いちかとゆかりのキラキラパティスリー ~波乱の帰国編(ゆかり無双編)~
現在私達は帰国してまだ早朝の薄暗い中、苺坂商店街をキラパティがかつて常駐していた場所を目指して歩いていた。
「いや~本当に何もかもあのままですね~懐かしいなあもう!」
と数年ぶりの故郷にテンションがマックスな私に。
「そうね、本当に変わらないわねこの街は。ずっとあの時からスイーツ産業で盛り上がっているのね」
と懐かしそうに歩きながら周囲を見回していた。
実は今日帰国して皆で集まってペコリンのお店でパーティーを催す事になっていたのだが、どうせだったらキラパティに集まってもらって私とゆかりさんのスイーツを皆に振る舞って修行の成果を見てもらおうと言う事に決めて約束より随分と早く目指す場所に向かっていた。
目的地に到着すると以前キラパティが建っていた場所にそっくりな建物があった。
「これがペコリンのお店か~名前は『ペコリンパティスリー』ですって、後で見に行きましょうよ!」
「そうね、でもすぐ側でオープンするとペコリン達にバレちゃうからどこか別な場所にしましょうか」
との言葉にどこが良いかなと2人で思いめぐらせていると。
「キラッと閃いた!いちご山の妖精達のスイーツ工房はどうでしょうか? あそこだったら人気もないし、妖精達に頼めばきっと場所も貸してくれるし待ち合わせまで秘密にしてくれると思いますよ」
「それは良い考えね、あそこだったら周りを気にせずスイーツ作りに専念出来るから都合が良いわね」
と賛成してくれたので早速向かう事になった。
待ち合わせは12時だったがその1時間前には全てのスイーツが用意出来た。出国前にシエルに教えてもらった事、その後1人で色んな国を回って身に付けて来た事、そしてゆかりさんとまたキラパティで一緒になってから教えてもらった事と今の私の集大成が詰まったスイーツ達を前に。
「今の私の全て出し切ったんですけどみんな喜んでくれると嬉しいなあ」
としみじみ眺めて思わず呟くと。
「そうね~見た目は格段に進化してるけど中身はどうかしらかね~」
「え~だって昨日はこれだったら大丈夫って太鼓判押してくれたじゃないですか!」
と思わず抗議すると『うふふ』とあからさまに意地悪そうな笑顔を向けてくるので。
「もう、ゆかりさんの意地悪!大嫌い!!」
とそっぽを向いて声高らかに宣言すると途端に崩れ落ち、よよよと泣き伏してしまった。
「ちょっとした冗談のつもりだったのに… スイーツ職人としての腕はいつも認めてると言ってるのに…もういちかと一緒に居られないのね…」
と予想外の反応に慌てふためいてしまい思わず全力で。
「ごめんなさい、嘘です!私はゆかりさんが大好きです!!もうゆかりさんが居てくれれば他に何もいらないです!!!」
とゆかりさんの両肩を持って伝えると上目使いで少し頬を赤く染めて。
「本当?じゃあ私をお姫様抱っこしてくれる?」
「任せてください!!」
と快諾しつつも正直ちょっと重っ、いや難儀だったが何とかゆかりさんを抱っこして店内を歩いているとどうやら機嫌が良くなってきたのでホッとしてた時にふと視線を感じたのでそちらの方を見るとドアの隙間から覗いていたあおちゃん達とキラ星一家と目が合った。
いちかとゆかりのキラキラパティスリー ~波乱の帰国編(ゆかり無双編)~
その後、キラパティをペコリンパティスリーの隣に移動してそれぞれの家族と苺坂商店街の皆を招待してふたりの帰国パーティーが行われた。皆が一様にいちかとゆかりのスイーツに舌鼓を打ち、特にいちかの父の源一郎は娘の成長ぶりに号泣しながらスイーツを食べている姿に、『もうお父さん、皆が見てるからやめてよ~』と照れながらも目を真っ赤にして寄り添ういちかの様子にはその場にいた皆が目を潤ませ温かく見守っていた。そんな和やかな雰囲気の中、パーティーはつつがなく終了し今はプリキュア関係者だけ集まって二次会をしている。
「それでは皆で再会を祝してカンパーイ!」
