生き残りなのかも」
「ほーっ、そりゃあ……、すげぇな」
店主は感心したような顔で俺のことをしばらく観察すると、気を取り直したように言った。
「そうだ、ご注文は?」
「そうね、私はいつものを」
ミカサはさらりと答えた。
「はいよ、いつものビーフステーキね」
それを聞いて俺は軽い衝撃を受ける。な、なんだと、「いつもの」がビフテキか? この女ただ者じゃねえぞ。
これじゃあ俺は並の注文が出来ねえじゃねえか。グラタン……、いやダメだ。グラタンじゃ負けちまう。
くそっ、カレーじゃ完敗だ。俺は妙なライバル心を刺激された。
何か……、何か無いか? ステーキに勝てるもの……。そうだ!
「そ、それじゃトンカツを……」
……微妙か? いや、負けてはいないはずだ。しかし、これでは勝負から逃げただけかも……。
「トンカツ……? そんなものはうちにはねえよ」
ガーン
「じゃ……、じゃあ俺もビーフステーキで……」
「はいよ、じゃあちょっと待ってな」
そう言って店主は奥に入っていった。

「ところで……」
俺は気を取り直してミカサとの会話を再開する。
「まだ名前を聞いてなかったよな。上の名前はミカサで、下の名前は何ていうんだ?」
俺がそう聞くと、ミカサは少し微笑んで答えた。
「ミカサは上の名前じゃないわ。下の名前。上の名前はアッカーマン」
「なに? ミカサは苗字じゃなかったのか?」
「そうよ、ミカサが私の名前」
「そりゃあ、センスのある親だな。おい」
「えっ?」
「いや、なんでもないんだ。良い名前だってことだよ」
そう言ったら、ミカサは心なしか顔を赤くしたように見えた。
「そう……。ありがとう」
まあ、こいつに日露戦争がどうとか、東郷平八郎がどうとか言っても解らないだろうからな。
「あなたは、上の名前がユウジ、下の名前がサワダよね?」
俺は口に含んでいた水を吹き出しそうになったが、こらえて飲み込んだ。そうしたら水が気管に
入ったので、むせて咳き込んだ。
「いや、逆だ。上の名前がサワダ、下の名前がユウジだ」
「そう。じゃあ、これからはユウジと呼ばせてもらうわ」
「それなら、俺はミカサと呼ばせてもらってもいいかい?」
「構わないわ」
「それじゃ、お互い自己紹介が終わったところで……」
「選択肢 →ホテルでも行くか?
  ホテルだろ、ホテル
  いきなり胸を揉む 」
って、おい、何だよこの選択肢は? そういうのじゃねーんだよ。これは。
「あなた、さっきから何独り言を言っているの? ホテルがどうとか聞こえたけど」
「い、いや、あれは、その……なんだ? そうそう、俺、今日寝るところがないから、早くホテルを
探さなきゃな~、と思っただけだよ。ホントだぜ?」
「そう……。それなら、私が寝るところを用意してあげるわ」
「え……、ええっ!?」
「どうしたの、何か問題が?」
「い、いやそうじゃなくて……、すごく積極的……、じゃなくて、すごく有難いなあって……」
俺は何故かしどろもどろになっているが、ミカサは至って冷静だ。
「どうやらすごい訳ありなんでしょ? あなた」
まるで、何もかも解っているかのようにそう言う。
「あ……、ああ……」
今の俺には、ミカサがメンヘラだなんていう気持ちは微塵も無くなっていた。

