アットウィキロゴ

いちかとゆかりのキラキラパティスリー 〜夜空のお散歩〜




「ふん、ふ〜ん〜♪」
「いちかは今日もご機嫌ね」
「それは勿論ですよ〜 だってゆかりさんとこうしてキラパティ出来るんですもの〜」
と思わず溢れでてしまった嬉しさで満面の笑顔で答えるとゆかりさんも素敵な笑顔で返してくれた。
ゆかりさんとまた一緒にキラパティを始めてから1ヶ月経とうとした。

初めての土地で初めての人達とスイーツを通して交流を深めて仲良くなる事って本当に素敵な事なんだと思ってたし、実際に2度目にその土地に訪問した時には熱烈に歓迎してくれるのを見る度に自分が続けて来た事は正しかったんだと実感して、そしていずれはスイーツで世界を皆をつなぐ事が出来る日が必ず来るんだから少し位は寂しくても大丈夫だとこれまでは自分に言い聞かせて来たんだけど、でもゆかりさんが帰って来てくれてあらためてやっぱり同じ道を一緒に歩んでくれる人がいる事って何て幸せな事なんだろうなと、なんて考えてるともう最近は自然と頰が緩んで仕方なかったりする日々が続いている。
夕方、キラパティの営業が終わりふたりでショーケースとレジ周りを片付けていた。
「イエ〜イ!、今日も閉店前に見事に完売しました! これもひとえにゆかりさんのおかげです!!」
と伝家の宝刀イナバウアーを披露すると微笑みながら。
「私だけじゃないわよ いちかのスイーツの目当てのお客様も沢山いらっしゃったわ。だからもっと自信を持ちなさい」
「そうですか、エヘヘ」
と褒められた事が嬉しくて照れ隠しに笑っているとふいに近づいてきてスッと私の喉元に手を伸ばした。これはヤバイと思いつつも気がついたらゆかりさんの愛撫の虜になってしまって身動きが出来なくなっているとそっと耳元で囁いた。
「この私が言ってるのよ。いちスイーツ職人としてもあなたは素晴らしいものを持っているわ、胸を張っても良いのよ」
そのあまりに畏れ多い賛辞に顔が真っ赤になるのを感じながら。
「ありがとうございます」
と返すのが精一杯だった。



