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特異点F ③ - (2017/09/02 (土) 21:33:19) の編集履歴(バックアップ)


2004年 冬木


「黒いセイバー、キャスター共に消滅しました。……私達の勝利、なのでしょうか?」
「う~ん……」

何とも答え辛いマリアは、オルガマリーの助け船を期待したが、彼女は何やらブツブツと言って、こちらの言葉は耳にすら入っていない。

「冠位指定(グランドオーダー)……あのサーヴァントがどうしてその呼称を……?」
「所長? どうしたんですか?」
「え……あぁ、そうね。よくやったわ。あなた達」

どうにも様子がおかしかったが、オルガマリーの「ここでミッションは終了とします」の一言で纏められてしまった。
納得はしてないが、この場で一番立場が上なのはオルガマリーだ。
変に勘ぐって機嫌を損なうには後々のことを考えるとリスクが高い。

「そ、そうだ、マシュ。あなたのその宝具の名前は何だったの?」
「い、いえ、それが私にもまだよくわかりません」
「なら、私が今、考えてあげるわ……そうねぇ、うん、人理の礎(ロード・カルデアス)ってのはどう? あなたにピッタリだと思うわ」
「は、はい。ありがとうございます」

戸惑いながらもマシュは受け入れた。デミ・サーヴァントでも宝具に名前がないとどうにも使い辛いという心境からだろう。

「っ! マスター! あそこに人が」

突然、そんなことを言ったのはアルテラだった。その場にいた全員がアルテラが向いている方へと目を映す。
すると、そこに確かに人はいた。そして、それは良く知る人物だった。

「レフ・・・・・」

感極まったオルガマリーが声を思わず漏らす。
レフ・ライノール。
彼もまた、あの爆発に巻き込まれてた人だった。
そんな彼の手には“聖杯”らしき結晶がある。
今頃現れたタイミングといい、明らかに異常だ。
そんな異常な状態なのに、オルガマリーは、マリアやマシュの制止の声も聞かずにレフに駆け寄っていく。

「いやぁ、まさか君達がここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。やぁ、オルガ、君も大変だったようだね」
「そうなの! 管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアには帰れないし! 予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった! でもいいの、あなたが生きていて……あなたがいれば何とかなるわよね?」
「あぁ、もちろんだとも。本当に予想外の事ばかりで頭にくる。その中で最も予想外なのが君だよ、オルガ」
「え?」

オルガマリーが制止はした。レフの言葉に畏怖を感じ始めたのだ。

「爆弾は君の足元に設置したのに、まさか生きているなんて」

オルガマリーの目が見開いた。明確に動揺して始めている。

「レ、レフ? そ、それはどういう、意味?」
「いや、生きている、というのは違うな。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね。ここにいる君はただの残留思念とうところか? だが、君にとってはめでたいのかもしれないね。生前の君は、レイシフト適性がなかっただろう? 肉体があったままでは転移できない」

今のオルガマリーに所長としての威厳はない。幼子のように怯え、震えている一人の女性の姿だけだ。

「わかるかな? 君は死んだことで初めて、あれほど切望した適性を手に入れたんだ」

だからカルデアにも戻れない。カルデアに戻った時点で、オルガマリーの意識は消滅する。
レフの言葉はナイフというより、叩きつけて粉々にするハンマーの如くオルガマリーを砕いていく。

「そんな、嘘よ・・・・・消滅? 私、カルデアに、戻れない?」
「そうだとも。だが、それではあまりにも哀れだ」

残酷な真実を告げつつもレフの表情は変わらない。

「生涯をカルデアに捧げた君に、せめて今がどうなっているか見せてあげよう」

レフが持っている聖杯が突如として輝いたかと思うと、次の瞬間には、彼の背後に異形な光景が現れた。

『カルデアス』

オルガマリーが呟く様に言った。
それは、まるで太陽だった。それを中心としていくつもの黒いリングが囲っている。
それが“何かは知らないもの”でも

「聖杯の力を使えば、こんなこともできる」
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