「つまり、話を要約するとこういうことね……」
「あなたは日本という国の人で、自動車という馬のように走る機械に乗っていたら、雷に打たれて意識を失い
気付いたらここにいた……。と」
「まあ、そういうことだ」
別に嘘は言っちゃいないぜ。あのミサイルと、トラックに積まれてある武器のことは伏せておいたがな。
「信じられない……」
ミカサは真剣に考え込んでいる様子だったが、俺は至って気楽だ。なんせこれは夢なんだから。
「信じられないも何も、これは俺が気を失って見ている夢なんだから。そのへんで適当に遊んでりゃそのうち覚めるんだよ
君も俺の夢の世界の住人。わかる? ユーアンダスタン?」
俺がそう言うと、ミカサは蒼白な顔で俺のことを見て言った」
「あなた……、これが夢だと思ってるの……?」
「夢なんだろ?」
俺のあまりのお気楽さに、ミカサが呆れたようにため息をついて言った。
「夢じゃないのよ。これは」
「またまた」
「あのね……」
「ご冗談がキツイっすよ! ア ネ ゴ!」
そう言った瞬間、俺の顔面に向けて、ミカサの渾身の平手打ちが飛んできた。
バシィッ!!!
女性の細腕? いや、鍛えあげられたそれなりに筋肉質の腕が、女性特有のしなやかさを加えて鞭のようにしなり、
俺の左頬を刺すように打ち据える。
「いぃっ、てぇぇえええええ!!!」
信じられないほどの激痛が俺の顔面を覆い尽くす。
俺は地面に転がってのたうち回りたくなったが、ミカサや周囲の人間の手前、すんでのところでそれだけは堪えた。
「な、何すんだよ!!」
「ごめん。手加減したんだけど」
ミカサは平然とそんなことを言う。
「あのな、いきなりこんなことするって……!」
「本当にごめん。ここまで痛がるなんて思ってなかった」
ミカサは両手を合わせて謝っている。俺はまだ少し痛みが残っていたが、これ以上怒るのはやめることにした。
と同時に、重大なことに気が付いた。
「あれ? なあ……、こんなに痛いのに目が覚めないってことは……」
俺とミカサはお互いに目を見合わせた。そして同時に言葉を発した。
「夢じゃない!」
ガーン!
俺はショックを受けて、その場に膝を付いて崩れ落ちた。

「どう? 少しは落ち着いてきた?」
ミカサが心配して俺に呼びかける。
「ああ……」
俺はショックでレストランのテーブルに突っ伏している。
「少しは元気が出てきたみたいね」
「ああ……」
「……」
しばしの沈黙。
「それなら、今、私達の眼前にある問題に立ち向かうことが出来る?」
「どうかな……?」
「そう……、私たちは二人共……」
再び、眼前のミカサと目を見合わせて言う。
「金が無い」
ゴクリ
「……おい。俺は異世界からいきなり飛ばされて来たから金が無いのは当然だとして、
なんでお前まで金持ってないんだよ?」
「お金なら持ってるわ……少しだけど。ただ、足りないだけ……」
「金が無いならなんでこんな高い店に来るんだよ」
「うっかりしていたのよ……」
俺は頭を抱えてため息を吐いた。
「注文した時に、「いつもの」とか言って常連っぽくしてたじゃないか」
「滅多に来ないけど、極稀に来る時にいつもビーフステーキを注文していたの。私のような新兵の給料でしょっちゅう
来れるところじゃないわ」
ガクッ
俺はもう、どうすることも出来ず、うなだれてしまった。
「うーん、やっぱり正直にマスターに話して謝るしかないか……」
ミカサがそんなことを呟いていたら、入り口から小柄な、黒髪の目付きが悪い美男子風の男が入ってきて、
俺たちに近づいてきた。
ミカサはその男を発見して、少し驚いていたようだが、その男はつかつかと俺たちのそばに来て、小声で話しかけてきた。
「おい、お前ら……、もしかして金が無いんじゃないだろうな?」