いちかとゆかりのキラキラパティスリー 〜夜空のお散歩〜



お店の片付けが終わって厨房の清掃と除菌をやっているとゆかりさんが入ってきて。
「いちか、レジの棚の引き出しで見つけたんだけどこれってあの時の物よね」
と小さな小袋を持ってきた。それは透明な袋で中にはスイーツパクトのマークが入った小さな木札に根付け紐が付いたストラップが入っていた。
「そうですよ〜私が日本を経つ時に皆といつまでも友達でいたいと、記念にと思って職人さんに頼んで彫ってもらったものですよ。そういえばその時にゆかりさんにも送ったんですけど気に入ってくれましたか?」
との言葉にすっとポケットからスマホを取り出し私に見せてくれた。
「ほらちゃんと大切に使っているわよ、だってこのマークは私達の絆の証ですものね」
とストラップを愛おしそうに手に取り眺めている。その姿に思わず。
「ありがとうございます! 私もものすごく気に入っててこのストラップがあんまり可愛いので今では行った先々でお世話になった方達や友達になってくれた方に配ってたんですけど、でもそれが最後の一個なので今度日本に帰ったらまた職人さんにまとめて発注しようかなと思ってた所なんですよね」
「それは素敵ね、それなら私も少しは援助するからたくさんお願いしましょうよ」
「え〜、本当ですかありがとうございます! そういえばこのストラップ、シエルとリオ君とビブリーにも贈ったんですけどゆかりさんみたいに使ってくれてたら嬉しいなあ」
「そういえばシエルの所で修行してたと言ってたけどどんな感じだったの?」
「いや〜キュアパルフェを名乗るだけあってものすごくハードでしたよ〜一から基本を、それこそパテシエとしてのの心構えから叩きこまれましたね。でも今になってみるとシエルが教えてくれた事って一人でキラパティをやって行く上で全て私の為に必要な物だったんだって実感出来て、愛の鞭だったんだって本当に感謝しています」
「そうだったのね 確かにいちかの動きの中にどこかシエルの姿と被る時を感じてたんだけどそういう訳だったのね」
「え、そうなんですか〜そう見えてたら嬉しいなあ。あとそういえばリオ君が私がシエルに厳しくレッスンで叱られているのを見るとよく庇ってくれて、でそうなると姉弟ケンカが始まっていつもふたりをビブリーが止めてくれるって言う事がよくあって、当時は専門学校に通いながら教わっていたのでかなりいっぱいいっぱいだったんですけど、でも振り返ってみると賑やかな毎日に楽しかったですね」
と思わず懐かしく語ると。
「そう、いちかもずっと頑張って来たのね。そしてここまで… 大したものよ」
との言葉と優しげな眼差しについ嬉しくなって。
「えへへ、照れますな〜 そういえばそのリオ君なんですけど私が出発する時に『やっぱり、いちか1人だと心配だから俺も行く』って言ってくれたんですよね。まあ結局はそれを聞いたシエルが大泣きして大騒ぎになったんで中止になったんですけど、でも一緒に来てくれてたら今頃はゆかりさんと3人で店が出来てたと思うと…」
とそこまで言いかけてゆかりさんの方に振り返ると何か険しい表情になって固まった様な状態になって何かブツブツと呟いていたので思わず。
「ゆかりさん大丈夫ですか!どこか体調が悪いんですか?」
と駆け寄り両手を取り顔を覗き込むと一瞬、目を丸くするもすぐにいつもの笑顔に戻り。
「大丈夫よちょっと考え事してただけだから」
「良かった〜ゆかりさんに何かあったらもう私は生きていけないんですからね!」
と思わず芝居がかった風に怒った態度を見せる私に実に楽しそうにクスクスと笑いながら。
「ごめんなさいね。そういえばさっきのストラップのマークで思い出したけどいちかって今でもプリキュアに変身する事はあるの?」
とさりげなく同じプリキュアとしてはあまり聞かれたくない質問が飛んで来てギクリとした。その様子にまたまたクスクスしながら。
「あるのね。一体どんな時に変身してるの?」
「いや〜実は今はゆかりさんが出してくれるんで必要ないんですけど、以前は目的地に入国した後は経費節減の為にほとんどの移動がプリキュアの力に頼ってました。ホイップになれば大抵どんな山も一飛びですし、長距離の移動にはクリスタルアニマルに乗せてもらえば何千キロでもあっという間ですから。」
「…まあせっかく便利で使える力があるんなら使わない手はないんだけれど、でも伝説のパテシエがね〜」
と少しだけ冷ややかな笑みで視線を送ってくるので何かないかなとオロオロしていると、ふといつも密かに楽しみにしている時の光景が浮かんできて『きっとコレなら』と。
「ゆかりさん、実はプリキュアの力を使っての私の密かに楽しみにしている事があるんですけど今晩ご一緒にいかがですか?楽しいですよ〜」
「それは本当に楽しいの? どんなものなの?」
と興味を示してくれたのでホッとして胸を撫で下ろし。
「それは夜になってからのお楽しみです!」
と満面の笑顔で答えた。

深夜遅く人々が寝静まった頃、キラパティの前にはふたつの影が立っていた。
「キュアラモード、デコレーション!」
瞬く光に包まれた次の瞬間、そこにはキュホイップとキュアマカロンが立っていた。
ホイップがキラキラルクリーマーを取り出しクリスタルアニマルを召喚し、いつもの人が乗れるサイズにした。それを見てマカロンも続こうとしようとするが。
「今日はマカロンは初めてですから私のに乗って一緒に行きましょう」
の言葉に一緒にうさぎのクリスタルアニマルの背に乗りホイップにつかまると。
「じゃあ出発しますね、しっかりつかまってて下さい。あと私が良いと言うまで今から目を閉じて下さい」
との言葉に目を閉じると同時にゆっくりと浮かび始めていった。グングン上昇してるのを感じながら感覚で自分はこれまで来た事ない世界に向かっている事が感じられた。5分程経っただろうかと言う時に。
「はい到着しました!どうぞ目を開けてみて下さい」
ホイップの楽しげな声にそっと目を開けると雲ひとつない満点な星空の空の下に自分達は宙に浮いていた。その圧倒的な光景には思わず息を飲んだ。眼下に広がる景色もいつもよりずっと近くに見える月と星の大きさには思わず、もうちょっと上に登って行けば本当に手が届くんじゃないかと錯覚する程だった。そんな唖然としている私の姿を見て嬉しそうにホイップが。
「マカロン本当に素敵でしょう!じゃあ動きますね」
とゆっくり前進し始めた。するとホイップが星座を指差しては説明してくれてそれが終わると地上の都市や有名な建築物や山脈について色々と細かくガイドしてくれた。その目を輝かせ生き生きとした嬉しそうな横顔に。
「いちかはいちかの歩幅でちゃんと前に進んでいるのね… 」
とつい思わずホイップの腰に回している手に力を入れてしまった。
「どうしたんですか?マカロン」
「ううん、大丈夫よ。ちょっと滑りそうになっただけだから」
「じゃあ落ちない様にしっかりつかまってて下さいね。行っきま〜す!」
と一気に速度を上げて行き星空の海を滑る様に飛んで行き目紛しく刻々と変化して行く光景にしばらく私は心奪われ続けた。