とあきらの音頭で皆がグラスを掲げるのも全く盛り上がっていなかった。と言うのも大きい円卓を囲んで皆で座っているのだが何故かゆかりはいちかの隣に座って体をピタリ寄せてその肩に頭を乗せてうっとりしている。そしてそんな彼女達の対面にはリオが座っているのだけれども、その何か耐えてるかの様な不穏な空気が伝わってきて誰も話出せずにいた。そんな中、苦労人のあの彼女が切り出した。
「あの、ゆかりそれは何かな? いちかちゃんも困ってるんじゃないのかな?」
「ああ、ゆかりさんはこうすると疲れが取れるそうなんですよ~」
と満面の笑顔でいちかが答える。続けて。
「よくふたりで『夜空のお散歩』に行くんですけど帰って来るとこうしてキラパティお月見してるんですよね~一昨日も行ったんですけど月が綺麗でしたね~ゆかりさん」
「そうね、とても月が綺麗だったわね。うふふ」
その言葉に一同が固まる『月が綺麗ですねって…意味知っているのか?』と。あおいがひまりに小声で尋ねる。
「ねえひまり、いちかの奴って中学の時の国語の成績はどうだった?」
その問いに無言で首を横に振るひまりの姿に、その一連の様子のやりとりを脇で聞いてたメンバー達も何だか気の毒そうな視線をいちかに送る。更に空気が悪くなってきたのであきらが話題を変えて。
「そういえばお店の方はどう?あれだけのスイーツが並んでいるんならお客さんもたくさん来てくれてると思うんだけど」
「そうなんですよ!ゆかりさんが来てからもう本当にすごくていつもどんなに用意しても全部完売しちゃうんですよ~」
人差し指をを上に指差し目を輝かせながら鼻息を荒くする姿に皆が『相変わらずなんだなあ』とふっと場の空気が和んだのだが。
「この間もイタリアでオープンした時も情熱の国だけあって男性のお客さんがゆかりさん目当てに長蛇の列が出来て大変だったんですよね~」
「ゆかりだったらきっとそうなるよね~随分と言い寄って来られて大変だったんじゃないの?」
とあきらの少しおちゃけられた問いにゆかりがどんな返事をするかと思って皆が注目していたのがいちかが。
「そうなんですよね~でもそういう人達に限って不思議と大抵一週間もしないうちに来なくなっちゃうんですよね。『また明日も来るよハニー達っ』なんて声をかけてくれたのにですよ」
と少し気落ちしている様子のいちかに。
「いちか、人にはそれぞれに事情があるのよ。その人達はきっとそれぞれ旅立って行ったのよ…」
その言葉の中、一瞬目が鋭くなったゆかりの表情を見ていちか以外のその場に居た全員は確信し背筋が凍えた。
「またあのお客さん達にも会えますよね?」
「きっといつかまた会えるわよ」
と優しく答えるゆかりの姿に全員が心の中で感じていた『再会出来るのはきっとあの世でなんだろうな』と。
更に空気が重たくなり暗くなるばかりだったがあきらは頑張って。
「そういえばゆかりとの一緒の生活はどう?楽しい?」
「ええ、とっても!スイーツ作りもそうなんですけどごはんの作り方とかも色々と教えてもらってまして随分と上達したと思います。正直言うとひとりだった時はやっぱり寂しかったので。だからこそこうしてゆかりさんとまた一緒にキラパティが出来るのが本当に嬉しいんですよね」
と伏し目がちに静かに幸せを噛みしめるかの様に語るその姿に、本当にいちかは今が楽しいんだろうなと言う気持ちが伝わって皆がしんみりしてまた良いムードになるも。
「あとゆかりさんってとっても可愛い所があるんですよ~」
「へ~どんな所かな?」
「夜は別々な部屋で寝てるんですけどたまに寝ぼけちゃうみたいで気がつくといつの間にか私のベッドに入ってきて一緒に寝てるんですよね…」
今まで一番の衝撃が走り抜け一同が凍りつく。そんな中ゆかりはしれっと。
「私夜は弱いのよね~本当、参っちゃうわ」
とその言葉に全員心の中で『猫は夜行性だろ!!』と突っ込む。
「へ、へ~それはよくある事なのかい?」
とダメージに震えながらも健気にあきらが立ち上がる。
「そうですね、週7日のうちに6日間位ですかね~」
と答えゆかりと目が合い微笑み合う。その様子についにあの男が立ち上がり叫ぶ!