俺はこの男が何者か分からず、どうしたらいいのか分からないので、ミカサの方を見た。
ミカサは極力その男と目を合わさないように、視線を右下の方へ逸らしながら、ぼそぼそと話し始めた。
「申し訳ありません、リヴァイ兵士長……」
「無いんだな?」
リヴァイ兵士長と呼ばれたこの男は、ミカサをぎょろりと睨みつけている。ミカサは視線を逸らしながら……、
「はい」
と答えた。
「クッ……。この店はな、俺の給料でもけっこうキツいんだぞ……?」
ミカサは再び、
「申し訳ありません」
と謝った。
「まあいい、今回は俺が払っておいてやる」
「ありがとうございます」
ミカサは礼を言って、リヴァイ兵士長と、俺と共に店を出た。
「聞いておられたんですね?」
ミカサがリヴァイに話しかける。
「ああ、話は全部聞かせてもらった」
リヴァイが答えた。
それを聞いて、俺は「ああ、そうか、この男は俺達が座っていた席のそばにある窓の、外側の窓枠の下で縮こまって隠れながら、
俺たちの話を盗み聞きしていたんだな」と思って、その様子を想像したら微笑ましい気持ちになった。
「なぜ私たちの話を?」
ミカサが続けて問う。
「ただ事じゃないと思ったからだ」
リヴァイがまたもシンプルに答える。
「なぜただ事じゃないと?」
「そんな事は簡単だ」
リヴァイがミカサの顔をじっと見ながら答える。
「お前がエレン以外の男と二人で飯食ってたら誰だってただ事じゃないと思うよ」
それを聞いた途端、ミカサは少しうつむいて赤くなった。

「ところで彼は……」
ミカサが俺の方を指しながらリヴァイに問うた。
「そうだな、しばらく調査兵団で身元を預かることになるだろう。このデカブツにも興味があるしな」
リヴァイがそう言いながら、俺のトラックをポンと叩く。
「ボーン!」
「うわっ!」
俺が冗談で大声を出したら、リヴァイは慌てて手を引っ込めた。
「すみません、冗談です」
俺が謝ったら、リヴァイは気を取り直して言った。
「おかしな野郎だ……。おい、ミカサ」
「はい」
「とりあえずこいつの事は極秘だ。誰にも言うな。ま、これだけ大勢目撃者がいれば隠し通すことは不可能だろうが、
俺がいいと言うまでは誰にも言うな。もちろん、エレンやアルミンにもだ」
「了解しました」
そうして俺は調査兵団という所に連れて行かれた。トラックにはカバーを被せて押して運んだ。

「にわかには信じ難い話だな」
ここは調査兵団の団長室。リヴァイの説明を聞いた後、エルヴィンがそう呟いた。
「だが、証拠は十分にある」
リヴァイが続けて言う。
「あの、巨大な動く機械……。あんなものはこの世界の技術で作ることは絶対に不可能だ。
それに奴が東洋人であること。壁の内部にミカサ以外の東洋人はいない。これも何年も前から
確認されている情報だ」
エルヴィンは机に肘を付いて、しばらく考えこんでからゆっくりと口を開いた。
「とにかく、今日のところは彼に個室を用意して、ゆっくりと休ませてやってくれ。後のことはどうするか、これから
考えるとしよう」
「了解だ、エルヴィン」

「ふう、やっと一息付けるぜ」
調査兵団の兵舎の一室を割り当てられた俺は、すぐさまベッドに寝転がった。
ふかふかという訳にはいかないが、悪くないベッドだ。部屋の大きさは6畳ほどはあり、まあ一人なら狭くはない。
こんな個室を俺のために用意してくれるなんて、あの吊り目の兄ちゃん、結構イイ奴かもしれないな。
俺? 俺はイイ奴じゃあないぞ。ククク……俺が「いい人」なわけねえじゃねぇか……!
というのが俺の尊敬する遠藤社長の言葉だ。

コンコン(ドアをノックする音)

おっと、馬鹿なことを考えていたら誰か来たようだ。
一応失礼が無いように身体を起こし、ベッドに腰をかける。
「開いてるぜ、入りなよ」

「失礼します」
ガチャ

ドアノブを回す音がして、金髪の小さな女の子が中に入って来た。
その女の子を見て俺は、
「う、うわああああっ!!!!」
と思わず大声で叫び声を上げてしまった。
「きゃっ!!」
突然のことに驚いて悲鳴を上げる女の子。