その後、二時間程ふたりだけの夜の空を満喫しキラパティに戻って来てテラスに並んで座ってくつろぎながらティータイムをしている。側にはさりげなくピラミッド型に積まれた団子が置いてあった。
「えへへ、満月じゃないんですけどせっかくお月見したので用意してみました〜ゆかりさん、夜空のお散歩はいかがでしたか?」
と満面の笑顔で訊ねてくる。
「勿論、最高に楽しかったわ。プリキュアの力を使ってあんな光景を見ることが出来るなんて考えた事がなかったから」
と素直な本心を伝えると更にご機嫌になり嬉しそうにしている。
「そういえばこの国についても随分詳しかったけど勉強したのかしら?」
「ええ、回った国のその土地の事、歴史の事は前もって出来るだけ調べておいて、その国の人達と仲良くなる為にピッタリのスイーツは何にしようかと考えてて、それで国を見て回るんだったら空を飛んで回れば早いなあと思って、でやってみたらあんな素敵な経験が出来るのでもう発見した頃には毎晩のように飛んでたんですよね… えへへ、ダメですかね?」
とさっきまでとは変わって少し申し訳なさそうに上目遣いでこちらの様子を伺っている。その仕草が可愛くて思わず笑みがこぼれて。
「ダメじゃないわ、それどころかすごい発見よ!さすがいちかね。今度皆に会った時には是非教えてあげましょう」
と伝えるとまたもやご機嫌になった様子で笑顔になって嬉しそうに。
「じゃあ、明日の晩もご招待しますよ!また行きましょうよ!」
「確かに楽しい事だけど、でもこれを毎晩やってたら寝不足になってお肌に悪いわよ。それに明日もお店もあるんだし」
と答えると少しだけ残念そうにしつつも納得した様子で。
「そうですよね〜でも今はゆかりさんが居てくれるから大丈夫っか」
と少し伏し目がちになりながら意味深な事を言うので『どう言う事?』と聞くと。
「私がこの夜空のお散歩が好きなのは勿論そこから見える光景が素敵だなと言うのも理由のひとつなんですけど、一番はどこまでも続く空の下を飛んでいると世界は同じ空の下にあるんだなって実感出来て、ゆかりさん、ひまりん、あおちゃん、あきらさん、シエル、お父さん、お母さん達ともどんなに遠く離れてても繋がっているんだと言うのが感じられるのが大好きなんですよね。だから…」
言い終わる前にいちかの肩に頭を預ける。
「もう寂しくない?」
突然の私の行動に一瞬、驚いてたけど静かに力強く『はい』と答えた。そしてその後はそのまましばらく会話をせずに静かに月を眺めていた。

気がつくと夜半も過ぎた頃だったのでそろそろ休まなければいけないわねと思っていると。
「月が綺麗ですね…」
といちかがしみじみと突然言い出したので思わず驚いて跳び離れてしまった。『いちか、本当に?』と思いつつも、そんな私の行動に驚きつつも向けてくる彼女の真っ直ぐな視線に目を離せずに動けないでいると。
「あれ?ゆかりさんどうしたんですか?顔が真っ赤になってますよ、大丈夫ですか?」
といつもと変わらない様子に、私を頻りに心配してくれる様子に全てを理解した。そして思い切り吹き出してしまった。
「いちか… あなたってプッ、あはははは!いつまで経っても私を楽しませてくれるわね〜大好きよ!あははは〜」
とおかしくて腹がよじれる程に笑っている姿に不思議そうにしていたけど、いつまでも笑っている姿に不機嫌になり。
「もう何ですかゆかりさん?!何がそんなに可笑しいんですか?」
と頬を膨らませて拗ねてる姿が可愛くてまだまだ止まりそうになかったが必死に堪えて。
「ごめんなさい。ちょっと昔の事を思い出して笑ってしまったのよ」
と曖昧に答えると『本当ですか〜?』と疑い深くしつこく聞いてきたけど。
「それよりそろそろ遅いからもう休みましょう。それとこれから夜空のお散歩はお店が休日の前日にしましょうか。もっとゆっくり回る事が出来るしね」
とウインクして伝えると一瞬で満面の笑顔に変わって嬉しそうに。
「やった〜今度の夜空のお散歩も楽しみだ〜」
と店に入っていった。自分も続いて中に入ろうとした時に振り返りもう一度月を見上げる。
「本当、月が綺麗ね ふふ」
きっと明日もまた素敵な1日が待っている、そう確信しながら扉を閉めた。



最終更新:2018年03月10日 11:29