「ほぼ、毎日じゃないか~!!!」
と全員の心の言葉を代弁してくれた。そして。
「帰る!」
と怒って出て行ってしまった。すぐにシエルが心配して追いかけて行き、更にビブリーも続いたが去り際に。
「まあ元から勝てる訳ないと思ってたけど、それにしてもリオの奴ダッサ!」
と呟いてキラパティを後にした。
「ゆかりさん、リオ君どうしちゃったんですかね?」
「さあ、男の人の考える事は良く分からないわ」
と一見、冷めた様にしつつもどこか勝ち誇った様に答える。残された者達は衝撃の事実の数々に疲弊しその場でへたり込んでいたが。
「皆どうしたの?そうだ良かったら今日泊まって行きなよ!」
のいちかの言葉に皆がスイッチが入ったかの様に一瞬で立ち上がりそして口を揃えて。
「いや~この後、用事があるんだよね。じゃあまた来るよ」
と一斉に帰っていってしまいゆかりとふたりだけになってしまった。
「皆、やっぱりそれぞれに忙しいんですかね~」
と少し寂しそうに残念そうに言うと。
「ねえいちか、今日は洗い物がすごい事になっているけど明日片付ける事にしてこれから『夜空のお散歩』に行かない?」
「良いですね~久しぶりの日本の空ですものね、行きましょう行きましょう!」
その晩はふたりでクリスタルアニマルに乗って故郷の空を満喫した。
当初は苺坂での滞在するのは1ヶ月の予定だったのだが『キラパティが帰って来た』と言うのが非常に話題になって好評を博し、更にはいちかの発案でキラパティ、ペコリンパティスリー、シエル・ドウ・レーヴの3店舗合同のコラボのスイーツの限定販売をしたり、極め付きはキラパティVS シエル・ドウ・レーヴのスイーツ対決を一般のお客様の投票で勝敗を決めるのイベント等、苺坂全体の活性化につながる催しが立て続けに行われた影響で地元だけでなく県外の多くのスイーツ愛好者が多く集まり大盛況な日々がしばらく続いた為に結局、出発が3ヶ月程遅れてしまった。ちなみその間は時間に都合がつけばあおい達かつてのキラパティのメンバーが入れ替わり手伝いに駆けつけてくれていたので厨房の中はいつもいちかの満開の笑顔で満ち溢れていた。
出発の日空港のロビー、いちかとゆかりの旅立ちにひまり、あおい、あきら、ペコリンと珍しく娘に気遣ってか源一郎がスーツ姿で見送りに来ている。
「いちか~行かないでペコ~もっと一緒にスイーツを作りたいペコ~」
とペコリンがいちかにしがみついて離れないようとしない。その姿に愛おしさに思わず抱きしめてしまう。
「また絶対帰って来るから、そしたらまた一緒に作ろう!それまでには私はもっともっと美味しいスイーツを作れる様になっているから…だからペコリンもきっと上手くなっているんだよ」
との涙ながらも懸命にペコリンを励ますいちかの姿に仲間達は目を潤ませるばかりだった。
「あれ、そう言えばリオ君とシエルとビブリーがいないけどどうしたの?」
「あ~何かどうしても外せない用事があるって。ふたりによろしくって言ってたよ」
とどこかとぼけた風にあおいが答える。
いよいよ出発ゲートに向かおうとした時に源一郎が『いちか!』と呼び止めるそして。
「元気でな!くれぐれも健康にだけは気を付けるんだぞ!」