「ど……、どうされたんですか!?」
女の子が心配して俺に聞いてくる。
「あ、ああ、なんだ人間か」
「えっ?」
「いや、天使が部屋の中に入ってきたかと思ったんだ」
それを聞いて、女の子はクスクスと笑った。
「天使って私のことですか? サワダさんってお世辞が上手なんですね」
「いや、ははは、本当にそう思ったんだ」
「私はクリスタ・レンズと言います。今年からこの部隊に入った新人兵士です。
団長からサワダさんにお食事をお届けするようにと言われて来ました」
クリスタ・レンズと名乗ったこの可愛らしい新人兵士は、意外にもしっかり者のようで、礼儀正しく
自己紹介をした。
「ああ、そうかい。じゃあ、その辺に置いておいてくれよ」
俺はそう言って、ベッドサイドの小さなチェストを指差した。

「はい!」
クリスタは元気に返事をして、そこに食事を運ぶ……、っと!
「きゃっ」
あろうことか、床に躓いてしまい転びそうになるクリスタ。
「おい、大丈夫か」
それを寸でのところで支える俺。
「は……、はい……」
うっ……、気付けばすごい密着してしまった。向かい合う形で彼女の両肩を支えている俺。
うわっ、近くで見ると、ますます可愛いな。なんだこれ、本当に人間か? 金色のさらっさらの髪、
目が大きくて、瞳の色は綺麗な青。どことなしに良い匂いがするし、天使だとしか思えん。
「あ……、あの……」
こんな可愛い女の子と、こんなに密着したら、やることは一つだよな。そうだよ、アレだよ。
「選択肢 →キスをする
  キスを釣る
  寄付をする」
よっしゃ来た! ここはもちろん選択肢1「キスをする」だよな。よし、キスをするぞ。さあ。
「あの……」
あれ? なんでだ? キス出来ないぞ。キスだよ、早く。おい、なんだったんだよあの選択肢は。
「あの……、さっきから独り言を話されているようですが、どうかしたんですか?」
うわっ、時間切れか。クソッ、あの選択肢LIPS搭載型だったのか。
「あ、ははは……、いや、何でも無いんだ。どうやら、まだフラグが立ってないっていうか、
キスを釣ったり、寄付をしたりという強制イベントをこなさきゃならないっていうか……」
「そんないきなりキスされたら、私困ってしまうんですけど……」
うっ、聞いてたのか俺の心の声を。
「あ……、ああ、そうだよね。そういうのはちゃんと順序を追ってやらなきゃ駄目だよね」
思いっきり不審な目でジトーッと俺の目を見るクリスタ。
警戒されてしまったか。と思ったら、突然彼女の顔が笑顔に変わった。
「優しい人なんですね、サワダさんって」

「えっ、何で?」
俺はわけが分からずクリスタに問う。
「私をリラックスさせるために、冗談を言ってくれたんでしょ?」
「あ、ああ、そうだよ。バレたか。(本当はそんなこと考えてないんだけど)」
「実は私、悩んでたから……。やっぱり顔に出ちゃうのかな」
「(いや、曇り一つ無いほど君の顔は美しいぜ)」
「やっぱり私って軍隊に向いてないのかなあ……」
「(君はアイドルに向いてるぜ)」
「実は私、この職場になかなか馴染めなくて……。友達も……」
「まあ寂しくなったらいつでも来いよ。俺でよければ相手してやるぜ」
「本当? ありがとう」
クリスタはにこりと笑って言った。
「それと俺のことはユウジでいい。サワダじゃ他人行儀だ。」
「うん、わかった。ユウジ。それじゃ食べ終わったみたいだからお皿持っていくね」
おっと、いつの間にか飯を食い終わっていたんだな。
「ああ、頼むよ」
「それじゃまた明日も会おうね。バイバイ、ユウジ。おやすみなさい」
そう言ってクリスタは去っていった。
ふむ、一応ハニートラップの可能性はあり……か。しかしな、団長、もしこれがハニートラップなら、
そのハニートラップ、いただきだぜ。
それにしても、やはりあんな小さな女の子が軍隊で馴染めないという状況は想像に難くない。友達がなかなか出来ない
というのも事実だろう。あんな可愛い娘、高嶺の花かと思ったが……、これはもしかすればもしかすると意外と楽に……、
いけるか?
その夜、俺は立場も忘れて、クリスタちゃんとのアバンチュールのことばかり考えていた。

最終更新:2012年10月01日 23:11
ツールボックス

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