「記憶・弐」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

記憶・弐 - (2011/11/07 (月) 00:15:07) の編集履歴(バックアップ)


ホムンクルス…

その言葉を聞いた瞬間…

何かが脳裏を過ぎった…


「…何の事だ?」
『……本当に自分が何なのかも忘れているみたいね』
「……俺の仕事の邪魔をした礼はさせてもらうぞ?」


俺は相打ちを覚悟で彼女の心臓を狙った…

そして…

彼女も同じだった…


「…う」
『これで終わりだ…』


互いの胸に鮮血が飛び散り…

腕を伝って下へと落ちていく…

再生能力の無いあの女が失血死するのは時間の問題だった…

だが、再生能力が無いなど初めから確信していた俺も愚かだった…

考えても見ればあの暗闇で俺の動きを察知し追ってきたのだ…

それなりの勝算がなければ追うことなど考えない筈だ…

互いの腕が引き抜かれたとき…

真っ先に倒れたのは俺の方だった…

彼女は穴の空いた場所を抑えながら俺を見ていた…

そこで意識が途切れていった…

そして次に目覚めた時…

俺が居たのは生活感のある部屋だった…



「ここは…」


フローリングの床に観葉植物が飾られ…

わずかな収納家具とシングルベッドの置かれたシンプルな部屋…

ベッドに寝かされていた私は体を動かし起き上がる…

装備一式は近くの棚に置かれていた…

無用心にも程がある…

部屋のドアを開け…

玄関と繋がる廊下を進むとリビングに出た…

そこに彼女が居た…

プレートタイプのディスプレイからの映像を見ており…

それはあの襲撃についてだった…

彼女はそれを悪意を秘めた笑みを浮かべつつ食事を取っていた…


「…あんな場所に証拠を隠しているからよ」
『…貴様、どういうつもりだ?』
「起きたんだ…怪我も治ったみたいだし…後、装備には一切手を触れてないから安心して…まあ…服を直すのにちょっと弄ったけど…」
『敵である俺を助けて何の得がある…』
「あったよ…」
『何?』
「貴方を雇っていた奴ら国際共通の指名手配されている暗殺集団…貴方のお目当ての相手と一緒に今朝お縄に付いてもらったわ…」
『……あれから何日経った?』
「かれこれ三日だね…怪我と一緒に妙な病気も治療させてもらったわ…」
『…!』
「それにしても全身が石になる病気なんて…呪術でもなかったから驚いたけど…」
『……俺をどうするつもりだ?』
「自由…どこにでも行っていいよ」
『…』
「貴方はもう自由だから…誰にも縛られずに…どこにでも…ただ…」
『何だ…』
「貴方を治す時にどうしてもこれだけは避けられなかった…」
『何だ…これは?』

彼女に手渡されたのは小刀…鞘に収まれたのは結晶の刃だった…

「恥ずかしいと思うけど…それを持って…テックセッターって言って」
『何故、そのようなこと…』
「いいから…」
『テックセッター』

妙な刃物を持ちそして言葉を言えと言われ…

仕方がなく言霊を紡ぐ…

一瞬まばゆい閃光が目処前を覆う…

気づいた時には装甲をまとっていた…

『な、何だこれは!?』
「私の血液はあらゆる病や怪我に効くの…ただ…そんな能力を与えてしまうけど…」
『血を与えたのか…俺に…』
「うん…」
『…そうか』
「迷惑だと思った…」
『…』
「だけど…私は…」
『……偽善者だな』
「…」
『それでも助けたいと願う気持ちは本当だったのだろう?』
「…」
『それに俺はお前に救われた身だ…』
「…」
『俺にはもう行き場もない…ならば、お前に仕えさせてくれ…』
「えっ…?」
『それがお前が俺を助けた罪滅しだ…お前が俺を活かせ…』


それが俺と彼女の出逢いと契約だった…

=終=
目安箱バナー