と涙を流しながらいちかを抱きしめている。いちかの方はものすごくうんざりした表情をしているのだが『これも親孝行』と思っているのか必死に耐えている様子だった。ゆかりもその光景は少々、面白くなさそうな表情で眺めていたが次の源一郎の一言で一変する。
「ゆかりさんっ!いちかを娘を何卒、くれぐれもよろしくお願いします!!」
その言葉にゆかりは今まで見た事がない程に表情を輝かせ姿勢を正し右手を胸にあて。
「はい、お父様お任せ下さい!いちかさんは私が必ず幸せにします!!」
どうみても結納の時に交わす挨拶にしか見えないゆかりの答えに一同はズッコケ、滑り落ちる。
「ありがとうございます!お願いします!」
と繰り返す源一郎の様子にいちかは『もう恥ずかしいなあ~お父さん、皆見てるよ~』と真っ赤になっているのに対しゆかりの方はと言うといつもより数倍凛々しい顔で『お父様』と接していた。
やがて出発の時間になり搭乗ゲートを手をつないで微笑み合いくぐるふたり、それを源一郎が傍目を気にせず万歳三唱で送られる様子はどう見ても新婚旅行に旅立つカップルにしか見えなかった。その様子に皆がツッコミ所満載だったがあえてその幸せそうな雰囲気に水を差す訳にもいかず誰もが黙って見送ったのであった。
見送りから帰路の道中、立神コンツェルン御用達のリムジンに乗っているあおい、ひまりん、あきら。ちなみにペコリンは源一郎を気遣って一緒に食事して送ってから帰るとの事である。
「あの様子だとあのふたりにリオが立ち入る隙はないみたいだけど、って言うか大丈夫なのかな?」
「う~ン、でも本人の強い意向ですし…」
「まあでもシエルとビブリーがいるから最悪な事態はないかな…と思うよ。それより何よりもゆかりはいちかちゃんの事を大事に想っているからそれだけは信じて良いかな。その証拠にいちかちゃんの様子があの頃と変わらないで無邪気と言うかまっすぐのままだったじゃない。だから私達の危惧はただの思い過ごしかもしれないよ」
とのあきらの言葉に一応納得しつつも親友の行く末を大いに心配するあおいとひまりだった。
ちょうどその頃、クローズ状態のキラパティの中には2匹の妖精と人間の姿があった。
「何でビブリーも来てるんだピカ!」
「何言っているの!ビブリーは私達の家族じゃないキラ!」
「…まあ私はスイーツが好きなだけ食べれればどこに行っても良いんだけどね、でも私達ここに置いて貰えるのかしらね。特にアンタは」
と冷ややかな目線を送るビブリー。『いちかが心配だから一緒に俺と来てくれ』の言葉にキラリンは同行し、となればビブリーもついて来ているのだが正直3人ともこの先どうなるのか全く予想がつかなかった。
「さっきのいちかのお父さんとのやり取りを聞いたでしょう、向こうに着いた途端放り出されるんじゃない?」
「…それでも何とかしてここに居て俺はゆかりの魔の手からいちかを守らなければいけないピカ!」
と闘志を燃やす姿を見て『はい、はい』と軽く受け流す。一方キラリンの方は。
「キラリンはピカリオと一緒だったらどこでも行くキラ。それにいちかとゆかりはきっと私達をここで雇ってくれるキラ!」
と2人に笑顔で伝える。どうやらピカリオに『一緒に』と誘われたのが嬉しかった様である。
果たしてこの先にキラ星一家の待ち受ける運命とは…続く…かも(笑。
最終更新:2018年03月10日 11:30